2017-09-16

「それ、もらうよ」『散歩する侵略者(BEFORE WE VANISH)』黒沢清監督、長澤まさみ、松田龍平、長谷川博己、高杉真宙、恒松祐里、他

注・内容、台詞に触れています。
散歩する侵略者
BEFORE WE VANISH

監督 : 黒沢清
原作 : 前川知大

出演 :
長澤まさみ松田龍平、
長谷川博己、
高杉真宙、恒松祐里、
前田敦子、満島真之介
児嶋一哉、光石研
東出昌大、小泉今日子
笹野高史、他

物語・鳴海(長澤まさみ)の夫・真治(松田龍平)が、数日間行方をくらまし、別人のようになって帰ってくる。これまでの態度が一変した夫に疑念を抱く鳴海は、突然真治から「地球を侵略しに来た」と告白され戸惑う。一方、町ではある一家の惨殺事件が起こったのを機に、さまざまな現象が発生し、不穏な空気が漂い始める(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Vanish

Memo1
車から見える冥界スクリーンプロセス、斜めに交差する梁や柱、突然暗転する画面など、お馴染みの黒沢清監督たる刻印シーンもたっぷり。
本作見て、もしかして既に世界中、日本中の政治家の中に「概念」が奪われてる人、いるんじゃないの?などと、ふと思う。
(で、どのような「概念」?)
笑えないけど。
アヴァンタイトル部分は黒沢清監督らしい、ちょっとホラー的な要素も。
なんとも、つかみが派手。
前半戦にかけてはウルトラセブン風味。
(実際に原作者も「ウルトラセブン」については影響を受けていると語っている)
後半のグダグダ感は実際に有事が起これば、こんなもんだろうなぁーと思えるチグハグさをはらんだ人々の思考停止ぶり。それに呼応するかのような物語のグダグダ感トンデモ系。
(ありえないマシンガン使用とかパンデミックかもしれないという設定の割には病院の体制がゆるゆる)
"家族、自由、所有、自分、仕事…そして、愛"
「概念」を奪われていく登場人物が、それぞれ面白すぎて秀逸なアイロニカルコメディとも見られる。
デザイン会社のセクハラ社長(肩かけカーディガン 笑)、溜まってたのねー。
「仕事」という「概念」がなくなったら、途端にピーヒャララ状態に。
1番可笑しかったのが東出昌大が牧師姿で現れたとき。
なんといっても「寄生獣」の島田やTVドラマ「あなたのことはそれほど」のあの役から考えると、登場人物の誰よりも、宇宙人。
(だからなのか、牧師から何も「概念(説く愛)」を奪わず立ち去る真治…と、いうかイメージしてもらったのに中身は何もなくガランドウだったのかも?)
キャスト陣も素晴らしい。
中立的な立場を持っているようなイメージの宇宙人、天野を演じた高杉真宙、凶暴性をはらんだマシンガン女子高生・立花あきら役、恒松祐里の身体性の高さ、前田敦子の「家族」概念を奪われて反射的に崩れ落ちる姿、そして「嫌!」といった姉を拒絶する動き、表情。
台詞いろいろ。
・「これから侵略がはじまるというのに取材だなんて、のんきだなぁ
・真治が運転する車の中。
(もはや空を飛んでいるかのようなリアウィンドウの風景)
「侵略が始まったの?」
「いや、あれは夕陽だよ」
・終盤近く、駅の広場で。
「彼らは散歩する侵略者なのです」
演説するジャーナリスト、そして宇宙人ガイド役の桜井(長谷川博己)
「うーん、まあ、そうだよね。そういう反応だよね」
「満足した?」
そして宇宙人やUFOを攻撃するのではなく長谷川博己を爆撃するドローンプレデター 笑
これ、どう考えても可笑しい。
そして、また長谷川博己が嬉しそうに嬉々として飛び跳ねるのだ、これが 笑
『散歩する侵略者』のWOWOWスピンオフドラマ『予兆』は、まだ未見。
予告編や見聞きする話からすると、これもまた期待大。
やはり「夫婦の物語」である。
これ、もし宇宙人に乗っ取られていることがわからない、傍から見ればボンクラ夫を甲斐甲斐しく支える妻みたいに見えたりもする。
その妻、鳴海役の長澤まさみがものすごくよい。
「もぉ、しようがないなぁー」
プンスカしながらスタスタと歩く姿が立ち位置として際立っている。
愛"という「概念」を奪うことによって生まれる"愛"
「再生」して「リセット」することの意味を含めて「概念」という言葉の意味同様、いろいろな捉え方ができるラストだ。

Sampo16

Memo2
パンフレットは表紙含め全76P。
監督、出演者、原作者インタビュー。
プロダクションノート。
コラムは佐々木敦、樋口尚文、大森望3氏。
その時代時代の戦争のメタファーとして、無数の侵略SF映画が作られてきた~略~要するに戦争、映画、侵略SF、この三つは腐れ縁のようにつながって、20世紀のネガディヴな気配をかたちづくっているのだ。鳴海の絶望はまさにここからきている。
『散歩する侵略者』原作・文庫版・黒沢清監督による解説より。
監督インタビューで語られる俳優へのオーダーの話。
"長澤まさみさんには「杉村春子風に」松田龍平さんには侵略者だけど「そのままで」長谷川博己さんには「カート・ラッセル風に」"
…カート・ラッセルって… 笑
(シネフィルらしく、そういう話ばかりしていたとインタビューで知りました)

映画『散歩する侵略者』公式サイト
http://sanpo-movie.jp/




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2017-09-10

"a-ha"『パターソン(Patterson)』ジム・ジャームッシュ監督、アダム・ドライヴァー、ゴルシフテ・ファラハニ、永瀬正敏、ネリー(ブルドッグ) 、他

パターソン
Patterson

監督 : ジム・ジャームッシュ
出演 : アダム・ドライヴァー
ゴルシフテ・ファラハニ
永瀬正敏
ネリー(ブルドッグ)、他

物語・ニュージャージー州パターソンでバスの運転手をしているパターソン(アダム・ドライヴァー)は、朝、妻のローラ(ゴルシフテ・ファラハニ)にキスをすることから始まる、変化のない毎日を過ごしている。そんな日々の中でパターソンは、周囲の会話やマッチ箱といった何げない物事に着想を得た詩をノートに書き留めていた。(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Patterson1

バスの窓から見える風景は電車に乗って見える風景と違って見える。そんなことを、ふと思った。
Memo1
毎日同じことが繰り返されているように見えて、実は少しずつ違う。
その、ほんの些細なことかもしれない小さな変化を愛おしむように描くジャームッシュ監督の傑作!
パターソンに住むバスドライバーのパターソンを演じるアダム・ドライバー。
まさかポエトリー・リーディングの如き韻を踏むようなキャスティングだがインタビューを読むと全くの偶然とのこと。
第69回カンヌ映画祭パルム・ドッグ賞に輝くブルドッグ、マーヴィンにも(決まったルーティンのような)日常がある。
パターソンが毎朝、出かける際に直していく傾いた郵便ポスト。
(帰宅すると、また傾いている)
誰の仕業と思いきや、これもまた飼い主と同じく日課としていたマーヴィン 笑
詩のノートを破りちぎってしまって部屋に閉じ込められたことによって、そのルーティンが乱れる←思えば起点はカップケーキが売れたお祝いで居残りさせられたことから始まっている
そんな、細かーいパッと見わからないぐらいのヒトコマが随所に。
ローラの作ってくれるお弁当、玄関脇の花(コスモス?)の咲き具合
ローラはとてもマイペースのように見えて実は予見的にいろいろなことを察知できそう。
一番気にしていたのは「詩のノートのコピーを取っておいて」ということ(ふたつの願いの1つ。もうひとつはギター)。
パターソンの過去は描かれないがバーで恋人との別れ話から自暴自棄となったエヴェレットが拳銃を持った際の素早い動きと次のカットで映しだされる軍服姿の写真とでほのかになんとなく判るように描かれている。
繰り返されるシーン(写し方)
特徴的な手描きの詩。
重なるボイスオーバーと共に流れ落ちる瀧の水がオーバーラップで幾度となく写される。背景の音楽も同じ。
これが、また本作のリズムアクセントとなっていて美しい。
永瀬正敏演じる日本人詩人。
「アーハ(a ha)」と特徴的な台詞。
これまたアドリブや現場で書き足されたものかと思いきや、最初に脚本に書かれていたとのこと。しかも永瀬のために書かれた役!
お礼にと渡されたノート。

白紙のページに可能性が広がることもある

日本人詩人が立ち去ったあと、しばらくノートをくるくると回し見つめる。
ひとこと、つぶやくように「a-ha」
そして、すぐにペンを取り出して詩を書き始める。
カメラはゆっくりとパターソンに寄っていく。

Patterson2

パターソン出身のルー・コステロ。
そのアボット&コステロの映画ポスターが貼られている。

Memo2
Titles and Graphic Designer
RANDY BALSMEYER (BIG FILM DESIGN)
(コーエン兄弟作品タイトルデザインは、ほぼこの人)
パンフレット、宣材マッチなどのデザインは大島依提亜さん。
(カーテン除く)本文カラーページ含め42P。
表紙をめくるとローラがペインティングしていたカーテン柄(だけではないと思うけれど、どこのシーンの柄が使われていたかわからなかった)が。
そこをめくるとMONDAYから一週間のノンブルがうたれたカラーページ。
センター、テキストページ。最後にもう一度カラーページ(今度はマーヴィンとパターソン。そしてツインズが主に)
OHIO match companyによるブルーチップマッチ(映画本編に詩と共に登場するマッチ)←現在は作られていないので映画スタッフによって再現←そのマッチをさらに宣材として再現。

映画『パターソン』公式サイト
http://paterson-movie.com/

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タイトルデザイン_53 Greenhaus GFX『ワンダーウーマン(Wonder Woman)』パティ・ジェンキンス監督、ガル・ガドット、クリス・パイン、他

ワンダーウーマン
Wonder Woman

監督 : パティ・ジェンキンス
出演 : ガル・ガドット
クリス・パイン
ロビン・ライト
コニー・ニールセン
ダニー・ヒューストン
デヴィッド・シューリス
エレナ・アナヤ

物語・人間社会から孤立した女性のみの一族のプリンセスとして生まれたワンダーウーマン(ガル・ガドット)は、自分が育ってきた世界以外の環境を知らず、さらに男性を見たこともなかった。ある日、彼女は浜辺に不時着したパイロット、スティーブと遭遇。そして…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Ww

Memo1
「ツレ?」
「いや、ちゃうちゃう」
「お前の知り合い、ちゃうんか」(関西弁翻訳)
昨年の『BvS』で絶妙の間合いでバットマンとスーパーマンの間に飛び込んできて、すっかりかっさらっていってしまったワンダーウーマン。
それほど、あのドンドコドンテーマ曲とガル・ガドットの勇姿はインパクトは大きかった。
最前線に向かう際に集められる仲間が既に早くから指摘がある通り、いろいろ阻害迫害をうけてきた者たちということ。
そして(ここが最も本編で熱かった)塹壕からゆっくりと階段を上り敵陣へと突き進むダイアナ/ワンダーウーマンの姿。
その姿に呼応していく仲間たちというのも頷ける。
(BvSに出てきた"あの写真"はこの戦闘の後に撮られたものということも)
温泉に入っているところへダイアナ。
「あなたは標準的な男?」に続いて「それは?」に対して一瞬、下を見るスティーブ。つまりつつ「あ、あぁ、これは腕時計」と勘違いに気づいて言うシーン。
(おいおいシモネタかよー 笑)←って、あまり笑いがおきていなかったけれど…
カルチャーギャップシーン。
戦闘姿との落差として最もチャーミングだったのは駅に降り立ったダイアナがアイスクリームを食べて「デリシャス」とホントに美味しそうに言うシーン。
(この感じ、コミコン会見時にガル・ガドットが少し照れながらワンダーウーマンのポーズを決めた時の姿とだぶる)
アクションシーンになると突如クイックスローモーションが出てくる辺り、もしかしてスナイダーのおまじないによるもの?笑
もしくは「あ、ここ、俺に撮らせてーや」(←関西弁)ってジャック・スナイダーが言った?

Memo2
タイトルデザイン(Main-On-End)
Greenhaus GFX
http://greenhausgfx.com/portfolio_page/wonder-woman/
そのタイトルデザインについてのArt OF THE TITLE 記事
“Now there’s Wonder Woman, now Wonder Woman is born”
http://www.artofthetitle.com/title/wonder-woman/
原作者、マーストンについて描かれた映画
PROFESSOR MARSTON AND THE WONDER WOMAN
http://www.comingsoon.net/movie/professor-marston-the-wonder-women-2017#/slide/1

映画『ワンダーウーマン』オフィシャルサイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/wonderwoman/

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2017-08-24

"Music and ROAD"『ベイビー・ドライバー(Baby Driver)』エドガー・ライト監督、アンセル・エルゴート、リリー・ジェームズ、ケヴィン・スペイシー、他

ベイビー・ドライバー
Baby Driver

監督: エドガー・ライト
出演・ベイビー : アンセル・エルゴート
ドク: ケヴィン・スペイシー
デボラ: リリー・ジェームズ
ダーリン: エイザ・ゴンザレス
バディ: ジョン・ハム
バッツ: ジェイミー・フォックス

物語・幼い時の事故の後遺症によって耳鳴りに悩まされながら、完璧なプレイリストをセットしたiPodで音楽を聴くことで驚異のドライビングテクニックを発揮するベイビー(アンセル・エルゴート)。その腕を買われて犯罪組織の逃がし屋として活躍するが、デボラ(リリー・ジェームズ)という女性と恋に落ちる。それを機に裏社会の仕事から手を引こうと考えるが、ベイビーを手放したくない組織のボス(ケヴィン・スペイシー)は、デボラを脅しの材料にして強盗に協力するように迫る。(物語項、シネマトゥデイより抜群)

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Memo1
ブログタイトルは劇中、台詞にも出てきた"Music and ROAD"で。
例えは全く違うかもしれないけれど(曲も全く関係ないけれど)ニュー・オーダーのAge Of Consent、エンディングでの一回決め打ちギターリフのようなタイミングでポイント、ポイントのリズム、止めがパチッと合ってくる。
母からプレゼントされたのがiPod!
iPodのクリックホイールを回す音"クリクリクリッ"が懐かしくもあり、アクセントでもあり。
(これがiPhoneではちょいと違う←劇中、奪っていく車にセットアップされていたけれど、これは曲がオーケーだからクリックホイールなくても大丈夫)
「昔を思いだした」
ケビン・スペイシー演じるボス。
もはやこれまでとなったところでアジトから逃げ出す際にミニチュアカーを鞄につめていくところをみると、かつて相当の走り屋にしてカーマニアだということがわかる一瞬のシーン。
(それにしてもおいしい、いい役だ)
(こればっかり書いていますが、小林信彦先生の格言"映画は女優で"ということで)リリー・ジェームズが魅力的。
『シンデレラ』『高慢と偏見とゾンビ』やバーバリーの記念フィルムなど、ほとんどがコスチューム劇で、もしかして本作が初の現代劇?
それにしてもアンセル・エルゴートがめちゃくちゃ高長身なので背丈あわせが大変だったろうなぁ、と推測。
主演、アンセル・エルゴートの身体性の抜群さ。
カーチェイスばかりと思いきや、走って走って走りまくって逃げるシーンの速さ!軽やかさ!
椅子に座っているときは、ちょっとモサーッとした感じなのが動き出すとキビキビしていて素晴らしい!
ビックリしたポール・ウィリアムス起用は『トランザム7000』の白いスーツから、と監督インタビューで知る。
あー、それにしてもビックリした!
ウー「テキーラ!!」

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Memo2
オープニング6分間映像。
6-Minute Opening Clip
https://www.youtube.com/watch?v=6XMuUVw7TOM
あのダイナーや銀行、ラストシーンのロケ地はどこ?
http://www.atlasofwonders.com/2017/06/baby-driver-filming-locations.html
15年前に制作されたMV
(監督がインタビューで答えていたけれど、この当時からカーチェイスと音楽についてのアイデアがあったということ)
Mint Royale - Blue Song
Directed by Edgar Wright
https://www.youtube.com/watch?v=dfrcZsKcVxU
Graphics, Main & End Title DesignはMatt Curtis
イギリス絡み(ダニー・ボイル作品はほぼ全て)といえばマット・カーティス。
今年も既に『ファンタスティックビースト』『ミスペレグリン』など多数。
衣装デザイナー は『ヘイトフル・エイト』『はじまりへの旅』『パロアルト・ストーリー』などを手がけたCourtney Hoffman
http://courtneyhoffmandesigns.com/

『ベイビー・ドライバー』オフィシャルサイト
http://www.babydriver.jp/

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『2017 イタリア・ボローニャ国際絵本原画展』西宮市大谷記念美術館

夏の恒例(最近はほぼ初日)、写真がほぼ定点観測的になってきた『2017 イタリア・ボローニャ国際絵本原画展』へ炎天下のもと、西宮市大谷記念美術館に行ってきました。

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●入口入ってすぐの恒例・記念撮影コーナー

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Memo
欧州各国が多い(特にフランス、そしてポーランド)
逆に昨年、増えたなぁと思っていた中国が減っている(巡回展は2018年に6ヶ所で行われるそう)
今回、特に印象に残ったベネズエラのラモン・パリス(Ramon paris)さんのサイト。
墨とデジタル彩色で描かれた作品の印刷ではほぼ出ないであろう黒の美しさに惹かれた。
IMDbにショートアニメーション作品の記載もある。
http://www.ramon.paris/
図録のBook designは2015年より担当しているPIETRO CORRAINI & CORRAINISTUDIOが引き続き担当。
(と、いうかスゴク好みのデザインなのでしばらく続けて欲しい)
カタログ表紙イラストレーションはロートラウト・ズザンネ・ベルナー
9月24日まで。
主幹事の板橋区立美術館は終了。
愛知県高浜市、石川県七尾市に巡回。

西宮市大谷記念美術館
Home Pagehttp://otanimuseum.jp/home/index.html

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«タイトルデザイン_52 Perception『スパイダーマン : ホームカミング(SPIDER-MAN: HOMECOMING)』ジョン・ワッツ監督、トム・ホランド、ロバート・ダウニー・Jr、マイケル・キートン、他