2018-04-06

『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書(THE POST)』スティーヴン・スピルバーグ監督、メリル・ストリープ、トム・ハンクス

ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書
THE POST

監督 : スティーヴン・スピルバーグ
出演 : メリル・ストリープ
トム・ハンクス
サラ・ポールソン
ボブ・オデンカーク
ブラッドリー・ウィットフォード
トレーシー・レッツ
マイケル・スタールバーグ
ブルース・グリーンウッド
サーシャ・スピルバーグ、他

物語・ベトナム戦争の最中だった1971年、アメリカでは反戦運動が盛り上がりを見せていた。そんな中、「The New York Times」が政府の極秘文書“ペンタゴン・ペーパーズ”の存在を暴く。ライバル紙である「The Washington Post」のキャサリン(メリル・ストリープ)と部下のベン(トム・ハンクス)らも、報道の自由を求めて立ち上がり…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Post

Memo1
トランプ米大統領から「ハリウッドで最も過大評価された女優」と名指し攻撃されたメリル・ストリープがワシントン・ポストの社主役(なんと痛烈で痛快な素晴らしいキャスティング!←トランプ氏『ワシントン・ポスト』嫌ってますからねー。最近もamazon批判で間接的に攻撃してたし)。
1971年の物語ながら、まさしく「今そこにある報道の自由の危機」を描いた現代の話となっている。
ヤヌス・カミンスキーによる35mmフィルム撮影。
スキップブリーチではないと思われるが彩度・カラーパレット含め、そこから感じ取れる70年代映画質感。
(後述リンク先にレンズの事などについて書かれたものあり)
アン・ロスによる衣装。
ジョン・ウィリアムズのスコアも控えめながら渋い旋律。
『ニューズウィーク日本版』2018年4月3日号に「ベトナム戦争の嘘を暴いた男」ペンタゴン・ペーパーズをリークしたダニエル・エルズバーグについての記事が掲載されていました。
おぉっ!ここが映画の冒頭で政府側の嘘、欺瞞を知ってしまった が機密文書を持ち出し複写機(デカイ!)をかけてコピーをとる、あのシーンとつながるのか!と膝をうつ内容。
そしてスピルバーグ監督の時間省略など映画的手際よさにも気づく。
(実際は文書持ち出しまでに数年のタイムラグがある)
メリル・ストリープ演じるキャサリン。
夫の死によって突如「ワシントン・ポスト」社主となり完全に男社会丸出しだった世界へ入ってきてやっている感がものすごくよく表れていた(そして経営者でもあり数字も追わなければいけない。そんなこと自分にやれるかしらとオドオドした様子も)。
・会議の時に重たい資料を全部手持ちでテーブルの上に置いた際「そんなものはスタッフが用意するものだ。何も知らないで」的な馬鹿にしたような視線をおくられる。
・ベンがキャサリン宅に訪ねてきた際、就寝時の服で歩きまわり子どもが走り回っている緊張感の無さにやや言葉を失う。
・その後、近しい友人であったマクナマラのついていた嘘(自分へと国民へとの二重の嘘)と報道の公正さの間に立ち、社主としての
・そして、ニクソン側の圧力に対して輪転機が回る締切りぎりぎりの深夜の決断。
ベンや経営陣、弁護士の輪の中。
「出します」
続く台詞が洒落ている。
「寝るわ」
ベン・ブラッドリーの娘が売ってるレモネードに対して「いくらで売ってるんだ?」「25セント」「倍の値段に。インフレだよ」とひとこと。
(次のシーンでダンボールに書かれた値段が50セントに 笑)
これだけで当時のインフレ状態をあらわす茶目っ気たっぷりの上手さ(ちなみにニクソンショックは文書公表記事のあと)
そう言えばトム・ハンクスって『フォレスト・ガンプ』でウォーターゲート事件、目撃してたし…(このシーン、本作のラストカットとそっくりだったような…)

Memo2
ニューズウィーク日本版ウェブの記事
映画で描かれない「ブラッドレー起用」秘話
ワシントン・ポスト社主キャサリン・グラハム自伝・第2章より抜粋。
その3回目
https://www.newsweekjapan.jp/stories/culture/2018/03/post-9860.php
Main and End Title
SCARLET LETTERS
IMDbでアスペクト比を見ると1.85 : 1 (アメリカンビスタ)になっていたので何か理由があるのかと思っていたら、Kodakのニュースレターにこの記事が。
「ヤヌス・カミンスキー(ASC)がスティーヴン・スピルバーグ監督の『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』をコダック35mmフィルムで撮影
https://www.kodakjapan.com/motionjp-mag102
実際のアメリカ国立公文書記録管理局によるペンタゴン・ペーパーズ(全文/英語サイト/ファイルはいくつかのPDFに分割されています)
https://www.archives.gov/research/pentagon-papers

Memo3
2018年「春のスピルバーグまつり
本作と『レディ・プレイヤー1』と続けて見られる幸福感。
デビュー時から現在までリアルタイムで公開時に作品を見続けられている監督って誰だろう?と考えたときにすぐに思い浮かんだのはスピルバーグ監督。
(ヒッチコック監督は遺作となった『ファミリープロット』だったし、ビリー・ワイルダー監督は『フロントページ』からだったし、コッポラ監督は『ゴッドファーザーPART2』からだったしウディ・アレン監督は『アニー・ホール』からだったしと…以下略)
また、見た作品と劇場(映画館)の名前がセットになって覚えているのも思えば個人的映画記憶となっています。
特に1970年代。
『激突』梅田コマゴールド(←こちらはテレビ放送後、劇場公開パターン)『続・激突 カージャック』阪急プラザ劇場『ジョーズ JAWS』梅田東映パラス『未知との遭遇』OS劇場…
ずっと見続けている映画監督が今もなお最新作を撮り、しかも傑作を生み続けているのはとても嬉しい!

映画『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』公式サイト
http://pentagonpapers-movie.jp/


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2018-04-05

Netflix『アナイアレイション 全滅領域(Annihilation)』アレックス・ガーランド監督、ナタリー・ポートマン、オスカー・アイザック、ジェニファー・ジェイソン・リー、他

注・内容、ラストに触れています。
アナイアレイション -全滅領域-
Annihilation

原作 : ジェフ・ヴァンダミア
監督 : アレックス・ガーランド
出演 : ナタリー・ポートマン
オスカー・アイザック
ジェニファー・ジェイソン・リー
ジーナ・ロドリゲス
ソノヤ・ミズノ、他

物語・秘密任務から生還した夫ケイン(オスカーアイザック)が危篤状態に。最愛の人を救うべく、生物学者のレナ(ナタリー・ポートマン)は政府が封鎖した地域へと足を踏み入れる。その異様な世界で、彼女は一体何を見たのか。

Ann

Memo1
原作未読。
監督インタビューなどを読むと映画化にあたった際には3部作として完成したものも構想も知らずに本作原作のみを元に脚本化したと語っているとおり、これ1作品として完結したものとして鑑賞。
人工知能テーマ『エクス・マキナ』の次に撮った(あるいは選んだ)作品が『アナイアレイション』ということに、ひとつの流れを感じる。
衝撃的であり鳥肌モノ。
灯台に落ちた隕石(らしきもの)そこから広がっていき「揺らめく光(シマ―)」に覆われて出来た空間「エリアX」
(囲むという点では後述映画以外に昨年放送されたアニメ『正解するカド』なども思いだしたり…)
「お前は本当にホンモノなのか?」
「ひとつの細胞がふたつに分かれ…」
『エクス・マキナ』でも描かれていたテーマのひとつ。
(ラスト、ネイサンの邸宅から外界へ出たエヴァはあの後どうなったのだろう?)
同じように「エリアX」から外界に出たレナ(らしきもの)と突如、戻ってきた夫ケイン(らしきもの)
彼らはこの後どうなったのだろう?
昨年のヴィルヌーヴ監督『メッセージ』やタルコフスキー監督『ストーカー』などはもちろんのこと、共にダグラス・トランブル監督『ブレインストーム』や諸星大二郎『生物都市』も想起した。
いかなる異界を見せてくれるのかという点では到着した場所(0ポイントとでも呼ぶべき)灯台付近や植物化された村などが個人的見どころ。
そして…
なんともいいようのない怪物。
パッと見、熊や狼などの類いなのだが、よく見ると違う。
しかも鳴き声が(出来れば映画館で聴きたかった)それはそれはおぞましい襲われた人間の絶命する瞬間の声(なんたるサウンドデザイン)
ラスト。
ケインじゃないでしょう?
「そうだ」
君はレナか?
カメラが横に動きガラスがフィルターのように画面の色を変える。
瞳の虹彩の変化が告げているものは?

Memo2
アレックス・ガーランド監督のインタビューを読むとある種の諦観ともプラス思考的ペシミスティック未来像を持っていることがわかる。
以下『WIRED.20』(『エクス・マキナ』公開時)より抜粋
「~人間はこの星で滅びるんだ。それは環境破壊のためかもしれないし、太陽系や太陽で起こる変化のためかもしれない。でもそれが起こるとき、われわれは決してワームホールを通り、別の銀河に行って、古くからある生存可能な惑星を見つけることなんてない。そんなことはありえなくて、われわれの代 わりに生き残るのは AI なんだ。 もちろん生みだせればの話だけど。 問題はなにもない。むしろ望ましいことだよ」
「アナイアレイション」
あのロケ地はどこ?
Where was Annihilation filmed?
http://www.atlasofwonders.com/2018/02/annihilation-filming-locations.html
Main and End Title Design

『エクス・マキナ』と同じくMATT CURTIS
発生、増殖、進化、曼荼羅をイメージさせる秀逸なエンドタイトル。

『アナイアレイション 全滅領域』Netflix公式サイト
https://www.netflix.com/jp/title/80206300

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2018-04-04

『スリー・ビルボード(THREE BILLBOARDS OUTSIDE EBBING, MISSOURI)』マーティン・マクドナー監督、フランシス・マクドーマンド、ウディ・ハレルソン、サム・ロックウェル、他

スリー・ビルボード
THREE BILLBOARDS OUTSIDE EBBING, MISSOURI

監督 : マーティン・マクドナー
出演 : フランシス・マクドーマンド
ウディ・ハレルソン
サム・ロックウェル
ルーカス・ヘッジズ
ピーター・ディンクレイジ
ジョン・ホークス
アビー・コーニッシュ、他

物語・ミズーリ州の田舎町。7か月ほど前に娘を殺されたミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)は、犯人を逮捕できない警察に苛立ち、警察を批判する3枚の広告看板を設置する。彼女は、警察署長(ウディ・ハレルソン)を尊敬する彼の部下や町の人々に脅されても、決して屈しなかった。やがて事態は思わぬ方へ動き始め…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Board

Memo
行間を読むという表現。
映画だとジャンプカットの間合いだとか場面省略などに対して観客の想像にまかせる形となるのだろうけれど本作から受けた「行間を読む」感覚は、はじめて味わったような気がする。
それは見終わった後に湧いてくる登場人物たちの多面性。
驚くべきオリジナルの物語(脚本)。
架空の話の中で動かす人物造詣の深さ、セリフの妙(シニカルでありユーモアもあり)
人の起こす行動、考えは見ただけでは判断がつかない。
そして、時に間違った思い込みを持ってしまう。
警察署長ウィロビー(ウディ・ハレルソン)の自殺
(あとで判るミルドレッドに対して、こっそり広告料を払っていたという行動、残した手紙)
なかでもミルドレッドが小馬鹿にしていた前夫の彼女ペネロープの言葉。
なんとも薀蓄のある的を得たひとこと。
(彼女がホントに言ったの?と聞き返すミルドレッド)
怒りは怒りを来す(きたす)」
「週刊文春」連載コラムで宮藤官九郎さんが3回見たと書いた記事が出た頃にSNS等で話題になっていた「感情移入できる、できない。できないものは駄作?」論。
その意味で言うと本作は誰かに感情移入して云々の作品ではなく、その一元的ではない人間の描き方からくる「味わい」のようなものをじっくりコトコトと煮込んだスープのように楽しんだ次第。
(見終わった後にも、いろいろなシーンをじわ~と思い起こさせてくれる)

3枚のビルボードがある場所が実はミルドレッドの近所、しかも家自体が少し登った土地にあるものだから、いつも目にすることとなる。
(このことは最初の15分ぐらいまでは映らないので気がつかなかった)
そして、広告社と警察署が道を挟んだ斜め真向かいにある(まさにここも西部劇的シチュエーション)など建物の配置からして秀逸。
それまで、ふつふつとしていたものが転調(爆発)する中盤。
ワンシーン・ワンカット(ハンディカメラ)で撮られたディクソン巡査(サム・ロックウェル)が警察署長の死を知り、エビング広告社に乗り込んでレッド(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)を窓から放り投げるシーン。
ラスト。
犯人ではないが、あきらかに同様の事件を他の場所で起こした男を探しにディクソンとミルドレッドが車で向かう(しかし、迷いながら…)。
「本当にやるのか」
「それほど」
I guess we can decide along the way.

本作も『マラソンマン』『リトルショップ・オブ・ホラーズ(フランク・オズ監督版)』や『アウトレイジ』に連なる「歯科治療シーンあるよ」映画の系譜?(とも言える←逆反撃するけれど)

『スリー・ビルボード』公式サイト
http://www.foxmovies-jp.com/threebillboards/

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2018-03-20

If we do nothing neither are we.『シェイプ・オブ・ウォーター(The Shape of Water)』ギレルモ・デル・トロ監督、サリー・ホーキンス、ダグ・ジョーンズ、他

シェイプ・オブ・ウォーター
The Shape of Water

監督 : ギレルモ・デル・トロ
出演 : サリー・ホーキンス
マイケル・シャノン
リチャード・ジェンキンス
ダグ・ジョーンズ
マイケル・スタールバーグ
オクタヴィア・スペンサー、他

物語・1962年、米ソ冷戦時代のアメリカで、政府の極秘研究所の清掃員として働く孤独なイライザ(サリー・ホーキンス)は、同僚のゼルダ(オクタヴィア・スペンサー)と共に秘密の実験を目撃する。アマゾンで崇められていたという、人間ではない“彼”の特異な姿に心惹かれた彼女は、こっそり“彼”に会いにいくようになる。ところが“彼”は、もうすぐ実験の犠牲になることが決まっており…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Sow1

Memo1
If we do nothing neither are we.
"彼"を助けないと私たちは人間ではない。
イライザが"彼"を助けようとジャイルズに必死に懇願するシーン。
手話による心の声、叫び。
(そのあとに続くシーン。ジャイルズが受けるふたつの疎外)
そして…
冒頭、イライザとジャイルズがテレビで「小連隊長(he Little Colonel)」でのビル・ロビンソンシャーリー・テンプルの階段タップダンスを見ているシーンから続くシーンへの流れがすごくいい!(音楽のタイミングも)
ダグ・ジョーンズは『パンズ・ラビリンス』の時にもその動きにパントマイム的香りが漂っていて素晴らしかったが本作はさらに!
それがイライザの手話とのやりとり、コミュニケーションの中でとても豊かな広がりをみせる。
まるでチャップリンの作品をみているようだ。
マイケル・シャノン演じる政府サイドの責任者ストリックランド。
彼が信奉するもの、それこそがモンスターだ。
アメリカ的豊かさとしての絵に描いたような画一的ピカピカ社会と規範、自己啓発、メンタルマネージメント、歪む人格…。
パンフレットで知ったけれど壁の染みが葛飾北斎神奈川沖浪裏」が描かれていたとは。気がつかなかった!(他にも鱗なども浮世絵によるモチーフ)
この映画そのものが、すべての映画に対するラブレターになっている。モンスター映画、メロドラマ、ミュージカル、スパイ映画、コメディ…いわゆるクラシカルなハリウッドムービーにしたかった。
(TV Bros. 2月24日号 ギレルモ・デル・トロ監督インタビュー)
同じインタビュー記事でカメラ(撮影/ダン・ローストセン)が一時もじっとしていなくて、すべてのシーンで水の中をたゆたうようにゆらゆらと動いていることも知りました。
(と、いうことなどを踏まえて観る2回目の楽しいこと、楽しいこと!)
多くの批評などで指摘があるとおり、わかりやすいからへのカラーアプローチ。(デル・トロ監督インタビューでもカラーパレットについて言及)
イライザのカーディガン、ヘアバンド、研究室の壁やプール、タイムカード、研究室の制服、ジャイルズのワゴン車、ライムケーキ、ストリックランドが買うキャディラック…と、とりわけ緑はベースとなる色。
それがいろづきはじめたとき(生命力として)赤に変わる。
イライザが"彼"と愛を交わした次の日、いつものバス通勤の際のヘアバンドや洋服が赤に。そしてハイヒールも。
この赤と緑といった色相環で対となる補色の関係性をパレットとして設定したことも本作の美しさのひとつだ。
日本語字幕の色。黄色はあったけれど、浅葱色というか鶯色というか、あの色は初?(やはり全体のカラートーンに配慮してのこと?白の字幕だとすごく浮いて目立ってしまうので、これは素晴らしい配慮だなぁ、と思った次第)

Sow2

Memo2
あのロケ地はどこ?
WHERE WAS THE SHAPE OF WATER FILMED?
http://www.atlasofwonders.com/2017/12/shape-water-filming-locations.html
航空宇宙研究センターやゼルダ(オクタヴィア・スペンサー)の家の外観、イライザ(サリー・ホーキンス)の住む家の階下にある映画館内部(撮影に使用された有名なエルジン・シアター)などのロケ地。
Main Title Designer > CAM McLAUCHLIN

Sow_academy

Memo3
2018年 90th アカデミー賞
作品賞、監督賞、作曲賞、美術賞4冠!
パンフレットがFOXサーチライト・マガジンのVol.11仕様。
下記、画像は同じ今年のアカデミー賞で賞をわけあった『スリー・ビルボード』(Vol.10)
(そういえば本作でホフステトラー博士を演じたマイケル・スタールバーグは『スリー・ビルボード』マクドナー監督の戯曲「ピローマン」に出演していたという繋がりも)

Fox_p2

『シェイプ・オブ・ウォーター』オフィシャルサイト
http://www.foxmovies-jp.com/shapeofwater/

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2018-03-19

PlayそしてPray『15時17分、パリ行き(The 15:17 to Paris)』クリント・イーストウッド監督、スペンサー・ストーン、アレク・スカラトス、アンソニー・サドラー、他

15時17分、パリ行き
The 15:17 to Paris

監督 : クリント・イーストウッド
出演 : スペンサー・ストーン
アレク・スカラトス
アンソニー・サドラー
他、実際に事件に遭遇した多くの人たち。

物語・2015年8月21日、554人の客が乗るアムステルダム発パリ行きの高速鉄道タリスに、武装したイスラム過激派の男が乗り込み無差別テロを企てる。乗客たちが恐怖に凍り付く中、旅行中で偶然乗り合わせていたアメリカ空軍兵スペンサー・ストーンとオレゴン州兵アレク・スカラトス、二人の友人の大学生アンソニー・サドラーが犯人に立ち向かう。(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

1517

Memo
とても奇妙な映画だ。
通常、事件の当事者が出演するとなると証言を交えたドキュメンタリーとなるところをイーストウッド監督はそのまま本人たち(素人)によるドラマ映画として仕立てあげた。しかも再現フィルムではなく旅日記のようなプライベートフィルムの趣きも交えながら。
(少年時代を描いたシーンが再現フィルムとも言える。と、なると構成は再現フィルムプライベートフィルムドキュメンタリーフィルムということになる)
まるで絵に描いたように観光地をトレースしていく旅。
(本当にここへ来たかったーーっ!といった意志があるわけではなくセルフィカメラに興じる若者を撮るセンター部分は緩くもあり、あぁ、こんなもんだろうなぁと思わせてくれたりと妙にリアル…リアルと書きつつ本人たちなのだからリアルも何も…)
構成としては直線状時間軸で描いたほうがサスペンス的には盛り上がるであろうところを、わざわざ細切れにしてずらす手法をとっている。
(イーストウッド監督にしてみたら、そういった撮り方、語り口は既に演じ尽くし、やりつくしてきたことなのだ)
もし、彼らがWi-Fiの入る1等車両に移っていなければ…
もし、スペンサーが救護班でなく希望通りパラシュート部隊に入っていたら…
もし、前日のパーティ含めすごく気に入ってしまったオランダにそのまま滞在してフランスへ向かわなかったら…。
そして、もし、彼ら3人が少年時代に出会ってなかったら…。
偶然なのか必然なのか…
運命なのか、宿命なのか…。
『ヒアアフター』『ハドソン川の奇跡』(こちらも、もしあの便に機長が乗っていなかったら…)と通底したテーマが浮かびあがる。
そこで出てくるのが…(映画独自?)
聖フランシスコの平和の祈り
主よ、私をあなたの平和の道具にしてください
ラストで実際に当時のフランス大統領オランドから勲章を授与されるシーン。実際の映像と今回、本人たちが新たにトレースして撮ったシーンとの境い目がわからない(そりゃあ、そうだ本人たちだもの)
イーストウッド監督はここに対して思いついたのでは?
よく実話のドラマ映画化の際、ラストに当時のフィルム、現在のことを紹介する映像がエンドクレジット前に流れたりするが本作ではまったくもってシームレス。
なんたる大胆さにして、ある種茶目っ気さえ感じる87歳イーストウッド監督の自由さを感じる。
蛇足
もし、イーストウッド監督が「世界ぶらり街歩き」のようなテレビ番組を撮ったとしたら…(撮られへん撮らへん←関西弁)

『15時17分、パリ行き』オフィシャルサイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/1517toparis/

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2018-03-18

その永遠の一瞬に『ちはやふる -結び-』小泉徳宏監督、広瀬すず、野村周平、新田真剣佑、上白石萌音、松岡茉優、賀来賢人、他

ちはやふる -結び-

原作 : 末次由紀
監督 : 小泉徳宏
出演 : 広瀬すず野村周平
新田真剣佑
上白石萌音
松岡茉優、賀来賢人
矢本悠馬、森永悠希
清水尋也、優希美青
佐野勇斗、清原果耶
坂口涼太郎
松田美由紀、國村隼、他

物語・瑞沢高校競技かるた部員の綾瀬千早(広瀬すず)と若宮詩暢(松岡茉優)が、全国大会で激闘を繰り広げてから2年。真島太一(野村周平)、綿谷新(新田真剣佑)らと共に名人・クイーン戦に挑む千早だったが、詩暢と戦えない自分の実力不足を痛感する。そんな中、千早たちの師匠・原田秀雄(國村隼)が史上最強の名人とされる周防久志(賀来賢人)に敗れてしまい、新が彼に挑戦状をたたきつける。その後3年生になった千早は、高校最後の全国大会に向けて動くが…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Chihaya

Memo1
まずは前作ブログメモ
(2016年5月11日のポストイン)
『ちはやふる 上の句、下の句』同一スクリーンでイッキ見。
(世評の高評価を我慢して下の句公開の5週間後まで待って見た)
http://color-of-cinema.cocolog-nifty.com/blog/2016/05/post-ab39.html
2年目の夏のことや名人戦へ挑戦しようとする綿谷新、そしてその新のことを「おにい」と呼ぶ、準かるたクイーンとなる伊織のこと、さらには本作冒頭シーンへと繋がる「名人・クイーン決定戦」直前シーン(名人周防が饅頭…笑)などが描かれた配信限定スピンオフドラマちはやふる 繋ぐ』は必須かも?
(もちろん見ていなくても本作のみで十分、熱度は伝わる)
映画における3年間と実際の高校生活、そして役者としての成長。
それらが全てシンクロして起こった奇跡的な
(そして、いくつかの台詞と響き合う「一瞬」)青春映画
また、登場人物に嫌いな(好きになれないタイプの)人が出てこないという点。それは今回、新たに加わった登場人物たちにおいても。
あーっ終わってほしくないなぁ、このままずっと見ていられると思わせてくれる全体を通しての味わいともいえる部分も素晴らしい。
本作における(結果的に)太一のメンターとなる名人・周防。
甘いもの好きで、ちょっと突飛な人物造詣だと思いきや、結果馴染んでくる重要な役回り。
(最初、解説者に当人には聞こえていないけれどこんなツッコミいれられてた)
「今年も順調に留年をきめています」
「そっちは連覇せんでもよかったんですけどね」
札を取る速度そのままに台詞の上に台詞を乗せていくテンポの良さ、スピード!
(ほぼ全編にわたって)新と伊織の会話。
「やっと高校生になったんやで、私とつきおうてや」
「ゴメン、好きな人がおる」
「秒殺かっ」
他にも別の場面で
「なに塩対」
運命戦は運命じゃない
原作でも最もキーとなる台詞。
太一が周防から教えられたことと顧問の原田先生の言葉が呼応する。
ふたつの恋のうた。
しのぶれど 色に出でにけり わが恋(こひ)は
ものや思ふと 人の問ふまて

恋すてふ(ちょう) わが名はまだき 立ちにけり
人知れずこそ 思ひそめ

「下の句」繋がりの意味もありつつの団体戦ラストに持ってきたあたりがうまい。
そして自陣の札に対しての台詞。
「来い!」
「来い!」
偶然なのか意図的なのか「恋」とも聴こえる。
ラスト(大会終了後のパーティ)で千早と伊織がシャカシャカ振ってLINE交換しているシーンがあったりして、ちょっと微笑ましい。

C2

Memo2
若宮詩暢のキャラクター趣味。
前作「下の句」の「これは はらじゅくげんてい おめかしダディタオル」に続いて。
「これはファンクラブ限定スノー丸タオル」
「しかも直筆サイン付き!」
配信中継で急遽、解説をすることになった詩暢
(相手ゲストがスノー丸 笑)
「なんかシュールな絵面やなぁ」
そのスノー丸、ダディベアのあわら限定グッズのページ
(ちなみに綿谷新の住む町、福井県あわら市とのコラボページ)
http://www.chihaya-awara.com/goods.html
京阪乗るなら「お京はん」ではなく『ちはやふる −結び−』京阪電車大津線1dayチケット
https://www.keihan.co.jp/traffic/valueticket/ticket/chihayafuru/

『ちはやふる -結び-』公式サイト
http://chihayafuru-movie.com/

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2018-03-04

碁盤の上で起こり得る全ての配置は、宇宙に存在する原子の数よりも多いのです。『アルファ碁(AlphaGo)』グレッグ・コーズ監督

アルファ碁
AlphaGo

監督 : グレッグ・コーズ

昨年、映画祭などで限定公開されていた『アルファ碁(AlphaGo)』がNetflixで配信されていたので見た。
人類最強棋士と称されるイ・セドル対人工知能ディープマインド。
ディープマインド陣営のバックヤードに並んだモニター類に映し出されている勝率や予測数値、そして交わされている会話。
1万分の1の手を打ってくるディープ・マインドに対して浮かびあがるもの。
人もまた、新たな地平を切り開くのだ。

Go

Memo
●結果は4勝1敗でAlphaGoが勝利。
最初は楽勝でイセドルに軍配があがると思われていたものが、1戦目2戦目…とその打つ手の凄さに衝撃が走る。
(何故、この手を打ったのかがわからない…。解説者もとまどいを隠せない)
AlphaGo陣営バックヤードで出ていた数字は人間が打つ確率1万分の1 (!)
その一手(37手目)に対して戸惑いを隠せないイ・セドル
(イ・セドルがその起こる出来事に対して常に礼儀正しくて謙虚だ。そこがまた、この歴史的対局の美しさでもある)
この台詞。
「AlphaGoは計算に基づき手を打つ単なる機械だと思っていました」
「でも違いました。創造力があります」
「この手は本当に創造的で美しいとさえ思いました」
そしてイ・セドルが勝利した際に打った手も1万分の1。
そのことに人間とAIの向かい合い方の絶対的ヒントと示唆が含まれているように思える。
「少なくともAlphaGoの37手がイ・セドルの78手を生み出しました」
「イ・セドルの新たな手法を促したのです」
●「アルファ碁(AlphaGo)」が人類最強棋士に勝利してか、しばらくして…。
さらに人間のデータを学習に使わない「アルファ碁ゼロ」や碁以外にも汎用化した「アルファゼロ」が登場して既に「何故、そのような思考なのか」などプロセスについては全く人類が入り込む部分はなくなってしまった。
対戦終了後のイ・セドルの台詞が浮かぶ。
(1勝でもあげられたことについて)
「この勝利が意味することは人間は持ちこたえられるということ」
「今後AIに勝つことは難しいと思います」
「一度でも勝てれば十分だと言う気がします」
●タイトルデザインはElliott Burford
これ以上はないというぐらいシンプルで美しい。
5戦全ての棋譜が浮かびあがる。
しかも37手と78手だけ黒と白ではなくブルーで描く
(デザイナーは違うが同じ人工知能をテーマとした『エクス・マキナ』のエンドタイトルに匹敵)

(↓こちらはドキュメンタリー映画のサイトではなく実際の…)
AlphaGo公式サイト
https://deepmind.com/research/alphago/

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2018-02-28

さあ、お飛び ! お飛び !!『花筐/HANAGATAMI』大林宣彦監督、窪塚俊介、満島真之介、長塚圭史、柄本時生、矢作穂香、山崎紘菜、門脇麦、常盤貴子、他

花筐/HANAGATAMI

監督 : 大林宣彦
原作 : 檀一雄
出演 : 窪塚俊介満島真之介
長塚圭史柄本時生
矢作穂香
山崎紘菜門脇麦
常盤貴子
村田雄浩、武田鉄矢
入江若葉、他

物語・1941年春、叔母(常盤貴子)が生活している佐賀・唐津に移り住んだ17歳の俊彦(窪塚俊介)は新学期を迎え、美少年の鵜飼(満島真之介)やお調子者の阿蘇(柄本時生)、虚無僧の如き吉良(長塚圭史)らと勇気を試す冒険に熱中していた。肺病に苦しむ従妹の美那(矢作穂香)に恋する一方、女友達のあきね(山崎紘菜)や千歳(門脇麦)とも仲がいい。そんな彼らに、いつしか戦争の影が忍び寄り…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Hanagatami

Memo1
「さあ、お飛び ! お飛び !!」
「殺されないぞ、戦争なんかに!」
いつの間にか「戦争三部作」とよばれるようになった『この空の花-長岡花火物語』『野のなななのか』に連なる作品(確か最初はそう呼ばれていなかったと思うけれど、本当にいつのまにか)
デジタルの扱いがこなれてきたと言えば失礼にあたるかもしれないが、そのバランス、ケレン味含め、本作が個人的には三部作中最も好きな作品となった。
上映時間2時間49分。
決して短くはない。
だが長くもない。
むしろ気がつけば終わっていて短いぐらいだ。
なんという芳醇な時間的贅沢さ。
映画が終わって場内が明るくなった時に湧き立つ観客席の"静かな熱"とも呼べる空気感(高揚感)は忘れられない。
冒頭のナレーション。
「昭和12年はまことに陰鬱な年であったと檀は述べている」
「その年、檀一雄25歳」
「これはあの戦争の時代を一生懸命に生きぬこうとした当時の若者たちによる青春の筐である」
そのあとに続くナレーション(僕こと主人公である俊彦)では「ここは架空の町であってもよい。またいつの時代であってもよい」と続く。
そう!この映画は現在へとも地続きなのだ。
鵜飼に憧れて煙草を拾う俊彦、それを見ていた笛を吹く吉良。調子にのり熱湯に手をつける阿蘇。美しい叔母、舞う花びらと血と月のイメージ美那、吉良との刹那的な思いが揺れる千歳、店の切盛りで男顔負けのあきね。各人のキャラクター立ちが際立っている。
そこで芽生える考えの対立、不良のまねごと、恋心…
それらを全てかき消してまうように忍び寄る戦争の影(教授に届いた赤紙のくだりなど、本当に怖い…)
鵜飼の台詞。
青春が戦争の消耗品だなんて、まっぴらだ

Hanagatami_p
Memo2
パンフレットデザインは岡崎直哉氏。
48ページ。
監督による演出ノオト。
完成版ではカットされた冒頭に入っていたといわれる大林監督が少年時代に描いた「戦争画」についても写真と絵、テキストで紹介されている。
批評、対談、盛りだくさんの充実した内容。

Hana_3

Memo3
いくつかのインタビューなど。
1月27日
大阪ステーションシネマ舞台挨拶。
監督が舞台袖から現れて、まず行ったのはスクリーンを見上げて手を振り挨拶。
話はフレッド・アステアから手塚治虫(10歳年上「手塚治虫お兄ちゃん」と呼んでいた)、そしてガンとの関わり方についてなど、まったく途切れることなく、あっという間にマスコミ用フォトセッションが入るか入らないかの30分ぎりぎりまで話されていた。
1月30日 MBS「ちちんぷいぷい」
27日の舞台挨拶の映像(上記画像)とインタビュー
「このごろ大林は戦争映画を撮りだした」と言われているんですが、それは間違いであって「戦争を体験したから映画を撮っているんだ」と。
と、いう言い方のほうが私の場合は正しいんだろうと。
2月22日「ゴロウデラックス」
課題図書は『大林宣彦の体験的仕事術』
番組内では、なんと!16mmで撮られた『喰べた人』の岸田森さん出演シーンやマンダムCMや『HOUSE/ハウス』『転校生』などが紹介された。
「3歳 映写機で遊ぶ」のテロップ。
監督のひとこと。
映画館で観る前に映画を作っていた

『花筐/HANAGATAMI』公式サイト
http://hanagatami-movie.jp/

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2018-02-25

『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』ソフィア・コッポラ監督、ニコール・キッドマン、キルスティン・ダンスト、エル・ファニング、コリン・ファレル、他

The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ
The Beguiled

監督 : ソフィア・コッポラ
出演 : ニコール・キッドマン
キルスティン・ダンスト
エル・ファニング
ウーナ・ローレンス
アンガーリー・ライス
アディソン・リーケ
コリン・ファレル
、他

物語・南北戦争下のアメリカ南部。世間から隔絶された女子寄宿学園で生活している園長マーサ(ニコール・キッドマン)や生徒(エル・ファニング)ら女性7人は、けがを負った北軍の兵士・マクバニー伍長(コリン・ファレル)と遭遇する。敵方ではあるが、彼女たちは彼を屋敷に運んで介抱する。園長をはじめ学園の女性たちは、容姿端麗で紳士的な彼のとりこになってしまう。(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Be1

Memo1
南部のプランテーション様式の館、そしてあの土地独特の植物スパニッシュ・モス(「真夜中のサバナ」を思いだした!)、きのこ(粘菌質)。
培養されているような女性たちだけの寄宿舎に異物(負傷した男性兵士)が…。
ソフィア・コッポラ監督らしく、さらりと描いているように見えてレイヤーの下にはじっとりと…
(もっと、どろっとした感じで描かれるのかと思いきや一般的に言われる愛憎劇とは違った感触。しかし終盤、突如変貌するマクバニー伍長は現代におけるDV的要素の意味合いも?)
比較
同じ原作を元に映画化されたドン・シーゲル監督『白い肌の異常な夜』はタイトルバックからして南北戦争のスチールにラロ・シフリン(!)の音楽が重なる濃いオープニング。
マーサと兄との間に起こっていたこと(ドロドロ)、黒人のメイド(いかにも南北戦争時)や象徴的な傷を負った鴉など省かれたエピソードも多い。
そして、マーサと教師エドウィナの嫉妬に燃えるシーンはもっと激しく(終盤、叩きあうシーンもあった)やラストの歓送会と称した企みのディナーで出される毒きのこもエミーが(それこそ、さりげなくマーサから採ってきてと匂わされつつも自分の意志で)採ってきたものという設定(口元がニヤッとする場面の怖いこと怖いこと)
しかし本作では上流階級出身のマーサと教師のエドウィナ(キルスティン・ダンスト)との育ちの違いをドレスの肩出しに対してチクリと言葉で射す程度。(ほとんどが視線か言葉で)
衣装が戦時の割には清潔な汗のイメージがひとつもない白基調のものが多いことも特徴的。(ドレスはさらにカラフル)
室内インテリアや食器、フランス語の授業、お祈りの時間、洗濯を乾したり畑を耕したりの日常などが細かく描写されている。
The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』がヨーロッパビスタ(1.66:1) ドン・シーゲル監督『白い肌の異常な夜』はアメリカンビスタ(1.85:1)とアスペクト比が違う。
(よって、シネコン張りキャン・スクリーン上映では左右に黒みが残っていました)

Be2

Memo2
あきらかに狙っている誰かの視線のような周辺が微妙に暗い、まるでピンホールカメラで撮ったようなショット。
該当場面→マクバニーがエミーが門に脱走兵がいる印として青い布を結んでいるところをマクバニーに見つかり悲鳴をあげる。あわてて庭に飛び出したマーサを捉えたシーン。
(いろいろ記事などを読んでいくとビンテージレンズが使用とある)
メイキング映像を見ると驚くことに、ものすごく明るいライティングで撮られている(自然光もいかしてはいるが、かなり意図的に光のコントロールが行われていてビックリ。)
ゆえに全体の屋外と室内との差異を色彩調整したものと思われる。
Go Behind the Scenes of The Beguiled
https://www.youtube.com/watch?v=ipAT_WzPK-Y
Title Design > PETER MILES STUDIO
(ソフィア・コッポラ監督の前2作「SOMEWHERE」「ブリングリング」に続いて)
ポスターなどに使用されているものと本編のメインタイトルでは同じスクリプト系でも書体が違うものになっている。
衣装デザイナーはステイシー・バタット
スケッチなどが掲載されたEW誌・記事
南北戦争が始まる前に持っていた衣装しかないという設定(故にパステルカラーの衣装を着ている)で、何度も何度も洗濯され日にやけて、少し褪せたイメージを作り出した。
http://ew.com/movies/2017/10/04/the-beguiled-sofia-coppola-costume-design/
そう考えると記事タイトルにあるように一種のゴーストストーリーとしても捉えられるかもしれない。その象徴的な門に閉ざされた館の中は時が止まった戦前のままなのだから(遠くで砲撃の音がずっと聞こえているが戦争のシーンは出てこないし…)

『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』公式サイト
http://beguiled.jp/

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2018-01-31

『希望のかなた(THE OTHER SIDE OF HOPE/Toivon tuolla puolen)』アキ・カウリスマキ監督、シェルワン・ハジ、ニロズ・ハジ、サカリ・クオスマネン、他

希望のかなた
THE OTHER SIDE OF HOPE
Toivon tuolla puolen

監督 : アキ・カウリスマキ
出演 : シェルワン・ハジ
ニロズ・ハジ
サカリ・クオスマネン
イルッカ・コイヴラ
ヤンネ・フーティアイネン
ヌップ・コイヴ
カイヤ・パカリネン
サイモン・フセイン・アルバズーン
カティ・オウティネン
マリヤ・ヤルヴェンヘルミ

コイスティネン(ヴァルプ)

物語・カーリド(シェルワン・ハジ)は石炭を積んだ貨物船に隠れ、内戦が激化するシリアのアレッポから遠く離れたフィンランドの首都ヘルシンキにたどり着く。差別と暴力にさらされながら数々の国境を越え、偶然この地に降り立った彼は難民申請をする。彼の望みは、ハンガリー国境で生き別れた妹ミリアム(ニロズ・ハジ)を呼び寄せることだけだった。(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Hope1

Memo1
ミニマルな「味わい」を楽しみ、時にニマニマしながら見ていられるカウリスマキ作品。
そんな中にあって、本作は初めて感じるビターさが加味されている(さまざまなインタビューなどを見たり読んだりしても、いつになく直裁的な表現が垣間見えたり)
蔓延しているステレオタイプな偏見(あのネオナチの執拗さはなんなんだ)や官僚主義(難民申請に対しての、あの冷たい扱い←それでも強制送還当日、逃げる手助けをしてくれる人も描くところがカウリスマキ監督らしい)
不寛容な時代における寛容さとは?
それを絶妙な匙加減でユーモアとともに織り込む語り口はさすがだ。
運良くレストランを開業したもうひとりの(家を持たない或いは捨ててしまった)主人公ヴィクストロムも最初は「なんなんだ、このオヤジ」と思って見ていたら、ところがなんの意外ととぼけつつも懐深い(従業員が拾ってきた犬コイスティネンの扱いや給料に対する対処など絶妙)
それらの人物伏線は中盤。カーリドと対面した際にパシッといかされる。
ヴィクストロムが収容施設から逃げ出しゴミ捨て場で寝泊まりしていたカーリドを見つけ、いきなり殴り、すかさずカーリドに殴り返される。
次のシーンでは鼻にティッシュをつめこんだふたり。
このテンポの妙。
商売繁盛をかけて寿司店に大幅リニューアル。
まずは資料集めと書籍を買いあつめているところにうつるウィンドーケースの中に紀伊國屋書店のカバーがついたままの本があって「まぁいくらなんでもこのままでは売ってないでしょ 笑」と
開業後。
「おっ!結構、お客さんが来てる」
これは功を奏したかと思いきや、あの寿司…。
一転。
げんなりして変えるお客さんとションボリしているヴィクストロムらレストランの面々の姿はホント、おかしかったなぁ 笑
ヴィクストロムらの手助けによって妹ミリアムと再会を果たすカーリド。
それまで全く笑わないに等しかった主人公カーリドが笑みをもらす。
(あぁ本当にカーリドにとって最大の望みは妹を探し出し呼び寄せることだったんだなぁということが判る)
そして、ラスト。
前夜ネオナチに襲われ木陰に横たわるカーリド。
妹が無事管理局に入っていくところを見て安堵の表情を浮かべる。
おなじみのカティ・オウティネンや監督の愛犬ヴァルプ(劇中の名前が「街のあかり」の主人公と同じコイスティネンって 笑)も登場。

Hope2

Memo2
パンフレットデザインは大島依提亜さん。
本文パンフを天地左右3mmずつ大きい表紙に貼りつけた仕様。
帝國寿司の前掛けを模したページも(用紙が!)
センターにカラー写真(順番やカウリスマキ監督ならではの語る顔がズラリと並んだページも)
劇中楽曲の歌詞(訳詞)も掲載。
(それにしてもドブロなど含めてカッコイイギターが多数出てきて、そこもまたアクセントであり個人的見どころでした)

映画『希望のかなた』公式サイト
http://kibou-film.com/

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