2012-05-23

アレクサンダー・ペイン監督『ファミリー・ツリー』(The Descendants)

注・内容、台詞、ラストに触れています。
「サイドウェイ」以来7年ぶりとなるアレクサンダー・ペイン監督作品『ファミリー・ツリー』主演は本作で第84回アカデミー賞主演男優賞にノミネートされたジョージ・クルーニー。第84回アカデミー賞脚色賞、第69回ゴールデン・グローブ賞主演男優賞および作品賞(共にドラマ部門)受賞。

物語・ハワイ・オアフ島で生まれ育った弁護士のマット(ジョージ・クルーニー)は、妻と2人の娘たちと何不自由なく暮らしていた。カメハメハ大王の血を引く彼は祖先から受け継いだ広大な原野を所有しており、それを売却し巨額の富を得るか自然を守るかの決断に迫られていた。そんな中、妻がボートの事故でこん睡状態に陥ってしまう。さらに妻には恋人がいて離婚を考えていた事が発覚する。そればかりか娘が妻の浮気を知っていたと告白、マットは動揺する…(TurquoiseBlue部分、goo映画より抜粋)

The_descendants

Memo
味わい深い傑作。アレクサンダー・ペイン監督にハズレなしとの世評通り端正な台詞とシーンの織り成すタペストリー。
原題はThe Descendants(子孫)。日本語題のファミリー・ツリーは家系図の意。かけ離れてはいないが、やはり原題のDescendantsが自分たちのルーツである祖先と土地、そして子供たち、そのまわりの家族という部分にもマッチする。
(これを見られただけでも価値アリ→)ジョージ・クルーニーのドタバタ走りとモナコGPのローズヘアピンの如きカーブをドテドテと今にも倒れそうに回りこむ姿や垣根越しにニュッとのぞく眉毛眉毛眉毛(鼻より上だけど、どうみても眉毛だけ)。でも、そういったあたふたした姿の中に良き父親になろうとするマットの姿が垣間見えてホロリとさせられる。

監督が過去作は全く見ずにオーディションのみで起用したという長女アレックスを演じたシャイリーン・ウッドリー。最初、仕事ばかりだった父親への嫌悪感いっぱいの顔から途中、浮気相手探しの中で徐々に理解していき、ついには義父の言動に対してかばう表情まで実に表現豊かで今後が楽しみ。
そのスコッティの男友達シド、ヘラヘラして何だコイツと思わせておいての実は父親を亡くしていて、あー、こいつもホントは大変なんだよねとマットにハッとさせるシーンが用意されていたりと見事な脚本(物語る妙)
こんな台詞(ボイスオーヴァーで)
(記憶で書いているので少し違うかもしれませんが)
「家族とは島のようなものだ。全体で一つを形づくりもするが、個々の島は独立している」
ラスト。
ボートの上から遺灰を海に撒く3人。流されたリース(花輪)が仲良く引っ付いたまま漂っていく。シーン変わって自宅でソファに座lり脚を前に投げ出し列んでテレビを見ているマットと次女スコッティ。次女の毛布を自分の足にもかけるマット。続いて長女もマットの隣に座ってテレビを見る。ふたりの毛布を横に広げて自分の足にもかける。仲良く並んだこのラストシーン。滲み込むように心に残る。

The_descendants_b

「ファミリー・ツリー」オフィシャルサイト
http://www.foxmovies.jp/familytree/trailer.html

「ファミリー・ツリー」公式ブログ
http://familytreejp.tumblr.com/

| | トラックバック (26)

2012-05-21

ジェイソン・シーゲル&エイミー・アダムス&ウォルター&カーミット&ミス・ピギー&More…『ザ・マペッツ』(The Muppets)

ジム・ヘンソンが生み出し「セサミストリート」「マペット放送局」「マペット・ショー」年代を超えて愛され続けているマペットたちの(ありえないのですが、ありえないこともないと思えてしまう)楽しい映画『ザ・マペッツ』主演は製作総指揮・脚本も兼ねたジェイソン・シーゲルエイミー・アダムス、そしてもちろんマペットたち。監督はジェームズ・ボビン。第84回アカデミー賞主題歌賞受賞作。

物語・マペットのウォルターと兄弟のゲイリー(ジェイソン・シーゲル)、そしてその恋人メアリー(エイミー・アダムス)らは3人でロサンゼルス旅行へ。ウォルターの目的は大好きなTV「マペットショー」のマペットスタジオを訪ねること。ところが、そのスタジオが買収の危機に。ウォルターはカーミットらマペットたちと買戻しに必要な費用のためにショーを行おうと計画する。そして…

Muppets

Memo1
エッ!ジェイソン・シーゲル、意外と若い…と、ビックリ。本作全体をいいトーンに包み込んだのは脚本にも関わった彼のおかげかも(あくまでも主役はマペットたちというスタンス)。そしてエイミー・アダムスとの組み合わせもいいなぁー。
(カメオ出演中のカメオ出演)ジャック・ブラックがジャック・ブラックで登場したとき「おぉぉ」と思ったと同時にマペット達が霞まないかと思ったら後半、ずっと椅子に縛られたままで笑った(と、いうか、この辺りにも製作陣のマペット愛を感じる)
あと、これだけでもお得なクリス・クーパーが子どもが泣き出さない程度の程よい悪役で登場w(しかも、唄う!→"Let's Talk About Me")
いやー、いっぱい出てるなー(カメオ出演にオドロキ)
ザック・ガリフィナーキスウィリー・ネルソンアランアーキン、そしてミッキールーニー
他にもTV局の重役を演じたラシダ・ジョーンズエミリー・ブラントジョン・クラシンスキーが(役は別々だが夫婦)仲良く出ていたり。(調べると)ビリー・クリスタルの(本人名)カメオシーンやダニートレホの囚人シーンがカットされていて残念。
そして楽曲
お馴染みの"Life's a Happy Song”が頭の中をループして巡る楽しさ!
本作のキーポイントと思う曲が"Man or Muppet" 鏡に写るゲイリー、ウォルターがそれぞれにマペットと人間として浮かび上がる中、歌われる楽曲。
そしてショーを行うため寂れてしまっていた劇場を掃除するシーンにはスターシップの「シスコはロック・シティ"We Built This City"」 や募金集めのマペットショーでニワトリたちの唄う"Forget You"と懐かしい曲も。

Memo2
Main & End TitlesはPIC AGENCY
ゲイリーとウォルターの成長を描くオープニングシークエンスが秀逸。(身長を記録する柱のしるし。伸びないウォルター。どんどん大人になっていくゲイリー。テレビで「マペッツショー」を発見して喜ぶウォルターなど)
http://www.picagency.com/
TOP→THE MUPPETS→PLAY MAIN TITLEで動画としてタイトルシークエンス全編見られます。
(鑑賞後のマペット愛増幅にどうぞ・QuickTimeによる再生)
テレ朝で放送された『マペット・ショー』でのカーミットの吹替が山田康雄さん。1981年の放送なので是非パッケージ化を希望( ´ ▽ ` )

映画「ザ・マペッツ」公式サイト
http://www.disney.co.jp/movies/muppets/

| | トラックバック (1)

2012-05-03

アキ・カウリスマキ監督『ル・アーヴルの靴みがき』(Le Havre)

注・内容、台詞に触れています。
「ラヴィ・ド・ボエーム」から20年ぶりのフランス語作品、そして「街のあかり」以来5年ぶりとなるアキ・カウリスマキ監督の新作『ル・アーヴルの靴みがき
出演は(お馴染みの)アンドレ・ウィルムスカティ・オウティネンジャン=ピエール・ダルッサンブロンダン・ミゲルライカ、そして唯一の"悪いひと"密告者(通報者)として(あの「大人は判ってくれない)ジャン=ピエール・レオが!(←「ラヴィ・ド・ボエーム」にも出ていましたが)

物語・かつてパリでボヘミアン生活を送っていたマルセル・マックス。今はノルマンディーの港町ル・アーヴルで靴みがきを生業に、最愛の妻アルレッティと愛犬ライカと共に暮らしている。ある日、港に漂着したコンテナに乗ったアフリカからの不法移民たちが警察に検挙されるが、ただ1人逃げ出したコンゴの少年イドリッサと偶然出会ったマルセルは少年を匿う。が、同じ頃、アルレッティが病に倒れ病院へ。そして…(Skyblue部分、goo映画より抜粋)

Le_havre

Memo1
おなじみのカウリスマキ節に頬が緩む(前作から5年。カウリスマキ成分がかなり不足していた〜)。さらに今作はなんとも素晴しいエンディングまでもってきている超絶ストーリーと語り口+「社会問題」(監督メッセージが発表されていてパンフレットにも掲載)
目の前でテロリストと思しき人物に何かが起こっても「お代はいただいてる」と関せずだったマルセルが(ふと思ったことだと思うが)イドリッサを目的地のロンドンに送ってやれないものかと奔走する(リトル・ボブ復活コンサートまでも)、いつものカウリスマキ作品にはなかった展開。(前述「社会問題」含め)
(理由としては)ひとつはイドリッサの育ちの良さ、品性のよさ(お金を返しにきた、その話し方、お皿の洗い方、ソファのベッドメイクの仕方)もあるだろうし、堤防に座って海を見ている後ろ姿を見つめてる時だったのかもしれない。(途中、難民についてのニュース映像というカウリスマキ作品に無かったシーンも挿入されている)
2008年の個人的ベストワン「画家と庭師とカンパーニュ」で庭師を演じていたジャン=ピエール・ダルッサンが出てて、これがもうめちゃめちゃいいー!(ルネ警視・役)。(聞き込み中、八百屋で買った)パイナップルを持ってカフェに現れる姿にぷっと吹いてしまった(この姿で既にいいひと←その前のコンテナを開けるシーンでも態度に現れていました)

いろいろな台詞
医師とアルレッティの会話
(不治の病と告げられて)
「奇跡が起こるしかない」
「最近、近所では起こってないわ」

靴みがきという職業についてのマルセルのひと言。
「靴みがきと羊飼いは人々のものだ」

ラスト1
(ルネ警視の助けもあり)無事イドリッサ少年をロンドンへ向かう船に乗せて、マルセルとルネ警視の会話
「私はあなたを誤解していたようだ。お詫びのしるしに一杯」
「カルヴァドスなら」
ラスト2
病院へ黄色い花を持って向かうマルセル
だが病室にはアルレッティの姿はなく、包装された洋服の包がベッドの上にぽんと置かれていた。急いで医師のもとへ。
もったいぶった言い回しで、残念だと言ってるような口ぶり←見ているこちらも一瞬「エッ」と思った、が…
そこには頼まれて持っていった(リトル・ボブ復活コンサートでその日に行けないマルセルに代わってイドリッサ少年が届けた。アルレッティと初対面の少年。この時の台詞「子供みたいな人ですから早くよくなってあげてください」)黄色い(花の柄のついた)を着たアルレッティが立っていた。
「治ったの」「奇跡が起こったのよ」
「帰りましょう」

帰宅した"ふたり"を満開の桜の花が。

Memo2
パンフレットデザインは大島依提亜さん。イドリッサ少年の着ているセーターの柄が表紙(カワイイ)。1ページめくると現れるのは奇跡の象徴的黄色い花が目に飛び込んでくる。そしてセンター、パイナップルとリトル・ボブコンサート告知に挟まれて映画シーンが高精細印刷によるカラー16ページ。総ページ数表紙含め44ページ。映画と共に完結。オススメ!

Memo3 (賞、その他)
2011年カンヌ国際映画祭では国際批評家協会賞、エキュメニック賞スペシャル・メンション、2011年シカゴ国際映画祭グランプリ、2011年ルイ・デリック賞作品賞(そして→)+愛犬ライカの名演にパルム・ドッグ審査員特別賞(パルムドッグ賞は「アーティスト」のアギーに)
カウリスマキ監督が選んだクライテリオン・コレクションTop10
Aki Kaurismäki’s Top 10 - Explore - The Criterion Collection
http://www.criterion.com/explore/163-aki-kaurismaki-s-top-10
映画「小津と語る」(1993年公開)でカウリスマキ監督出演シーンで→「76年、兄に強引にロンドンで見せられたのが「東京物語」でした。その時から私は文学への憧れを捨てて"赤いヤカン"を探すことにしました。」「ル・アーヴルの靴みがき」の中にも幾つも赤い品々が出てました。

映画『ル・アーヴルの靴みがき』公式サイト
http://www.lehavre-film.com/

| | トラックバック (10)

ジャド・アパトー製作、ポール・フェイグ監督『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』(BRIDESMAIDS)

注・内容に触れています。
ジャド・アパトー製作『ブライズメイズ  史上最悪のウェディングプラン』主演・脚本(アカデミー賞脚本賞ノミネート)を務めたのは「サタデー・ナイト・ライブ」でブレイクしたコメディエンヌ、クリステン・ウィグ。監督はポール・フェイグ。出演はマヤ・ルドルフローズ・バーン エリー・ケンパーウェンディ・マクドレン=コーヴィメリッサ・マッカーシー(←アカデミー賞助演女優賞にノミネート、授賞式でも歓声が起きてた) 、クリス・オダウドマット・ルーカス(「アリス・イン・ワンダーランド」の双子)、ジル・クレイバーグジョン・ハム

物語・経営していたケーキ店は潰れ、男には弄ばれ、何もかも崖っぷちなアニー。そんな彼女の親友・リリアンが結婚することとなり、アニーはブライズメイドのまとめ役・メイド・オブ・オナーを任される。他の4人のブライズメイドは皆初対面だ。中でも新郎の上司の妻・ヘレンは美人でリッチ、何をやってもソツがない。ヘレンへのライバル心もあり、アニーは張り切るが失敗ばかり。リリアンとも大げんかし、まとめ役を降ろされてしまう…。(DarkPurple部分、goo映画より抜粋)

Brides_m1

Memo
ブライズメイズ >>> 結婚式での花嫁介添人のこと(全員が知り合いでない場合が多い)。式までの様々なパーティー(ブライダルシャワー、バチェラレット・パーティー)の企画や準備も任される。まとめ役であるメイド・オブ・オナーは名誉であると共に、責任も重大。ちなみに白以外のお揃いのドレスを着ることになっている→ドレスは新婦が用意してプレゼント→なので「あの"道路で◯◯◯しちゃった"事件」を起こす高級ブライダルショップでのドレス代は(ヘレンが払うような感じだが実は違うということ←ラストでリリアンの父親が「破産するかと思った」と言っている)は新婦持ち?
(日本ではあまり馴染みがないブライズメイド)ちょっと試しにgoogle画像検索で「BRIDESMAIDS」と入力。すると1億枚近い写真が!(約 97,700,000 件)…リアルブライズメイズ…(汗
それにしてもヘレンが企画した超派手な結婚式。花火、レーザー光線、水上ステージ、本物のウィルソン・フィリップスの出演…(これは、さぞ新婦両親困っただろうなぁ…と←前述台詞)

字幕監修が町山智浩さん。特に女性によるリアル下ネタが多い本作ですが、(さすが)どっかんどっかんとウケてました。※例えば「Oh, it’s happening...it happened.」→「私、道路で◯◯◯〜」に
それと→(昼間の回に女性客が多いアパトー作品はじめて見た)
アニーとヘレンのバトル(最初のブライズメイド顔合わせの時のマイクの奪い合いからリリアンの「きっと仲良くなると思う」と言われてのテニス、というかボールぶつけ合い合戦など)とアニーが知り合ったローズ巡査とのエピソードが大軸として構成されている。
この作品の素晴らしさは(見た人誰もが言ってるように)単なるギャグと下ネタのオンパレードではなくきっちりと女子の本音や友情、ヒール役で終わってしまいそうな役にも"しようがないなぁ"的着地点まで用意する脚本と演技陣の上手さにあると思います。(アカデミー賞脚本賞ノミネートも納得!)
先人ティナ・フェイに続くクリステン・ウィグ、マヤ・ルドルフ、メリッサ・マッカーシーら女性コメディアン達が素晴しい!
メリッサ・マッカーシーのテンション見たときに「オイオイオイ、ジョン・ベルーシかよ」と思わずツッコミをいれたくなった怪演(ブライダルショップ、飛行機の中、多数の犬を乗せて走り去るパーティー後の車、そしてエンドクレジットw)に拍手。で、実に本質的なことを言ってアニーを励ます"いい奴"
クリステン・ウィグが「ヒックとドラゴン」の声って、どの役?ということで調べてみたらタフとラフ兄妹のラフの声でした。
ジル・クレイバーグが母親役。(これは、この作品からの意図的キャスティング?)→「結婚しない女」!と、あの傑作「大陸横断超特急」に出演。これを書いていて知り驚きましたが2010年白血病で死去。本作が遺作となりました。

今年のMTVムービー・アワード2012に8部門でノミネート(発表は6月3日の予定)

秀逸なポスターとコピー

Brides_m2

映画「ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン」
オフィシャルサイト

http://bridesmaidsmovie.jp/


| | トラックバック (7)

2012-04-27

アスガー・ファハルディ監督『別離』(Nader and Simin, A Separation)

注・内容(あるシークエンスは詳細)に触れています。
第84回アカデミー賞外国語映画賞、第61回ベルリン国際映画祭金熊賞など世界中の映画祭で賞を獲得した『別離』。監督は前作『彼女が消えた浜辺』が一昨年公開されたアスガー・ファハルディ監督。出演はペイマン・モアディレイラ・ハタミペイマン・モアディシャハブ・ホセイニサレー・バヤトサリナ・ファルハディ、他

物語・シミンとナデルはテヘランに住む夫婦。娘のテルメーとナデルの父と4人で暮らしている。シミンは娘の将来を考え、家族揃っての国外移住を考えていたが、夫ナデルの父がアルツハイマーに罹ってしまい、夫は介護の必要な父を残しては行けないと主張してきかない。娘のためには離婚も辞さないと言うシミンは、実家に戻ってしまう。ナデルは家の掃除と父の介護のために、敬虔なイスラム教信者のラジエーという女性を雇う。

Betsuri1

Memo
原題は「ナデルとシミンの別れ」
冒頭、裁判所のシーン。ナデルとシミンがカメラに(裁判官・調停員)に向かって、それぞれの言い分を語る。(かなりの状況説明だったのでもう少し長いと思ったが実際、タイトル「別離」と出るまでで5分)

そして30分経過したところで問題のシーン(ナデルの父親が外に出てしまい車が往来する中を歩いている)←この部分が観客にミスリードを呼び同時に最後まで物語を引っ張っていく核となる。
ゴミを「出して」と娘に言うラジエー。酸素マスクをいじる娘。困るナデルの父親(苦しんでいるようにも見える)。ゴミ袋を引きずりながら階段を降りて破いてしまい汚す。服を汚して怒るラジエー。「お爺ちゃんがいない」のひと言に慌てて階段を降りる。通りの向かい側の新聞売り場にいるのを発見。ひっきりなしに通る車。道路を渡ろうとする。それを見てラジエーが…(クラクション)→そこでパッと場面が変わってサッカーゲームに興じるナデルとテルメー、父親、ラジエーの娘。あー、無事だったんだと思わせながら実は!(ここが脚本としてのポイント)。続くシーンは具合が悪い様子でバスの中で倒れそうになるシーン。(この後に問題の父親が倒れていたり、階段へ押し出すシーンなどが続く←約15分)。この問題のシーンから階段までの一連のシークエンス。いったい何が起こっているのか何が起こるのかわからないままスクリーンに釘付けになった。あるポイントを見せない(隠す)ことで構築されるドラマ。

ほんとに上手い役者が多くて驚いた、前作「彼女が消えた浜辺」に出演していた俳優が多数。メイキング映像を見ると入念なリハーサル含め緻密な演技への指示を出しているのがわかる。(あ、それと最初のコピー機の撮影やガラスの割れるシーンのアナログ的手法、いい!)
撮影はマームード・カラリ(キアロスタミ監督作品他イラン映画界を代表する撮影監督)。ナデルが父親を涙ぐみながら浴槽で洗うシーンでカメラをのぞき込みながら涙するシーンがあった(それぐらい悲痛さに溢れた場面だった)
編集(これまたスゴイ)は前作に続きハイェデェ・サフィヤリ(他に「ペルシャ猫を誰も知らない」など)

娘テルメー役を演じたサリナ・ファルハディは監督の実娘(これまた実に上手い)。このテルメーの視点(視線)がもうひとつのキーポイントになる。ドアの隙間越しに見えるテルメーの姿(逆にテルメーの視線)それらが実に巧妙に映しだされている(2回目を見たときに、その伏線のはり方の妙に驚愕した)

Betsuri2

映画『別離』公式サイト
http://www.betsuri.com/

| | トラックバック (14)

«トーマス・アルフレッドソン監督【裏切りのサーカス】Tinker Tailor Soldier Spy