2017-06-07

タイトルデザイン_51 カイル・クーパー(Kyle Cooper) 『夜に生きる(Live by Night)』ベン・アフレック監督・主演、エル・ファニング、シエナ・ミラー、ゾーイ・サルダナ、他

注・内容、台詞に触れています。
夜に生きる
Live by Night

原作 : デニス・ルヘイン
監督 : ベン・アフレック
出演 : ベン・アフレック
エル・ファニング
シエナ・ミラー
ゾーイ・サルダナ
ブレンダン・グリーソン
クリス・メッシーナ
クリス・クーパー

物語・禁酒法時代のボストンで、ジョー(ベン・アフレック)は警察幹部の父親に厳しくしつけられた。だが、彼はその反動でギャングの世界に足を踏み入れる。ある日、ジョーは強盗に入った賭博場でエマと運命の出会いを果たすが、彼女は対立している組織のボスの愛人で…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Lbn2

Memo1
第一次大戦と第二次大戦、ふたつの戦争の間をめぐる父と子(娘)の物語。
警察官(警視正から警部に降格される)である父親とコクリン、タンパ警察署長と娘。そしてジョーと息子。
デニスル・ヘインによる3部作『運命の日』(ジョーの父親を軸に書かれている)『夜に生きる』『過ぎ去りし世界』(ジョーと息子のその後)の中間部分。
上下巻の長さのため映画としては端折っているところもあるが、全体の語り口がよくて落ち着いて見られるいい映画だった。
役者の顔が全ていい。
面構えというのだろうか。
(知人に言わせると昔の映画に比べたら手緩いらしいが、それでも本作、素晴らしいと思います)
対立するふたつの組織。
アイルランド系ギャングのボス、アルバート・ホワイトとイタリア系ギャングのボス、マソ・ペスカトーレ。フロリダ、タンパ警察署長フィギス(クリス・クーパー)
KKKのリーダー、RD(喋り方がまたイラッとする)の、この顔一度、見たら忘れまへんでー(←関西弁)
そして、ジョーの父親。
(いかにもな警視正かと思いきや、息子の服役期間を縮めるために少しゆすりをかけたりもする場面もあり、一面だけでは計り知れない善悪についての"揺れ"が描かれる)
そしてエマ(シエナ・ミラー)、クラシエラ(ゾーイ・サルダナ)、ロレッタ(エル・ファニング)。3人の女性がジョーの運命にかかわってくる。
アルバートの女だったエマを内通者としての賭博場襲撃シーン。
「靴下を私の口に?」
「大丈夫だ。使っていないやつだ」
「そうやって嘘をつく」
(この時、テープを頭に巻く際に妙に目線が…、と、思っていたら暫く経っての場面でそこを使ってキスシーンにつなぐ上手い描き方が出てきた←こういった、ちょっとしたところが気がきいていてベン・アフレック監督、いいなぁ、と思えるところ)
薬物中毒から立ち直り教会のカルト的説教者となるフィギスの娘、ロレッタ(エル・ファニング)。
彼女の説教の影響力は大きくカジノ建設が頓挫しそうになる。
しかし、ジョーにはロレッタを殺すことができない。
(最初のモノローグにも出てきているが、彼の中には父親から引き継いでいるとも言える"善的なもの"があるのだ)
ふたりがレストランで会話をするシーン。
「私たちはみんな地獄に行くの」
あなたは違うというジョーに。
「私たちは学ぶの」
「ここが天国だということを」
「法律でもKKKでも阻止できなかったカジノ建設をあなたは阻止できた」
「私が?」
ここでニッコリと微笑む。
(このあと自ら命を絶つこととなるだけに、このシーン、本作白眉といえる)
クラシエラには駅でジョーが見かけた時から、ほぼひとめぼれだ。
そしてクラシエラはジョーの中の"善的なもの"を見抜いていたともみえるところがある。
服役中に亡くなった父親の葬儀。
墓の前に佇むジョー。
(ここ、カメラがスコープサイズ中央に配したジョーに寄っていくのだが、ちょっとブルース・ウェインにみえたw こんな感じのショットBvSで無かっただろうかと既視感)
ラスト、ジョーと息子。
(ボイスオーバーで)
「週末は映画を見に行った」
(ニュース映像にヒトラーの姿)
「ドイツ野郎が暴れているみたいだが戦争にはならないだろう」
(西部劇が流れ)
「いたく気に入ったみたいだ」
脚本に兄(ダニエル・コフリン)の名前を見つける。
(すごく嬉しそうに)
「ほら、お前の叔父さんだ」
(海にでかけて)
「天国はどこにあるの?」
(ロレッタから聞いたことを息子に伝えた)
「ここが、その場所だ」

Memo2
プロローグ部分(セピア色調で写真、ニュース映像などを静かにフェードイン、アウトを繰り返しながらモノローグがかぶさる)とメインタイトルデザインはカイル・クーパー(Kyle Cooper)
プロダクション表記なし。
本編に使われているタイトルロゴのデザインが既製フォントを少し変えて作っていいて、これが絶妙のバランス。
End Title > SCARLET LETTERS

映画 『夜に生きる』 公式サイト
https://warnerbros.co.jp/c/movies/yoruni-ikiru/

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2017-06-04

"最後のウルヴァリン"『LOGAN ローガン』ジェームズ・マンゴールド監督、ヒュー・ジャックマン、ダフネ・キーン、パトリック・スチュワート、他

注・内容、台詞に触れています。
LOGAN ローガン

監督 : ジェームズ・マンゴールド
出演 : ヒュー・ジャックマン
ダフネ・キーン
パトリック・スチュワート
ボイド・ホルブルック
スティーヴン・マーチャント、他

物語・近未来では、ミュータントが絶滅の危機に直面していた。治癒能力を失いつつあるローガン(ヒュー・ジャックマン)に、チャールズ・エグゼビア(パトリック・スチュワート)は最後のミッションを託す。その内容は、ミュータントが生き残るための唯一の希望となる少女、ローラ(ダフネ・キーン)を守り抜くことだった。武装組織の襲撃を避けながら、車で荒野を突き進むローガンたちだったが…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Logan

Memo1
まさに"最後のウルヴァリン"に相応しい圧倒的な力作。
また泥臭さ溢れるロードムービーであり「X-MEN」本編ラインとは一線を画す、現実世界との地続きSFでもあります。
以下、ウルヴァリン(ジェームズ)の記載はローガン、チャールズ・エグゼビア(プロフェッサーX)はチャールズで記しています。
ローラを演じたダフネ・キーン。
(このキャスティングが決め手ともいえる)
前半の全く喋らない"キーッ"とした表情や動作から、後半の心開き始めた情緒ある芝居まで、本当に素晴らしいです。
オーディション風景の動画。
Logan | Dafne Keen's Audition Tape with Hugh Jackman
(20th Century Fox 公式サイト)
https://www.youtube.com/watch?v=h8YJt6iQPNA
ローガンたちと関わった人々(夕食に招いてくれた家族からスーパーの店員にいたるまで)誰ひとりとして助からない。
ローガンにせよローラにせよ、その躊躇ない戦闘スタイルは制御不能となる戦うためだけに育てられた本来の姿を体現したものだ。
壁にかけられた日本刀、出生のことなどシリーズとしての目配せもあるが、前作を見ていなくても成立させている作り方が上手い。
「世界で最も棄権な脳を持つ男がアルツハイマーだと…?」
その言葉通りチャールズが能力を発揮したオクラホマシティでのカジノホテルシーン。その凄まじさ。
(見ているこちらも力が入ったー 汗)
前年に起ったウェストチェスターでの7人のミュータント死亡についても、このことが原因だということが垣間見られる。
2017年の現在からみても本当に近未来らしく(2029年)既に始まっている事柄が実際に描かれている。自動運転のトラック(運転席が無くコンテナ荷台だけAUTO TRAC)や夜間でも動き続ける巨大農作業機による遺伝子組換えトウモロコシの畑、固いボディの装甲リムジン(いくらなんでもと言えるほど頑丈。後述記事リンクあり)など。
前述どおりの地続きSF。
チャールズとふたり、ホテルで映画を見ている。
(まるでお祖父ちゃんと孫のような構図。ローガンとチャールズも親子のようだ、というよりも最後までローガンのことを気にかけているチャールズの姿は親子以上に思える。ゆえに、あの結末が…)
見ている映画は『シェーン
その台詞。
(それはローガンを埋葬したのち、ローラがローガンへおくった言葉へと繋がる)
「1度、人を殺してしまうと、もう元の生活には戻れない」
「ママのところへ帰りなさい」
「そして、こう伝えて」
「もう谷には銃は無くなったから」
「シェーン」のラストについては有名な「シェーン・カムバック」のあとに続く墓所を通り過ぎるシーンがさまざまな意味を持って描かれて終わる。
(実際の死、或いはガンマンとしての死など)
『シェーン(Shane)』Ending
https://www.youtube.com/watch?v=lOmsbhqs95s
「ローラは君の子どもだ」
ローラがリュックの中に入れていたファイルの中に
SOURCE DNA : JAMES HOWLETT(ローガンの本名)と記載が。
最後の戦い
自分と瓜二つの(エンドクレジットではどちらもヒュー・ジャックマン表記)X-24との戦いは、まさに"影を殺す"が如くの緊迫感。
(X-24の治癒能力のなんたる高さ)
ついにローラの放ったアダマンチウムの弾丸で止めをさしたとき、「ウルヴァリン」の姿ではない本来の人間の姿「ローガン」へと戻っていく息絶えつつあるローガン。
そこでのローラの台詞。
「パパ!」

Memo2
"TVブロス"インタビュー
・イーストウッド監督『許されざる者』の主人公は「シェーン」の年老いた姿だという監督の意見に、同じように「許されざる者」のことが頭に浮かんでいたから面白い一致だ、とヒュー・ジャックマン。
・エンドクレジットにジェームズ・マンゴールド監督の大学時代の恩師であるアレクサンダー・マッケンドリック監督に対してスペシャルサンクスが記されている。
(「3時10分、決断の時」「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道」などにも)
さて、あのスペシャルリムジンのデザインは?
(オートトラックやジープなども掲載)
How The Cars Of Logan Grappled With The Very Real Future
http://jalopnik.com/how-the-cars-of-logan-grappled-with-the-very-real-futur-1793099275
どこで撮影されたの?
Where was Logan filmed ?
ロケ地ガイド
http://www.atlasofwonders.com/2017/02/logan-filming-locations.html

Logan2

Memo3
メインタイトルデザインは「ウルヴァリン : SAMURAI」も手がけたPicture Mill and F.Ron Miller
エンドタイトル > SCARLET LETTERS
Opening credits – typography
(タイトルシークエンス画像あり)
使用フォントはAkzidenz-Grotesk
後半に掲載されている Logan Noir : Logan Black & White の雰囲気は「マッドマックスFR : Black & White版」でも感じた構図と陰影の美しさが際立っている。
http://annyas.com/screenshots/updates/logan-2017-james-mangold/

映画『LOGAN/ローガン』オフィシャルサイト
http://www.foxmovies-jp.com/logan-movie/

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2017-05-31

『パーソナルショッパー(Personal Shopper)』オリヴィエ・アサイヤス監督、クリステン・スチュワート、他

パーソナルショッパー
Personal Shopper

監督 : オリヴィエ・アサイヤス
出演 : クリステン・スチュワート
シグリッド・ブアジズ
ノラ・フォン・ヴァルトシュテッテン
ラース・アイディンガー、他

物語・パリで、多忙な人々の買い物を代行するパーソナル・ショッパーとして働くモウリーン(クリステン・スチュワート)は、数か月前に双子の兄を亡くし悲しみに暮れていた。そんな折、携帯電話におかしなメッセージが届き、さらに不可解な出来事が発生し…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Ps

Memo
「他の誰かになりたい?」
"忙しいひとの代わりに"買い物をすることと"誰かを見えない何かを引きつける"霊媒体質とが合せ鏡のようになっている。
画面を見ている観客自体が目撃者であるような映画的話法。
(ルイスの姿らしき者が見えたのは映画を見ている観客だけ)
スコープサイズ、35mmフィルム撮影。
"ゴースト"もまた光の変種とするならばフィルム撮影は適していると思う。
3ヶ月前に心臓麻痺で急死した兄との「先に亡くなった方が、向こうから合図を送る事にしよう
その約束自体がモウリーンをパリに縛り付けている。
見方によっては兄が妹であるモウリーンを呪縛から解くために導いていく(後述、インゴによる事件への巻きこまれも含め)話とも読み取れる。
実際に存在する画家、ヒルマ・アフ・クリント(没後20年まで作品を公表しないようにとの遺言も)。そしてヴィクトル・ユゴーが行ったテーブルターニング(音の回数によってイエス、ノー、アルファベットを印す)
さらには、かつて住んでいた家でのエクトプラズムを吐く亡霊との遭遇(階段の途中の引っ掻いたバツ印とテーブルに残されたバツ印の符号、ここ1番怖かった…)
そういったオカルティックな雰囲気が見ているこちら側も"気分としての加担者"たらしめている要因。
兄もその彼女ララも新しい彼氏も、そしてモウリーンも彫刻や絵を描くという芸術的行為に関係している。
もしかして、ここ笑うところ?と思ったのが謎の送信者とのメッセージのやりとりで「怖いものはあるか」に対しての返信が「ホラー映画」って‥…体験している事の方がよほど怖い。
キーラが殺害され(犯人はキーラの不倫相手インゴであることは早い段階で明確だ。ただ、前述のとおり散りばめられたオカルティック雰囲気により何か"別のもの"の犯罪の匂いがするようには見える流れがある)
自分に殺害の容疑がかけられるように仕組まれた罠としてのカルティエのアクセサリーが入った紙袋。
最初に部屋に尋ねてきたのは(メールメッセージで"もう下に来ている""階段をあがっているぞ"などが続々着信する)実はルイスではないのかと思われる。
というのも、モウリーンは全くインゴと顔を合わせていない。
透明人間が歩いて行くように写される、廊下、エレベーター、入口のドアのシーンのあと、ディレイされて描かれるインゴの慌てたように同じところを通って行く場面が続く。
(最後はホテル前でインゴを捕まえようと警察が現れる)
兄が妹を助けたともとれる描かれ方。
ラスト
パリを出て、彼のいるオマーンへ到着したモウリーン。
ララの家に現れたガラスコップが割れた時と同じ現象が、ここでも。
「ルイス?ルイスなの」
ドン(Yesを標す1回だけの激しい音)
いくつかのやりとりがあって…
「全部、気のせい?」
ドンと1回、激しい音
エンドクレジットへ
(なんとも皮肉が効いているし、開放された感じもあるし、宙ぶらりんにされたような気になる面白いラスト)
クリステン・スチュワートはアサイヤス監督『アクトレス〜女たちの舞台〜』に続いての起用。撮る監督によって女優の雰囲気が変わることはよくあると思うけれど、それもまた女優としての"同化憑依体質"を呼び起こす監督との共犯関係のひとつとも言えるかもしれない。

Ps3

日本版含め3種類のポスター。
クリステン・スチュワートのポーズは同じだが、座っている場所がそれぞれベッドや違う種類の椅子になっている。

映画『パーソナル・ショッパー』公式サイト
http://personalshopper-movie.com/

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2017-05-19

"あなたの人生の物語"『メッセージ(Arrival)』ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督、エイミー・アダムス、ジェレミー・レナー、フォレスト・ウィテカー、他

注・内容、台詞、ラストその他全般に触れています。
メッセージ
Arrival

原作 : テッド・チャン
監督 : ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演 : エイミー・アダムス
ジェレミー・レナー
フォレスト・ウィテカー、他

物語・巨大な球体型宇宙船が、突如地球に降り立つ。世界中が不安と混乱に包まれる中、言語学者のルイーズ(エイミー・アダムス)は宇宙船に乗ってきた者たちの言語を解読するよう軍から依頼される。彼らが使う文字を懸命に読み解いていくと、彼女は時間をさかのぼるような不思議な感覚に陥る。やがて言語をめぐるさまざまな謎が解け、彼らが地球を訪れた思いも寄らない理由と、人類に向けられたメッセージが判明し…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Arrival1

Memo1
ブログ記事タイトル名は原作"あなたの人生の物語"を。
映画を観終わったときに、その原作タイトルがまた違った深度を持って問いかけてくれる。
(これより以降、思いつくままにメモを元に台詞やシーンをランダムに記載しています。エイリアン表記ではなく全てヘプタポッドとして記載)
フラッシュバックと思われていた娘、ハンナ"HANNAH"との映像。
実は"これから起こるできごと"フラッシュフォワードであることが後半にわかってくる。
"起こりうる未来が過酷なものであっても、それを受け入れる?"
ラスト
(ルイーズとイアンと小鳥が描かれた絵)
「パパとママが動物に会ったの」
撤収していく軍や関係者たち。
ルイーズのモノローグ。
「あなたの物語はこの日から始まる」
イアンの台詞。
「ずっと宇宙に憧れてきた」
でも1番驚いたことは彼らにではなく、君に出会ったことだ
「パートナーが君でよかった」
「数学者のような考え方をする」
理系と文系がタッグを組んで問題解決に挑む。
このふたりでよかったと思えるシーンの積み重ね。
性急な結果(ここで言う結果とは"彼らが地球に来た目的は何かということを知ること)を求めてくる政府。そしてウェバー大佐。
それに対して語彙がもっと必要だと解くルイーズ。
そこで、こういう話をする。
オーストラリアに初めて上陸した際、先住民族に対して「あのお腹の袋に子どもを入れて飛び跳ねている動物はなんだ」という質問に対して「カンガルー」と答えた。
でも、実際は彼らの言葉では「理解不能」という意味。
「お見事」というイアン。
「(字幕では)都市伝説よ」
(実際はうるおぼえですが→「真実ではないけれど私の伝えたいポイントをおさえている話」)
(前段として、ウェバー大佐が大学に訪ねてきた際、去り際の大佐に別の教授にあたる際にサンスクリット語で"戦争"の意味を聞いてほしいというシーンもある)
ファーストシーンとラストが繋がる円環構造についてはSFマガジンでの添野知生氏による批評(5ページにわたって紹介。他に基本、善人しか出てこないこと「ある日どこかで」のことなど鑑賞後に読むテキストとして最良)やパンフレット中のレビューでもいくつか記述されている。
(そのシーンのために始めと終わりに使用されるマックス・リヒター「On the Nature of Daylight」←End title crawlにも単独表記されるほど重要な楽曲)
殻"Shell"の中でルイーズたちとヘプタポッドの間にある"Wall"。
それはまるで見ているこちら側(観客側)のスクリーンのようでもある(本作自体がスコープサイズだし)。
スクリーンの中にスクリーンがある感じ
そこに近づいていくルイーズと観客はヘプタポッドとの遭遇を同じような気持ちで見ることとなる。
また"Shell"自体のサイズ感(ヘリコプターの俯瞰から見たものと地上から近づいていったときののものとの比率)が分からなくなるように被写界深度の浅・深を巧みに取り入れている撮影手法も素晴らしい。
"Shell"は宇宙船というよりは、まさに容器のようでもあり通路のようでもある。
ゆえにラストに去って行く姿は舟が離れていくというよりは、その場から消滅していくようだ。
ルイーズとイアンが兵士たちによる爆弾テロに巻き込まれ"Shell"から弾きだされる(事実上ヘプタポッド"アボットとコステロ"に助けられたことに)直前に受け取った膨大なロゴグラム。
「時間についての表示が多い」
「点と余白の数を計算してみた」
0.0833
「分数で表すと」
1/12
"武器を与える"その意味するところと世界の12地点に現れたことなど全てが合致して出てきた答え…。
娘ハンナとのフラッシュフォワード映像がよぎる(その前後の描き方の見事さ)。
ある語句を思い出せないでルイーズに質問するハンナ。
「取引?」
「ウィンウィン?」
「違う。もっと数学的な感じの…」
「それだったらパパに電話してみなさい」
そして。
未来の自分が現在の自分から答えをもらう。
(切迫した状態で各国お互いのデータをどう渡しあうのか…。ウェバー大佐らに説得するルイーズ。そこでポツリとイアンが…「ノンゼロサムゲーム」)
ハッとするルイーズ。
そしてハンナに。
「ノンゼロサムゲーム」
("non-zero-sum game" 日本語字幕で「非ゼロ和ゲーム」と出ていた)
原作で出てくるフェルマーの光の最小径路が省かれているのは映画としての選択だったのかはよくわかる。
それでも、それっぽい台詞がさりげなく織り込まれている。
それはルイーズの姿勢も表している。
「急がば回れよ」
初見の際に「!」と思ったチャン将軍との(フラッシュフォワード)1年半後の会話。
「あなたに会いたくて来た」
「あの時、わたしの携帯電話に電話をくれたから今こうして会えた」
「わたしは番号を知らない」
チャン将軍が携帯の番号を見せながら…
今、知りましたよ
手が無意識に震えるほどの恐怖もありながら与えられた使命(目的)のために勇敢に立ち向かう聡明にして孤独を内に秘めた言語学者ルイーズ。演じたエイミー・アダムスが本作でアカデミー賞にノミネートされなかったことは謎。
そのエイミー・アダムスの透きとおるようなブルーアイと防護服のオレンジ色が補色になっている点も美しい。

Arrival

Memo2
タイトルデザインはLouis-Martin Duval
(抱き合うふたり。待ち受ける未来を知りつつも…)
そして静かに暗転。浮かびあがるARRIVALのタイトル。
http://annyas.com/screenshots/updates/arrival-2016-denis-villeneuve/
コンセプトアート
(かなり違っているものもある)
Concept artist Meinert Hansen
Arrival: Concept Art, Part 1: The Shell
https://meinerthansen.com/2016/11/13/arrival-concept-art-part-1-the-shell/
Arrival: Concept Art, Part 2 – The Aliens
https://meinerthansen.com/2016/11/19/arrival-concept-art-part-2-the-aliens/
ポスター右下に記載されている12ヶ所の緯度・経度が確認できるサイズで閲覧できるポスターサイト。
http://www.impawards.com/2016/arrival_gallery.html
音をスペクトラムで表した図。
モンタナがその中で抜け出てピークを指している。
(後半は'TED'における8次元についてのスピーチ関連記載)
https://medium.com/colorless-green-ideas/the-arrival-a-colorless-story-of-your-life-312504e04700
一貫しての言語学者ルイーズの視点で描かれる本作。その根幹たる「使用言語によって思考は影響される」というサピア=ウォーフの仮説についての(おそらく)唯一の書籍『言語・思考・現実』(L・ベンジャミン・ウォーフ/著)
公開後に突如、売れ始めるかも?
音楽は同じヴィルヌーヴ監督の『プリズナーズ』『ボーダーライン』を手がけたヨハン・ヨハンソン(『ブレードランナー 2049』も控えている)
公式ウェブサイト
http://www.johannjohannsson.com/
既に日本以外ではBlue Rayが発売されており特典マテリアルとして1時間を超えるメイキング関連映像が収録されています。
テッドチャンへのインタビューから音響設計、ロゴグラムの製作過程など多数。
IMDbで下記タイトルで検索可。
• Xenolinguistics: Understanding Arrival
• Acoustic Signatures: The Sound Design
• Eternal Recurrence: the Score
• Nonlinear Thinking: The Editing Process
• Principles of Time, Memory and Language
こちらの語句で画像検索するとその他、いろいろと面白いものが… → "arrival mathematica code"
数式処理システム"Mathematica"について
(言語、図像解析に用いられていて画面に多々登場)
https://mathematica.stackexchange.com/questions/137156/where-is-abbott-how-to-make-logograms-from-the-film-arrival
【TVブロス】5月20日号。ヴィルヌーヴ監督への渡辺麻紀さんのインタビュー。監督自身が「えっ、そうなの?それは知らなかった!」と反応した『スター・トレック ファーストコンタクト』でも人類が初めて異星人と遭遇するのがモンタナだったという話をはじめ、妙にツボにはまる話が掲載されています。(「『デューン』はまだやるか決まってないよ。」なども)
メイキング映像(約15分)
Go Behind the Scenes of Arrival
https://www.youtube.com/watch?v=QOMIL_6bkiU
"WIRED"掲載のロゴグラムのメイキング記事
"映画『メッセージ』制作陣はいかにして「エイリアンの文字」をデザインしたか?"
http://wired.jp/2017/05/20/arrival-alien-alphabet/

Arrival_p
Memo3
パンフレットデザインは大島依提亜‏さん。
"Shell"の型抜きが表1、表4に施されている。
(中にはモンタナと帯広の写真。合計全12ヶ所の"Shell"出現地の写真も掲載)
A5サイズ/本文52ページ。
プロダクションノートが12ブロック。
レビューが12本。
(原作、SF映画、コミュニケーション、音楽のことなど本編に関わる要素が網羅された内容)
ロゴグラムの素敵な仕掛けがセンターに。
映画史に残るSF作品に相応しい手元に置いておきたいパンフレット。

映画『メッセージ』 | オフィシャルサイト
http://www.message-movie.jp/


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2017-05-14

"わくわくシャマラン・ランド"『スプリット(Split)』M・ナイト・シャマラン監督、ジェームズ・マカヴォイ、アニヤ・テイラー=ジョイ、他

注・内容、他のシャマラン監督作品にも触れています。
スプリット
Split

監督・脚本 : M・ナイト・シャマラン
出演 : ジェームズ・マカヴォイ
アニヤ・テイラー=ジョイ
ベティ・バックリー
ジェシカ・スーラ
ヘイリー・ルー・リチャードソン

物語・高校生のケイシー(アニャ・テイラー=ジョイ)は、クラスメートのクレア(ヘイリー・ルー・リチャードソン)の誕生パーティーに招待される。帰りは、彼女とクレアの親友マルシア(ジェシカ・スーラ)をクレアが車で送ってくれるが、途中で見ず知らずの男性(ジェームズ・マカヴォイ)が車に乗り込んでくる。彼に拉致された三人は、密室で目を覚まし…。(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Split2

Memo1
やー、やっぱりやってくれました"わくわくシャマランランド"
マクガフィンに次ぐマクガフィン 笑
シャマランのシャマランによるシャマランのための映画。
今までも『アンブレイカブル』乗客全員が死亡した列車事故。その中、全く無傷で生き残ったデイヴィッド・ダン。何故?
物語が進んでいくと…「なーんや、漫画(コミック)の世界の話やったらなんでもありやん」(←関西弁)
サイン』かつての矢追純一氏の"木曜スペシャル"ノリでジャジャジャーンとテーマ曲が聞こえてきそうな雰囲気のテレビ映像のみで宇宙人襲来を見せてーの、けったいな(←関西弁)ホンモノ宇宙人をバットで倒したり『ヴィレッジ』何故、塀の外へ出てはいけないのか。結局、塀の中のコミューンでしたチャンチャン(←関西風オチ擬音)などなど、まずは大上段で謎を提示して"つかみは最強""はたして結末は!?""来るか!大どーんでーん返し"といった期待値までをもフックとするシャマランテイストが本作は極めて高い精度で復活している。
"イメージが超人や獣人や宇宙人や怪物や境界をつくり出す"
元をただせば『シックス・センス』でのオチ(小林信彦先生に言わせるとはじまってすぐの段階でブルース・ウィリスは死んでいることがわかってしまう、というか亡くなっていないとおかしい作劇となっているとのこと)ありきのシャマラン監督への"どんでん返しオチ期待"が肥大していったことに起因すると思うのですが…。
予告編では一切見せなかった父親と叔父、そして子供時代のケイシー。
3人でハンティングに出かけているシーン。
そのケイシーを見る目つきが最初からおかしい叔父。案の定、全裸でケイシーに近づいてくる。
そして…。
それらが拉致された室内のシーンの合間に(夢もしくはイメージとして)はさみこまれる(ケイシーが目覚めたときに必ず男が側にいる。例えば食事を手に「お寝坊さんね」)
父親の死後(写してはいないが、このハンティングの際に何かあったのは推察できる)、育ての親となった叔父による虐待は高校生の今になっても続いていることから逃れようと放課後もなかなか家に帰らないことが会話の中から読み取れる。
本当の"ビースト"それは…。
23人格とは別にもうひとり生み出される妄想の怪物"ビースト"
そのことについて極めつけの台詞は「人格によって肉体も変化する」
ヒッチコック作品への目配せはもちろんだが、どちらかというと精神科医との件でデ・パルマ監督『殺しのドレス』を想起。
奇妙なシーンのつなげ方や展開、ショット(冒頭、クレアとマルシアとのレストラン部分のカメラ視点、ケイシーが衣服を男に渡すところでは手元は写らない、最初は一緒の部屋だった三人のボジション、黄色の花の位置…)などで見方によっては全てケイシーの妄想だったとも捉えられる。
(『アンブレイカブル』と同じ世界の物語とすればケイシーの叔父へのイメージ自体が"ビースト"そのものであり、その事自体の妄想が"ビースト"を実体化させたと見るのがマクガフィンにつぐマクガフィン映画として妥当かもしれない←前述予告編や公開されているBEHIND SCENE全てにおいて叔父のことは隠されていたし)
ジェームズ・マカヴォイの多重人格者演技はもちろん、さすがだがケイシーを演じたアニャ・テイラー=ジョイの眼力(目ヂカラ)はラストバトルでの"ビースト"化したマカヴォイと向かい合った際にも決して負けてはいない凄みがあり、注目度があがってきている女優としての面目躍如。
シャマラン監督が本作のプロモーションで来日した際に日本時間4月27日午前1時に「重大発表あり」と予告の上『アンブレイカブル』の続編についてツイートしてたから公開前に既にネタバレ済み。
それにしても『アンブレイカブル』『スプリット』それぞれにおいて妄想がヒーローとビーストを生み出し『GLASS』となって帰ってくる…って、な、何、それ!?
エンドクレジットの最後の告知は笑いが起こっていたのでつかみはOK?

Split1

Memo2
スコープサイズのセンターに人物を配した撮影ショットがいいなぁと思ってIMDbをチェックしたら『イット・フォローズ』(そのデヴィッド・ロバート・ミッチェル監督次回作『Under the Silver Lake』も)を撮ったマイク・ギオウラキス(Mike Gioulakis)だった。
900万ドル低予算映画のためか、最新撮影機材使用ではないにもかかわらず、この仕上がりは素晴らしい。
Title Design > Filmograph
昨年の秀逸な『10 クローバーフィールド・レーン』タイトルデザインに続く(勝手にこう呼んでいる→)ソール・バス系デザイン。
Filmographはジェームズ・ワン監督の一連の作品や『ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション』カーテンコール(Curtain Call Sequence)のデザインなどを手がけている。(これから公開の『ジョンウィック2』や『パワーレンジャー』も)。
↓下記サイトは『スプリット』モーションテストやインタビューなど(タイトルシークエンス動画もあり)
http://www.artofthetitle.com/title/split/

映画『スプリット』公式サイト
http://split-movie.jp/

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2017-05-11

『カフェ・ソサエティ(Cafe Society)』ウディ・アレン監督、ジェシー・アイゼンバーグ、クリステン・スチュワート、スティーヴ・カレル、ブレイク・ライブリー、他

注・内容、台詞に触れています。
カフェ・ソサエティ
CAFE SOCIETY

監督 : ウディ・アレン
出演 : ジェシー・アイゼンバーグ
クリステン・スチュワート
スティーヴ・カレル
ブレイク・ライブリー、他

物語・1930年代。ニューヨークに暮らす青年ボビー(ジェシー・アイゼンバーグ)は、刺激にあふれた人生を送りたいと願いハリウッドに向かう。そして彼は、映画業界のエージェントとして大成功を収めた叔父フィルのもとで働く。やがてボビーは、叔父の秘書を務める美女ヴォニー(クリステン・スチュワート)のとりこになる。ひょんなことから彼女と距離を縮められて有頂天になり、結婚まで考えるようになるボビー。しかし、彼女にはひそかに付き合っている男性がいて…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Cafe_c2

Memo1
『ラジオデイズ』を軸に過去作全体を展観しているような趣きがある。
もっとも、その語り口。
既に名人至芸(例えるなら落語のような)の領域に達しているウディ・アレンなればこそのこと。
ボビーの恋は成就されない苦さがあれどもラストを新年で迎えることによって、どこかしら晴れやかな気分で劇場をあとにできるのだ。
ロスとニューヨーク。
ヴォニーとヴェロニカ。そう、まさに"ふたりのベロニカ"?
(キェシロフスキ監督の『ふたりのベロニカ』のように一瞬、すれちがうような接点もなく顔を合わせることはない)
この対をなすふたりの女性へのボビーのアプローチの仕方がロスとニューヨークでは全く違う。ロスではブロンクスから出てきたばかりで、まるで学生のような猪突猛進型だったのがニューヨークではクラブを成功させ自身に満ちた強引なアプローチに。
笑った台詞。
(毎度のことながらユダヤ人自虐ネタ)
「死刑の上にキリスト教に改宗するなんて」
「ユダヤ教にも来世があったらもっと信者が集まるのに」
スティーブ・カレルは『フォックスキャッチャー』で演じたデュポンの姿が怖くて怖くて、その演技があってか終始おさえぎみに話すボビーの叔父フィルとダブって見えた(こういう役、本当に上手い)
また兄ベンを演じたコリー・ストールが、そのくわえタバコの不敵さもあわせて見事な演技。(それゆえの改宗した際の刑務所での台詞が妙に可笑しい)
ニューヨークで知り合い、結婚するヴェロニカのブレイク・ライブリーは『アデライン、100年目の恋』でも1930年代を生きる(と、いうか100年間を演じる)女性を演じていて、写っているだけで華やかさが半径500mにふりまかれる。
文藝別冊『ウディ・アレン』冒頭対談での芝山幹郎氏『カフェ・ソサエティ』について「にやっとしたのは、キャステイングですね~(中略)~クリステン・スチュワートなんて『パニックルーム』の小娘だったのに、ここへ来て急成長ですね」←小娘って 笑
ドキュメンタリー『映画と恋とウディ・アレン』でダイアン・キートンがウディ・アレンを初めて見たとき「なんてカワイイ(cute)人なの」と思ったというインタビューの答え。
これ、ボビーに対してのヴォニーの台詞「かわいい。車のライトを見て動けなくなった鹿みたい」と見事なシンクロぶり。

Cafe_c3

Memo2
撮影監督ヴィットリオ・ストラーロと初タッグ。
(そして初デジタル)
詳細記事が下記に↓
【FILM AND DIGITAL TIMES】
Passage from Film to Digital
: Vittorio Storaro, ASC, AIC

PDFファイルで閲覧、保存可。
http://www.filmanddigitaltimes.com/wp-content/uploads/2016/04/75FDTimes-Storaro-PassageToDigital.pdf
具体的なグレーディングについてなど詳細に書かれています。参考としてエドワード・ホッパー「サマータイム」やレンピッカなどの絵画も。
Coloristは『ブルージャスミン』や次回作『Wonder Wheel』も手がけるAnthony Raffaele
ハリウッドパートはウォームトーン、ブロンクスパートは彩度を落としたクールトーン(銀落としのようなザラツキ感も)、ニューヨークパートはその中間、明るみのあるトーンと分けられている。1シーンだけクールからウォームへほとんど気づかないレベルでトーン変調する場面(ロスとブロンクスとの手紙のやり取りが読まれるところ)があった(もしかして、ウディ・アレン作品初?)
1930年代を再現した衣装に注目
スージー・ベンジンガー(Suzy Benzinger)
本作では「シャネル(CHANEL)」の衣装協力のもと当時のファッションが忠実に再現され、劇中でクリステン・スチュワートやブレイク・ライブリーが着用するドレス類からジュエリーまで提供されている。
↓こちらはFashionsnapの記事。
http://www.fashionsnap.com/news/2017-05-04/cafe-society/
(なお劇場によってはクリステン・スチュワートが出演しているCHANELのCMが本編の前に流れる)
タイトルシークエンスのフォントはおなじみのWindsor
ウディ・アレン監督はAmazon配信ドラマでも、やっぱり使用フォントはWindsorだった!
考えてみれば『アニー・ホール』以降『インテリア』を除いて全部そうだったかも。

Woody1

Memo3
↑ウディ・アレン本が並んでる!
左から文藝別冊『ウディ・アレン』評伝『Woody ウディ』『ウディ・アレンの映画術』(撮影時点では未発売の『ウディ・アレン完全ヴィジュアルガイド』宣伝チラシも置いていた)
評伝『Woody ウディ』(デイヴィッド・エヴァニアー著/ 大森さわこ 翻訳) 分厚い!二段組みなれど品のある書体、行間で読みやすい。
紙質を変えたモノクロ写真ページが巻頭と中盤合計32ページ(撮影風景や女優とのスナップなど)
公認ではないけれど協力はする形でウディ・アレンといくつかのメール交換が行われていて、その文言も読める。
締めくくりで「会いませんか」という著者に対して、ついに対面なった部分も書かれています。
文藝別冊『ウディ・アレン』はエッセイ・論考・コラム・作品評で構成されたアレン作品を見続けた者にとっても、これから順に見ていこうと思っている人にもおすすめのムック本。
作品評に当時のパンフレットからの再録がおさめられているのも嬉しい。
・『ウディ・アレン完全ヴィジュアルガイド』はオールカラーで基本見開きで1作品が紹介される、まさにガイドブック。
(ちなみに『アニー・ホール』と『マンハッタン』は5ページ)

映画『カフェ・ソサエティ』公式サイト
http://movie-cafesociety.com/

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2017-04-08

『レゴバットマン ザ・ムービー(The Lego Batman Movie)』クリス・マッケイ監督、ウィル・アーネット、ザック・ガリフィアナキス、マイケル・セラ、レイフ・ファインズ、他

レゴバットマン ザ・ムービー
The Lego Batman Movie

監督 : クリス・マッケイ
Voice Cast : ウィル・アーネット
ザック・ガリフィアナキス
マイケル・セラ
ロザリオ・ドーソン
レイフ・ファインズ、他

物語・町を守る孤独なヒーロー・バットマンのもとに、ロビンがやって来る。ところが、ロビンのあまりのお調子者ぶりに、二人は全く息が合わない。そんな中、ジョーカーが宇宙に閉じ込められていた悪者たちを脱走させ、世界の危機を救うべくバットマンとロビンは立ち上がるが…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

B1

Memo1
素晴らしい!
まっとうなバットマン正編映画。
遡るバットマンヒストリー(や、それにまつわる小ネタ)を折り込みつつ、ブルースウェインの過去と(合せ鏡としての)ジョーカーとの対峙、そしてロビン、バットガール誕生までをも描く離れ業。
擬音も楽し。
"レゴで遊んでますよ〜"オーラ出しまくりの口で言う光線の音
「ピュ」「ピュピュ」
そして!そして!!クライマックスの割れるゴッサムシティをつなぎとめる最後の音が…
「カチッ」
(レゴでなければなしえない大団円)
笑ったオープニングロゴ紹介
"黒(Black)"
"恐怖に駆り立てる音楽"
「観客と映画会社を不安に落とし入れる」
"ロゴ"
"ワーナー・ブラザース"
「どうしてブラザースではないのか」
"DC"
「バットマンで儲けた会社」
最後に
"役に立ちそうな言葉"(←笑)
またエンドクレジット前には
"白(white)"
「白い画面で終わる映画はいい映画」
"回収される伏線の数々"(←笑)
悪役テンコ盛り
正統バットマンヴィラン総出演はもちろん
ジョーズ、ドラキュラ、半魚人
サウロンからヴォルデモート卿、キングコング
『マトリックス』エージェントスミス
グレムリンが嬉しかったなぁー
(さすがにここはワーナーならでは)
ロブスターをひとりで食べるバットマン
レンジの前でじーっと待つ姿が…(泣)
同じく、ひとり、ホームシアターで映画を見るバットマン
(↑外部出力端子、多い 笑)
…で、そこ、笑うところ違いますよ↓
トム・クルーズ『ザ・エージェント』
(↑ラストでもういちど、伏線回収今度は仲間と同じシーンで大爆笑)
また、ジョーカーにバットケイブを乗っ取られた際にDVDライブラリーを暴露される。
『マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと』
『理想の恋人』
そして
「セレンディピティ!?」
「セレンディピティー!!!」
アルフレッドの声をレイフ・ファインズ(ヴォルデモート卿ではない)
スーパーマンはチャニング・テイタム、といちいちツボ。
(「俺と同じひとりぼっちのヒーロー」と思いきや「ジャスティスリーグ」の設立周年パーティを盛大に開いている)
さらにコンピューター('Puterと呼んでる)がSiri …って笑
(まあ出てくるスマートフォンがiPhoneですから)

Memo2
タイトルデザインは制作会社と同じアニマル・ロジック(Animal Logic)
http://www.animallogic.com/
End Title > SCARLET LETTERS
前作『LEGO® ムービー(The Lego Movie)』のタイトルデザイン
Main On End TitlesはAlma Mater
こちらはインタビューとメイキング記事
http://www.artofthetitle.com/title/the-lego-movie/

B2

映画『レゴバットマン ザ・ムービー』
http://wwws.warnerbros.co.jp/legobatmanmovie/

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2017-04-01

"Hello Stranger"『ムーンライト(MOONLIGHT)』バリー・ジェンキンズ監督

注・内容、台詞に触れています。
ムーンライト
MOONLIGHT

監督・脚本 : バリー・ジェンキンズ
出演 :  トレヴァンテ・ローズ
アッシュトン・サンダース
アレックス・R・ヒバート
マハーシャラ・アリ
ナオミ・ハリス
アンドレ・ホランド

物語・マイアミの貧困地域で、麻薬を常習している母親ポーラ(ナオミ・ハリス)と暮らす少年シャロン(アレックス・R・ヒバート)。学校ではチビと呼ばれていじめられ、母親からは育児放棄されている彼は、何かと面倒を見てくれる麻薬ディーラーのホアン(マハーシャラ・アリ)とその妻、唯一の友人のケビンだけが心の支えだった。そんな中、シャロンは同性のケビンを好きになる。そのことを誰にも言わなかったが…。(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Moonlight

※Memo1
ドキュメンタリーにならないよう、あえてスコープサイズで撮影し、すごく繊細に室内ライティング(蛍光灯の元での映像は特にドキュメンタリー色が出てしまうと思うのでカラーグレードでの調整込みで)に気を使ったガラス細工のような作品。
LGBTQ、いじめ、ドラッグ、人種などが表立って語られるわけではなく(それはレイヤーとして織りこんで)ひとりの少年の内面を通して描いていく美しさを秘めたドラマである。
幼少期( i.Little )、少年期( ii.Chiron )、青年期( iii.Black )のそれぞれ演じるのは3人の別々の俳優。
(監督が決め手としたのは"同じ雰囲気を感じさせる目")
1章、2章はかなり近い見た目だが、3章は場面が変わるなり「誰!?」と思わせるようなマッチョで金歯で、いかつい車に乗った姿で現れるシャロン(この見た目は変わっていても本質は変わらないことを体現するかのような構成とキャステイングは本当に上手い。そして、その本質の変わらなさがはっきりわかる、酷い仕打ちをしてきて「許して」という母親と交わす言葉とまなざし、態度にあらわれる)
アカデミー賞助演男優賞を受賞したマハーシャラ・アリ演じる麻薬ディーラー、ホアン。
シャロンにとって、父親代わりであり、メンターであり、手を差しのべる人でもある。冒頭、チラッと見た少年たちの走っていく姿。多くは語っていないが自身もそうだったのだろう、すぐにいじめられていると察知したのかシャロンが逃げ込んだ廃屋をみつけて、中へ入っていく。
そこで無理に喋らせないスタンスもよいし、まずは「何か、食うか?」の声のかけ方もひととなりが出ている。
(2017年3月30日放送『カンブリア宮殿』で「こども食堂」の経営者が言っていたが「子どもは自分の家のことをすぐには喋らないし、親のことを悪く言わない」ということがわかったうえでの対処って絶対あると思う。ホアンの台詞でそのことを思いだした。今年公開された荻上直子監督『彼らが本気で編むときは、』での主人公リンコが恋人の姪である母子家庭の子どもトモへも同じようなスタンスで接する姿が描かれていた)
海でシャロンに泳ぎを教えるシーン。
ホアンの台詞
「月明かりで、お前はブルーに輝く」
元となった戯曲のタイトル "In Moonlight Black Boys Look Blue"
ケビンとシャロンとの夜の海岸。
海は真っ暗で何も見えない。
(砂浜と波打ち際の境界線も見えず、画面でいうと上部だけが暗闇)
そこには波の音だけが聞こえる。
何回か繰り返される場面。
ラストシークエンス。
ケビンの営むダイナーのシーン
「シェフのおすすめ」にひとこと。
「いつからキューバ人になったんだ」
そして、「これを聴いて思い出したんだ」とジュークボックスでケビンがかけるバーバラ・ルイス(Barbara Lewis)のHello Stranger(1963)の歌詞が全てを語っている。
どんなに時が経とうとも、それがちょっと苦くつらい傷みをともなっていようとも、ふたりにとっては忘れえぬ思いでなのだ。
あの夜の海岸のできごとは。

※Memo2
美しいカラーグレード!
1章はブルー、2章は黄色み、3章はウォームトーン、そして被写界深度をあげてのクリアライトな風合い。
カラリストはアレックス・ビッケル
Color Collective
http://colorcollective.com/
‘Moonlight’ Glow:
Creating the Bold Color and Contrast of Barry Jenkins’ Emotional Landscape
http://www.indiewire.com/2016/10/moonlight-cinematography-color-barry-jenkins-james-laxton-alex-bickel-1201740402/
『ムーンライト』とウォン・カーウァイ作品を比較検証した動画
"Moonlight and Wong Kar-wai"
(TV Bros.16~17P、ファントムフィルム代表へのインタビューをまじえての記事より)
https://www.youtube.com/watch?v=66cIeb_nNO4
タイトルデザイン
使用フォント > Trade Gothic
Main-on-end titles、チャプタータイトルカード 画像
http://annyas.com/screenshots/updates/moonlight-2016-barry-jenkins/

映画『ムーンライト』公式サイト
http://moonlight-movie.jp/

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2017-03-30

タイトルデザイン_50 Picture Mill『パッセンジャー(Passengers)』モルテン・ティルドゥム監督、クリス・プラット、ジェニファー・ローレンス、他

注・内容に触れています。
パッセンジャー
Passengers

監督 : モルテン・ティルドゥム
出演 : クリス・プラット
ジェニファー・ローレンス
マイケル・シーン
ローレンス・フィッシュバーン、他

物語・近未来、5,000人を乗せた豪華宇宙船アヴァロン号が、人々の移住地に向かうべく地球を出発。到着までの120年、冬眠装置で眠る乗客のうちエンジニアのジム(クリス・プラット)と作家のオーロラ(ジェニファー・ローレンス)だけが、予定より90年も早く目覚めてしまう。絶望的な状況を打破しようとする二人は、次第に思いを寄せ合うものの、予期せぬ困難が立ちはだかり…。(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Pass

Memo
孤島ひとりぼっち。バレーボールを相手にトム・ハンクスが2時間もたせた『キャスト・アウェイ』のような展開で進むかと思いきや、いろいろあって最後まで結構楽しい(科学的にどうのこうのは置いておいて)
その宇宙船ひとりぼっち、ジムを演じたクリス・プラット。
ほんとうに一枚看板のスターになったんだなー、と感慨深い序盤。
ジェニファー・ローレンス演じる、もうひとりの主人公オーロラという役名は『眠れる森の美女』のお姫様から?
『タイタニック』かと思いきやダグラス・トランブル監督『サイレント・ランニング』を想起した。
特にラスト。
ヒューイとデューイはいないけれど船内全体が完全緑化。
あと、原題がPassengersなのに何故『パッセンジャー』かと思ったら、先にアン・ハサウェイ『パッセンジャーズ』があった。
もうひとつ、予想していたことと違ったのはオーロラのコールドスリープを解いたのはジムだったということ(てっきり同じように隕石衝突による事故によるエラーかと思っていた)。そして中盤、乗組員のガスが目を覚まし船内には3人(正確にはアンドロイド・バーテンダーのアーサーもいる←多くの方が指摘している通りの『シャイニング』オーバールックホテルのバーのイメージ)となること。
クリス・プラットひとり芝居(ほとんど20分間はクリス・プラットを愛でるかのような…って、あの髭はいくらなんでも…笑)からのジェニファー・ローレンスとの2人芝居、そして…。
ラスト。
おややや!?
移住する惑星に近づき5000名の乗客のコールドスリープが解け、船内中央広場のシーン。
まず先頭で入ってきたキャプテンの顔が、まさかの…
で、エッ!?と思いつつ、エンドクレジットで確認してひっくり返ったアンディ・ガルシア(あれだけの出演シーンで、このクレジット表記とも思った)
タイトルデザイン関連。
・Main Title > Picture Mill
http://picturemill.com/passengers/
・additional editor: End Title Sequence
> Dustin Frost
・End Title
> SCARLET LETTERS

映画『パッセンジャー』 | オフィシャルサイト
http://www.passenger-movie.jp/

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2017-03-12

『モアナと伝説の海(Moana)』ロン・クレメンツ、ジョン・マスカー監督、(Voice Cast) アウリイ・クラヴァーリョ、ドウェイン・ジョンソン、他

モアナと伝説の海
Moana

監督 : ロン・クレメンツ
ジョン・マスカー
Voice Cast : アウリイ・クラヴァーリョ
ドウェイン・ジョンソン
レイチェル・ハウス
テムエラ・モリソン
ニコール・シャージンガー
ジェマイン・クレメント
アラン・テュディック、他

Moana

Memo1
映画は見てみるまでは判らないもので(それこそ『フォレスト・ガンプ』に出てきたセリフのようだ)全く予想していたものと違った作品が眼前に繰り広げられての大拍手!
(その辺、日本版ポスターや予告編によるものだとは思うけれど、初日の観客層はおそらく女性客が7〜8割だったのでは?とパッと見の感じ)
それにしても、すごく違っていて、何この、めちゃくちゃな面白さ!
近年のディズニー作品がプリンス要らずのプリンセス独立ストーリーの趣き(昨年の『ズートピア』はポランスキー「チャイナタウン」まで匂わせつつのバディムービーだったし)が強くなっていく方向で本作もその流れ。
さらに今回は(も)ロマンス要素は、ほぼゼロ。
(なんといっても"マウイ"は半神ですし…←タトゥーが本心をビジュアルで見せ"こころの声"などというワンテンポ遅くなる表現ではないというところもアイデア)
モアナやマウイのキャラクターデザインがポスターやチラシなどの印象としてはあまりよい印象ではなかったのが、途中から俄然魅力的に。
まさに命を吹き込むアニメーション力!
先に試写で見た人がつぶやいていた"海のマッドマックスFR"(+スターウォーズ+ウォーターワールド)
ホントだ!確かに。
ココナッツ海賊"カカモラ"
(ドンドコドンドコシーンのディテール、じっくり見たい。きっといろいろ小ネタな動きをやっているに違いない)
と、なるとあいつはイモータンジョー?笑
(倒され方というか、ほとんどオウンゴール)
そして監督がインタビューで該当シーンについてジョージ・ミラー監督に言及してた!
スクリーン張りキャン、スコープサイズタイプ推奨(←勝手にそう名付けてますが、ビスタ・タイプ張りキャンだと上下黒みが出る場合が)。
これは大スクリーン案件作品!
冒頭、ちびっ子モアナがウミガメを助けて海に返してあげるシーン。
(↑葉っぱで日陰を作ってあげて、もう、ここだけでグッときましたが)
それに続く"海に選ばれたシーン"の水の表現の美しさ!
(こ、これは「十戒」や〜「アビス」や〜、とおぉぉぉっ!となった。ラストはまさに「十戒」そのもの)
モアナのペットであり友だちでもある子ブタの"プア"や、すっとぼけまくりの何をしでかすかわからないニワトリの"ヘイヘイ"らは今までのドラマセオリーだと、かなり重要な役回りになるところ、割りと小絡み(プアにいたっては海を怖がり、こころを返しに行く旅には参加せず)。
さらに(よくあるパターンである定石的ドラマツルギー)助けたウミガメの子が恩返しとばかりに登場することもないというあたりにも、今までとは違った次なる"ある種の流れの始まり"を感じてしまったりもするぐらい本作のストーリ展開はイイ!!
(字幕版に続いて日本語版も予備知識無しで見たら)タラおばあちゃんの声が夏木マリさんって…湯婆婆やん 笑
(そのタラおばあちゃんが、まさにメンターでありヨーダのようでもある)
モアナの台詞
(幾度となく繰り返される口上)
I am Moana of Motunui.
You will board my boat.
Sail across the sea.
And restore the heart of Te Fiti.


Memo2
Making of Moana
(Cast ADR / Animation B-roll / Scores)
島の粘土模型をいくつも造って、それをベースに作成していくところは驚き!(アートブックを見たらカカモラの島型戦艦の模型も!)
https://www.youtube.com/watch?v=rB5MpMDMpas

End Title Design > Brian Estrada
ロール前のタイトルカード部分。
シンプルに1点ずつ描かれた、力強さがあって本作のもつエナジーとピッタリで素晴らしい。
エンドタイトル後におまけあり。
(ロン・クレメンツとジョン・マスカーは『リトル・マーメイド』の監督ということで、このオマケにはなるほど~。そしてグラムロック・カニ"タマトア"(←笑)の日本語版キャストはROLLY←またしてもなるほどー)
そのエンドロールの一番最後に"あのキャラ"が登場(他にも隠れミッキーとか、あるらしいけれど画面では未確認)

モアナと伝説の海
http://www.disney.co.jp/movie/moana.html

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