2017-10-12

【午前十時の映画祭】黒澤明監督『野良犬(STRAY DOG)』『天国と地獄(HIGH AND LOW)』

【午前十時の映画祭】
黒澤明監督、2作品が4K上映!

野良犬
STRAY DOG
天国と地獄
HIGH AND LOW

Art_of_kurosawa

Memo
上記画像は1991年11月『七人の侍』完全オリジナル版ニュープリント公開記念の際のパンフレットより表紙(部分拡大)と2作品の紹介ページ。
『野良犬』下部分はレーザーディスク発売時のチラシ一部。
『天国と地獄』のロケ地を巡る記事(サイト)で圧倒的な質と量(各シーンと現在の場所写真多数あり。
未見の方は鑑賞後に。
サイト別館には本編に登場する自動車図鑑や電車図鑑も)
荻窪東宝『聖地巡礼・天国と地獄』あのロケ場所は何処?
http://ogikubo-toho.com/seititenjigo.html
『天国と地獄』に登場する、あの鞄。
「吉田カバン」創業者・吉田吉蔵氏による特注・革のブリーフケース。
(制作されたサンプルのひとつ/直営グランフロント大阪店オープン時に展示された際のもの)

Ak_hl

黒澤明監督作品の書家による題字。
『蜘蛛巣城』金子鴎亭『天国と地獄』西川寧『乱』から『まあだだよ』今井凌雪 (エンドクレジット表記や記述資料など確認できているもののみ)
なお広告宣伝についての題字などはデザイナーの益川進 (全て敬称略)
スコープサイズについて
「僕は『天国と地獄』が昔から好きで、人の配置や動かし方が芸術的だと思っているんです。今回はそういったことが狙える作品の気がしました」(是枝裕和監督『三度目の殺人』パンフレット撮影/瀧本幹也氏インタビューより)
今回の4K上映でわかったことは、ほんの少しの人物の動きにまで演出がなされていること。劇場や名画座、ディスクなどで何回も見ているにもかかわらず、はっとさせられる。
『野良犬』約9分間、70カットに及ぶ村上刑事(三船敏郎)が盗まれたピストルを探し求めて、東京の盛り場を歩きまわるシーンを撮影したのはB班を担当していた本多猪四郎監督
ロケーションの見事さは初見の際に圧倒されたが、今回も引きこまれてしまう熱度は変わらない。

午前十時の映画祭 8
http://asa10.eiga.com/2017/cinema/

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2017-09-21

「でも、いい話ですね。それはいい話だ」『三度目の殺人(THE THIRD MURDER)』是枝裕和監督、福山雅治、役所広司、広瀬すず、他

内容、台詞、ラストに触れています。
三度目の殺人
THE THIRD MURDER

監督 : 是枝裕和
出演 : 福山雅治
役所広司広瀬すず
吉田鋼太郎、斉藤由貴、
満島真之介、松岡依都美、
市川実日子、橋爪功、他

物語・勝つことを第一目標に掲げる弁護士の重盛(福山雅治)は、殺人の前科がある三隅(役所広司)の弁護を渋々引き受ける。クビになった工場の社長を手にかけ、さらに死体に火を付けた容疑で起訴され犯行も自供しており、ほぼ死刑が確定しているような裁判だった。しかし、三隅と顔を合わせるうちに重盛の考えは変化していく。三隅の犯行動機への疑念を一つ一つひもとく重盛だったが…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Sando1

Memo1
「マッチポイント」の予告編がカンヌで初めて流れたとき「あれ?誰の作品?」という空気。
最後に"監督 : ウディ・アレン"と出た際「ほぉ!」という感嘆の声があがった。本作もクレジットがなければ是枝監督の作品だとはわからないかもしれない。それほど全く異なるタイプの映画。
とはいえ、もちろん底流には是枝監督作品ならではの"目にみえないもの"といったモチーフも垣間見える。
開巻、倒叙的なシーン。
観客は、この時点で役所広司が犯人だと思って映画を見始める。
それは見ているうちに弁護士である重森と同じ気持(こころの動揺をもって)で、二転三転する三隅の証言に惑わされていく。
また、重森にも三隅にも娘がいる。そこに被害者である父親の娘がかぶさっていく。
その上で「もしかして、広瀬すず演じる娘咲江の単独犯?」
「父親を呼び出したのが娘で殺害したのは重森?」と、いかようにも捉えられるショットが挟みこまれる。
後述パンフレット記事で知ったのだが、三隅と咲江が接見室で無言で手を合わせるシーンを撮影していたそうだ。
本編ではカットされたけれど、もし入っていたら全体のトーンがまた変わっていたかもしれない。
いろいろな台詞。
(ちょっと気にかかった台詞)
・「ガソリンはどうしたの?」
「会社まで取りに行きました」
「わざわざ?」
「最初から用意していた訳じゃないんだね」
(この一回目の接見シーンの三隅発言の曖昧さで、よくわかっていないのだが実際ガソリンはどうだったのだろう?)
・事務所のデスク、服部(松岡依都美)が事件現場の写真を見てひとこと。
「当分、焼肉は無理だわ」
(と、言ったその直ぐ後に全員で焼肉を食べているシーンが 笑)
・咲江と母・美津江(斉藤由貴)の会話。
「お母さん、寂しくて死んじゃうかもしれない」
「死なないでしょ。寂しいくらいじゃ…」
この母娘の関係がよくわかる台詞だ。
最初に重森が被害者であるふたりの家を尋ねたとき、三隅の手紙をビリビリッと破る母・美津江の姿を写さない。実は…ということが判明する前に表情をとらえない厳密な演出。
・判決後の接見シーン。
「重森さんがそう考えたから、わたしの否認に乗ったと…」
「でも、いい話ですね。それはいい話だ」
「わたしはずっと生まれてこなければよかったと思ってるんです」
「こんな私でも誰かの役に立つことができる」
「駄目ですよ。重森さん。こんな人殺しの話に乗っちゃあ」
あなたは…ただの器…?」
ラストは幾重にもはられた電線。
そして十字路に立つ重森をやや俯瞰で捉えるショットで終わる。
ダンケルクがジャム。
本作はピーナッツクリーム。
さりげないアイテムが効果的。
小鳥も十字架もピーナッツクリームも…

Sando2

Memo2
瀧本幹也による撮影。
光と影。
銀残しのトーン、スコープサイズをいかした人物配置。質感も美しい。
7回ある接見シーン。
ラスト、ふたりの顔が重なりあう場面は圧巻。
『三度目の殺人』のパンフレットは見た目は通常のよく目にする版型だが、中身は写真の配置から余白まで極めて緻密。
そして掲載されている出演者インタビューも「エッ!?」と驚く初出の内容が多い (鑑賞後に読むことを大前提に編まれている)
また本編、法律監修も行った岩月泰頼「法廷におけるいくつかの真実」記事も興味深い内容が多々。
カラー44P
批評は道尾秀介森直人
アートディレクション(宣伝美術)は「そして、父になる」に続いて服部一成
(パンフレットデザイン表記は服部一成+山下ともこ)
ちなみに「幻の光」から「花よりもなほ」「歩いても歩いても」は葛西薫。
「空気人形」「ゴーイング マイ ホーム(TV)」「海街diary」は森本千絵。
『文藝別冊/是枝裕和』葛西薫特別寄稿。
以下『幻の光』パンフレットについて書かれている部分より抜粋。
"タイトルは海外版に合わせて『MABOROSI』としている。
ヘボン式ではなく日本式ローマ字表記であるべきだろうと、こだわって末尾の綴りをSHIではなくSIとしたのだった"

(ブログ記事中の敬称略)

『三度目の殺人』公式サイト
http://gaga.ne.jp/sandome/



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2017-09-16

「それ、もらうよ」『散歩する侵略者(BEFORE WE VANISH)』黒沢清監督、長澤まさみ、松田龍平、長谷川博己、高杉真宙、恒松祐里、他

注・内容、台詞に触れています。
散歩する侵略者
BEFORE WE VANISH

監督 : 黒沢清
原作 : 前川知大

出演 :
長澤まさみ松田龍平、
長谷川博己、
高杉真宙、恒松祐里、
前田敦子、満島真之介
児嶋一哉、光石研
東出昌大、小泉今日子
笹野高史、他

物語・鳴海(長澤まさみ)の夫・真治(松田龍平)が、数日間行方をくらまし、別人のようになって帰ってくる。これまでの態度が一変した夫に疑念を抱く鳴海は、突然真治から「地球を侵略しに来た」と告白され戸惑う。一方、町ではある一家の惨殺事件が起こったのを機に、さまざまな現象が発生し、不穏な空気が漂い始める(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Vanish

Memo1
車から見える冥界スクリーンプロセス、斜めに交差する梁や柱、突然暗転する画面など、お馴染みの黒沢清監督たる刻印シーンもたっぷり。
本作見て、もしかして既に世界中、日本中の政治家の中に「概念」が奪われてる人、いるんじゃないの?などと、ふと思う。
(で、どのような「概念」?)
笑えないけど。
アヴァンタイトル部分は黒沢清監督らしい、ちょっとホラー的な要素も。
なんとも、つかみが派手。
前半戦にかけてはウルトラセブン風味。
(実際に原作者も「ウルトラセブン」については影響を受けていると語っている)
後半のグダグダ感は実際に有事が起これば、こんなもんだろうなぁーと思えるチグハグさをはらんだ人々の思考停止ぶり。それに呼応するかのような物語のグダグダ感トンデモ系。
(ありえないマシンガン使用とかパンデミックかもしれないという設定の割には病院の体制がゆるゆる)
"家族、自由、所有、自分、仕事…そして、愛"
「概念」を奪われていく登場人物が、それぞれ面白すぎて秀逸なアイロニカルコメディとも見られる。
デザイン会社のセクハラ社長(肩かけカーディガン 笑)、溜まってたのねー。
「仕事」という「概念」がなくなったら、途端にピーヒャララ状態に。
1番可笑しかったのが東出昌大が牧師姿で現れたとき。
なんといっても「寄生獣」の島田やTVドラマ「あなたのことはそれほど」のあの役から考えると、登場人物の誰よりも、宇宙人。
(だからなのか、牧師から何も「概念(説く愛)」を奪わず立ち去る真治…と、いうかイメージしてもらったのに中身は何もなくガランドウだったのかも?)
キャスト陣も素晴らしい。
中立的な立場を持っているようなイメージの宇宙人、天野を演じた高杉真宙、凶暴性をはらんだマシンガン女子高生・立花あきら役、恒松祐里の身体性の高さ、前田敦子の「家族」概念を奪われて反射的に崩れ落ちる姿、そして「嫌!」といった姉を拒絶する動き、表情。
台詞いろいろ。
・「これから侵略がはじまるというのに取材だなんて、のんきだなぁ
・真治が運転する車の中。
(もはや空を飛んでいるかのようなリアウィンドウの風景)
「侵略が始まったの?」
「いや、あれは夕陽だよ」
・終盤近く、駅の広場で。
「彼らは散歩する侵略者なのです」
演説するジャーナリスト、そして宇宙人ガイド役の桜井(長谷川博己)
「うーん、まあ、そうだよね。そういう反応だよね」
「満足した?」
そして宇宙人やUFOを攻撃するのではなく長谷川博己を爆撃するドローンプレデター 笑
これ、どう考えても可笑しい。
そして、また長谷川博己が嬉しそうに嬉々として飛び跳ねるのだ、これが 笑
『散歩する侵略者』のWOWOWスピンオフドラマ『予兆』は、まだ未見。
予告編や見聞きする話からすると、これもまた期待大。
やはり「夫婦の物語」である。
これ、もし宇宙人に乗っ取られていることがわからない、傍から見ればボンクラ夫を甲斐甲斐しく支える妻みたいに見えたりもする。
その妻、鳴海役の長澤まさみがものすごくよい。
「もぉ、しようがないなぁー」
プンスカしながらスタスタと歩く姿が立ち位置として際立っている。
愛"という「概念」を奪うことによって生まれる"愛"
「再生」して「リセット」することの意味を含めて「概念」という言葉の意味同様、いろいろな捉え方ができるラストだ。

Sampo16

Memo2
パンフレットは表紙含め全76P。
監督、出演者、原作者インタビュー。
プロダクションノート。
コラムは佐々木敦、樋口尚文、大森望3氏。
その時代時代の戦争のメタファーとして、無数の侵略SF映画が作られてきた~略~要するに戦争、映画、侵略SF、この三つは腐れ縁のようにつながって、20世紀のネガディヴな気配をかたちづくっているのだ。鳴海の絶望はまさにここからきている。
『散歩する侵略者』原作・文庫版・黒沢清監督による解説より。
監督インタビューで語られる俳優へのオーダーの話。
"長澤まさみさんには「杉村春子風に」松田龍平さんには侵略者だけど「そのままで」長谷川博己さんには「カート・ラッセル風に」"
…カート・ラッセルって… 笑
(シネフィルらしく、そういう話ばかりしていたとインタビューで知りました)

映画『散歩する侵略者』公式サイト
http://sanpo-movie.jp/




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2017-08-06

"AS TIME GOES BY"『20センチュリー・ウーマン(20th Century Women)』マイク・ミルズ監督、アネット・ベニング、エル・ファニング、グレタ・ガーウィグ、ルーカス・ジェイド・ズマン、他

20センチュリー・ウーマン
20th Century Women

監督 : マイク・ミルズ
出演 : アネット・ベニング
エル・ファニング
グレタ・ガーウィグ
ルーカス・ジェイド・ズマン
ビリー・クラダップ、他

物語・1979年のカリフォルニア州サンタバーバラ、自由奔放なシングルマザーのドロシア(アネット・ベニング)は、15歳の息子ジェイミー(ルーカス・ジェイド・ズマン)の教育に頭を悩ませていた。そこで、ルームシェアしているパンクな写真家のアビー(グレタ・ガーウィグ)と、近所に暮らすジェイミーの幼なじみジュリー(エル・ファニング)に相談する。(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

20

Memo
ジェイミーが3世代の女性から受ける啓示。
息子の成長、世代間の差異。
とまどう母親のこともよく感知している優しいジェイミー。
それを見守る(姉のような、友だちのような、メンターのような)ふたりの女性(←ジュリーのポジション、ジェイミーにとってはとっても罪な…。とはいえジュリーも、また悩んでいるわけですが…)
空撮から入り、同じように空撮で終わる。
現在と違って1979年におけるシングルマザーとはいかなるポジションだったのだろう?
母ドロシアとジェイミーの株価読み上げの時に「IBM」の名前が出ていたけれど、Appleが株式を公開するのは翌年(1980年)なので、もしかして、その際にはチェックしていたりして 笑
『フォレスト・ガンプ』でダン中尉がリンゴ農園(果物の会社)に投資していたおかげで生活には困らなくなったガンプ、みたいなことが!?
パンフレットのテキスト量がとっても多い。
このまま写真部分を増やして書籍化してもよかったのでは?と思える内容。
本作に出てくるカルチャーを理解する上でのサブテキストとしても重要。
第89回アカデミー賞・脚本賞にノミネートされた、その脚本(英文・PDF保存可)
(2017年6月11日現在リンク確認済み)
http://scriptfest.com/home/wp-content/uploads/2017/01/20TH-CENTURY-WOMEN.pdf
タイトルデザイン
Opening credits – typography
使用フォントはNews Gothic
http://annyas.com/screenshots/updates/20th-century-women-2016-mike-mills/
メインタイトルを出すタイミングが極上の美しさ。
マイク・ミルズ監督のグラフィック・デザインワークなどを見ることができます。
Mike Mills / Film / Art / Graphics
http://mikemillsmikemills.com/

映画『20センチュリー・ウーマン』公式サイト
http://www.20cw.net/

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2017-06-04

"地球の果てまでつれてって"『美しい星』三島由紀夫原作、吉田大八監督、リリー・フランキー、亀梨和也、橋本愛、中嶋朋子、佐々木蔵之介、他

注・内容、台詞、ラストに触れています。
美しい星

原作 : 三島由紀夫
監督 : 吉田大八
出演 : リリー・フランキー
亀梨和也橋本愛
中嶋朋子佐々木蔵之介、他

物語・予報が当たらないと話題の気象予報士・重一郎(リリー・フランキー)は、さほど不満も なく日々適当に過ごしていた。ある日、空飛ぶ円盤と遭遇した彼は、自分は火星人で人類を救う使命があると突然覚醒する。一方、息子の一雄(亀梨和也)は水 星人、娘の暁子(橋本愛)は金星人として目覚め、それぞれの方法で世界を救おうと使命感に燃えるが、妻の伊余子(中嶋朋子)だけは覚醒せず地球人のままで…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Hoshi

Memo1
ブログメモ・タイトルには三島由紀夫の書斎に亡くなるまで掲げられていた絵の作者であり「写真集・薔薇刑」デザインも行ない親交の深かった、横尾忠則による著書名『地球の果てまでつれてって』を。
(敬称略、以下本文も)
スコープサイズに浮かぶ亀梨和也×佐々木蔵之助演ずる政治家秘書・黒木(宇宙人?)との夕刻オレンジ色の議員会館シークエンス。
そしてリリー・フランキー×佐々木蔵之介(最初は亀梨和也と)によるディスカッションシークエンス。
どこか既視感あるかと思っていたら『ウルトラセブン』だった!
(ネタバレ防止策として鑑賞後まで関連記事読んでいなかったため、監督自身が「ウルトラセブン」や「岸辺のアルバム」「ときめきに死す」などに触れていて、なるほどと頷くことしきり)
そして、見た目へんてこりんな映画にして、その実、バックボーンに描かれていることが凄まじい。
このブログメモを書いている途中にアメリカのパリ協定離脱のニュースが流れてきて、このタイミングでこれ!?と絶句してしまった。
ホントに気象予報士が火星人のポーズ取るぞ!(シャレじゃなくって)
開巻、すぐ。
家族がそろっての長男、一雄(亀梨和也)の誕生日を祝う食事会。
「ミラノ、また行きたいな」
「そんな余裕無いでしょ」
イライラしながら長男を待つ重一郎(リリー・フランキー)。
ここでのバラバラな空気が覚醒後、それぞれの経路を経て、ラストへと繋がっていく。
前述『ウルトラセブン』的ディスカッションシーン。
「そうなることがわかっていながら」
「どうして引き返さなかった」
「心のなかではきづいていながら、未来を見殺しにしたんだよ」
「痛みは俺たちが背負うんだ」
「家族として話そう」
(ここまで重一郎×一雄)
「地球に救う価値はありますか?」
「あるに決まってるじゃないですか」
「こんなに美しい星なのに」
「考えてみてください。自然が美しいのではなく、自然を美しいと感じるんです、人間が」
「しかしその自然に、人間は人間を含めない。究極の美しい自然には、人間は存在しない」
「この矛盾を解決する方法はひとつです」
「われわれは手助けをしたい」
「ほんとうの意味で美しい星のために」
   ……
(ここのディスカッションシークエンスは音楽の入るタイミング、アングル含めて本作の肝たる部分のひとつ)
原作と違って唯一、地球人として描かれる母、伊余子(中嶋朋子)
「お父さんが火星人だって言うのなら、つきあいたいの私も。地球人として」
"美しい水"勧誘ビジネスに手を出していたのも本当は家族でもういちど旅行とか行けたらいいな、と思ってのことということも吐露される。
原作にも出てくる台詞がラストに。
暁子(橋本愛)が光の射す方を指さして。
「お父さん、来たわよ」
円盤の中(らしい)
「ここってもしかして円盤」
「いつの間に乗ったの」
(いかにもワレワレハウチュウジンダ的な声の応答)
「さあ、帰ろう。故郷でみんなが待っている」
慌てる重一郎が画面奥の窓に向かって行く。
「ドウシタノデスカ」
「ドウシタノデスカ」
「ワスレモノデスカ」
「ワスレモノデスカ」
窓から地球(Home)を見下ろすと手を振る大杉家(Home)の姿が。
『美しい星』というタイトルと呼応するシーンが末期ガンの父、重一郎を連れて家族で円盤の地(地名は出ないが立ち入り禁止区域看板や突然の牛の登場などから福島だと推測できるように描かれている)へと向かう車中から見える東京の街の姿。
このシーンは音楽と合わさって、映画ならではと言える不思議とジーンとさせられる場面でもある。

三島由紀夫文学館で企画展「三島文学とその映画『美しい星』と三島由紀夫映画化作品」が開催中。
直筆原稿、創作ノート(表紙に「わが星雲」「銀河一族」「銀河系の故郷」など未決定だったタイトルがいくつか)など展示。
http://www.mishimayukio.jp/index.html
原作『美しい星』が発表された年が1962年。
(なんといってもロシアはソ連だしフルシチョフが出てくる冷戦時代の頃のお話。キューバ危機は1962年)
キューブリック監督『博士の異常な愛情』が1964年(シドニー・ルメット監督『未知への飛行』も)
そして、個人的思い入れで言うと太陽系惑星連合と聞いて想起したのは手塚治虫『W3』での銀河連邦(1965年)。
それらの作品が続々と生み出されていく前に『美しい星』が執筆されていたことを考えると、三島由紀夫のその先鋭性、時代性に驚かされるばかりである。
さらに、その原作を現代に置き換えて軽々しく飛び越えていった脚色による本作『美しい星』は後年、(いろいろな意味で)ひとつのエポックメーキングとして語り継がれていくことになるのでは?と思っている。

Star

Memo2
パンフレットデザインは岡野登(サイファ。)
(写真は2点共パンフレット表紙)
本文40P。
監督・出演者インタビュー、コラム2点
筒井康隆スペシャルコラム。
そして火星人と金星人の振付け付き。

映画『美しい星』公式サイト
http://gaga.ne.jp/hoshi/


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2017-05-27

『夜明け告げるルーのうた(Lu over the wall)』湯浅政明監督、(VoiceCast)谷花音、下田翔大、柄本明、他

夜明け告げるルーのうた
Lu over the wall

監督 : 湯浅政明
出演 : (VoiceCast)
谷花音下田翔大
篠原信一、柄本明
斉藤壮馬、寿美菜子
大悟、ノブ、他

物語・両親が離婚して東京から寂れた港町・日無町に越してきた中学生の少年カイは、父親と祖父の三人で暮らしている。両親に対する複雑な思いを胸に日々を過ごす彼にとって、自ら作曲した音楽をインターネットにアップロードすることが唯一の楽しみだった。そんな中、人魚の少女ルーと出会い交流を深めていくうちに、カイは少しずつ周囲に心を開いていくが…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Lu

Memo
全編フラッシュアニメーションによる制作(※)。
シェイプトゥイーンによって処理されたルーの髪の毛や瞳の中のうるうるが、ずーっと動きつづけて、ひたすら止まることなく躍動感がある。
グニャグニャのグルングルンとしたモーションや踊りにおける"コサックダンス風"脚の動きは湯浅監督ならでは。
(※通常50〜60人の製作工程を「ルーのうた」では20人で行われたというスゴさ)
極めてデザイン的な全体のトーンはめちゃくちゃ好み。
メインタイトルも素晴らしい!
(古くは「わんわん忠臣蔵」から「トトロ」などへ続く、キャラが横移動しながらのテケテケした動きにのせてのメインタイトル←テケテケってなんだと問われればテケテケとしか答えられないですが…)
貝のようにこころを閉じたカイ。
冒頭とラストに貝のお味噌汁についての会話。
ジャリとを噛む音。
「ちゃんと水につけたんだけどなぁ」
ラストでは
「今日の美味い」
「よく砂、はけたからな」
ルーをめぐっての事件を経て(知らなかった父親の過去のことやルーを助ける件での経緯があって)、母との離婚のことなどでわだかまっていた父親との関係性の修復。
音楽がキーワード。
カイのこころを外へ向け始めるきっかけも「音楽」好きのルーとの出会いから。そしてバンドへ参加、ライヴ出演などを通して次第に明るくなっていくのがわかる。ラストは思い爆発の「歌うたいのバラッド
ねむようこさんによるキャラクターデザイン原案。最もねむさんっぽいのはカイのクラスメイトで一緒に組むバンド"セイレーン"のボーカル担当の遊歩(ハンドルネームがUFO!)
ルーのパパとワン魚が最高!
(タコ婆とかつて恋仲だった男やワンちゃんとのエピソードとか…うぅっ)
ルーパパ、商工会議所に勤めに陸に上がってくる感じもサイコー。
(監督曰くの"『パンダコパンダ』み"炸裂!)
魚の活き締めシーン(早っ!て、そりゃあチョンとひと噛みですからw)、日が当たるところは歩けないので、しばらくじーっと日が傾くのを待つシーン、ルーが危機に瀕した際の怒り狂ったように火だるまになりつつ疾走するシーン。
日無町(名前のとおり日が当たらない漁師町だったのが御蔭岩によるたたりからの海面上昇危機ののち、その岩山がなくなることで日がさすようになる←その危機シーンでカイの祖父がつくっていた傘が役立つシーン、またちっちゃいのが傘さしている絵柄がかわいい)
ラスト。
カイ、遊歩、国夫の三人。
「じゃあ最後に」
「我らセイレーン」
「ファイトオー!ファイトオー!」
先に走り去る遊歩。
振り返りながら。
「ねぇ」
「日の当たる町になったね」
パンフレットデザインはベイブリッジスタジオ
オールカラー全32ページ。
(表1、表4のエンボス特殊加工が可愛らしい)
このパンフレットに掲載されている、ルーのパパの声を演じた篠原信一さんのコメントには笑った。
"台本をいただいて「今回も人間やないんか」と思いました。"

Lu_fusen
ムビチケ特典のルー付箋

映画『夜明け告げるルーのうた』公式サイト
http://lunouta.com/

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2017-02-16

『たかが世界の終わり(Juste la fin du monde/It's Only the End of the World)』グザヴィエ・ドラン監督、ギャスパー・ウリエル、マリオン・コティヤール、ヴァンサン・カッセル、レア・セドゥ、ナタリー・バイ

注・内容、ラストに触れています。
たかが世界の終わり
Juste la fin du monde
It's Only the End of the World

監督 : グザヴィエ・ドラン
出演 : ギャスパー・ウリエル
ヴァンサン・カッセル
マリオン・コティヤール
レア・セドゥ
ナタリー・バイ

End

Memo1
フィックスで、この家族劇を捉えてしまうと本当にきつくて耐えられなかったかもしれないところを、表情のアップと心象風景、編集と色彩のリズム、効果的な音楽(「マイアヒ」が流れたときの一瞬、表出する思いで)などで見せる。
冒頭、空港からのタクシー移動中にリアウインドウ越しに見える、ふたつの寄りそって上がる風船はわざわざ飛ばしたのだろうか?
(他にもペア、対としていろいろなものが写る。それを車中からながめるルイ)
ルイ(ギャスパー・ウリエル)と母親マルティーヌ(ナタリー・バイ)、ルイと妹シュザンヌ(レア・セドゥ)、ルイと兄アントワーヌ(ヴァンサン・カッセル)
それぞれ、ふたりきりになろうとも、そのよそよそしさ、もどかしさ、ためこんできたものの12年の距離は埋まらない。
その中で兄の妻カトリーヌ(マリオン・コティヤール)だけは初対面(冒頭、エッ!?初めて顔をあわすの?と母や妹が驚くシーンがある)ということもあって、少し抱いている感情は違う。それどころか家族が気づかないルイの病気のこともわかってしまう。
「あと、どれぐらいなの?」
(コティヤールのこの表情芝居のなんという上手さ!)
また母親(これまた『わたしはロランス』に続いてナタリー・バイがスゴイ)のなんとか空白の空気と気まずさを埋めようとする饒舌ぶり、そして「母親にも新しい住所が教えられないの」といいつつも抱きよせ「それでも愛している」というときの表情、指先。
ふたりだけのシーンと家族全員が揃うシーンがバランスよく配置されている構成もスゴイ。
感情がぶつかり合うドラマなのだが、どこか理知的、理性的な印象をうけるのは、そのせいかもしれない。
いわば"感情"を"外部化"して見せているともいえる、その演出作法は演劇ではない"ディスコミュニケーションを表した現代の映画文法"として、ものすごく先鋭的だ。
先の母親の指先もそうだが、兄の拳の傷の生々しさ(あきらかに人に暴力をふるったとおぼしき傷あと)、手紙・葉書をすごい早さで繰る手など、それぞれの登場人物たちの"手の表情"も素晴らしい。
カンヌでの監督とマリオン・コティヤールとのインタビューでの監督の言葉。
「重要なのは、ある午後彼らが一緒に時を過ごしてひとつの空間でどうなっていくのか。誰かが耳を傾けていて誰かは上の空。誰が誰を見ていて誰が誰を守ろうとしているか。そしてそれは人生そのものだ。これは瞬きのような、とても限られた一幕だ。お互いに驚くほど無関心で愛し合い方を知らない人たちの人生の中でね」

Memo2
いったいどうすればこのようなブレのない色彩設計になるのか?
・美しい思いでとしての心象風景の色(空の青、幸せな光の色…)
・兄と車の中なら話せるかもしれないと出かけたドライブ、その際の曇天たる外の風景の色。
・ラスト、時刻が夕刻ということでオレンジ色に燃えさかるような色合いに変わる。
(そこで感情と感情がぶつかり合い、最後、何も告げずふりかえることもなくルイは去っていく)
カラリストは誰?ということで調べてみた。
Jerome Cloutier
http://www.imdb.com/name/nm4656752/
(前作『Mommy/マミー』と次回作も!)
ドラン監督によるAdeleのミュージックビデオ ‘Hello’についてCOLORIST ジム・ウィックスによる記事
https://www.jimwicks.com/adele-says-hello-to-color-grading/
パンフレットデザインは大島依提亜さん。
表1~4を除く正味本文が56ページ!(黒に銀刷り)
ジャン=リュック・ラガルス原作『まさに世界の終わり』の訳者齋藤公一氏、他、Reviewが6本!
監督、出演者インタビュー、フィルモグラフィ、
プロダクションノートと超充実した内容。
"家は救いの港じゃない"と繰り返される
オープニング Camille 「Home Is Where It Hurts
"誰にも届かない 心の叫び"と歌われる
エンドタイトル Moby「Natural Blues
(共に訳詞も掲載)

End_2

Memo3
『たかが世界の終わり』と『マリアンヌ』のマリオン・コティヤールを見て思いついたけれど、昔あったテレビ『どっちの料理ショー』もじりで『どっちのコティヤール』という番組はどうでしょう?全く別人か!?と思えるほど落差のある役を演じた俳優を特集。
(あ、『どっちーも・デ・ニーロ』という響きもいいなぁ)
ドラン監督次回作は初の英語作品。
キット・ハリントン、ジェシカ・チャスティン、ナタリー・ポートマン、エミリー・ハンプシャー、スーザン・サランドンらが出演する"The Death and Life of John F. Donovan" (既にファンメイド予告編とか撮影風景とか結構出ていてビックリ)

映画『たかが世界の終わり』公式サイト
http://gaga.ne.jp/sekainoowari-xdolan/

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2016-12-30

『この世界の片隅に』こうの史代原作、片渕須直監督・脚本、のん、細谷佳正、稲葉菜月、尾身美詞、小野大輔、潘めぐみ、岩井七世、他

注・内容、台詞、原作に触れています。
この世界の片隅に

原作 : こうの史代
監督・脚本 : 片渕須直
出演(Voice Cast) : のん
細谷佳正、稲葉菜月
尾身美詞、小野大輔
潘めぐみ、牛山茂、新谷真弓
岩井七世
小山剛志、津田真澄、他

Konoseka1

Memo1
129分の上映時間。長いのかな?と思っていたら「エッ!?もう終わり」あっという間。
もう少しこの世界に浸っていたい。
本当に素晴らしすぎてなんだかボーっとしてしまった。
映画史に残る映画に出会うことは、そうざらには無い。
(もしかすると映画を見始めてからの40数年の中でも、数本あったか無かったかといったレベル)
終映あとの場内。
そんな瞬間に立ち会ったのではないのか!?、と、いった感慨が"この喩えようのない言語化不可能な鑑賞後すぐの気持ち"となって現れているのではないだろうか?とも思える空気。
これこそ"劇場で映画を見るということの魅力"の最大要素だと思います。
いろいろ驚いた事だらけなのだが、まず動き幅が小さくてジワーと動いていくすずさんたちのアニメイト部分。
公式ガイドブック、パンフレット共に片渕監督がインタビューでロングレンジとショートレンジの"仮現運動"について語っているところが面白い。
(あとは、その実験精神!)
google第2検索ワード候補として"傘"が出てくる!
割りと早い段階(←公開初日)から出ていたので初見ですぐに検索数が増えたのではと推測。

Konoseka_book

Memo2
パンフレットに"すずさんの生きた時代"として"世の中の動き"と"すずさんの日々"が対比して年表になっている。これがまたなんともなんとも細かくて「中野本町に海苔を届けに行く」とか「もんぺを縫う」とか。
すずさんのぼぉ〜っとしたところが現れた(ちょっと細かめの)好きなシーン。
呉の港に浮かぶ戦艦や巡洋艦の名前に詳しい晴美ちゃん(晴美さん←すずさんは"晴美さん"と呼ぶ)
指さしながら、すずさんに説明する。
「へぇー、ほいじゃあ、うちもお礼に」
「大きな雲じゃろう」
「うん」
「かなとこ雲、言うてね」
「うん」
「大雨になります」
「えっ!?」
(ちなみに原作だと、ほんの8コマのシーンだけれども、こういった細やかなところもアニメーション化しているところもスゴイ、そして何よりもリスペクトに溢れている)
音響監督も片渕須直監督。
(些細な音、微細な音から爆撃時の凄まじい音まで、その緩急つけられた隅々まで行き届いた音響も素晴らしい)
「その冬は雪が多うて春が待ち遠しかった」の(ナレーション)台詞に続く遠く響き渡る空襲警報のラッパの音!!
(この音響定位の見事さ)
鑑賞後すぐに、ふと思い浮かんだこと。
拓郎さんの全編広島弁の歌詞「唇をかみしめて」がよぎった。
人が生きとるネー
人がそこで生きとるネー
人がおるんヨネー
人がそこにおるんヨネー

Voice_konoseka

Memo3
本作は徐々に支援していく番組(媒体)などが増えていったことでも、まさにエポックメイキングな映画ともいえます。
そのうちのひとつ→上記、画像(テレビ撮り)MBS夕方のニュース『Voice』で放送された「楠公飯」レシピの特集。
実際に記者が炊いていくところから撮影。(確かに分量は増えているけれど、美味しくなさそう…。)
※MBSは「ちちんぷいぷい」でも『この世界の片隅に』を大きく時間を割いて取り上げていました。
『BRUTUS』No.837年末恒例の映画特集。
予告編による映画選び4パターンの1本として『この世界の片隅に』の記事
特筆すべきは、ヒロインを演じる「のん」の声。ナレーションではなく劇中からのセリフのからの引用だが、吸引力が半端でなく、本予告編のための録り下ろしに聞こえるほどの生々しさがある。(解説文より抜粋)
最後に。
(誰もが書いていますが)
そう!この、のんさんの声がまさに本作のひとつの肝となったとも言える"すずさん"そのものでした。

追記
片渕監督がtwitterで"いわゆるCG、一切使ってません。手描きと切り紙アニメばっかり"の発言に新年早々ビックリ!!

Konoseka2

劇場用長編アニメ「この世界の片隅に」公式サイト
http://konosekai.jp/


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2016-08-28

『ブルックリン(BROOKLYN)』ジョン・クローリー監督、シアーシャ・ローナン、エモリー・コーエン、ドーナル・グリーソン、他

ブルックリン
BROOKLYN

監督 : ジョン・クローリー
出演 : シアーシャ・ローナン
エモリー・コーエン
ドーナル・グリーソン、他

物語・アイルランドの町で暮らすエイリシュ(シアーシャ・ローナン)は、きれいで仕事もバリバリこなす姉ローズ(フィオナ・グラスコット)とは正反対だった。内気な妹の未来を心配するローズの考えもあり、エイリシュはニューヨークに渡ることを決意する。だが、田舎町での静かな生活とは全然違う暮らしが彼女を待ち受けていた。(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Brooklyn

Memo1
シアーシャ・ローナンは(実年齢からみてもキャリアからみても)本当によい役を得たなぁ、と思う。
最初は(それは出自によるものだと思うけれど)愛想も悪く人との接し方もままならず、上司からは注意をうけていたエイリッシュ、フラッド神父のこころづかい、教会でのボランティア、簿記の学校へ通い始め、イタリアから移民してきたトニーとの出会いなどを経て次第にニューヨークでの生活に馴染むようになる。
入国管理局のブルーグリーンのドア(コートの色もグリーン!)を開けた、その先が白い光につつまれていて、いかにも新天地での夢と希望がこれから始まるのだという雰囲気が素晴らしい。
またエイリッシュが故郷をあとにしてニューヨークへ渡る際、船の同室女性にアドバイスをうけた事と同じように、ラスト、再びニューヨークへ戻る船のデッキで不安そうにしている、これから移民しようとする女性に入国審査のアドバイスをする円環構造もすごくよい(グリーンのコートではじまりペールエメラルドグリーンのカーディガンで終わる色の円環も)
下宿先の寮母キーオ婦人の的確な毒づき(笑)
(そして、よく人を見ている)
アイルランドと1950年代ニューヨークでの色彩設計の違い。
そのメリハリの美しさ。
全体的に彩度を抑えたアイルランドの住宅街、逆にウォームトーンで華やかなニューヨーク。
『アバウトタイム』『エクス・マキナ』など出演作の役柄がいつも"どーなる、ドーナル・グリーソン"と誰もが語るとおり、本作でも"エッ!?エイリッシュに選ばれるの、選ばれないの" "どーなるの?"というジム役を演じている。
水着の着替え方。
トニーと初めてコニーアイランドへ出かけた際に洋服の下に最初から水着を着ていくことを知らずにビーチで着替えるエイリッシュ。
アイルランドに帰国して親友ナンシーやジムたちとも馴染みの海へ出かける。その時、ひとりだけさっと洋服を脱ぎ水着になるエイリッシュ。(←ちょっと鼻高々 笑)
わざわざ呼び出して(エイリッシュがニューヨークでイタリア移民と結婚したことを小耳に挟んだのよと鬼の首をとったかのように)嫌味な言葉を投げかける食料雑貨店のミス・ケリー。
「今思い出したわ」
「ここはこういう場所だったことを」
(すぐに決心してニューヨークへ帰ることを決意するエイリッシュ。
「一番、早い便は?」)
ラストが鮮やか。
(エイリッシュがもたれかかっている壁にほのかにライトをあてて、少しそこだけ明るく見えるようにしているのもよい)
もう戻ってこないかもと思っていたトニーがエイリッシュを見つけ、同僚に工具を渡し嬉しそうに駆け寄ってくる。
抱き合うふたり。

Memo2
パンフレットが『バードマン』『グランド・ブダペスト・ホテル』と同じFOXサーチライトマガジンとして編集されたもの。
(マガジンとしての後半別記事も『ブルックリン』に繋がるものが多々)
衣装デザイナーはオディール・ディックス=ミロー
発想を広げるために参考にしたという、ふたりの写真家。
Elliott Erwitt オフィシャルサイト(日本語)
http://www.elliotterwitt.com/lang/ja/index.html
Vivian Maier
こちらはヴィヴィアン・マイヤー・サイト
http://www.vivianmaier.com/
Film Locations - On the set of New York
(現時点ではコニーアイランドのみ)
サイトの特性からみて、今後アップデートされ追加ロケ地が記載されるものと思われます。
http://onthesetofnewyork.com/brooklyn.html
BBC - Brooklyn - Writers Room
Nick Hornby (adapted from the novel by Colm Toibin)
脚本(英文)がPDFで読めます。
http://www.bbc.co.uk/writersroom/scripts/brooklyn
Title Design > Matt Curtis
(↓タイトル部分の画像あり)
http://annyas.com/screenshots/updates/brooklyn-2015-john-crowley/
(それにしてもMatt Curtis、最近のイギリス制作作品には必ずと言っていいほど携わっている)

映画『ブルックリン』公式サイト
http://www.foxmovies-jp.com/brooklyn-movie/

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2016-07-30

『ふきげんな過去』前田司郎監督、小泉今日子、二階堂ふみ、高良健吾、板尾創路、他

注・内容、台詞に触れています。
ふきげんな過去

監督 : 前田司郎
出演 : 小泉今日子二階堂ふみ
高良健吾、板尾創路、他

物語・東京・北品川に位置する食堂で生活している女子高生・果子(二階堂ふみ)の前に、18年前に他界したはずの伯母・未来子(小泉今日子)が突然現れる。とある事件によって前科持ちとなった未来子は果子の実母だと告白し、そんな彼女の登場に周りの家族はうろたえる。自分の部屋に住み込む空気を読めない未来子に、イライラする果子だったが…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Kako

Memo
全体的に彩度を下げてレンズフィルター、オレンジをかけたような色調は好み。
そして、それはまた北品川の運河を行き来する"ここではないどこか"の曖昧領域な人たちにピッタリのトーン。
さらには、これはいい風が通り抜けるのだろうなぁー、と、思えるエジプト風豆料理店の雰囲気や2階の果子の部屋、着ている衣装などから醸しだされる"夏の空気"映画でもあります。
twitterにも書いたけれど最初、ずっと『ふきげんな過去』のことを『ふざけんな過去』と思い込んでいた(あながち間違ってなさそうな気もしたけれど果子と過去をかけていることを考えると"ふざけんな"は無いよなぁー、などと)
母(実母ではない)サトエの友人、レイの娘カナちゃん(←『花子とアン』でヒロインの幼少期を演じていた山田望叶がめちゃくちゃ上手い!)と果子のやりとりにしばしば現れる"ふきげんな言動"
「面白さなんて期待するほうが間違いでだいたい同じことの繰り返しの中で感覚を麻痺させていくのよきっと」
「想像を超えることなんて起こらない、起ったとしても、すぐに対処できて、想像内の出来事に収まっていくの」
「だから、もともとつまらないものなの、世界は」
なんとペシミスティックな 笑
そして、いちいち反応するカナに対して受け答えしていて、どこか禅問答のようでもあり面白い。
二階堂ふみが小泉今日子に向かって言う台詞を借りるならば、遠くを見ながら"いいこと"言ってる映画。
そのシーンの台詞。
「みんな寂しいんじゃない?ひとりで居ても家族と居ても」
「(前略)〜欲望が人と人を結びつけるのよ。でもね、誰かと結びついたら、それはやっぱり孤独なのよ〜(後略)」
「欲望の行き着く先は結局孤独なの。それでも人は欲望するんだわ」
実際の母娘であるふたりの言動は(実のところ)よく似ていることがわかる。
やがて、果子は(爆弾を嬉々として作ったりしている)未来子に停滞したままの過去に絡み取られた現状から、まさに未来を垣間見るのだ。
それがラストの(噂だけで本当にいないと思われた)ワニが現れ、暴れ逃げ出すところを見ていて「これ、これ、これですよー」と言い出しそうなイキイキとした果子の表情に繋がる。
前田司郎監督、演劇的な間合いを感じるところもあるけれど台詞回しの妙として、これまた好みの領域。
(要はお気に入り色彩トーンの中でのあーだこーだ会話とかを絶妙のカメラポジションで撮ってくれることが嬉しいのだ)
パンフレット(オフィシャルブックとして書店売りも有り←こちらは帯が付いてる)デザインは大島依提亜/中山隼人
映画本編、ラストを華々しく(笑)飾るワニがモチーフの表紙。
(写真、インタビュー、対談など90ページ)
シナリオが掲載されているのは嬉しい。
(実際の脚本の最初に載っていたという年表も掲載←映画本編では多くを語られない登場人物たちを巡る"激動の歴史" 笑 が詳細に)
※文中敬称略

映画『ふきげんな過去』公式ホームページ
http://fukigen.jp/

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