2016-06-11

2016年の『エクス・マキナ(Ex Machina)』アレックス・ガーランド監督、アリシア・ヴィキャンデル、ドーナル・グリーソン、オスカー・アイザック

注・内容、他含めネタばれしています。
エクス・マキナ
Ex Machina

昨年5月にエクス・マキナ(Ex Machina)-原題(2015-05-24←ブログTBはこちらの記事へお願いします)のタイトルでブログメモを書いたときは、まだ未公開だった作品が遂に日本公開!

その時点で書いたブログメモを読み返してみると、まだキャストも(無名とまでは言わないけれど脚光をあびるほどの)有名さではなく、さらにアカデミー賞視覚効果賞を受賞するとは誰も予測しえなかった作品。
(アリシア・ヴィキャンデルが『リリーのすべて』でアカデミー賞助演女優賞を受賞することも)

そして最も驚くべき点は、今年、人工知能が囲碁で勝利するという2015年末でも予測できなかった事態が現実となっていること。(後述『WIRED』No.20の人工知能特集でも「囲碁という謎」というタイトルで"人工知能はいまだ棋士に勝つことができない"とレポート記事が書かれている)

Em2

Memo
監督アレックス・ガーランドへのインタビュー
・「イギリス版 MIT といえるインペリアル・カレッジの認知ロボット工学教授のマレー・シャナハンが書いた本に出合ったときは、その主張に強く共感した」
(教授はじめ、他の何人かに脚本を厳しくチェックしてもらったとも)
・「ぼくが思うに、この映画には互いにまったく独立したふたつの要素がある。ひとつはAIと意識に関するものだけど、もうひとつは人の社会の成り立ちに関するものなんだ。つまり、どうしてこの男は20代前半の女の形をした機械をつくり、テストのためと言ってそれを若い社員に託すのかという問題だね」
・AIと倫理についての最近の議論はフォローしていますか?の質問に答えた後「では、スカイネット(『ターミネーター』シリーズに登場する人類を滅ぼす人工知能 )については心配していないのですね」の問いに。
「ある意味、歓迎するね。人間はこの星で滅びるんだ。それは環境破壊のためかもしれないし、太陽系や太陽で起こる変化のためかもしれない。でもそれが起こるとき、われわれは決してワームホールを通り、別の銀河に行って、古くからある生存可能な惑星を見つけることなんてない。そんなことはありえなくて、われわれの代 わりに生き残るのは AI なんだ。 もちろん生みだせればの話だけど。 問題はなにもない。むしろ望ましいことだよ」
アリシア・ヴィキャンデルへのインタビュー
「Ava に意識があるのかないのかは、見た人が自分自身で判断しなければならないの」
「そして、意識はどこから生じるか。いつ生じたのか。最初からプログラムされているものなのか。何が本質的で、何が環境に依存しているものなのかもね」
上記2本のインタビュー『WIRED.20』より抜粋
NHK『SFリアル』といった番組が放送された。
番組のラスト、このシーンで締めくくられる > 1980年代にコンピュータへのハッキングをきっかけに核戦争が始まる危険性を描いた映画『ウォー・ゲーム』映画の終盤、暴走し始めたコンピューターは核戦争に勝つ方法をシミュレーションし始める。人々はそれを止めようと奔走する。
そしてコンピューターが最後に出した結論。「ウォーゲームに勝つ唯一の方法はゲームを始めないことです」それは戦争を始めないことだった。
「それよりチェスをやりませんか?」
おそらく本作はじめ、ここ数年の人工知能関連の映画や小説に多大なる影響を与えたと思われるレイ・カーツワイルの著書(本当に大著!)「ポスト・ヒューマン誕生―コンピュータが人類の知性を超えるとき」のエッセンス版「シンギュラリティは近い [エッセンス版]―人類が生命を超越するとき」が今年、発刊されました。(←原著が、やや冗長的な部分が多いので、めちゃくちゃ読みやすかった!)
『エクス・マキナ』の、その先。
(さて、何が起こるのか…)
シリコンバレーには既にシンギュラリティ・ユニバーシティ(Singularity University)という教育機関も存在している。
Singularity University
http://singularityu.org/
マット・カーティスによる美しいエンドタイトル。
Ex Machina titles - Fonts In Use
http://fontsinuse.com/uses/10043/ex-machina-titles
※Inspireを受けたデザイナーが幾つかのタイトルシークエンスを作っている方が多々。

Ex3

映画『エクス・マキナ』公式サイト
http://www.exmachina-movie.jp/

| | トラックバック (2)

2016-06-07

『海よりもまだ深く』是枝裕和監督、阿部寛、樹木希林、真木よう子、吉澤太陽、小林聡美、池松壮亮、他

注・内容、台詞に触れています。
海よりもまだ深く

監督 : 是枝裕和
出演 : 阿部寛樹木希林
真木よう子吉澤太陽
小林聡美
池松壮亮
リリー・フランキー、他

物語・15年前に1度だけ文学賞を受賞したことのある良多(阿部寛)は「小説のための取材」と理由を付けて探偵事務所で働いている。良多は離婚した元妻の響子(真木よう子)への思いを捨てきれず、響子に新しく恋人ができたことにぼうぜんとしていた。良多、響子、息子の真悟(吉澤太陽)は、良多の母・淑子(樹木希林)の家に偶然集まったある日、台風の一夜を皆で過ごすことになり…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Uf1

Uf2

Memo1
脚本の1ページ目に書かれたという、この言葉がそのまま問いかけでもあり(しかし答えがあるわけではない)、監督のまなざしでもある。
「みんながなりたかった大人になれるわけじゃない」
かつて、夏休みにお祖父ちゃん、お祖母ちゃんのいる田舎へ帰るというと"今住んでいる場所より遠く離れた自然のある場所"をイメージしたものだが、それがいつの間にか"電車やバスに乗っていける場所"(さらに、それが団地)に変わっていったのはいつ頃のことだろう?
『海街diary』地上波放送された際に、ふと思ったこと。
CMが入って細切れになっているのだが、普通に流し見として成立すること。それも、おそらく途中から(CMとCMの間のシーンだけ)見たとしても、ちょっと見入ってしまう(入っていける)という不思議な感覚をもった。
もしかするとテレビドラマ『ゴーイング マイ ホーム』を撮った辺りから、意図的に何かそういったことをされているのかなぁ、と。
(刊行されたばかりの著書『映画を撮りながら考えたこと』の中で言及されているかは未確認)
キネ旬、川本三郎さんの連載「映画を見ればわかること」で『海よりもまだ深く』が成瀬巳喜男監督作品を想起させたことについて書かれていて、なるほどなぁ、と納得することしきり。
(川本さんの著書でも成瀬作品はとにかく情けない男とお金の話が出てくると書かれていたけれど、本作もまさに。
本作で重要な台風のシーン、『山の音』にも台風が出てきたことも(←こちらは前半、ろうそくのあかりのもと、すごく饒舌になる登場人物)
『公園対談 クリエイティブな仕事はどこにある?』(是枝 裕和、樋口 景一・著) の中にあったQ&A. 是枝監督が仕事に対する心構えや姿勢について影響をうけた映画1〜3本→ケン・ローチ『ケス』侯孝賢『恋恋風塵』成瀬巳喜男『稲妻』
(そういえば『稲妻』から受ける雰囲気と本作、ちょっと似てるかも?)
テレビドラマ『ゴーイング マイ ホーム』(主人公の名前が『歩いても 歩いても』『海よりもまだ深く』と同じ良多。演じたのが福山雅治による『そして父になる』の主人公も同名)
本作が不在(亡くなっている)であることで存在が浮かび上がる(ラストで明かされる父親の隠された部分。硯のくだり)ことに対して、こちらは父親との話。
これ、今、再放送かけられたらいいのに。
『空気人形』のロケ地として最初、団地をさがしていた話が【東京人】(2009年11月号)に 〜 「僕は公団育ちなんです。40年ぐらいたつ公団なので、今では子供も少なく、お年寄りの一人暮らしが多くなっている。子供の頃に遊んだ芝生は立ち入り禁止だし、夜もまばらにしか灯りがつかない。集合住宅なのにみんなバラバラに住んでいます」
(この部分、後述良多の台詞に)
台詞いろいろ。
(特に冒頭あたりの、何気ない会話シーンを確認したくて2回目鑑賞の際、最後列1番端の席で迷惑にならないようにメモした)
・開巻すぐ
良多の姉・千奈津(小林聡美)と母・淑子の会話。
「宛名ぐらい自分で書きなさいよ」
「手がね、ほら」
(手をぶらぶらさせる)
「やめなさいよ、ドリフじゃないんだから」
「父さん。字だけはうまかったわね」
「大器晩成ってやつじゃない」
「うちにも一人いるけど」
「ま、大きいことは大きいけどね」
・良多と母、淑子との会話。
ベランダから階下を見ている良多
「静かだなぁ」
「もう遊ぶ子どももいないから」
「俺らの子供の頃は野球するのでも芝生の奪い合いだったけどね」
・「あんた覚えてる、みかん」
「俺が高校の時、種、植たやつだろ」
「花も身もつかないんだけどね。あんただと思って毎日水やってんだよ」
(この、なんともいいようのない言い回しの上手さ)
「なんかの役にはたってんだよ」
・妹について良多の台詞
(でも、その実、妹にも借金をしにいっていたりする)
「気をつけたほうがいいよ、あいつ何考えてんだかわからないんだから」
「かじるスネなんて残ってませんよ」
・川本三郎さんが(前述キネ旬の前号)『歩いても歩いても』にも出てきた蝶々の件(くだり)についても書かれていて、そのシーンの台詞。
「この道歩いてると蝶々がね、あとをつけてくるのよ」
「お父さんかと思った」
「まだ迎えにこないでくださいよね」
・(あー、まだまだたくさんのセリフたち。きりがないのでこれぐらいで。時々、追記して、ずらりと並べるかも)
興信所、所長(リリー・フランキー)が、ポツリと言う台詞
「時代に感謝しないとなぁ、ちっちゃい時代に」
歌謡曲の歌詞から連想されたというタイトル。
いしだあゆみ「ブルーライトヨコハマ」→『歩いても歩いても』
テレサ・テン「別れの予感」→『海よりもまだ深く』

Memo2
いつも印象的に残る食事シーン。
フードスタイリストは飯島奈美さん。
前作『海街diary』がしらすカレー
本作はカレーうどん(母・淑子による隠し味手法も披露!)

Koreeda
広告美術は葛西薫さん。
ちなみに「幻の光」から「花よりもなほ」「歩いても歩いても」は葛西さんによるアートディレクション「そして、父になる」は服部一成さん「空気人形」「海街diary」は森本千絵さんによるもの。

映画『海よりもまだ深く』公式サイト
http://gaga.ne.jp/umiyorimo/



| | トラックバック (16)

2016-03-10

"DAISY BELLのメロディが聴こえる"『オートマタ(Autómata)』ガベ・イバニェス監督、アントニオ・バンデラス、メラニー・グリフィス、他

注・内容に触れています。
オートマタ
Autómata

監督 : ガベ・イバニェス
出演 : アントニオ・バンデラス
メラニー・グリフィス
ビアギッテ・ヨート・ソレンセン
ディラン・マクダーモット
ロバート・フォスター

物語・太陽風の増加が原因で砂漠化が進み、人類存亡が迫りつつある2044年。人間に代わる労働力としてオートマタと呼ばれる人工知能搭載ロボットが人々の生活に浸透していた。さらに、生命体に危害を加えない、自身で修理・改善しないというルールが製造時に組み込まれており、人間との共存に支障が出ないシステムが確立されていた。そんな中、オートマタ管理者ジャック(アントニオ・バンデラス)は彼らが自発的に修理を行っていたのを知って驚く。その首謀者と目的を探る彼だが思わぬ事実に突き当たる。(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Automata

Memo1
元々の語源から機械人形ないしは自動人形。人工知能とシンギュラリティを扱った「エクス・マキナ」(2016年3月時点未公開←そろそろ公開を←ブログ内で何度も言ってますが)が"機械仕掛けの〜"というタイトルがついていることも興味深い。
そして本作、既視感が多々。(ディストピアなイメージは多くの方が指摘している通り「ブレードランナー」世界。またガラクタに囲まれたガジェット感は「チャッピー」「WALL・E/ウォーリー」と。)
しかし、いろいろ寄せ集めた感や全体に雑なイメージがあるにも関わらず、何故だか鑑賞後の全体の印象は好ましい。
レイ・カーツワイルによるシンギュラリティ(技術的特異点)が起こると予想されている2045年。その前年、2044年の物語。
おそらく実世界でも"まかり間違えば"そうなるであろうことが予測される量子コンピュータの件(くだり)も見せてほしかった。
(個人的には実世界でシンギュラリティは起こらずにプレ・シンギュラリティの段階で別の方向へいくと思っていますが…)
ふたつのプロトコル
(アシモフのロボット三原則の第一条を思い起こさせる。プロトコル2はまさにシンギュラリティへの予防線)
1st Protocol
:
Prevents The Robot Cannot Harm Any Form of Life.
2nd Protocol :
Prevents The Robot Cannot Alter Itself or Others.
1.全ての生命体への危害の禁止
2.自他のロボットの修理・改善の禁止
メラニー・グリフィスを久々に見た気が…と、思ったら「あれれれ」という呆気無さで撃たれてエンド。(アントニオ・バンデラスと2015年に離婚しているので撮影中に何かあって出演部分が縮まったのでは?と、穿ったことも考えてみたり…)
この博士役、やたらと「ドクター」と言い直させたりする、ちょっと面白そうな役だったのでちょっと残念。
エンドクレジットの一番最後に流れるオルゴール曲
"DAISY BELL"
なんといっても世界で初めてコンピュータが歌った曲として有名。(もちろん「2001年宇宙の旅」でHAL9000が機能を失いつつ声が変わっていきながら歌ったシーンが思い浮かぶ)
その歌声。
First computer to sing - Daisy Bell
https://www.youtube.com/watch?v=41U78QP8nBk
さらにアントニオ・バンデラス演じるジャックとオートマタ : クレオとのダンスシーンで使われた曲が「ラ・メール(La Mer)」(「裏切りのサーカス」!)

Memo2
タイトルデザイン他、ポスター、リミテッドポスターデザイン(←これがカッコイイ!)など
Robots,City,Opening and End Title Design
USER T38
http://usert38.com/filter/design/AUTOMATA
カラーグレーディング > COLORSPACE MEXICO
http://www.colorspacemexico.com/
The Art of VFX記事
AUTOMATA: VFX Breakdown by Worldwide FX
http://www.artofvfx.com/automata-vfx-breakdown-by-worldwide-fx/

映画『オートマタ』公式サイト
http://automata-movie.jp/

| | トラックバック (10)

2016-02-07

"火星の砂の色"『オデッセイ(The Martian)』リドリー・スコット監督、マット・デイモン、ジェシカ・チャステイン、マイケル・ペーニャ、クリステン・ウィグ、他

注・内容、台詞に触れています。
オデッセイ
The Martian
原作:アンディ・ウィアー
監督:リドリー・スコット
脚本:ドリュー・ゴダード
出演 : マット・デイモン
ジェシカ・チャステインマイケル・ペーニャ
クリステン・ウィグショーン・ビーン
キウェテル・イジョフォー
ジェフ・ダニエルズ、他

物語・火星での有人探査中に嵐に巻き込まれた宇宙飛行士のマーク・ワトニー(マット・デイモン)。乗組員はワトニーが死亡したと思い、火星を去るが、彼は生きていた。空気も水も通信手段もなく、わずかな食料しかない危機的状況で、ワトニーは生き延びようとする。一方、NASAは世界中から科学者を結集し救出を計画し、仲間たちもまた大胆な救出ミッションを敢行しようとしていた。(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Martian_1

Memo1
冒頭、突然の砂嵐により火星に取り残されることとなったワトニー。
その際、吹き飛ばされアンテナの一部が腹部に刺さり負傷するも、次に何をなすべきかの瞬時の判断、冷静さと手際よさによる手術などが描かれ、ここだけで主人公の(こういう人物ならと)資質が伺える見事なシーン。
そして、問題となる水や食料、通信手段などの問題点をユーモアを交えて次々とクリアーしていく。
DIY精神溢れるなぁ〜、と思ったのは宇宙服にカッチリ止められてるガムテープ(宇宙だからガムテープではなくて特殊な素材の養生テープだと思いますが)←これのおかげでヘルメット破損時に助かったりするシーンも。
ジェシカ・チャステインにマット・デイモンというと、どうしても『インターステラー』の事を思い出してしまう妙な(そして嬉しい)繋がり。
("あの星"にただひとり残っているアン・ハサウェイの姿とかも)
火星のワトニーと地球でのNASAやJPL、ブースター協力をすることを申し出た中国の宇宙局との救出作戦の進行具合。ヘルメス号乗組員と地球との家族のやり取りなどがDavid Bowie『STARMAN』が流れる中、カットバックで描かれる。
中でも笑ったのが地球で帰りを待つ夫が「これをフリーマーケットで手に入れたよ」とオリジナルのABBAグレイテスト・ヒッツのレコードをケリーにみせるシーン。(←後述通り70年代ディスコサウンドファンのケリーはめちゃくちゃ嬉しそうに笑う)
そういえば本作、NASA・アニー役のクリステン・ウィグがベン・スティラーと共演した『LIFE!』にも作品中屈指のシーンにボウイ『Space Oddity』が使われていた繋がりも。
宇宙船ヘルメス号でジェシカ・チャステイン演じるケリー船長が船内移動するシーンが惚れ惚れするぐらいカッコイイです。
(宇宙なので上下ありませんが画面上)下降して斜めに通路に入っていくあたり、いかにも慣れてる感が。
ずっと記録用のGoPro(カメラ)に話しかけるワトニー(『キャスト・アウェイ』でバレーボールを友として話しかけるトム・ハンクス想起)。
マット・デイモンが実にうまく、いろいろなトーンで話しかけるので単調になるかも?と思ってた危惧はふっとぶほどの名調子。
そして「Hot Stuff」「Waterloo」そして(あまりにピッタリなw)「 I Will Survive」などのディスコサウンドに彩られ(ワトニー曰く"絶望的なことに"船長の選曲の趣味 笑)その音楽も相まっての独特の風合いをもたせている。
マイケル・ペーニャが『アントマン』に続いて"おいしい"役どころ。
最後の最後まで、こんな調子(という台詞)
ケリー船長がワトニーをヘルメス号近くで確保した瞬間。
「あなたの音楽の趣味は最悪だ」
これぞ"余裕のユーモア"

Memo2
"火星の砂の色"
『アラビアのロレンス』のロケ地として有名なワディ・ラム砂漠で撮影された屋外シーン。
それらと室内セットとの砂の色を合わせ、さらに火星の砂の色として調整されている。
そのカラーグレーディング(色彩調整)に関してのデモンストレーション動画
Step by step demonstration of a color grading process.
https://vimeo.com/145806739
MPCによる動画
VFXメイキング映像。
The Martian VFX breakdown
https://vimeo.com/152962689
Main Title DesignerはMatt Curtis
End TitleはSCARLET LETTERS
↓こちらはMovie titles and typographyによるリドリー・スコット監督作品のタイトルデザイン記事(タイトル部分の画像あり)。
http://annyas.com/screenshots/directors/ridley-scott/

Martian_2

映画『オデッセイ』オフィシャルサイト・公式サイト
http://www.foxmovies-jp.com/odyssey/

| | トラックバック (41)

2016-01-29

『イット・フォローズ(IT FOLLOWS)』デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督、マイカ・モンロー、他

イット・フォローズ
IT FOLLOWS
監督 : デヴィッド・ロバート・ミッチェル
出演 : マイカ・モンロー
ジェイク・ウィアリー
キーア・ギルクリスト、ダニエル・ゾヴァット
オリヴィア・ルッカルディ、リリー・セーペ、他

物語・ある男と熱い夜を過ごす19歳のジェイ(マイカ・モンロー)だったが、彼は突如として彼女を椅子に縛り付けて奇妙な告白をする。それは性行為をする ことで、ほかの者には見えない異形を目にするようになり、彼らに捕まると殺されてしまう怪現象を相手にうつすことができるというものだった。さらに、その 相手が異形に殺されたら怪現象は自身に戻ってくるという。信じられないジェイだったが…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

If

Memo
スコープサイズをいかしたカチッとした画作り。
(POVではなくカメラぶれぶれが無いのがよいなぁ〜)
主観としてはジェイの目を通した樹々のざわめきや栗鼠や小鳥、小さな草花に触れる手などに特化している。
(それぞれのショットがジェイの感応性、感受性を感じさせているあたりが凡百な"怖がらせ映画"とは違ったものにしている)
一ヶ月足らずで撮影された低予算映画ということもあってロケ地が監督の地元、ミシガン州デトロイト。
冒頭、ジェイとヒューが映画を見に行った劇場がRedford Theatreで「おぉっ!」となった。(美しい劇場!)
↓こちらは劇場オフィシャルサイト
http://redfordtheatre.com/
一部特別上映されただけの「アメリカン・スリープ・オーバー」を監督したデヴィッド・ロバート・ミッチェルだけあって青春ホラー映画の趣き。
(お泊り会メンバーがいつも同じで、しかも同じ家。そして家族不在)
そのお泊り会メンバーのなかのひとり、ヤラが使っている電子書籍リーダーがシェル型であったりテレビがブラウン管だったりと、いつの時代のどのような場所なのかが特定できない感じがよい。
見えているものと見えないもの。
"それ"が移った人には見える、が、観客もそれが実際の人間なのか"それ"なのかは区別がつかない。
それ故のラスト。
ジェイとポールの後ろに見える人は"それ"なのか人間なのかはわからない。
(前段のポールが取った行動から察するにおそらくは…。)
本作のもうひとつの特異点が音楽。リチャード・ヴリーランドによるエレクトロサウンドが全体の印象を決定づけている。
ジョン・カーペンター監督「ザ・フォッグ」や「サスペリア」(ゴブリン!)の風合いを想起した。
さあ、これから何か起こるぞ!といった使われ方ではなく空間を広げていくようなサウンドが素晴らしい。
ジェイのヴォイスオーバーによる台詞。
(ある意味、気になる台詞ではある。ラスト、既にジェイとポールは"それ"になっているのかもしれないという飛躍的オチともとれる)
「最も恐いことは死の瞬間に1時間あとか、あるいは1分後かに魂が体から抜けて人間でなくなるという、そのことを知ることだ」

映画『イット・フォローズ』オフィシャルサイト
http://it-follows.jp/

| | トラックバック (15)

2015-11-12

『アデライン、100年目の恋(The Age of Adaline)』リー・トランド・クリーガー監督、ブレイク・ライヴリー、ミキール・ハースマン、 ハリソン・フォード、エレン・バースティン、他

注・内容、台詞、ラストに触れています。
アデライン、100年目の恋
The Age of Adaline
監督 : リー・トランド・クリーガー
出演 : ブレイク・ライヴリーミキール・ハースマン
ハリソン・フォードエレン・バースティン

物語・サンフランシスコの市立資料館に勤務する29歳のきれいな女性ジェニー(ブレイク・ライヴリー)は、ある年越しパーティーで出会った青年エリス・ジョーンズ(ミキール・ハースマン)と恋に落ちる。彼の両親の結婚記念日に招待されたジェニーが実家を訪ねると、初対面のはずのエリスの父親ウィリアム(ハリソ ン・フォード)から「アデライン」と呼び掛けられる。それは、ウィリアムが以前真剣に愛した女性の名前で…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Adaline_1

Memo
自分だけ歳をとらずに延々と生き続けたならば…。
いつしか娘は自分の外見を追い越して人には叔母や御祖母さんと紹介するしかなくなり(実際は同年代の)何人もの人の死を見送り(代々、飼ってきたワンちゃんも)やがては自分ひとりだけになってしまう事の孤独。(誰にも真実を告げることができない孤独も)
(手塚治虫さんの『火の鳥』で出てくる不老不死の身体となった猿田彦博士の話を思いだした。あの宇宙にたったひとりとなった姿が重なる)
アンガス・ストラシー、衣装デザイナー冥利につきるブレイク・ライヴリーの着こなし。コスチュームが時代を越えたところに存在するアデラインの聡明さや品格の説得力となっているところが本作の要の部分。
ダークワインカラーのベルベット・ドレスにグリーンのGUCCIヴィンテージのコート(袖丈が七分丈になっていて、そこに黒の手袋をあわせる)
また、このコートのラインが美しい!
あと、タートルネックセーターの色合い(ブラウンとベージュ、ミントグリーン系の組合せに対しての袖口の濃い色)が綺麗。これに合わせるヴィンテージのバッグがすごくマッチしている。
(写真は下記、リンク先記事に他のファッションも含め掲載されています)
↓衣装についての記事(英文)
The Age of Adaline fashion :
modern Gucci & designer vintage

http://www.cinemazzi.com/15-blake-lively-fashion-moments-from-the-age-of-adaline-trailer-to-get-you-really-excited

本作は偶然なのか意図的なのか『インターステラー』とDeep consciousnessとしてつながっている。
『インターステラー』の主人公クーパーが自分の年齢を越えた娘マーフとの再会を果たすラスト。
『アデライン〜』での娘ではあるが見た目は祖母の年代というフレミング。その、どちらもエレン・バースティンが演じている。
エリスの父親、ウィリアム(ハリソン・フォード)の回想シーン。
若きウィリアムがアデラインのエンストしている車を助けたことで出会ったシーンから森の中でのデートシーンで流れるのがボブ・ディラン『運命のひとひねり(Simple Twist of Fate)』(ぼくが生まれたのがあまりにも遅すぎた」という歌詞が)
ジェニー(アデライン)を招いて食事のシーン。
エリスの台詞。
「イタリアの古いことわざにこんな言葉があるんだ」
「次にあげる3つのものの数を言ってはいけない」
年齢、恋人の数、飲んだワインのグラスの数
劇中、登場した本
Henry James「Daisy Miller
Janet Fitch「White Oleander
そして!!
Ray Bradbury「Dandelion Wine
「たんぽぽのお酒」!!
ラスト。
一年後のジェニー(アデライン)と娘フレミング
発端と同じ出来事が起こり再び動き出した時間。
テロメアが作動し始め、でかける際に、ふと鏡を見ると一本の白髪が…
年齢を重ねることの幸せ感をにじませる、何とも言えない素晴らしいシーンで幕を閉じる。
ブレイク・ライブリーが実年齢に相応しい役回り(目尻の皺がそのまま主人公と重なって実にチャーミングだ)
タイトルデザイン >
Main & End Title > SCARLETLETTERS

Adaline

映画『アデライン、100年目の恋』オフィシャルサイト
http://adaline100.jp/

| | トラックバック (12)

2015-11-05

『アントマン(ANT-MAN)』ペイトン・リード監督、ポール・ラッド、マイケル・ダグラス、マイケル・ペーニャ、エヴァンジェリン・リリー、他

アントマン
ANT-MAN
監督 : ペイトン・リード
出演 : ポール・ラッドマイケル・ダグラス
マイケル・ペーニャエヴァンジェリン・リリー、他

物語・仕事や人間関係がうまくいかず、頑張ろうとすればするほど空回りしてしまうスコット・ラング(ポール・ラッド)。別れた妻が引き取った娘の養育費も用意することができず、人生の崖っぷちに立たされた彼のもとにある仕事が舞い込んでくる。それは肉 体をわずか1.5センチに縮小できる特殊なスーツをまとい、正義の味方アントマンになるというものだった。スーツを着用した彼は、ヒーローとして活躍する ために過酷なトレーニングを重ねていくが…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Ant_man

Memo
twitterにも書いたけれどSFマガジン2015年10月号添野知生さんの映画評で『アントマン』がドナルド・E・ウェストレイク、ドートマンダーシリーズのパスティーシュと知り期待度Maxで見たら、まさに"それ"(しかも『ホットロック』!)
冒頭、いきなりケルプではなくてルイス(マイケル・ペーニャ)が出所するスコットを迎えにきて‥ ってそれだけでニマニマしてしまった。
盗みに入ったものを、また返しに行くノリ(ルイスの話に乗って金庫から持ち帰ったスーツがとんでもないものだということが判ってのマッハな返し方 笑)や儲け話、いい話を小耳にはさんでスコットに持ちかけるノリ、そして窃盗団ルイス、デイヴ、カート(情報収集、ドライバー、ハッカーとドートマンダーシリーズとポジションは微妙に違いますが)とスコットとのやり取りなどまさに!!
スコットの家の方向が大変なことになっているみたいだとかけつけるものの庭先で脱線している巨大機関車トーマスのおもちゃ(笑)や巨大蟻を目の当たりにして「オヨビでない…、あ、お呼びでない。これまた失礼しましたー」と、これまたバックで去っていくあたり、まさにピム博士(マイケル・ダグラス)言うところの三バカ。
見聞きした話(ウマイ儲け話…のような話)の映像にテンポよくマイケル・ペーニャの名人芸と呼べる早口がかぶさる部分が最高。そして物語をポンポーンと前進させる(続編にも期待させる)上手さ。
ペイトン・リード監督、今まで撮ってきた作品。『イエスマン』『恋は邪魔者』『チアーズ』とリアルタイムで見ているのに監督名をしっかりと意識したのは本作が初。(『New Girl』の第1シーズンで3本監督していて、これは再チェック)
できれば『アベンジャーズ』の中に組み込まれなくていいから(ピム博士の経緯もあるから、そうも言えないけれど珍しく本作では繋がりを示すエンドロール内もしくは後のオマケシーンが無かった)、このまま単体シリーズで"スコット・ラングと3人の愉快な仲間たち&博士とその娘"のノリで撮り続けてほしい。
『ホビット』3部作の2、3作目に登場した映画オリジナルキャラクターであるタウリエルを演じたエヴァンジェリン・リリーがピム博士の娘、そしてアントマン=スコットのトレーニングコーチとなるホープ役。
このホープとピム博士、スコットと娘との関係性が軸として二重になっていて実に上手い描き方。
Main-on-End Title DesignはSarofsky
http://www.sarofsky.com

アントマン|映画|マーベル|Marvel|
http://marvel.disney.co.jp/movie/antman.html


| | トラックバック (12)

2015-05-24

『エクス・マキナ(Ex Machina)-原題』アレックス・ガーランド監督、アリシア・ヴィキャンデル、ドーナル・グリーソン、オスカー・アイザック

注・内容、他含めネタばれしています。
エクス・マキナ(原題)』
Ex Machina

監督 : アレックス・ガーランド
出演 : アリシア・ヴィキャンデル
ドーナル・グリーソン
オスカー・アイザック

物語・世界最大のネット起業で働くカレブ(ドナルド・グリーソン)のもとに「あなたはコンテストで優勝しました」というメールが届き創業者であるネイサン(オスカー・アイザック)の邸宅へ招待されることになる。そこでAIアンドロイドのエヴァ(アリシア・ヴィキャンドル)をチューリングテストしてほしいと告げられる。そして…。
※名前表記、発音的には→カレブ(もしくはケイレブ)→日本公開時に字幕がついた時点で、そちらに準拠訂正します。

※日本公開版表記→ケイレブ

2016年6月11日・新たに下記のブログメモを書きました。
2016年の『エクス・マキナ(Ex Machina)』
(昨年、欧米公開時点では人工知能はまだまだ囲碁には勝てないと言われていたのだが…。WIREDでのアレックス・ガーランド監督へのインタビュー記事など追記)

Exm1

Memo1
ラテン語で「機械仕掛けの〜」の意をタイトルとした『エクス・マキナ(Ex Machina)』
監督はアレックス・ガーランド
(『ザ・ビーチ』の原作者で、映画『28日後...』『わたしを離さないで』の脚本を手がけてきた)
不気味の谷を軽々と越えてしまった感(このあたりに近い将来"違和感なく生活に溶けこんでゆくデザインとしてのアンドロイドのかたち"へのヒントが隠されている気がする)があるA.I.エヴァの姿は手塚治虫先生が描いてきたアンドロイドと通じる艶めかしさ。
シンギュラリティ(特異点)をテーマとした『トランセンデンス』や人工知能ロボットを扱った『チャッピー』そしてクラウドベースの人工知能『her』など、ここ数年多岐にわたって広義な意味でのAIをテーマとした作品が作られている。
『エクス・マキナ』では、いわゆる強い人工知能と弱い人工知能で語られるところの強い人工知能、すなわち意識、知性を持った人工知能アンドロイドが描かれている。
そのAIの元となるのがネイサンが創り上げた企業(BLUE BOOK←わざわざ本作用にtwitterアカウントまであるw)が収集した世界からの検索結果によるディープラーニング。
ガラス越しに対面して、いろいろと会話を重ねていくうちに次第にエヴァに惹かれていくカレブ。「もしかするとテストされているのは自分では?」という疑問が。さらには本当に自分も生身の人間なのか?実はアンドロイドではないのか?という疑いも持つようになる。
いったいネイサンは何をしたいのか?
常にネイサンの身の回りの世話や食事などを作っているkyokoという女性の正体は?
とにかく、シンプル。
まず、ドナルドの務める会社が少し写った以外は全てアイザックの大邸宅の中だけ(ほとんどアメリカの自然公園がすっぽり入ったような巨大さ。ヘリコプターの操縦士に「あと、どれぐらいで着きますか?」の質問に「もう2時間前から敷地内にはいってる」と言われるほど広い。そして、当然のようにスマホなど外界との連絡が取れない)で、物語が展開する。
しかも台詞のある出演者が3人だけ。
Kyoko(前述)という日本人アンドロイドが登場するが台詞はない←これが逆に極めて恐い。途中ネイサンと「Perfumeかよ」とツッコミたくなるほどシンクロ度合いと息もピッタリなダンスを披露するシーンがあるが、これまたコミカルさとはうらはらにゾッとするシーンとなっている。
スターウォーズ新作に抜擢されているオスカー・アイザックや『アバウトタイム ~愛おしい時間について~』のドーナル・グリーソン、そしてエヴァを演じたアリシア・ヴィキャンデル(ガイ・リッチー監督『コードネーム U.N.C.L.E.』メインキャスト)と注目される役者によるキャスティング。
「これはハードウェアではなくウェットウェア」と取り出してみせたのが半透明な中枢部(まさしくハードウェアとソフトウェアの両方を合わせ持つ脳と呼べるもの)
そして、この試作機(?)の置かれた部屋のディスプレー方法、まるでApple Storeみたいw(多分、意図的?)
そして訪れる圧倒的美しさと恐怖を持つ終盤からの展開…。

Exm2

Memo2
タイトルデザインはマット・カーティス
(ダニー・ボイル作品にかかせない)
本編と美しくマッチ!ラストカットの後、点がサークルを描き少しずつ形を成し、やがてはニューロンモデルの如きに増殖していく。
脚本を手がけた『28日後…』繋がり、その他にも『わたしを離さないで』のタイトルデザインも。
さらにはクレジットがロールになってからの楽曲がSavages "HUSBANDS"でこれまた渋い選曲。
プロダクションデザイナーはMark Digby
(外観などに使用されたのはノルウェーのJuvet Hotel)
そのロケーションやプロダクションデザインについて書かれた記事(英文)
The Stunning Mansion in Ex Machina Is (Mostly)
Real, and You Can Spend the Night There

http://www.vanityfair.com/hollywood/2015/04/ex-machina-location
何ステップも先を読んだ人工知能をめぐる考察とならび衝撃的だったのは検索サイト"BlueBook"から画面に映し出されるOSデザイン、AI エヴァの設計図まで全てが統一された美しさで描かれていること。
DesignはTerritory Studio

http://www.territorystudio.com/work/motion/?p=Exmachina
A.I.エヴァのコンセプトアート > JOCK
http://io9.com/jock-unveils-sleek-dreamy-concept-art-for-ex-machina-1679557115
Ex_Machina Interview Special
Film4 | Interview
https://www.youtube.com/watch?v=_TmdBVgC7zE

| | トラックバック (20)

2015-05-14

"クサとチョコバナナとパンケーキ"『インヒアレント・ヴァイス(Inherent Vice)』ポール・トーマス・アンダーソン監督、ホアキン・フェニックス、ジョシュ・ブローリン、他

インヒアレント・ヴァイス
Inherent Vice
原作 : トマス・ピンチョン
監督 : ポール・トーマス・アンダーソン
出演 : ホアキン・フェニックスジョシュ・ブローリン
マーティン・ショート、リース・ウィザースプーン
ベニチオ・デル・トロ、オーウェン・ウィルソン、他

物語・1970年代初頭のロサンゼルス。ビーチを拠点に活動するマリファナ中毒のヒッピー探偵ドック(ホアキン・フェニックス)を、以前付き合っていた女性シャスタが訪ねてくる。彼女の依頼を受け調査を進めるドックだったが、いつしか巨大な陰謀に巻き込まれていき…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Vice

Memo1
サブタイトルを付けるとするならば"クサとフローズンチョコバナナとパンケーキ"(「部屋とティシャツと私」みたいな 笑)
とにかく最初から最後までクサを吸うドック。
朦朧体とでも呼ぶべき文体のようなもので描かれている物語につき、現実なのか夢なのか判別しにくい。
それ故、ここ2作のPTA作品の強度とはうって変わって、やや軽い印象。でも、この飄々と綴っていく語り口は好み。すごくリラックスして楽しめた!
誰もがイメージした『ブレード・ランナー』「ひとつで十分ですよ」に匹敵する「ちょっと、もっとパヌケーク、もっと」「ハイ ハイ ハイ」(←変な返事ともあいの手とも、とれる)シーン。(バックに小さく流れるは坂本九「スキヤキ」←やや、聞き取りづらかったので音の位相がしっかりとした上映環境で見てみたい)
ドックがたどり着いた巨悪は(これもはっきりとした実在として描かれるわけではないが一応、こう呼ばれている→)ゴールデンファングではなく実は原題でもある「インヒアレント・ヴァイス」"内在する欠陥"としてのアメリカという国が持つ矛盾と内包する問題点のようなものを表しいるともいえる。(それは1960年代から始まって今も脈々と続く)
最初、女性のナレーションが誰なのかが、わからないが見ていくうちにドックの事務所で働いていたソルティレージュによるものとわかる。(一瞬、シャスタかと勘違いした)
そのソルティレージュのウィジャボード(←?)によるお告げに導かれて行く場所(クサがここにあると言われてシェスタと行く。この雨が降る中に流れるニール・ヤングの曲がまたイイ!)とドックがたどり着く奇妙な形をしたゴールデンファングに関わるビルが同じ。(この奇妙なビルの形状は原作にも書かれていました)
ラスト。
原作にはないジョシュ・ブローリン(怪演!そして顔がデカイ!)演ずるビッグフットのマリワナの皿まるごと食いシーン(綺麗に盛られたフグ刺しを皿ごと端からツルーって食べるあの感じ 笑)
もう、ムシャムシャと食べる姿はめちゃくちゃでござりますがなw

Memo2
タイトルはScarlet Letter
ネオン管イメージのロゴは原著から踏襲。
メインタイトルの出し方がカッコイイ
トマス・ピンチョン原作冒頭のエピグラフはエンドクレジットロール最後の最後に出てきます。
舗道の敷石の下はビーチ! 1968年5月、パリの落書きより
CUT5月号「ポール・トーマス・アンダーソン監督全作品を語る」『インヒアレント・ヴァイス』についてインタビュアーがピンチョンに会ったことは?とかピンチョン自身は本作品は見たのですか?などの質問を浴びせていて面白い(「ユリイカ」におけるインタビューとあわせて読むと、多分会っているのは間違いないかなぁ、と予測。ピンチョンが出演していると噂されるシーンは未確認)
キネ旬に載っていたピンチョン作品の翻訳者として著名な佐藤良明氏へのインタビューで「ドックとビックフットのこじれた友情は何を表してるのでしょう」という問いに対して「ピンチョンの復讐です」と答えていたのが印象的。
衣装デザイナーはPTA監督と組むのがこれで5度目となるマーク・ブリッジス
ドックの衣装についてインタビューで「ニール・ヤング的な因習打破主義者で、むさくるしくゆったりした、少し擦り切れているのにほとんど偶然に格好よく見える姿をイメージした」と語っていました。

映画『インヒアレント・ヴァイス』
オフィシャルサイト

http://wwws.warnerbros.co.jp/inherent-vice/

| | トラックバック (6)

2015-03-12

"Think different"『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密(The Imitation Game)』モルテン・ティルドゥム監督、ベネディクト・カンバーバッチ、キーラ・ナイトレイ、マーク・ストロング、他

注・内容、台詞に触れています。
イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密
The Imitation Game
監督 : モルテン・ティルドゥム
脚色 : グレアム・ムーア
出演 : ベネディクト・カンバーバッチ
キーラ・ナイトレイマーク・ストロング
マシュー・グードチャールズ・ダンス、他

物語・第2次世界大戦下の1939年イギリス、若き天才数学者アラン・チューリング(ベネディクト・カンバーバッチ)はドイツ軍の暗号エニグマを解読するチームの一員となる。高慢で不器用な彼は暗号解読をゲーム感覚で捉え、仲間から孤立して作業に没頭していたが、やがて理解者が現れその目的は人命を救うことに変化していく。いつしか一丸となったチームは、思わぬきっかけでエニグマを解き明かすが…。(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Tig

Memo1
戦後、戦中(エニグマ暗号解析の主だったる部分)、少年時代(寄宿舎)の3つのパートによる構成。これが、また非常にかっちりとした作りで、そのあたりのオーソドックスさがアランの孤独さと変わった部分を浮かび上がらせている。とりわけ少年時代における哀しいエピソードは後々まで影響を与えたのだなぁ、ということがわかり痛切である。そしてアラン・チューリングが同性愛者であったことが、その後の人生に変節を与えてしまう(現在と違って当時、逮捕されるほどの罪となされていた)
その寄宿舎生活を送っていた学生時代に唯一、アランを助けてくれた親友のクリストファーとの会話。
「僕は母からも変わり者だと言われる」
「変わり者だからこそ偉業をなし得る(不可能を可能にする)」
このフレーズは1997年アップルが用いた広告キャンペーンのフレーズを思い出さずにはいられない。
〜前文略〜
彼らはクレージーと言われるが 私たちは天才だと思う。
自分が世界を変えられると本気で信じる人たちこそが
本当に世界を変えているのだから。
Think different

のちに人工知能開発における重要な鍵となる「チューリングテスト」(答えは機械が出したものか否かの判定としての考え方)
その初期バージョンが「イミテーションゲーム」
おそらく、様々な事柄(同性愛者として逮捕された際の刑事とのやりとり)とのダブルミーニングとして選ばれたタイトルだと思いますが、秀逸。
いろいろ映画の題材になってるエニグマですが、真っ先に思い浮かんだのは暗号解読のための諜報機関ウルトラのことも出てくるコニー・ウィリスのタイムトラベル小説『オールクリア』(「ブラックアウト」と「オールクリア」が2分冊の合計3冊からなる超特大巨編)のことが。←アラン・チューリングとニアミスも!?(ちなみに英国王のスピーチをその時代にラジオで聴くシーンなども)
本作を見てから読むと描写されている風景やファッションもイメージしやすく、すごくよいかも( ´ ▽ ` ) ミステリー小説マニアの女性もタイムトラベルしているので、そのあたりでもお楽しみが!
またしても音楽がデスプラ
アカデミー賞に本作と『グランドブタペストホテル』の2作品でノミネート(8回目)されるほどの売れっ子ぶり。(そういえば『英国王のスピーチ』もデスプラでした)
独特の旋律ループとでも呼ぶべきメロディラインのインパクトは大(鳴りすぎの映画もありますが…)
キーラ・ナイトレイが演じたアラン・チューリングを支えた女性ジョーン・クラーク(一度、婚約をするがジョーの立場が悪くなることを懸念しアランの方から破棄。その前にあったプロポーズシーン、ラストでの再会シーンといいシーンが多い)
そのジョーンを(これも当時の偏見的というか保守性というか)女性であるからという理由で断らずチームに入れるあたりにもアランの気質(性格・信念)がうかがえる。
チーム人員募集がクロスワードパズルというあたり、伝説的なgoogle社員募集看板広告を思いだした。
マーク・ストロングが『裏切りのサーカス』と同じくMI6繋がり。実は本当にMI6だったら更にビックリするけど(ル・カレみたいに)
出てくるだけで重厚さが増すのはさすが!
そして最後にベネディクト・カンバーバッチによるアランチューリングという極めて複雑な人となり(信念は揺るがないのだが、真実を打ち明けられない内的矛盾を持った)を造形してみせた凄さ。

ラストに出る字幕の本当に一番最後。
TURING'S WORK INSPIRED GENERATIONS OF RESEARCH INTO
WHAT SCIENTISTS CALLED "TURING MACHINES"
TODAY,WE CALL THEM COMPUTERS.
「のちの研究者に影響を与えた機械のことをチューリングマシンと名付けた」
「今日、我々はそれをコンピューターと呼んでいる」
エニグマ解読後、ドイツ軍にさとられないよう全てを秘密にしておくために燃やされる資料やマシン。
その火を囲むように映しだれるアランやジョーン、解読チームの仲間。

Memo2
タイトルデザインが奇しくも日本では同日公開(2015年3月13日)のホーキング博士とその妻を描いた『博士と彼女のセオリー』と同じどちらもMatt Curtis (他にも日本公開作で直近だと『トラッシュ! この街が輝く日まで』も)
Googleが2012年6月23日のホリデーロゴに選んだのがアラン・チューリングの生誕100周年を記念したデザイン。
http://www.google.com/doodles/alan-turings-100th-birthday
・WIREDの記事・
LEGOで作成されたチューリング・マシン(動画)
http://wired.jp/2012/06/22/lego-turing-machine/

公式サイト
『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』
http://imitationgame.gaga.ne.jp/

| | トラックバック (38)

より以前の記事一覧