2017-05-19

"あなたの人生の物語"『メッセージ(Arrival)』ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督、エイミー・アダムス、ジェレミー・レナー、フォレスト・ウィテカー、他

注・内容、台詞、ラストその他全般に触れています。
メッセージ
Arrival

原作 : テッド・チャン
監督 : ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演 : エイミー・アダムス
ジェレミー・レナー
フォレスト・ウィテカー、他

物語・巨大な球体型宇宙船が、突如地球に降り立つ。世界中が不安と混乱に包まれる中、言語学者のルイーズ(エイミー・アダムス)は宇宙船に乗ってきた者たちの言語を解読するよう軍から依頼される。彼らが使う文字を懸命に読み解いていくと、彼女は時間をさかのぼるような不思議な感覚に陥る。やがて言語をめぐるさまざまな謎が解け、彼らが地球を訪れた思いも寄らない理由と、人類に向けられたメッセージが判明し…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Arrival1

Memo1
ブログ記事タイトル名は原作"あなたの人生の物語"を。
映画を観終わったときに、その原作タイトルがまた違った深度を持って問いかけてくれる。
(これより以降、思いつくままにメモを元に台詞やシーンをランダムに記載しています。エイリアン表記ではなく全てヘプタポッドとして記載)
フラッシュバックと思われていた娘、ハンナ"HANNAH"との映像。
実は"これから起こるできごと"フラッシュフォワードであることが後半にわかってくる。
"起こりうる未来が過酷なものであっても、それを受け入れる?"
ラスト
(ルイーズとイアンと小鳥が描かれた絵)
「パパとママが動物に会ったの」
撤収していく軍や関係者たち。
ルイーズのモノローグ。
「あなたの物語はこの日から始まる」
イアンの台詞。
「ずっと宇宙に憧れてきた」
でも1番驚いたことは彼らにではなく、君に出会ったことだ
「パートナーが君でよかった」
「数学者のような考え方をする」
理系と文系がタッグを組んで問題解決に挑む。
このふたりでよかったと思えるシーンの積み重ね。
性急な結果(ここで言う結果とは"彼らが地球に来た目的は何かということを知ること)を求めてくる政府。そしてウェバー大佐。
それに対して語彙がもっと必要だと解くルイーズ。
そこで、こういう話をする。
オーストラリアに初めて上陸した際、先住民族に対して「あのお腹の袋に子どもを入れて飛び跳ねている動物はなんだ」という質問に対して「カンガルー」と答えた。
でも、実際は彼らの言葉では「理解不能」という意味。
「お見事」というイアン。
「(字幕では)都市伝説よ」
(実際はうるおぼえですが→「真実ではないけれど私の伝えたいポイントをおさえている話」)
(前段として、ウェバー大佐が大学に訪ねてきた際、去り際の大佐に別の教授にあたる際にサンスクリット語で"戦争"の意味を聞いてほしいというシーンもある)
ファーストシーンとラストが繋がる円環構造についてはSFマガジンでの添野知生氏による批評(5ページにわたって紹介。他に基本、善人しか出てこないこと「ある日どこかで」のことなど鑑賞後に読むテキストとして最良)やパンフレット中のレビューでもいくつか記述されている。
(そのシーンのために始めと終わりに使用されるマックス・リヒター「On the Nature of Daylight」←End title crawlにも単独表記されるほど重要な楽曲)
殻"Shell"の中でルイーズたちとヘプタポッドの間にある"Wall"。
それはまるで見ているこちら側(観客側)のスクリーンのようでもある(本作自体がスコープサイズだし)。
スクリーンの中にスクリーンがある感じ
そこに近づいていくルイーズと観客はヘプタポッドとの遭遇を同じような気持ちで見ることとなる。
また"Shell"自体のサイズ感(ヘリコプターの俯瞰から見たものと地上から近づいていったときののものとの比率)が分からなくなるように被写界深度の浅・深を巧みに取り入れている撮影手法も素晴らしい。
"Shell"は宇宙船というよりは、まさに容器のようでもあり通路のようでもある。
ゆえにラストに去って行く姿は舟が離れていくというよりは、その場から消滅していくようだ。
ルイーズとイアンが兵士たちによる爆弾テロに巻き込まれ"Shell"から弾きだされる(事実上ヘプタポッド"アボットとコステロ"に助けられたことに)直前に受け取った膨大なロゴグラム。
「時間についての表示が多い」
「点と余白の数を計算してみた」
0.0833
「分数で表すと」
1/12
"武器を与える"その意味するところと世界の12地点に現れたことなど全てが合致して出てきた答え…。
娘ハンナとのフラッシュフォワード映像がよぎる(その前後の描き方の見事さ)。
ある語句を思い出せないでルイーズに質問するハンナ。
「取引?」
「ウィンウィン?」
「違う。もっと数学的な感じの…」
「それだったらパパに電話してみなさい」
そして。
未来の自分が現在の自分から答えをもらう。
(切迫した状態で各国お互いのデータをどう渡しあうのか…。ウェバー大佐らに説得するルイーズ。そこでポツリとイアンが…「ノンゼロサムゲーム」)
ハッとするルイーズ。
そしてハンナに。
「ノンゼロサムゲーム」
("non-zero-sum game" 日本語字幕で「非ゼロ和ゲーム」と出ていた)
原作で出てくるフェルマーの光の最小径路が省かれているのは映画としての選択だったのかはよくわかる。
それでも、それっぽい台詞がさりげなく織り込まれている。
それはルイーズの姿勢も表している。
「急がば回れよ」
初見の際に「!」と思ったチャン将軍との(フラッシュフォワード)1年半後の会話。
「あなたに会いたくて来た」
「あの時、わたしの携帯電話に電話をくれたから今こうして会えた」
「わたしは番号を知らない」
チャン将軍が携帯の番号を見せながら…
今、知りましたよ
手が無意識に震えるほどの恐怖もありながら与えられた使命(目的)のために勇敢に立ち向かう聡明にして孤独を内に秘めた言語学者ルイーズ。演じたエイミー・アダムスが本作でアカデミー賞にノミネートされなかったことは謎。
そのエイミー・アダムスの透きとおるようなブルーアイと防護服のオレンジ色が補色になっている点も美しい。

Arrival

Memo2
タイトルデザインはLouis-Martin Duval
(抱き合うふたり。待ち受ける未来を知りつつも…)
そして静かに暗転。浮かびあがるARRIVALのタイトル。
http://annyas.com/screenshots/updates/arrival-2016-denis-villeneuve/
コンセプトアート
(かなり違っているものもある)
Concept artist Meinert Hansen
Arrival: Concept Art, Part 1: The Shell
https://meinerthansen.com/2016/11/13/arrival-concept-art-part-1-the-shell/
Arrival: Concept Art, Part 2 – The Aliens
https://meinerthansen.com/2016/11/19/arrival-concept-art-part-2-the-aliens/
ポスター右下に記載されている12ヶ所の緯度・経度が確認できるサイズで閲覧できるポスターサイト。
http://www.impawards.com/2016/arrival_gallery.html
音をスペクトラムで表した図。
モンタナがその中で抜け出てピークを指している。
(後半は'TED'における8次元についてのスピーチ関連記載)
https://medium.com/colorless-green-ideas/the-arrival-a-colorless-story-of-your-life-312504e04700
一貫しての言語学者ルイーズの視点で描かれる本作。その根幹たる「使用言語によって思考は影響される」というサピア=ウォーフの仮説についての(おそらく)唯一の書籍『言語・思考・現実』(L・ベンジャミン・ウォーフ/著)
公開後に突如、売れ始めるかも?
音楽は同じヴィルヌーヴ監督の『プリズナーズ』『ボーダーライン』を手がけたヨハン・ヨハンソン(『ブレードランナー 2049』も控えている)
公式ウェブサイト
http://www.johannjohannsson.com/
既に日本以外ではBlue Rayが発売されており特典マテリアルとして1時間を超えるメイキング関連映像が収録されています。
テッドチャンへのインタビューから音響設計、ロゴグラムの製作過程など多数。
IMDbで下記タイトルで検索可。
• Xenolinguistics: Understanding Arrival
• Acoustic Signatures: The Sound Design
• Eternal Recurrence: the Score
• Nonlinear Thinking: The Editing Process
• Principles of Time, Memory and Language
こちらの語句で画像検索するとその他、いろいろと面白いものが… → "arrival mathematica code"
数式処理システム"Mathematica"について
(言語、図像解析に用いられていて画面に多々登場)
https://mathematica.stackexchange.com/questions/137156/where-is-abbott-how-to-make-logograms-from-the-film-arrival
【TVブロス】5月20日号。ヴィルヌーヴ監督への渡辺麻紀さんのインタビュー。監督自身が「えっ、そうなの?それは知らなかった!」と反応した『スター・トレック ファーストコンタクト』でも人類が初めて異星人と遭遇するのがモンタナだったという話をはじめ、妙にツボにはまる話が掲載されています。(「『デューン』はまだやるか決まってないよ。」なども)
メイキング映像(約15分)
Go Behind the Scenes of Arrival
https://www.youtube.com/watch?v=QOMIL_6bkiU
"WIRED"掲載のロゴグラムのメイキング記事
"映画『メッセージ』制作陣はいかにして「エイリアンの文字」をデザインしたか?"
http://wired.jp/2017/05/20/arrival-alien-alphabet/

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Memo3
パンフレットデザインは大島依提亜‏さん。
"Shell"の型抜きが表1、表4に施されている。
(中にはモンタナと帯広の写真。合計全12ヶ所の"Shell"出現地の写真も掲載)
A5サイズ/本文52ページ。
プロダクションノートが12ブロック。
レビューが12本。
(原作、SF映画、コミュニケーション、音楽のことなど本編に関わる要素が網羅された内容)
ロゴグラムの素敵な仕掛けがセンターに。
映画史に残るSF作品に相応しい手元に置いておきたいパンフレット。

映画『メッセージ』 | オフィシャルサイト
http://www.message-movie.jp/


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2017-05-14

"わくわくシャマラン・ランド"『スプリット(Split)』M・ナイト・シャマラン監督、ジェームズ・マカヴォイ、アニヤ・テイラー=ジョイ、他

注・内容、他のシャマラン監督作品にも触れています。
スプリット
Split

監督・脚本 : M・ナイト・シャマラン
出演 : ジェームズ・マカヴォイ
アニヤ・テイラー=ジョイ
ベティ・バックリー
ジェシカ・スーラ
ヘイリー・ルー・リチャードソン

物語・高校生のケイシー(アニャ・テイラー=ジョイ)は、クラスメートのクレア(ヘイリー・ルー・リチャードソン)の誕生パーティーに招待される。帰りは、彼女とクレアの親友マルシア(ジェシカ・スーラ)をクレアが車で送ってくれるが、途中で見ず知らずの男性(ジェームズ・マカヴォイ)が車に乗り込んでくる。彼に拉致された三人は、密室で目を覚まし…。(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Split2

Memo1
やー、やっぱりやってくれました"わくわくシャマランランド"
マクガフィンに次ぐマクガフィン 笑
シャマランのシャマランによるシャマランのための映画。
今までも『アンブレイカブル』乗客全員が死亡した列車事故。その中、全く無傷で生き残ったデイヴィッド・ダン。何故?
物語が進んでいくと…「なーんや、漫画(コミック)の世界の話やったらなんでもありやん」(←関西弁)
サイン』かつての矢追純一氏の"木曜スペシャル"ノリでジャジャジャーンとテーマ曲が聞こえてきそうな雰囲気のテレビ映像のみで宇宙人襲来を見せてーの、けったいな(←関西弁)ホンモノ宇宙人をバットで倒したり『ヴィレッジ』何故、塀の外へ出てはいけないのか。結局、塀の中のコミューンでしたチャンチャン(←関西風オチ擬音)などなど、まずは大上段で謎を提示して"つかみは最強""はたして結末は!?""来るか!大どーんでーん返し"といった期待値までをもフックとするシャマランテイストが本作は極めて高い精度で復活している。
"イメージが超人や獣人や宇宙人や怪物や境界をつくり出す"
元をただせば『シックス・センス』でのオチ(小林信彦先生に言わせるとはじまってすぐの段階でブルース・ウィリスは死んでいることがわかってしまう、というか亡くなっていないとおかしい作劇となっているとのこと)ありきのシャマラン監督への"どんでん返しオチ期待"が肥大していったことに起因すると思うのですが…。
予告編では一切見せなかった父親と叔父、そして子供時代のケイシー。
3人でハンティングに出かけているシーン。
そのケイシーを見る目つきが最初からおかしい叔父。案の定、全裸でケイシーに近づいてくる。
そして…。
それらが拉致された室内のシーンの合間に(夢もしくはイメージとして)はさみこまれる(ケイシーが目覚めたときに必ず男が側にいる。例えば食事を手に「お寝坊さんね」)
父親の死後(写してはいないが、このハンティングの際に何かあったのは推察できる)、育ての親となった叔父による虐待は高校生の今になっても続いていることから逃れようと放課後もなかなか家に帰らないことが会話の中から読み取れる。
本当の"ビースト"それは…。
23人格とは別にもうひとり生み出される妄想の怪物"ビースト"
そのことについて極めつけの台詞は「人格によって肉体も変化する」
ヒッチコック作品への目配せはもちろんだが、どちらかというと精神科医との件でデ・パルマ監督『殺しのドレス』を想起。
奇妙なシーンのつなげ方や展開、ショット(冒頭、クレアとマルシアとのレストラン部分のカメラ視点、ケイシーが衣服を男に渡すところでは手元は写らない、最初は一緒の部屋だった三人のボジション、黄色の花の位置…)などで見方によっては全てケイシーの妄想だったとも捉えられる。
(『アンブレイカブル』と同じ世界の物語とすればケイシーの叔父へのイメージ自体が"ビースト"そのものであり、その事自体の妄想が"ビースト"を実体化させたと見るのがマクガフィンにつぐマクガフィン映画として妥当かもしれない←前述予告編や公開されているBEHIND SCENE全てにおいて叔父のことは隠されていたし)
ジェームズ・マカヴォイの多重人格者演技はもちろん、さすがだがケイシーを演じたアニャ・テイラー=ジョイの眼力(目ヂカラ)はラストバトルでの"ビースト"化したマカヴォイと向かい合った際にも決して負けてはいない凄みがあり、注目度があがってきている女優としての面目躍如。
シャマラン監督が本作のプロモーションで来日した際に日本時間4月27日午前1時に「重大発表あり」と予告の上『アンブレイカブル』の続編についてツイートしてたから公開前に既にネタバレ済み。
それにしても『アンブレイカブル』『スプリット』それぞれにおいて妄想がヒーローとビーストを生み出し『GLASS』となって帰ってくる…って、な、何、それ!?
エンドクレジットの最後の告知は笑いが起こっていたのでつかみはOK?

Split1

Memo2
スコープサイズのセンターに人物を配した撮影ショットがいいなぁと思ってIMDbをチェックしたら『イット・フォローズ』(そのデヴィッド・ロバート・ミッチェル監督次回作『Under the Silver Lake』も)を撮ったマイク・ギオウラキス(Mike Gioulakis)だった。
900万ドル低予算映画のためか、最新撮影機材使用ではないにもかかわらず、この仕上がりは素晴らしい。
Title Design > Filmograph
昨年の秀逸な『10 クローバーフィールド・レーン』タイトルデザインに続く(勝手にこう呼んでいる→)ソール・バス系デザイン。
Filmographはジェームズ・ワン監督の一連の作品や『ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション』カーテンコール(Curtain Call Sequence)のデザインなどを手がけている。(これから公開の『ジョンウィック2』や『パワーレンジャー』も)。
↓下記サイトは『スプリット』モーションテストやインタビューなど(タイトルシークエンス動画もあり)
http://www.artofthetitle.com/title/split/

映画『スプリット』公式サイト
http://split-movie.jp/

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2017-05-11

『カフェ・ソサエティ(Cafe Society)』ウディ・アレン監督、ジェシー・アイゼンバーグ、クリステン・スチュワート、スティーヴ・カレル、ブレイク・ライブリー、他

注・内容、台詞に触れています。
カフェ・ソサエティ
CAFE SOCIETY

監督 : ウディ・アレン
出演 : ジェシー・アイゼンバーグ
クリステン・スチュワート
スティーヴ・カレル
ブレイク・ライブリー、他

物語・1930年代。ニューヨークに暮らす青年ボビー(ジェシー・アイゼンバーグ)は、刺激にあふれた人生を送りたいと願いハリウッドに向かう。そして彼は、映画業界のエージェントとして大成功を収めた叔父フィルのもとで働く。やがてボビーは、叔父の秘書を務める美女ヴォニー(クリステン・スチュワート)のとりこになる。ひょんなことから彼女と距離を縮められて有頂天になり、結婚まで考えるようになるボビー。しかし、彼女にはひそかに付き合っている男性がいて…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

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Memo1
『ラジオデイズ』を軸に過去作全体を展観しているような趣きがある。
もっとも、その語り口。
既に名人至芸(例えるなら落語のような)の領域に達しているウディ・アレンなればこそのこと。
ボビーの恋は成就されない苦さがあれどもラストを新年で迎えることによって、どこかしら晴れやかな気分で劇場をあとにできるのだ。
ロスとニューヨーク。
ヴォニーとヴェロニカ。そう、まさに"ふたりのベロニカ"?
(キェシロフスキ監督の『ふたりのベロニカ』のように一瞬、すれちがうような接点もなく顔を合わせることはない)
この対をなすふたりの女性へのボビーのアプローチの仕方がロスとニューヨークでは全く違う。ロスではブロンクスから出てきたばかりで、まるで学生のような猪突猛進型だったのがニューヨークではクラブを成功させ自身に満ちた強引なアプローチに。
笑った台詞。
(毎度のことながらユダヤ人自虐ネタ)
「死刑の上にキリスト教に改宗するなんて」
「ユダヤ教にも来世があったらもっと信者が集まるのに」
スティーブ・カレルは『フォックスキャッチャー』で演じたデュポンの姿が怖くて怖くて、その演技があってか終始おさえぎみに話すボビーの叔父フィルとダブって見えた(こういう役、本当に上手い)
また兄ベンを演じたコリー・ストールが、そのくわえタバコの不敵さもあわせて見事な演技。(それゆえの改宗した際の刑務所での台詞が妙に可笑しい)
ニューヨークで知り合い、結婚するヴェロニカのブレイク・ライブリーは『アデライン、100年目の恋』でも1930年代を生きる(と、いうか100年間を演じる)女性を演じていて、写っているだけで華やかさが半径500mにふりまかれる。
文藝別冊『ウディ・アレン』冒頭対談での芝山幹郎氏『カフェ・ソサエティ』について「にやっとしたのは、キャステイングですね~(中略)~クリステン・スチュワートなんて『パニックルーム』の小娘だったのに、ここへ来て急成長ですね」←小娘って 笑
ドキュメンタリー『映画と恋とウディ・アレン』でダイアン・キートンがウディ・アレンを初めて見たとき「なんてカワイイ(cute)人なの」と思ったというインタビューの答え。
これ、ボビーに対してのヴォニーの台詞「かわいい。車のライトを見て動けなくなった鹿みたい」と見事なシンクロぶり。

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Memo2
撮影監督ヴィットリオ・ストラーロと初タッグ。
(そして初デジタル)
詳細記事が下記に↓
【FILM AND DIGITAL TIMES】
Passage from Film to Digital
: Vittorio Storaro, ASC, AIC

PDFファイルで閲覧、保存可。
http://www.filmanddigitaltimes.com/wp-content/uploads/2016/04/75FDTimes-Storaro-PassageToDigital.pdf
具体的なグレーディングについてなど詳細に書かれています。参考としてエドワード・ホッパー「サマータイム」やレンピッカなどの絵画も。
Coloristは『ブルージャスミン』や次回作『Wonder Wheel』も手がけるAnthony Raffaele
ハリウッドパートはウォームトーン、ブロンクスパートは彩度を落としたクールトーン(銀落としのようなザラツキ感も)、ニューヨークパートはその中間、明るみのあるトーンと分けられている。1シーンだけクールからウォームへほとんど気づかないレベルでトーン変調する場面(ロスとブロンクスとの手紙のやり取りが読まれるところ)があった(もしかして、ウディ・アレン作品初?)
1930年代を再現した衣装に注目
スージー・ベンジンガー(Suzy Benzinger)
本作では「シャネル(CHANEL)」の衣装協力のもと当時のファッションが忠実に再現され、劇中でクリステン・スチュワートやブレイク・ライブリーが着用するドレス類からジュエリーまで提供されている。
↓こちらはFashionsnapの記事。
http://www.fashionsnap.com/news/2017-05-04/cafe-society/
(なお劇場によってはクリステン・スチュワートが出演しているCHANELのCMが本編の前に流れる)
タイトルシークエンスのフォントはおなじみのWindsor
ウディ・アレン監督はAmazon配信ドラマでも、やっぱり使用フォントはWindsorだった!
考えてみれば『アニー・ホール』以降『インテリア』を除いて全部そうだったかも。

Woody1

Memo3
↑ウディ・アレン本が並んでる!
左から文藝別冊『ウディ・アレン』評伝『Woody ウディ』『ウディ・アレンの映画術』(撮影時点では未発売の『ウディ・アレン完全ヴィジュアルガイド』宣伝チラシも置いていた)
評伝『Woody ウディ』(デイヴィッド・エヴァニアー著/ 大森さわこ 翻訳) 分厚い!二段組みなれど品のある書体、行間で読みやすい。
紙質を変えたモノクロ写真ページが巻頭と中盤合計32ページ(撮影風景や女優とのスナップなど)
公認ではないけれど協力はする形でウディ・アレンといくつかのメール交換が行われていて、その文言も読める。
締めくくりで「会いませんか」という著者に対して、ついに対面なった部分も書かれています。
文藝別冊『ウディ・アレン』はエッセイ・論考・コラム・作品評で構成されたアレン作品を見続けた者にとっても、これから順に見ていこうと思っている人にもおすすめのムック本。
作品評に当時のパンフレットからの再録がおさめられているのも嬉しい。
・『ウディ・アレン完全ヴィジュアルガイド』はオールカラーで基本見開きで1作品が紹介される、まさにガイドブック。
(ちなみに『アニー・ホール』と『マンハッタン』は5ページ)

映画『カフェ・ソサエティ』公式サイト
http://movie-cafesociety.com/

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2017-04-23

"Are You Lonesome Tonight"『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件(A Brighter Summer Day)』エドワード・ヤン監督、チャン・チェン、リサ・ヤン、他

注・内容、台詞、ラストシーンに触れています。
牯嶺街少年殺人事件
(クーリンチェ少年殺人事件)
A Brighter Summer Day

監督 : エドワード・ヤン
出演 : チャン・チェン
リサ・ヤン、リン・ホンミン
ワン・チーザン、
チャン・ホンユー、他

物語・1960年代の台湾・台北。夜間高校に通うシャオスー : 小四(チャン・チェン)は、不良グループ・小公園のワンマオ : 小猫王 : リトルプレスリー(ワン・チーザン)たちといつもつるんでいた。ある日、シャオスーは小公園のリーダーのハニー(リン・ホンミン)と付き合っている少女・シャオミン : 小明(リサ・ヤン)と出会う。ハニーは、小公園と対立するグループ・217のボスとシャオミンをめぐって衝突し、相手を殺して姿を消していた。シャオスーはシャオミンにほのかな思いを抱いていたが…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Absd

Memo1
とにかくスマートである。
湿気をおびたり泥臭さが際立ったりもせず、一定のリズムは壊れることなく、途切れることなく最後まで描かれる。
黒澤明監督が『デルス・ウザーラ』撮影に入る際の「私の監督方針大要」に書かれていた
「カメラはカメラを意識させてはいけない(役者が止まればカメラも止まる)」(←正確ではありませんが大意はこんな感じ)を思いだした。
見ている間、カメラがケレン味ある動きを見せたり、演者が熱が入りすぎてオーバーアクト気味になることもなく、かといって冷徹な視線でもない(むしろ監督のまなざしの温かみすら感じる)
この4時間版はその監督のまなざしが全編に降り注いでいる気がする。
それはラスト、シャオスーが捕まり事情を聞かれる警察署でのシャオマーを写したシーンにいたるまで…
「彼だけが唯一の友だちだったのに」
撮影スタジオでシャオスーを見つけた映画監督
「オーディションを受けた、彼女、連絡がとれないんだ」
「彼女の自然な演技がよかった」
「自然?」
「監督なのに何も見ていない」
そこに残ったのは映画冒頭からずっとシャオスーの行先を(行く末を、未来を)照らし続けていた懐中電灯が。
自転車置き場
(この自転車置き場から角を曲がってお店などが並ぶ広場へ向かうところの動線が最初の方にもあり、素晴らしくよい。また、他にも父親とシャオスー、母親と娘などゆっくり道を歩く場面は繰り返し出てくる←これがまたよい)
シャオマーをまちぶせているところをシャオリンに見つかり立ち去ろうとするシャオスー。
声をかけ追いかけてくるシャオリン
言い合いになるふたり。
「私を変えたいのね?」
「あなたも他の人たちと一緒なのね」
「この社会と同じ。変わらないのよ」
そして…
今回、再見して発見したのだが、刺された直後シャオミンの左腕がシャオスーの首に(まるで)抱きつくように回っていて、その姿が一瞬抱擁しているかのようにさえ見えてしまった。
それゆえの最初の出会い、パーラーでのにこにこしながらお互いを見つめ合う姿などが浮かんできて、なんともいたたまれない気持ちでいっぱいになった。
バストショットからロングになったタイミングでバイクが横切っていく。
「起きてよ」「こんなことで死なないだろ」
続いて自転車が横切り、次第に周囲の人間が気がつき始める。
(このシーンの前に満月が写されていて、その時間帯の明るさも考えぬかれている。バックの屋台の並ぶ木と木の間にかすかに見える宵闇ブルーの美しいこと←これは今回のデジタルリマスター・バージョンで再発見)
隣に住む本省人に対しての台詞。
「8年間、日本と戦ってきて、今では日本家屋に住み日本の歌がとなりから聞こえてくる」
(この辺の本省人と外省人についての経緯は予備知識として知った上で見るのがベスト。今回は3時間版を見ていたので理解しているが最初に見たときは少しわかりにくかった)
印象的な2曲
・英語タイトルの元となったプレスリーによる"Are You Lonesome Tonight"(邦題 : 今夜は一人かい?)
映画では使われていないが、観終えてから聞くと途中に入る台詞部分が沁みる。
・フランキー・アヴァロン(Frankie Avalon)の1959年に全米1位 "Why"
これまたパーラーでのコンサートでキャラ立ち素晴らしきワンマオの台に乗って歌うハイトーンヴォイス。(またワンマオ、いい奴なんだなぁ)

Abrightersummerday_2

Memo2
初公開時と1998年リバイバル公開時のチラシ。
共に188分版。
上映館はそれぞれ今は閉館してしまったシネマ・ヴェリテ、シネマアルゴ梅田。
1998年リバイバル時のチラシ解説面には、わざわざ"ビデオ、LDリリース版は4時間バージョンでなされているため、3時間版はこの上映でしかご覧になれません"の記載も。
(188分版の再公開はできないものなのだろうか?)
3時間版と4時間版。
シャオスーをとりまく家族の描写、シャオミンからうける印象の違いが最も大きいと記憶。特にシャオミンについては今回再見して全く違った見方をしていたのかもと思われるほど。(いわゆるファム・ファタール性。その道しか選べなかったのか宿命的なものなのか…)
『牯嶺街少年殺人事件』ロケ地
(↑参考として個人サイトにつきリンク切れの場合あり)
http://www.gangm.net/taiwan/summerDay/index.html
映画評論家・川口敦子さんと川野正雄さんの対談形式によるシネマディスカッション。
(↑修復作業について、80年代台湾ニューウェーブについて、そして本編について。素晴らしい内容です)
Cinema discussion
http://lecerclerouge.jp/wp/category/cinema/cinemadisussion/
Criterioncollectionによる4Kレストアについて
ワークフロー動画 (修復後、小公園のパーラーから出て行くハニーの後ろ姿。左側に見える時計の文字盤が判別できる!また写さないことで際立つ医務室でのシャオミンとシャオスーの会話部分の壁!)
Restoration Spotlight: A BRIGHTER SUMMER DAY
https://www.youtube.com/watch?v=2AMSHs2adWk

『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』公式サイト
http://www.bitters.co.jp/abrightersummerday/


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2017-04-12

"こうして出逢ったのも、何かのご縁"『夜は短し歩けよ乙女』森見登美彦原作、湯浅政明監督、星野源、花澤香菜、他

注・内容、台詞、原作、ラストに触れています。
夜は短し歩けよ乙女

原作 : 森見登美彦
監督 : 湯浅政明
Voice Cast : 星野源
花澤香菜、神谷浩史
秋山竜次(ロバート)
中井和哉、甲斐田裕子
吉野裕行、新妻聖子
山路和弘、麦人、他

物語・クラブの後輩である“黒髪の乙女”に恋心を抱く“先輩”は、「なるべく彼女の目に留まる」略してナカメ作戦を実行する。春の先斗町に夏の古本市、秋の学園祭と彼女の姿を追い求めるが、季節はどんどん過ぎていくのに外堀を埋めるばかりで進展させられない。さらに彼は、仲間たちによる珍事件に巻き込まれ…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Yoru

Memo1
これが詭弁踊りだ!おともだちパンチだ!
赤玉パンチだ!李白三階建て電車だ!
偽電気ブランだ!プリンセス・ダルマだ!
韋駄天コタツだ!ジュンパイロだ!
(浅田飴もあるよ 笑)
もう、まさに湯浅政明監督ならではのミラクルアニメーション映画化。
93分超ハイテンション!
途中から湯浅ワールドが爆発してどうなることかと思っていたら見事な着地。
ご都合主義万歳!なむなむ!
(黒髪の乙女が探していた絵本『ラ・タ・タ・タム』も然るべき帰着点!!)
京都先斗町のバー。
還暦祝いにあつまっている人たち。
何やら神妙、しんみり。
樋口さんをしても盛り上がらず。
「もっと楽しませてほしいのぉ。わしら年寄りには時間がないんじゃ」
「時間がどんどん早くなる」
「お嬢さん、あなたの時計を見せて」
黒髪の乙女の時計をみる。
「おおっなんとゆっくりだ!」
「わしらのはこんなんじゃ」
カチカチカチカチ
「そんな、われわれにくらべたら」
さらに早くカチカチカチカチ(目盛りが干支)
「光陰矢のごとしです」
ここでの時間やりとり(後半、李白とも)があってーの、春夏秋冬が黒髪の乙女のひと晩に凝縮されていく時間逆転感覚の面白み。
(このあと詭弁踊りへと 笑)
原作における「第三章・御都合主義かく語りき」の学園祭パート。
おやおや?おやおやおやおやおや!?!?
パンツ総番長のお相手が…ち、違う?…(以下略)
と、思いきや、実に見事なミュージカルパートへ変貌を遂げ、続く冬の嵐吹きすさぶ風の中の風邪旋風"ぐにゃぐにゃワールド"へ突入していくブリッジ的役割も果たしている。
黒髪の乙女の声、花澤香菜さんピッタリではないですか!
(モノローグでもナレーションでも台詞でもない"口語体"ならぬ"森見体"を表現すると、こんな感じというイメージ通り)
そしていつぞやのTBSドラマで秒速1万語に近い早口で台詞を喋っていた星野源さんならではの先輩の声。パンツ総番長は実写化も可能なロバート秋山さん、そして(まさかのミュージカルパートがいきてくる)新妻聖子さん、『四畳半神話大系』で小津の声も演じた吉野裕行さんとVoice Castも鉄壁。
これは、もしや世に言う「デート」というものではありませんか?
ラストは原作と同じ、この台詞で幕を閉じる
(そして場所も同じ)
「こうして出逢ったのも、何かのご縁」
(パチパチパチパチ)

Memo2
来場者特典の「夜は短し歩けよ乙女 銀幕篇」作者もブログに書いているとおり"黒幕の悪辣な陰謀"←笑 で「先輩から乙女への手紙」「乙女から先輩への手紙」とそれぞれ期間を区切っての配布。うーむ…。
来場者特典(正々堂々と"その1"って記載されてる 笑) 銀幕編、本文7ページの可愛らしい小説の続き(こうなると"その2"が読みたくなって、まんまと製作委員会"ナカメの会"の「2回は見ろよ」の陰謀に…以下略)
『文藝・2011年夏号/特集・森見登美彦』
(6年前の河出書房新社の文芸誌『文藝』80ページにわたる大特集。『夜は短し歩けよ乙女』や『有頂天家族』についても、いろいろ語っていてオモチロイ)
「太陽の塔」などの小説のモデルになった明石氏(仮名)との対談。
明石 "突然森見君が押井守を知ってるかって言い出して(笑)「短編集のレーザーディスクとか一式持ってるから、今から俺の下宿に観に来るか」って"
森見 "それはね、高校の時には、誰とも押井守の話とかできなかったんですよ。〜"
明石 "たまたま『攻殻機動隊』が好きだっただけなんですけどね。後日森見君の家に泊まったら、押井守のレーザーディスクをかたっぱしから見せられた(笑)"

(P22より抜粋)
この時、まさか自身の原作『夜は短し歩けよ乙女』が『ゴースト・イン・ザ・シェル』と2017年4月7日・同日公開の日が来ようとは思ってもいなかったと思うのですが…
パンフレット。
星形・型抜きの傷み防止のためと思われる保護ペーパーが付いていた。
「THIS PAPER IS FOR SCRATCH PREVENTION,」
36ページ、インタビューや京都舞台案内、キャラクター設定・美術ボード、など。
そして、これは嬉しい!"パラレルで繋がる『夜は短し歩けよ乙女』と『四畳半神話大系』"と八つの用語解説ページ。

Yoruwa

Memo3
もうひとつの魅力、京都という舞台装置。
鴨川、先斗町、木屋町の南北3軸から始まっての"黒髪の乙女"夜間闊歩は下鴨神社へと続く糺の森を抜け、今出川通・京都大学を経て宝ヶ池へ北進、そしてまた出町柳へと帰りて再び(前述)京都大学北門前・進々堂へと着地。
(花灯路などの夜間ライトアップの時期に少し横道にそれてみると、それはそれは摩訶不思議なオモチロイ世界へと繋がっていくこともあるから、それはそれでまた楽し。そのあやしの雰囲気も本作は出ていて、さらに楽し。)
実写では『きょうのできごと a day on the planet』や『パッチギ!』『鴨川ホルモー』あたりは下鴨・鴨川デルタ付近が登場していて印象深い。
京都市メディア支援センターサイト> ロケ地をめぐる旅 > 作品から探す >
(京都で撮影された映画やドラマのロケ地。アニメーションについては記載なし)
http://kanko.city.kyoto.lg.jp/support/film/tourisms/past_film_list
エンドクレジットにずらりと出てくる本のタイトル。
(古書市のシーンで画面を埋め尽くす本、本、本)
パンフレットにエンドクレジットが記載されていて設定協力として全て判明(『夜は短し歩けよ乙女』もきっちり、こっそり入ってる 笑)
"夜は短し歩けよ乙女、食べたくなるよね阿闍梨餅"…と、歌を詠むように続く感じ。その阿闍梨餅サイト、現時点(2017年4月)では映画の場面が使われています。

『夜は短し歩けよ乙女』公式サイト
http://kurokaminootome.com/

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