2018-06-11

いろいろアーカイヴ_1・1974年のシネラマ・OS劇場などの半券。

不定期公開。
"映画にまつわるいろいろアーカイヴ"
1974年、2枚のシネラマ・OS劇場半券。
(鉛筆で「パピョン」「栄光のル・マン」)
下段、左は梅田地下劇場・右は梅田劇場の招待券。
どちらも現在のナビオ阪急にあった映画館。
(何を鑑賞したかは記載なしですが、時期的なことと記憶から推察するとそれぞれ「エマニエル夫人」と「伊豆の踊子」←山口百恵・三浦友和主演)

1974

当時のOS劇場は全席指定。
事前予約の場合は座席が印刷されているチケットに入場日時を検印する方法。(コンピューターチケッティングなど夢のまた夢。窓口の方が座席表を手作業で塗りつぶすアナログ手法)
右側手描き分は当日売り。

Daimai_t

こちらは(超という呼び名が相応しい)名画座、大毎地下劇場
一番上の招待券。
裏側に周りにあった飲食店などの案内が掲載されていて「鶴のす」「インディアンカレー」などが。
(閉館後、ビル建て替え時にテナントとして残っていた「鶴のす」が昨年、閉店してしまったのは悲しい)

| | トラックバック (0)

2018-06-01

無一物(むいちもつ)『モリのいる場所』沖田修一監督、山崎努、樹木希林、他

注・内容に触れています。
モリのいる場所

監督 : 沖田修一
出演 : 山崎努
樹木希林
池谷のぶえ
加瀬亮、吉村界人
光石研、青木崇高
吹越満、きたろう
林与一、三上博史

物語・画家の守一(山崎努)は草木が生え、いろいろな種類の生きものが住み着く自宅の庭を眺めることを30年以上日課にしていた。妻と暮らす守一の家には、守一の写真を撮る若い写真家の藤田、看板を描いてもらおうとする温泉旅館の主人、隣人の夫婦など来客がひっきりなしだった。(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Mori1

Memo
冒頭から驚いた。
「これは何歳の小学生が書いた絵ですか?」
昭和天皇(林与一)の台詞で幕を開ける。
続く長野で旅館をやっている朝比奈(光石研)が看板を書いてほしいと訪ねてくれるシーン。
「長野!?それは大変だったでしょう。さっそく準備しましょう」
「よかったねぇー、あんた」
「先生はめったに書いてくれないから」
(現に表札が何度も盗まれている)
「新幹線のこと知らないから、ここへ来るの、ものすごく時間がかかったと思われてる」
出された大きな檜。
見守るギャラリー(誰?という人も 笑)
そして書かれた文字。
(旅館名ではなく熊谷守一の好きな言葉)
無一物
鑑賞後用に録画しておいた展覧会のナビ番組『生きるよろこび 画家 熊谷守一の軌跡』と『美の巨人たち/宵月』をチェック。
1972年のドキュメンタリー映像で庭を歩く姿や夫婦で囲碁をうつシーンが部分使用されていた。
蟻の一歩についても。
(紹介作品は1958年「豆に蟻」)
蟻は左足の前から二番目の足から歩き始める
そして、もうひとりの出演者とも言える家、昭和7年築!
インタビュー記事などを読むと全体が見渡せる画面は写さず、庭自体の広さが判別できるのはラスト、写真家・藤田が隣に建てられたマンションの屋上にあがって写真を撮る件(くだり)
こんなに狭かったんだ…。
藤田もアシスタントも、そして本作を観てきた観客もここで驚かさせられる。
その「美の巨人たち」の中で山崎努さんへのインタビュー。
「一貫してマイペースを貫いた人ですよね。彼は見る人でね。見るということはインプットすることで、見た経験が自分の中で発酵してそれが作品としてアウトプットするわけですよね。だけども守一さんの場合は絵を描くためになにかを観察したり勉強するわけじゃないんでね。そういう生き方って贅沢だと思いません?
「好きに作品は『宵月』です」
「あの青は僕にとってはね深くてね。よく見るとあの節のところにジャイアンツのGって書いてあるんですよ。ユーモアあるんですよ」
(本当に熊谷守一さんが好きなんだなぁ、ということが伝わるインタビュー)
じーっと石を見て動かない熊谷。
(まさに本人も石と同化?いや、その前に庭と一体化しているか)
あ、動いた
蟻の隊列について、どうやって撮影したのかについて「モリカズさんと私」に書かれていました。意外とシンプルな方法。(ちなみに黒澤明監督『八月の狂詩曲』でリチャード・ギアと子どもが蟻の行列を見るシーンがあるが、そちらはフェロモンを発生させる装置を使ったりと超大掛かりなシステムで撮られたとのこと。)
設定が1974年。
ドリフターズに志村けんが加入した件の話があっての、たらい落としネタやいつの間にか加わっていた知らない男(三上博史)が実は宇宙人?など一見、リアリスティックに寄りがちなドラマを見事にハネさせていて、この空気感を醸しだす沖田修一監督作品は好みだわぁー。
で、おなじみの食べものネタ。
伊勢海老『南極料理人』海苔『キツツキと雨』とんがりコーン『滝を見にいく』ピザ『モヒカン故郷に帰る』と続いて、本作は牛肉。(姪がついつい買ってきた大量の牛肉。続くシーンが想像どおりで笑ってしまった)

今年(2018年)東京で開催され現在、愛媛県美術館で開催中の『没後40年 熊谷守一 生きるよろこび』展。(6月17日まで)
音声ガイドが山崎努さんと樹木希林さん!
http://kumagai2017.exhn.jp/

Mori2

映画『モリのいる場所』公式サイト
http://mori-movie.com/

| | トラックバック (0)

2018-05-31

タイトルデザインやロケ地のこと_1『レディプレイヤー1(Ready Player One)』『ボストン ストロング ~ダメな僕だから英雄になれた~(Stronger)』『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル(I, Tonya)』『ホース・ソルジャー(12 Strong)』『アンロック/陰謀のコード(Unlocked)』『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法(The Florida Project)』

最近のタイトルデザインやロケ地をまとめて。

レディ・プレイヤー1
Ready Player One
スティーヴン・スピルバーグ監督
Main and End Titles
SCARLET LETTERS
あのロケ地はどこ?
Where was Ready Player One filmed?
https://www.atlasofwonders.com/2018/03/ready-player-one-filming-locations.html

Rpo

ボストン ストロング ~ダメな僕だから英雄になれた~
Stronger
デヴィッド・ゴードン・グリーン監督
MAIN TITLE DESIGN & END CRAWL
Plucky

アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル
I, Tonya
クレイグ・ギレスピー監督
Main and End Titles
BIG FILM DESIGN

ホース・ソルジャー
12 Strong
ニコライ・フルシー監督
Titles BY SCARLET LETTERS
Opening Prolog Design BY THOMAS COBB

アンロック/陰謀のコード
Unlocked
マイケル・アプテッド監督
Title Design & Animation
MATTHIAS BRAUNER

Fp

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法
The Florida Project
ショーン・ベイカー監督
今回は『タンジェリン』のようにiPhoneだけでの撮影ではなく35mmフォーマットも使用されている。
それゆえのラストの美しさ。
ふいにおとずれる魔法。
監督インタビューで印象に残った言葉。
「映画はセルロイドとともに生まれたということを、決して忘れてはいけないと思います。そういう意味では、クリストファー・ノーランとまったく同じ意見です。」
ロケに使われたモーテル
Movie Maps
https://moviemaps.org/movies/3hn

| | トラックバック (0)

2018-04-06

『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書(THE POST)』スティーヴン・スピルバーグ監督、メリル・ストリープ、トム・ハンクス

ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書
THE POST

監督 : スティーヴン・スピルバーグ
出演 : メリル・ストリープ
トム・ハンクス
サラ・ポールソン
ボブ・オデンカーク
ブラッドリー・ウィットフォード
トレーシー・レッツ
マイケル・スタールバーグ
ブルース・グリーンウッド
サーシャ・スピルバーグ、他

物語・ベトナム戦争の最中だった1971年、アメリカでは反戦運動が盛り上がりを見せていた。そんな中、「The New York Times」が政府の極秘文書“ペンタゴン・ペーパーズ”の存在を暴く。ライバル紙である「The Washington Post」のキャサリン(メリル・ストリープ)と部下のベン(トム・ハンクス)らも、報道の自由を求めて立ち上がり…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Post

Memo1
トランプ米大統領から「ハリウッドで最も過大評価された女優」と名指し攻撃されたメリル・ストリープがワシントン・ポストの社主役(なんと痛烈で痛快な素晴らしいキャスティング!←トランプ氏『ワシントン・ポスト』嫌ってますからねー。最近もamazon批判で間接的に攻撃してたし)。
1971年の物語ながら、まさしく「今そこにある報道の自由の危機」を描いた現代の話となっている。
ヤヌス・カミンスキーによる35mmフィルム撮影。
スキップブリーチではないと思われるが彩度・カラーパレット含め、そこから感じ取れる70年代映画質感。
(後述リンク先にレンズの事などについて書かれたものあり)
アン・ロスによる衣装。
ジョン・ウィリアムズのスコアも控えめながら渋い旋律。
『ニューズウィーク日本版』2018年4月3日号に「ベトナム戦争の嘘を暴いた男」ペンタゴン・ペーパーズをリークしたダニエル・エルズバーグについての記事が掲載されていました。
おぉっ!ここが映画の冒頭で政府側の嘘、欺瞞を知ってしまった が機密文書を持ち出し複写機(デカイ!)をかけてコピーをとる、あのシーンとつながるのか!と膝をうつ内容。
そしてスピルバーグ監督の時間省略など映画的手際よさにも気づく。
(実際は文書持ち出しまでに数年のタイムラグがある)
メリル・ストリープ演じるキャサリン。
夫の死によって突如「ワシントン・ポスト」社主となり完全に男社会丸出しだった世界へ入ってきてやっている感がものすごくよく表れていた(そして経営者でもあり数字も追わなければいけない。そんなこと自分にやれるかしらとオドオドした様子も)。
・会議の時に重たい資料を全部手持ちでテーブルの上に置いた際「そんなものはスタッフが用意するものだ。何も知らないで」的な馬鹿にしたような視線をおくられる。
・ベンがキャサリン宅に訪ねてきた際、就寝時の服で歩きまわり子どもが走り回っている緊張感の無さにやや言葉を失う。
・その後、近しい友人であったマクナマラのついていた嘘(自分へと国民へとの二重の嘘)と報道の公正さの間に立ち、社主としての
・そして、ニクソン側の圧力に対して輪転機が回る締切りぎりぎりの深夜の決断。
ベンや経営陣、弁護士の輪の中。
「出します」
続く台詞が洒落ている。
「寝るわ」
ベン・ブラッドリーの娘が売ってるレモネードに対して「いくらで売ってるんだ?」「25セント」「倍の値段に。インフレだよ」とひとこと。
(次のシーンでダンボールに書かれた値段が50セントに 笑)
これだけで当時のインフレ状態をあらわす茶目っ気たっぷりの上手さ(ちなみにニクソンショックは文書公表記事のあと)
そう言えばトム・ハンクスって『フォレスト・ガンプ』でウォーターゲート事件、目撃してたし…(このシーン、本作のラストカットとそっくりだったような…)

Memo2
ニューズウィーク日本版ウェブの記事
映画で描かれない「ブラッドレー起用」秘話
ワシントン・ポスト社主キャサリン・グラハム自伝・第2章より抜粋。
その3回目
https://www.newsweekjapan.jp/stories/culture/2018/03/post-9860.php
Main and End Title
SCARLET LETTERS
IMDbでアスペクト比を見ると1.85 : 1 (アメリカンビスタ)になっていたので何か理由があるのかと思っていたら、Kodakのニュースレターにこの記事が。
「ヤヌス・カミンスキー(ASC)がスティーヴン・スピルバーグ監督の『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』をコダック35mmフィルムで撮影
https://www.kodakjapan.com/motionjp-mag102
実際のアメリカ国立公文書記録管理局によるペンタゴン・ペーパーズ(全文/英語サイト/ファイルはいくつかのPDFに分割されています)
https://www.archives.gov/research/pentagon-papers

Memo3
2018年「春のスピルバーグまつり
本作と『レディ・プレイヤー1』と続けて見られる幸福感。
デビュー時から現在までリアルタイムで公開時に作品を見続けられている監督って誰だろう?と考えたときにすぐに思い浮かんだのはスピルバーグ監督。
(ヒッチコック監督は遺作となった『ファミリープロット』だったし、ビリー・ワイルダー監督は『フロントページ』からだったし、コッポラ監督は『ゴッドファーザーPART2』からだったしウディ・アレン監督は『アニー・ホール』からだったしと…以下略)
また、見た作品と劇場(映画館)の名前がセットになって覚えているのも思えば個人的映画記憶となっています。
特に1970年代。
『激突』梅田コマゴールド(←こちらはテレビ放送後、劇場公開パターン)『続・激突 カージャック』阪急プラザ劇場『ジョーズ JAWS』梅田東映パラス『未知との遭遇』OS劇場…
ずっと見続けている映画監督が今もなお最新作を撮り、しかも傑作を生み続けているのはとても嬉しい!

映画『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』公式サイト
http://pentagonpapers-movie.jp/


| | トラックバック (7)

2018-04-05

Netflix『アナイアレイション 全滅領域(Annihilation)』アレックス・ガーランド監督、ナタリー・ポートマン、オスカー・アイザック、ジェニファー・ジェイソン・リー、他

注・内容、ラストに触れています。
アナイアレイション -全滅領域-
Annihilation

原作 : ジェフ・ヴァンダミア
監督 : アレックス・ガーランド
出演 : ナタリー・ポートマン
オスカー・アイザック
ジェニファー・ジェイソン・リー
ジーナ・ロドリゲス
ソノヤ・ミズノ、他

物語・秘密任務から生還した夫ケイン(オスカーアイザック)が危篤状態に。最愛の人を救うべく、生物学者のレナ(ナタリー・ポートマン)は政府が封鎖した地域へと足を踏み入れる。その異様な世界で、彼女は一体何を見たのか。

Ann

Memo1
原作未読。
監督インタビューなどを読むと映画化にあたった際には3部作として完成したものも構想も知らずに本作原作のみを元に脚本化したと語っているとおり、これ1作品として完結したものとして鑑賞。
人工知能テーマ『エクス・マキナ』の次に撮った(あるいは選んだ)作品が『アナイアレイション』ということに、ひとつの流れを感じる。
衝撃的であり鳥肌モノ。
灯台に落ちた隕石(らしきもの)そこから広がっていき「揺らめく光(シマ―)」に覆われて出来た空間「エリアX」
(囲むという点では後述映画以外に昨年放送されたアニメ『正解するカド』なども思いだしたり…)
「お前は本当にホンモノなのか?」
「ひとつの細胞がふたつに分かれ…」
『エクス・マキナ』でも描かれていたテーマのひとつ。
(ラスト、ネイサンの邸宅から外界へ出たエヴァはあの後どうなったのだろう?)
同じように「エリアX」から外界に出たレナ(らしきもの)と突如、戻ってきた夫ケイン(らしきもの)
彼らはこの後どうなったのだろう?
昨年のヴィルヌーヴ監督『メッセージ』やタルコフスキー監督『ストーカー』などはもちろんのこと、共にダグラス・トランブル監督『ブレインストーム』や諸星大二郎『生物都市』も想起した。
いかなる異界を見せてくれるのかという点では到着した場所(0ポイントとでも呼ぶべき)灯台付近や植物化された村などが個人的見どころ。
そして…
なんともいいようのない怪物。
パッと見、熊や狼などの類いなのだが、よく見ると違う。
しかも鳴き声が(出来れば映画館で聴きたかった)それはそれはおぞましい襲われた人間の絶命する瞬間の声(なんたるサウンドデザイン)
ラスト。
ケインじゃないでしょう?
「そうだ」
君はレナか?
カメラが横に動きガラスがフィルターのように画面の色を変える。
瞳の虹彩の変化が告げているものは?

Memo2
アレックス・ガーランド監督のインタビューを読むとある種の諦観ともプラス思考的ペシミスティック未来像を持っていることがわかる。
以下『WIRED.20』(『エクス・マキナ』公開時)より抜粋
「~人間はこの星で滅びるんだ。それは環境破壊のためかもしれないし、太陽系や太陽で起こる変化のためかもしれない。でもそれが起こるとき、われわれは決してワームホールを通り、別の銀河に行って、古くからある生存可能な惑星を見つけることなんてない。そんなことはありえなくて、われわれの代 わりに生き残るのは AI なんだ。 もちろん生みだせればの話だけど。 問題はなにもない。むしろ望ましいことだよ」
「アナイアレイション」
あのロケ地はどこ?
Where was Annihilation filmed?
http://www.atlasofwonders.com/2018/02/annihilation-filming-locations.html
Main and End Title Design

『エクス・マキナ』と同じくMATT CURTIS
発生、増殖、進化、曼荼羅をイメージさせる秀逸なエンドタイトル。

『アナイアレイション 全滅領域』Netflix公式サイト
https://www.netflix.com/jp/title/80206300

| | トラックバック (0)

2018-04-04

『スリー・ビルボード(THREE BILLBOARDS OUTSIDE EBBING, MISSOURI)』マーティン・マクドナー監督、フランシス・マクドーマンド、ウディ・ハレルソン、サム・ロックウェル、他

スリー・ビルボード
THREE BILLBOARDS OUTSIDE EBBING, MISSOURI

監督 : マーティン・マクドナー
出演 : フランシス・マクドーマンド
ウディ・ハレルソン
サム・ロックウェル
ルーカス・ヘッジズ
ピーター・ディンクレイジ
ジョン・ホークス
アビー・コーニッシュ、他

物語・ミズーリ州の田舎町。7か月ほど前に娘を殺されたミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)は、犯人を逮捕できない警察に苛立ち、警察を批判する3枚の広告看板を設置する。彼女は、警察署長(ウディ・ハレルソン)を尊敬する彼の部下や町の人々に脅されても、決して屈しなかった。やがて事態は思わぬ方へ動き始め…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Board

Memo
行間を読むという表現。
映画だとジャンプカットの間合いだとか場面省略などに対して観客の想像にまかせる形となるのだろうけれど本作から受けた「行間を読む」感覚は、はじめて味わったような気がする。
それは見終わった後に湧いてくる登場人物たちの多面性。
驚くべきオリジナルの物語(脚本)。
架空の話の中で動かす人物造詣の深さ、セリフの妙(シニカルでありユーモアもあり)
人の起こす行動、考えは見ただけでは判断がつかない。
そして、時に間違った思い込みを持ってしまう。
警察署長ウィロビー(ウディ・ハレルソン)の自殺
(あとで判るミルドレッドに対して、こっそり広告料を払っていたという行動、残した手紙)
なかでもミルドレッドが小馬鹿にしていた前夫の彼女ペネロープの言葉。
なんとも薀蓄のある的を得たひとこと。
(彼女がホントに言ったの?と聞き返すミルドレッド)
怒りは怒りを来す(きたす)」
「週刊文春」連載コラムで宮藤官九郎さんが3回見たと書いた記事が出た頃にSNS等で話題になっていた「感情移入できる、できない。できないものは駄作?」論。
その意味で言うと本作は誰かに感情移入して云々の作品ではなく、その一元的ではない人間の描き方からくる「味わい」のようなものをじっくりコトコトと煮込んだスープのように楽しんだ次第。
(見終わった後にも、いろいろなシーンをじわ~と思い起こさせてくれる)

3枚のビルボードがある場所が実はミルドレッドの近所、しかも家自体が少し登った土地にあるものだから、いつも目にすることとなる。
(このことは最初の15分ぐらいまでは映らないので気がつかなかった)
そして、広告社と警察署が道を挟んだ斜め真向かいにある(まさにここも西部劇的シチュエーション)など建物の配置からして秀逸。
それまで、ふつふつとしていたものが転調(爆発)する中盤。
ワンシーン・ワンカット(ハンディカメラ)で撮られたディクソン巡査(サム・ロックウェル)が警察署長の死を知り、エビング広告社に乗り込んでレッド(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)を窓から放り投げるシーン。
ラスト。
犯人ではないが、あきらかに同様の事件を他の場所で起こした男を探しにディクソンとミルドレッドが車で向かう(しかし、迷いながら…)。
「本当にやるのか」
「それほど」
I guess we can decide along the way.

本作も『マラソンマン』『リトルショップ・オブ・ホラーズ(フランク・オズ監督版)』や『アウトレイジ』に連なる「歯科治療シーンあるよ」映画の系譜?(とも言える←逆反撃するけれど)

『スリー・ビルボード』公式サイト
http://www.foxmovies-jp.com/threebillboards/

| | トラックバック (0)

2018-03-20

If we do nothing neither are we.『シェイプ・オブ・ウォーター(The Shape of Water)』ギレルモ・デル・トロ監督、サリー・ホーキンス、ダグ・ジョーンズ、他

シェイプ・オブ・ウォーター
The Shape of Water

監督 : ギレルモ・デル・トロ
出演 : サリー・ホーキンス
マイケル・シャノン
リチャード・ジェンキンス
ダグ・ジョーンズ
マイケル・スタールバーグ
オクタヴィア・スペンサー、他

物語・1962年、米ソ冷戦時代のアメリカで、政府の極秘研究所の清掃員として働く孤独なイライザ(サリー・ホーキンス)は、同僚のゼルダ(オクタヴィア・スペンサー)と共に秘密の実験を目撃する。アマゾンで崇められていたという、人間ではない“彼”の特異な姿に心惹かれた彼女は、こっそり“彼”に会いにいくようになる。ところが“彼”は、もうすぐ実験の犠牲になることが決まっており…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Sow1

Memo1
If we do nothing neither are we.
"彼"を助けないと私たちは人間ではない。
イライザが"彼"を助けようとジャイルズに必死に懇願するシーン。
手話による心の声、叫び。
(そのあとに続くシーン。ジャイルズが受けるふたつの疎外)
そして…
冒頭、イライザとジャイルズがテレビで「小連隊長(he Little Colonel)」でのビル・ロビンソンシャーリー・テンプルの階段タップダンスを見ているシーンから続くシーンへの流れがすごくいい!(音楽のタイミングも)
ダグ・ジョーンズは『パンズ・ラビリンス』の時にもその動きにパントマイム的香りが漂っていて素晴らしかったが本作はさらに!
それがイライザの手話とのやりとり、コミュニケーションの中でとても豊かな広がりをみせる。
まるでチャップリンの作品をみているようだ。
マイケル・シャノン演じる政府サイドの責任者ストリックランド。
彼が信奉するもの、それこそがモンスターだ。
アメリカ的豊かさとしての絵に描いたような画一的ピカピカ社会と規範、自己啓発、メンタルマネージメント、歪む人格…。
パンフレットで知ったけれど壁の染みが葛飾北斎神奈川沖浪裏」が描かれていたとは。気がつかなかった!(他にも鱗なども浮世絵によるモチーフ)
この映画そのものが、すべての映画に対するラブレターになっている。モンスター映画、メロドラマ、ミュージカル、スパイ映画、コメディ…いわゆるクラシカルなハリウッドムービーにしたかった。
(TV Bros. 2月24日号 ギレルモ・デル・トロ監督インタビュー)
同じインタビュー記事でカメラ(撮影/ダン・ローストセン)が一時もじっとしていなくて、すべてのシーンで水の中をたゆたうようにゆらゆらと動いていることも知りました。
(と、いうことなどを踏まえて観る2回目の楽しいこと、楽しいこと!)
多くの批評などで指摘があるとおり、わかりやすいからへのカラーアプローチ。(デル・トロ監督インタビューでもカラーパレットについて言及)
イライザのカーディガン、ヘアバンド、研究室の壁やプール、タイムカード、研究室の制服、ジャイルズのワゴン車、ライムケーキ、ストリックランドが買うキャディラック…と、とりわけ緑はベースとなる色。
それがいろづきはじめたとき(生命力として)赤に変わる。
イライザが"彼"と愛を交わした次の日、いつものバス通勤の際のヘアバンドや洋服が赤に。そしてハイヒールも。
この赤と緑といった色相環で対となる補色の関係性をパレットとして設定したことも本作の美しさのひとつだ。
日本語字幕の色。黄色はあったけれど、浅葱色というか鶯色というか、あの色は初?(やはり全体のカラートーンに配慮してのこと?白の字幕だとすごく浮いて目立ってしまうので、これは素晴らしい配慮だなぁ、と思った次第)

Sow2

Memo2
あのロケ地はどこ?
WHERE WAS THE SHAPE OF WATER FILMED?
http://www.atlasofwonders.com/2017/12/shape-water-filming-locations.html
航空宇宙研究センターやゼルダ(オクタヴィア・スペンサー)の家の外観、イライザ(サリー・ホーキンス)の住む家の階下にある映画館内部(撮影に使用された有名なエルジン・シアター)などのロケ地。
Main Title Designer > CAM McLAUCHLIN

Sow_academy

Memo3
2018年 90th アカデミー賞
作品賞、監督賞、作曲賞、美術賞4冠!
パンフレットがFOXサーチライト・マガジンのVol.11仕様。
下記、画像は同じ今年のアカデミー賞で賞をわけあった『スリー・ビルボード』(Vol.10)
(そういえば本作でホフステトラー博士を演じたマイケル・スタールバーグは『スリー・ビルボード』マクドナー監督の戯曲「ピローマン」に出演していたという繋がりも)

Fox_p2

『シェイプ・オブ・ウォーター』オフィシャルサイト
http://www.foxmovies-jp.com/shapeofwater/

| | トラックバック (4)

2018-03-19

PlayそしてPray『15時17分、パリ行き(The 15:17 to Paris)』クリント・イーストウッド監督、スペンサー・ストーン、アレク・スカラトス、アンソニー・サドラー、他

15時17分、パリ行き
The 15:17 to Paris

監督 : クリント・イーストウッド
出演 : スペンサー・ストーン
アレク・スカラトス
アンソニー・サドラー
他、実際に事件に遭遇した多くの人たち。

物語・2015年8月21日、554人の客が乗るアムステルダム発パリ行きの高速鉄道タリスに、武装したイスラム過激派の男が乗り込み無差別テロを企てる。乗客たちが恐怖に凍り付く中、旅行中で偶然乗り合わせていたアメリカ空軍兵スペンサー・ストーンとオレゴン州兵アレク・スカラトス、二人の友人の大学生アンソニー・サドラーが犯人に立ち向かう。(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

1517

Memo
とても奇妙な映画だ。
通常、事件の当事者が出演するとなると証言を交えたドキュメンタリーとなるところをイーストウッド監督はそのまま本人たち(素人)によるドラマ映画として仕立てあげた。しかも再現フィルムではなく旅日記のようなプライベートフィルムの趣きも交えながら。
(少年時代を描いたシーンが再現フィルムとも言える。と、なると構成は再現フィルムプライベートフィルムドキュメンタリーフィルムということになる)
まるで絵に描いたように観光地をトレースしていく旅。
(本当にここへ来たかったーーっ!といった意志があるわけではなくセルフィカメラに興じる若者を撮るセンター部分は緩くもあり、あぁ、こんなもんだろうなぁと思わせてくれたりと妙にリアル…リアルと書きつつ本人たちなのだからリアルも何も…)
構成としては直線状時間軸で描いたほうがサスペンス的には盛り上がるであろうところを、わざわざ細切れにしてずらす手法をとっている。
(イーストウッド監督にしてみたら、そういった撮り方、語り口は既に演じ尽くし、やりつくしてきたことなのだ)
もし、彼らがWi-Fiの入る1等車両に移っていなければ…
もし、スペンサーが救護班でなく希望通りパラシュート部隊に入っていたら…
もし、前日のパーティ含めすごく気に入ってしまったオランダにそのまま滞在してフランスへ向かわなかったら…。
そして、もし、彼ら3人が少年時代に出会ってなかったら…。
偶然なのか必然なのか…
運命なのか、宿命なのか…。
『ヒアアフター』『ハドソン川の奇跡』(こちらも、もしあの便に機長が乗っていなかったら…)と通底したテーマが浮かびあがる。
そこで出てくるのが…(映画独自?)
聖フランシスコの平和の祈り
主よ、私をあなたの平和の道具にしてください
ラストで実際に当時のフランス大統領オランドから勲章を授与されるシーン。実際の映像と今回、本人たちが新たにトレースして撮ったシーンとの境い目がわからない(そりゃあ、そうだ本人たちだもの)
イーストウッド監督はここに対して思いついたのでは?
よく実話のドラマ映画化の際、ラストに当時のフィルム、現在のことを紹介する映像がエンドクレジット前に流れたりするが本作ではまったくもってシームレス。
なんたる大胆さにして、ある種茶目っ気さえ感じる87歳イーストウッド監督の自由さを感じる。
蛇足
もし、イーストウッド監督が「世界ぶらり街歩き」のようなテレビ番組を撮ったとしたら…(撮られへん撮らへん←関西弁)

『15時17分、パリ行き』オフィシャルサイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/1517toparis/

| | トラックバック (3)

2018-03-18

その永遠の一瞬に『ちはやふる -結び-』小泉徳宏監督、広瀬すず、野村周平、新田真剣佑、上白石萌音、松岡茉優、賀来賢人、他

ちはやふる -結び-

原作 : 末次由紀
監督 : 小泉徳宏
出演 : 広瀬すず野村周平
新田真剣佑
上白石萌音
松岡茉優、賀来賢人
矢本悠馬、森永悠希
清水尋也、優希美青
佐野勇斗、清原果耶
坂口涼太郎
松田美由紀、國村隼、他

物語・瑞沢高校競技かるた部員の綾瀬千早(広瀬すず)と若宮詩暢(松岡茉優)が、全国大会で激闘を繰り広げてから2年。真島太一(野村周平)、綿谷新(新田真剣佑)らと共に名人・クイーン戦に挑む千早だったが、詩暢と戦えない自分の実力不足を痛感する。そんな中、千早たちの師匠・原田秀雄(國村隼)が史上最強の名人とされる周防久志(賀来賢人)に敗れてしまい、新が彼に挑戦状をたたきつける。その後3年生になった千早は、高校最後の全国大会に向けて動くが…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Chihaya

Memo1
まずは前作ブログメモ
(2016年5月11日のポストイン)
『ちはやふる 上の句、下の句』同一スクリーンでイッキ見。
(世評の高評価を我慢して下の句公開の5週間後まで待って見た)
http://color-of-cinema.cocolog-nifty.com/blog/2016/05/post-ab39.html
2年目の夏のことや名人戦へ挑戦しようとする綿谷新、そしてその新のことを「おにい」と呼ぶ、準かるたクイーンとなる伊織のこと、さらには本作冒頭シーンへと繋がる「名人・クイーン決定戦」直前シーン(名人周防が饅頭…笑)などが描かれた配信限定スピンオフドラマちはやふる 繋ぐ』は必須かも?
(もちろん見ていなくても本作のみで十分、熱度は伝わる)
映画における3年間と実際の高校生活、そして役者としての成長。
それらが全てシンクロして起こった奇跡的な
(そして、いくつかの台詞と響き合う「一瞬」)青春映画
また、登場人物に嫌いな(好きになれないタイプの)人が出てこないという点。それは今回、新たに加わった登場人物たちにおいても。
あーっ終わってほしくないなぁ、このままずっと見ていられると思わせてくれる全体を通しての味わいともいえる部分も素晴らしい。
本作における(結果的に)太一のメンターとなる名人・周防。
甘いもの好きで、ちょっと突飛な人物造詣だと思いきや、結果馴染んでくる重要な役回り。
(最初、解説者に当人には聞こえていないけれどこんなツッコミいれられてた)
「今年も順調に留年をきめています」
「そっちは連覇せんでもよかったんですけどね」
札を取る速度そのままに台詞の上に台詞を乗せていくテンポの良さ、スピード!
(ほぼ全編にわたって)新と伊織の会話。
「やっと高校生になったんやで、私とつきおうてや」
「ゴメン、好きな人がおる」
「秒殺かっ」
他にも別の場面で
「なに塩対」
運命戦は運命じゃない
原作でも最もキーとなる台詞。
太一が周防から教えられたことと顧問の原田先生の言葉が呼応する。
ふたつの恋のうた。
しのぶれど 色に出でにけり わが恋(こひ)は
ものや思ふと 人の問ふまて

恋すてふ(ちょう) わが名はまだき 立ちにけり
人知れずこそ 思ひそめ

「下の句」繋がりの意味もありつつの団体戦ラストに持ってきたあたりがうまい。
そして自陣の札に対しての台詞。
「来い!」
「来い!」
偶然なのか意図的なのか「恋」とも聴こえる。
ラスト(大会終了後のパーティ)で千早と伊織がシャカシャカ振ってLINE交換しているシーンがあったりして、ちょっと微笑ましい。

C2

Memo2
若宮詩暢のキャラクター趣味。
前作「下の句」の「これは はらじゅくげんてい おめかしダディタオル」に続いて。
「これはファンクラブ限定スノー丸タオル」
「しかも直筆サイン付き!」
配信中継で急遽、解説をすることになった詩暢
(相手ゲストがスノー丸 笑)
「なんかシュールな絵面やなぁ」
そのスノー丸、ダディベアのあわら限定グッズのページ
(ちなみに綿谷新の住む町、福井県あわら市とのコラボページ)
http://www.chihaya-awara.com/goods.html
京阪乗るなら「お京はん」ではなく『ちはやふる −結び−』京阪電車大津線1dayチケット
https://www.keihan.co.jp/traffic/valueticket/ticket/chihayafuru/

『ちはやふる -結び-』公式サイト
http://chihayafuru-movie.com/

| | トラックバック (7)

2018-03-04

碁盤の上で起こり得る全ての配置は、宇宙に存在する原子の数よりも多いのです。『アルファ碁(AlphaGo)』グレッグ・コーズ監督

アルファ碁
AlphaGo

監督 : グレッグ・コーズ

昨年、映画祭などで限定公開されていた『アルファ碁(AlphaGo)』がNetflixで配信されていたので見た。
人類最強棋士と称されるイ・セドル対人工知能ディープマインド。
ディープマインド陣営のバックヤードに並んだモニター類に映し出されている勝率や予測数値、そして交わされている会話。
1万分の1の手を打ってくるディープ・マインドに対して浮かびあがるもの。
人もまた、新たな地平を切り開くのだ。

Go

Memo
●結果は4勝1敗でAlphaGoが勝利。
最初は楽勝でイセドルに軍配があがると思われていたものが、1戦目2戦目…とその打つ手の凄さに衝撃が走る。
(何故、この手を打ったのかがわからない…。解説者もとまどいを隠せない)
AlphaGo陣営バックヤードで出ていた数字は人間が打つ確率1万分の1 (!)
その一手(37手目)に対して戸惑いを隠せないイ・セドル
(イ・セドルがその起こる出来事に対して常に礼儀正しくて謙虚だ。そこがまた、この歴史的対局の美しさでもある)
この台詞。
「AlphaGoは計算に基づき手を打つ単なる機械だと思っていました」
「でも違いました。創造力があります」
「この手は本当に創造的で美しいとさえ思いました」
そしてイ・セドルが勝利した際に打った手も1万分の1。
そのことに人間とAIの向かい合い方の絶対的ヒントと示唆が含まれているように思える。
「少なくともAlphaGoの37手がイ・セドルの78手を生み出しました」
「イ・セドルの新たな手法を促したのです」
●「アルファ碁(AlphaGo)」が人類最強棋士に勝利してか、しばらくして…。
さらに人間のデータを学習に使わない「アルファ碁ゼロ」や碁以外にも汎用化した「アルファゼロ」が登場して既に「何故、そのような思考なのか」などプロセスについては全く人類が入り込む部分はなくなってしまった。
対戦終了後のイ・セドルの台詞が浮かぶ。
(1勝でもあげられたことについて)
「この勝利が意味することは人間は持ちこたえられるということ」
「今後AIに勝つことは難しいと思います」
「一度でも勝てれば十分だと言う気がします」
●タイトルデザインはElliott Burford
これ以上はないというぐらいシンプルで美しい。
5戦全ての棋譜が浮かびあがる。
しかも37手と78手だけ黒と白ではなくブルーで描く
(デザイナーは違うが同じ人工知能をテーマとした『エクス・マキナ』のエンドタイトルに匹敵)

(↓こちらはドキュメンタリー映画のサイトではなく実際の…)
AlphaGo公式サイト
https://deepmind.com/research/alphago/

| | トラックバック (0)

より以前の記事一覧