2017-05-11

『カフェ・ソサエティ(Cafe Society)』ウディ・アレン監督、ジェシー・アイゼンバーグ、クリステン・スチュワート、スティーヴ・カレル、ブレイク・ライブリー、他

注・内容、台詞に触れています。
カフェ・ソサエティ
CAFE SOCIETY

監督 : ウディ・アレン
出演 : ジェシー・アイゼンバーグ
クリステン・スチュワート
スティーヴ・カレル
ブレイク・ライブリー、他

物語・1930年代。ニューヨークに暮らす青年ボビー(ジェシー・アイゼンバーグ)は、刺激にあふれた人生を送りたいと願いハリウッドに向かう。そして彼は、映画業界のエージェントとして大成功を収めた叔父フィルのもとで働く。やがてボビーは、叔父の秘書を務める美女ヴォニー(クリステン・スチュワート)のとりこになる。ひょんなことから彼女と距離を縮められて有頂天になり、結婚まで考えるようになるボビー。しかし、彼女にはひそかに付き合っている男性がいて…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Cafe_c2

Memo1
『ラジオデイズ』を軸に過去作全体を展観しているような趣きがある。
もっとも、その語り口。
既に名人至芸(例えるなら落語のような)の領域に達しているウディ・アレンなればこそのこと。
ボビーの恋は成就されない苦さがあれどもラストを新年で迎えることによって、どこかしら晴れやかな気分で劇場をあとにできるのだ。
ロスとニューヨーク。
ヴォニーとヴェロニカ。そう、まさに"ふたりのベロニカ"?
(キェシロフスキ監督の『ふたりのベロニカ』のように一瞬、すれちがうような接点もなく顔を合わせることはない)
この対をなすふたりの女性へのボビーのアプローチの仕方がロスとニューヨークでは全く違う。ロスではブロンクスから出てきたばかりで、まるで学生のような猪突猛進型だったのがニューヨークではクラブを成功させ自身に満ちた強引なアプローチに。
笑った台詞。
(毎度のことながらユダヤ人自虐ネタ)
「死刑の上にキリスト教に改宗するなんて」
「ユダヤ教にも来世があったらもっと信者が集まるのに」
スティーブ・カレルは『フォックスキャッチャー』で演じたデュポンの姿が怖くて怖くて、その演技があってか終始おさえぎみに話すボビーの叔父フィルとダブって見えた(こういう役、本当に上手い)
また兄ベンを演じたコリー・ストールが、そのくわえタバコの不敵さもあわせて見事な演技。(それゆえの改宗した際の刑務所での台詞が妙に可笑しい)
ニューヨークで知り合い、結婚するヴェロニカのブレイク・ライブリーは『アデライン、100年目の恋』でも1930年代を生きる(と、いうか100年間を演じる)女性を演じていて、写っているだけで華やかさが半径500mにふりまかれる。
文藝別冊『ウディ・アレン』冒頭対談での芝山幹郎氏『カフェ・ソサエティ』について「にやっとしたのは、キャステイングですね~(中略)~クリステン・スチュワートなんて『パニックルーム』の小娘だったのに、ここへ来て急成長ですね」←小娘って 笑
ドキュメンタリー『映画と恋とウディ・アレン』でダイアン・キートンがウディ・アレンを初めて見たとき「なんてカワイイ(cute)人なの」と思ったというインタビューの答え。
これ、ボビーに対してのヴォニーの台詞「かわいい。車のライトを見て動けなくなった鹿みたい」と見事なシンクロぶり。

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Memo2
撮影監督ヴィットリオ・ストラーロと初タッグ。
(そして初デジタル)
詳細記事が下記に↓
【FILM AND DIGITAL TIMES】
Passage from Film to Digital
: Vittorio Storaro, ASC, AIC

PDFファイルで閲覧、保存可。
http://www.filmanddigitaltimes.com/wp-content/uploads/2016/04/75FDTimes-Storaro-PassageToDigital.pdf
具体的なグレーディングについてなど詳細に書かれています。参考としてエドワード・ホッパー「サマータイム」やレンピッカなどの絵画も。
Coloristは『ブルージャスミン』や次回作『Wonder Wheel』も手がけるAnthony Raffaele
ハリウッドパートはウォームトーン、ブロンクスパートは彩度を落としたクールトーン(銀落としのようなザラツキ感も)、ニューヨークパートはその中間、明るみのあるトーンと分けられている。1シーンだけクールからウォームへほとんど気づかないレベルでトーン変調する場面(ロスとブロンクスとの手紙のやり取りが読まれるところ)があった(もしかして、ウディ・アレン作品初?)
1930年代を再現した衣装に注目
スージー・ベンジンガー(Suzy Benzinger)
本作では「シャネル(CHANEL)」の衣装協力のもと当時のファッションが忠実に再現され、劇中でクリステン・スチュワートやブレイク・ライブリーが着用するドレス類からジュエリーまで提供されている。
↓こちらはFashionsnapの記事。
http://www.fashionsnap.com/news/2017-05-04/cafe-society/
(なお劇場によってはクリステン・スチュワートが出演しているCHANELのCMが本編の前に流れる)
タイトルシークエンスのフォントはおなじみのWindsor
ウディ・アレン監督はAmazon配信ドラマでも、やっぱり使用フォントはWindsorだった!
考えてみれば『アニー・ホール』以降『インテリア』を除いて全部そうだったかも。

Woody1

Memo3
↑ウディ・アレン本が並んでる!
左から文藝別冊『ウディ・アレン』評伝『Woody ウディ』『ウディ・アレンの映画術』(撮影時点では未発売の『ウディ・アレン完全ヴィジュアルガイド』宣伝チラシも置いていた)
評伝『Woody ウディ』(デイヴィッド・エヴァニアー著/ 大森さわこ 翻訳) 分厚い!二段組みなれど品のある書体、行間で読みやすい。
紙質を変えたモノクロ写真ページが巻頭と中盤合計32ページ(撮影風景や女優とのスナップなど)
公認ではないけれど協力はする形でウディ・アレンといくつかのメール交換が行われていて、その文言も読める。
締めくくりで「会いませんか」という著者に対して、ついに対面なった部分も書かれています。
文藝別冊『ウディ・アレン』はエッセイ・論考・コラム・作品評で構成されたアレン作品を見続けた者にとっても、これから順に見ていこうと思っている人にもおすすめのムック本。
作品評に当時のパンフレットからの再録がおさめられているのも嬉しい。
・『ウディ・アレン完全ヴィジュアルガイド』はオールカラーで基本見開きで1作品が紹介される、まさにガイドブック。
(ちなみに『アニー・ホール』と『マンハッタン』は5ページ)

映画『カフェ・ソサエティ』公式サイト
http://movie-cafesociety.com/

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2017-04-23

"Are You Lonesome Tonight"『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件(A Brighter Summer Day)』エドワード・ヤン監督、チャン・チェン、リサ・ヤン、他

注・内容、台詞、ラストシーンに触れています。
牯嶺街少年殺人事件
(クーリンチェ少年殺人事件)
A Brighter Summer Day

監督 : エドワード・ヤン
出演 : チャン・チェン
リサ・ヤン、リン・ホンミン
ワン・チーザン、
チャン・ホンユー、他

物語・1960年代の台湾・台北。夜間高校に通うシャオスー : 小四(チャン・チェン)は、不良グループ・小公園のワンマオ : 小猫王 : リトルプレスリー(ワン・チーザン)たちといつもつるんでいた。ある日、シャオスーは小公園のリーダーのハニー(リン・ホンミン)と付き合っている少女・シャオミン : 小明(リサ・ヤン)と出会う。ハニーは、小公園と対立するグループ・217のボスとシャオミンをめぐって衝突し、相手を殺して姿を消していた。シャオスーはシャオミンにほのかな思いを抱いていたが…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Absd

Memo1
とにかくスマートである。
湿気をおびたり泥臭さが際立ったりもせず、一定のリズムは壊れることなく、途切れることなく最後まで描かれる。
黒澤明監督が『デルス・ウザーラ』撮影に入る際の「私の監督方針大要」に書かれていた
「カメラはカメラを意識させてはいけない(役者が止まればカメラも止まる)」(←正確ではありませんが大意はこんな感じ)を思いだした。
見ている間、カメラがケレン味ある動きを見せたり、演者が熱が入りすぎてオーバーアクト気味になることもなく、かといって冷徹な視線でもない(むしろ監督のまなざしの温かみすら感じる)
この4時間版はその監督のまなざしが全編に降り注いでいる気がする。
それはラスト、シャオスーが捕まり事情を聞かれる警察署でのシャオマーを写したシーンにいたるまで…
「彼だけが唯一の友だちだったのに」
撮影スタジオでシャオスーを見つけた映画監督
「オーディションを受けた、彼女、連絡がとれないんだ」
「彼女の自然な演技がよかった」
「自然?」
「監督なのに何も見ていない」
そこに残ったのは映画冒頭からずっとシャオスーの行先を(行く末を、未来を)照らし続けていた懐中電灯が。
自転車置き場
(この自転車置き場から角を曲がってお店などが並ぶ広場へ向かうところの動線が最初の方にもあり、素晴らしくよい。また、他にも父親とシャオスー、母親と娘などゆっくり道を歩く場面は繰り返し出てくる←これがまたよい)
シャオマーをまちぶせているところをシャオリンに見つかり立ち去ろうとするシャオスー。
声をかけ追いかけてくるシャオリン
言い合いになるふたり。
「私を変えたいのね?」
「あなたも他の人たちと一緒なのね」
「この社会と同じ。変わらないのよ」
そして…
今回、再見して発見したのだが、刺された直後シャオミンの左腕がシャオスーの首に(まるで)抱きつくように回っていて、その姿が一瞬抱擁しているかのようにさえ見えてしまった。
それゆえの最初の出会い、パーラーでのにこにこしながらお互いを見つめ合う姿などが浮かんできて、なんともいたたまれない気持ちでいっぱいになった。
バストショットからロングになったタイミングでバイクが横切っていく。
「起きてよ」「こんなことで死なないだろ」
続いて自転車が横切り、次第に周囲の人間が気がつき始める。
(このシーンの前に満月が写されていて、その時間帯の明るさも考えぬかれている。バックの屋台の並ぶ木と木の間にかすかに見える宵闇ブルーの美しいこと←これは今回のデジタルリマスター・バージョンで再発見)
隣に住む本省人に対しての台詞。
「8年間、日本と戦ってきて、今では日本家屋に住み日本の歌がとなりから聞こえてくる」
(この辺の本省人と外省人についての経緯は予備知識として知った上で見るのがベスト。今回は3時間版を見ていたので理解しているが最初に見たときは少しわかりにくかった)
印象的な2曲
・英語タイトルの元となったプレスリーによる"Are You Lonesome Tonight"(邦題 : 今夜は一人かい?)
映画では使われていないが、観終えてから聞くと途中に入る台詞部分が沁みる。
・フランキー・アヴァロン(Frankie Avalon)の1959年に全米1位 "Why"
これまたパーラーでのコンサートでキャラ立ち素晴らしきワンマオの台に乗って歌うハイトーンヴォイス。(またワンマオ、いい奴なんだなぁ)

Abrightersummerday_2

Memo2
初公開時と1998年リバイバル公開時のチラシ。
共に188分版。
上映館はそれぞれ今は閉館してしまったシネマ・ヴェリテ、シネマアルゴ梅田。
1998年リバイバル時のチラシ解説面には、わざわざ"ビデオ、LDリリース版は4時間バージョンでなされているため、3時間版はこの上映でしかご覧になれません"の記載も。
(188分版の再公開はできないものなのだろうか?)
3時間版と4時間版。
シャオスーをとりまく家族の描写、シャオミンからうける印象の違いが最も大きいと記憶。特にシャオミンについては今回再見して全く違った見方をしていたのかもと思われるほど。(いわゆるファム・ファタール性。その道しか選べなかったのか宿命的なものなのか…)
『牯嶺街少年殺人事件』ロケ地
(↑参考として個人サイトにつきリンク切れの場合あり)
http://www.gangm.net/taiwan/summerDay/index.html
映画評論家・川口敦子さんと川野正雄さんの対談形式によるシネマディスカッション。
(↑修復作業について、80年代台湾ニューウェーブについて、そして本編について。素晴らしい内容です)
Cinema discussion
http://lecerclerouge.jp/wp/category/cinema/cinemadisussion/
Criterioncollectionによる4Kレストアについて
ワークフロー動画 (修復後、小公園のパーラーから出て行くハニーの後ろ姿。左側に見える時計の文字盤が判別できる!また写さないことで際立つ医務室でのシャオミンとシャオスーの会話部分の壁!)
Restoration Spotlight: A BRIGHTER SUMMER DAY
https://www.youtube.com/watch?v=2AMSHs2adWk

『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』公式サイト
http://www.bitters.co.jp/abrightersummerday/


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2017-03-25

タイトルデザイン_49 Prologue Film/Kyle Cooper『キングコング:髑髏島の巨神』ジョーダン・ヴォート=ロバーツ監督、トム・ヒドルストン、ブリー・ラーソン、サミュエル・L・ジャクソン、他

キングコング:髑髏島の巨神
Kong: Skull Island

監督 : ジョーダン・ヴォート=ロバーツ
出演 : トム・ヒドルストン
サミュエル・L・ジャクソン
ジョン・グッドマン
ブリー・ラーソン
ジン・ティエン
ジョン・C・ライリー、他

Kong

Memo1
とにかく怪獣テンコ盛り。
タコや蜘蛛やトカゲや水牛…。
出し惜しみ、一切なし。
冒頭の第二次世界大戦期シークエンス段階からコングも姿を現す。
(この時のふたりが髑髏島で生き残り、そのひとりがのちのハンク)
タコと対決して、そのまま足を食すコング。
帰りぎわに観客が「大きなゲソが夕食やったねー」(←関西弁)とか言ってて笑ってしまった)
サミュエル・L・ジャクソンとコング。それぞれの目と鼻のアップがどっちがどっちか、わからなくなるぐらいスゴイ!
また、出るだけで、イイ映画になる(映画の守護神)ジョン・グッドマンに合わせて本作はジョン・C・ライリーが最高に素晴らしい!
そのジョン・C・ライリー演じるハンクの髭と写真で見た監督の髭が同じなのだが、これは監督の洒落っ気?
ハンクがコメディ的パート。
こんな台詞。
コングが天敵の巨大な髑髏顔のトカゲ怪獣について。
「スカル・クローラーだ」
「怖そうな名前を今、思いついた」
メインキャストが紹介されるエンドタイトル部分にハンクが無事帰還した姿とカブス(1908年以来優勝がなくて、この1973年でもネタになっている。で、昨年話題となった108年ぶりの優勝)の試合をくつろいでテレビをみるシーンが続いて、なかなかよい締めくくり。
時代設定が1973年。
携帯もインターネットもなく、ランドサット(地球観測衛星)が撮影した画像に髑髏島が写っていたという設定。
ベトナム戦争が終結したばかりで多くの兵士が帰国をしていく時期というのも、ジャングルへと入っていく流れとしてもうまい。
既に監督が言及しているとおり『地獄の黙示録』さながらに。
レンズフィルター、Yellowをかけたようなカラコレ。全体的な色調が1970年代の雰囲気を醸しすことに成功している。
シークエンス毎の場面設定も上手い(川、森、湿地帯、怪獣の墓場…)
『パラノイド/ブラック・サバス』や(博士の異常な愛情で別の意味で有名になった)『また会いましょう』など音楽の使いどころも、変にひねらないで素な感じでよかった。(この監督、性格が歪曲していなくて、そのまま"ど真ん中"投げるタイプだとみた。今後が楽しみ!)

Memo2
エンドロール終了後にも続きあり。
(モナークのこと、そしていよいよ対決への橋渡し!というゴジラに加えてモスラ、ラドン、キングギドラ…って…)
タイトルデザインはギャレス版『ゴジラ』に続いてPrologue Film/Kyle Cooper
ギャレス版『ゴジラ』の時を踏襲した作り。
1944年~1973年までをニュースフィルムを混在させて、ところどころにモナークのことがインサートされている。
現時点(2017年3月25日)でPrologue Filmサイトに『キングコング:髑髏島の巨神』のタイトルシークエンス動画は公開されていませんがギャレス版『ゴジラ』をはじめ、いろいろ見ることができます(サイトがリニューアルされたばかり)
http://www.prologue.com/

映画『キングコング:髑髏島の巨神』オフィシャルサイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/kingkong/

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2017-03-23

『哭声 コクソン(the wailing)』ナ・ホンジン脚本・監督、クァク・ドウォン、ファン・ジョンミン、國村隼、チョン・ウヒ、他

注・内容、台詞に触れています。
哭声 コクソン
the wailing

脚本・監督:ナ・ホンジン
出演 : クァク・ドウォン
ファン・ジョンミン
國村隼チョン・ウヒ、他

物語・警察官ジョング(クァク・ドウォン)が妻と娘と暮らす平和な村に正体不明のよそ者・山の中の男(國村隼)が住み着いて以来、住人たちは彼のうわさをささやいていた。やがて、村で突然村人が自分の家族を手にかける事件が発生する。犯人には、濁った目と湿疹でただれた肌という共通点があり…(物語項・シネマトゥデイより抜粋)

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Memo1
●「人々は恐れおののき霊を見ていると思った。そこでイエスは言った。なぜ心に疑いを持つのか。私の手や足を見よ。まさに私だ。触れてみよ。このとおり肉も骨もある」
ルカによる福音書24章 37-39節

監督自身がクリスチャンということもあり、なお且つ噂が疑念へと変わっていく過程についての考察としても、最初からテーマとして掲げらている一節。
(実は終盤に…)

ドラキュラも鬼もゾンビも悪魔も地霊も天使も"もののけ"もイエスも修験者もシャーマンもあらゆるものが混然として提示され、ホラーでもありサスペンスでもありエクソシストでもあり震える舌でもありコメディでもあるという全くジャンル分け不可能な今までにない映画体験をもたらしてくれる超絶怪作。
西欧的解釈図式としてあらわすならば(一応)悪魔とその従者、そして天使ということになるのだろうが、この作品はそうは語りきれないようにパズルのピースをずらして描かれていて如何様にも解釈がとれるというところが、また魅力だ。
さらには悪意の実態化という点で、黒沢清監督『CURE』を連想せずにはいられない。
「ミーに任せてちょ」と「おそ松くん」のイヤミのように登場してドンガラガッチャン、ドンガラガッチャン踊るシャーマン祈祷師として、あっという間に物語を転調してみせたファン・ジョンミン演じるイルグァンの唖然とさせられたパワフルな除霊シーン。
(実際、その場面がめちゃくちゃ面白い!)
そこで、それまでゆったりと或いはモゾモゾと描かれていた「噂」の部分が「エッ!?ホントにそうなの?」と観客までをも信じこませてしまうミスリードの上手さ。
(ここの誰を除霊し、何に祈祷しているのかのシーンはすっかり山の中の男とイルグァンが対峙した状態かと思いこんでしまっていた)
ラストに至っても何を信じるかによって捉え方が変わってしまう…
教会の通訳と山の中の男の対峙、会話、問答。
「お前が"悪魔"と言ったんだ」
「わたしは何者か、わたしの口からいくら言ったところでお前の考えは変わらない」
「お前は今もわたしのことを悪魔だと思い、それを確かめに…」
「わたしはわたしだ…」
並行して謎の女・目撃者ムミョンとジョングとのやりとりも描かれる。
「今、行ってはいけない」
「娘が」
「これは罠…」
「鶏が三度鳴くまで」
(それぞれの考え、取った行動が各々に影響しあっているように思える見事な締めくくり方、冒頭の福音書の一節と呼応する。お前がそう思ったから実体化したのだと言わんばかりに…)
「釣り糸をたらして、そこにひっかかるだけ」
その台詞通り、ファーストカットは釣り針に餌をつけている山の中の男の姿から始まる。
そして、物語の構成自体が、そのまま観客に提示した餌のように次々と提示されていく。(どう考えるのか、誰を疑うのかも委ねられている)
まさにダブルミーニングとしての"HOOK"

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Memo2
娘のために奔走したジョングをクァク・ドウォンが『哀しき獣』に続いて、演じ、またしても強烈だ。
最初の頼りな~い、海岸に打ちあげられたアザラシのような姿とラストでの姿は全く別人のよう。
見たこともないアクション祈祷シーンを演じたファン・ジョンミンはやはり上手い!
ムミョンを演じたチョン・ウヒはその立ち姿自体に独特のオーラがあって、これまたイイ!
そして國村隼さん!
もう何も申しません!怪演を通り越した怪演!
泣く子も黙らずに泣きます!

『哭声/コクソン』公式サイト
http://kokuson.com/

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2017-03-05

"今日までそして明日から"『恋妻家宮本』重松清原作、遊川和彦監督、阿部寛、天海祐希、他

恋妻家宮本
原作:重松清
監督・脚本:遊川和彦

出演 : 阿部寛
天海祐希
菅野美穂、相武紗季
工藤阿須加、早見あかり
奥貫薫、佐藤二朗
富司純子、他

Koisaika

Memo
本当はこのタイトルにしたかったんじゃないの?という"今日までそして明日から"を使ったリレー式出演者によるファミレスでの合唱エンディングがいかにも大団円で素晴らしい。
阿部寛(宮本陽平・役)の背丈に拮抗できるのは、この人ならではという天海祐希(妻・美代子)のスパッとした口調をいかしたキャステイングの妙!そして、それらは随所に(めがね菅野美穂と相武紗季、阿部寛による料理教室のシーンの可笑しみ。大学生時代の美代子役を早見あかり、怖〜い登場の仕方の生徒の祖母役を富司純子)
予告編がミスリードとして、いきている展開。
(いきなり離婚届をつきつけられる話かと思ってた 笑)
実際は"あぁ勘違い"というか"早とちり"というか"いろいろ決めかねる性格"(ファミレスのメニューを迷う迷う)から起こるエピソードの積み重ねでできた、ちょっとほっとする話。
劇中、美代子が「懐かしいわねぇ~、拓郎。この頃、妙にこの歌ばかり口づさんでしまうのよねぇ。CDどこにあるかさがしまわったら実家にあったのよ」
出してきたのはCD(下記画像のエレック版LPレコードではなくて、フォーライフレコードからの復刻版)『青春の詩
阿部寛自体も「ふふふふ~ふん♪」と鼻歌で少し口づさんでいるシーンが
(鼻歌といえばアニメ「クロマティ高校」の「人間なんて」が思い出せないファンしかわからないのではないのの大爆笑回を思いだす)

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原作者の重松清さんも大の拓郎ファンということもあって、このエンディングは嬉しかっただろうなぁ
(2016年のつま恋にも参加していたり、寄稿されていたり)
息子の部屋にはブルース・スプリングスティーンのポスターがベタベタと。
背後からぬぅ~っとパック中の白い顔で現れた姿は『犬神家の一族』のスケキヨのよう(で、音楽も当時のそれっぽい横溝正史ミステリシリーズの趣きに)
もうひとつの主役と言える「ファミレス」のロケ地→千葉県我孫子市にある旧レストランステラを「デニーズ」のセットを組んで撮影。
また、常総線「新守谷駅」を「こいづま駅」に。
平仮名にすると一瞬「エェッ!?つま恋」と空目してしまった 笑
原作は題名の「ファミレス」をファミリーレストランのほか、ファミリー(家族)レスという意味とのダブルミーニング

映画「恋妻家宮本」公式サイト
http://www.koisaika.jp/

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2016-12-30

『この世界の片隅に』こうの史代原作、片渕須直監督・脚本、のん、細谷佳正、稲葉菜月、尾身美詞、小野大輔、潘めぐみ、岩井七世、他

注・内容、台詞、原作に触れています。
この世界の片隅に

原作 : こうの史代
監督・脚本 : 片渕須直
出演(Voice Cast) : のん
細谷佳正、稲葉菜月
尾身美詞、小野大輔
潘めぐみ、牛山茂、新谷真弓
岩井七世
小山剛志、津田真澄、他

Konoseka1

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129分の上映時間。長いのかな?と思っていたら「エッ!?もう終わり」あっという間。
もう少しこの世界に浸っていたい。
本当に素晴らしすぎてなんだかボーっとしてしまった。
映画史に残る映画に出会うことは、そうざらには無い。
(もしかすると映画を見始めてからの40数年の中でも、数本あったか無かったかといったレベル)
終映あとの場内。
そんな瞬間に立ち会ったのではないのか!?、と、いった感慨が"この喩えようのない言語化不可能な鑑賞後すぐの気持ち"となって現れているのではないだろうか?とも思える空気。
これこそ"劇場で映画を見るということの魅力"の最大要素だと思います。
いろいろ驚いた事だらけなのだが、まず動き幅が小さくてジワーと動いていくすずさんたちのアニメイト部分。
公式ガイドブック、パンフレット共に片渕監督がインタビューでロングレンジとショートレンジの"仮現運動"について語っているところが面白い。
(あとは、その実験精神!)
google第2検索ワード候補として"傘"が出てくる!
割りと早い段階(←公開初日)から出ていたので初見ですぐに検索数が増えたのではと推測。

Konoseka_book

Memo2
パンフレットに"すずさんの生きた時代"として"世の中の動き"と"すずさんの日々"が対比して年表になっている。これがまたなんともなんとも細かくて「中野本町に海苔を届けに行く」とか「もんぺを縫う」とか。
すずさんのぼぉ〜っとしたところが現れた(ちょっと細かめの)好きなシーン。
呉の港に浮かぶ戦艦や巡洋艦の名前に詳しい晴美ちゃん(晴美さん←すずさんは"晴美さん"と呼ぶ)
指さしながら、すずさんに説明する。
「へぇー、ほいじゃあ、うちもお礼に」
「大きな雲じゃろう」
「うん」
「かなとこ雲、言うてね」
「うん」
「大雨になります」
「えっ!?」
(ちなみに原作だと、ほんの8コマのシーンだけれども、こういった細やかなところもアニメーション化しているところもスゴイ、そして何よりもリスペクトに溢れている)
音響監督も片渕須直監督。
(些細な音、微細な音から爆撃時の凄まじい音まで、その緩急つけられた隅々まで行き届いた音響も素晴らしい)
「その冬は雪が多うて春が待ち遠しかった」の(ナレーション)台詞に続く遠く響き渡る空襲警報のラッパの音!!
(この音響定位の見事さ)
鑑賞後すぐに、ふと思い浮かんだこと。
拓郎さんの全編広島弁の歌詞「唇をかみしめて」がよぎった。
人が生きとるネー
人がそこで生きとるネー
人がおるんヨネー
人がそこにおるんヨネー

Voice_konoseka

Memo3
本作は徐々に支援していく番組(媒体)などが増えていったことでも、まさにエポックメイキングな映画ともいえます。
そのうちのひとつ→上記、画像(テレビ撮り)MBS夕方のニュース『Voice』で放送された「楠公飯」レシピの特集。
実際に記者が炊いていくところから撮影。(確かに分量は増えているけれど、美味しくなさそう…。)
※MBSは「ちちんぷいぷい」でも『この世界の片隅に』を大きく時間を割いて取り上げていました。
『BRUTUS』No.837年末恒例の映画特集。
予告編による映画選び4パターンの1本として『この世界の片隅に』の記事
特筆すべきは、ヒロインを演じる「のん」の声。ナレーションではなく劇中からのセリフのからの引用だが、吸引力が半端でなく、本予告編のための録り下ろしに聞こえるほどの生々しさがある。(解説文より抜粋)
最後に。
(誰もが書いていますが)
そう!この、のんさんの声がまさに本作のひとつの肝となったとも言える"すずさん"そのものでした。

追記
片渕監督がtwitterで"いわゆるCG、一切使ってません。手描きと切り紙アニメばっかり"の発言に新年早々ビックリ!!

Konoseka2

劇場用長編アニメ「この世界の片隅に」公式サイト
http://konosekai.jp/


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2016-08-29

『君の名は。』新海誠監督、神木隆之介、上白石萌音、長澤まさみ、市原悦子、他

君の名は。
y o u r   n a m e.

監督 : 新海誠
出演(ボイスキャスト) :
神木隆之介上白石萌音
長澤まさみ市原悦子、他

物語・1,000年に1度のすい星来訪が、1か月後に迫る日本。山々に囲まれた田舎町に住む女子高生の三葉(上白石萌音)は町長である父の選挙運動や家系の神社の風習などに鬱屈していた。それゆえに都会への憧れを強く持っていたが、ある日彼女は自分が都会に暮らしている少年になった夢を見る。夢では東京での生活を楽しみながらも、その不思議な感覚に困惑する三葉。一方、東京在住の男子高校生・瀧(神木隆之介)も自分が田舎町に生活する少女になった夢を見る。やがて、その奇妙な夢を通じて彼らは引き合うようになっていくが…。(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Kimi1

Memo
予告編からうけていた印象、物語とは全然違っていてすっかりやられました。
男女入れ替わり『転校生』の変奏モチーフかと思いきや、ポスト311まで見据えた(隕石落下後の復興庁と書かれた立ち入り禁止のシール)とんでもないブーストをかけてくる展開の映画でした。
アヴァンタイトル
流れていく彗星。
「朝。目覚めると何故か泣いている。そういうことが時々ある」
「見ていたはずの夢はいつも思い出せない」
「ただ」
(ふたりで)
「ただ…」
「何かが消えてしまったという感覚だけが目覚めてからも長く残る」
演劇的唱和
まさにボイスキャストと呼ぶにふさわしい神木隆之介らよる瀧の声質、トーンの変え方の上手さ。上白石萌音の三葉も"話口調"がすごくよい。
「とりかえばや」や「誰そ彼」「組紐」など古典や伝承なども美しく織り込まれている。
隕石落下による災害から(変更された)助かった時空での、その後の締め方も描かれている。
東京でずっと「誰か」をさがしている瀧。
そこで、ふと耳に入ったカップルの会話。
テッシーと思いを寄せていた三葉の親友が沙耶香ブライダルフェアの話をしていたり(高校生のふたりがカフェという名の自動販売機 笑で「テッシー、高校卒業したらどうするん」と将来について話すシーンが)、「ほんとうはちょっと瀧くんのこと好きだったんだ」と再会したバイト先の奥寺先輩(演出意図だと思うけれど『真田丸』でひとり現代語で喋っている、あの感じで演じる長澤まさみがこれまた上手い)の左手薬指にきらりと指輪が光っていたり、その辺のホッとさせてくれる部分も同じく織り込まれている。
新海誠監督がtwitterで公開前日にツイートしてた「誰かと約束して観にいったり、思い切ってデートに誘う口実にしたり、1人で行って知らない誰かの隣に座ったり、観終わった後は映画の感想や愚痴を言いあったり、本作がささやかでも皆さんの生活の彩りのひとつになれば嬉しいです。」
本当にピッタリな作品。
(突然、隣の席の人が「君の名前は?」なんて声かけてきたりして…)
ヒットの要因はいろいろあると思うけれど(『シン・ゴジラ』での予告編露出。RADWINPSによる音楽、前年からの早い立ち上がり宣伝など)夏休み最後の週に公開っていうところもなかなかのツボなのでは
少し前に放送された公開記念テレビ特番(関東エリアは『シン・ゴジラ』の時と同じように公開後に少しアップデートされて放送?)の中で監督自らがアフレコしたガイド用仮本編(Vコン)が流れた(クオリティ高い!しかも町内放送アナウンスの声までひとりでやってる!まあ「ほしのこえ」の監督自らバージョンがすごくよいと評判になったからBlue Rayなどが発売されたおりには、特典でこのVコンとか入れてくれないかなぁ)
口噛み酒の儀式を同級生に見られて、あー見られたくなかったー、と湖面に向かって大声で叫ぶ
「もう、こんな町いややー」
「こんな人生いややー」
来世は東京のイケメン男子にしてくださーい
ボソッと妹の四葉「アホな人やなぁ」
(四葉「お姉ちゃん、なにおっぱい揉みよるん」や口噛み酒をグッズ化して儲けよう話など笑いの部分で大活躍)
タイムリープ部分のトリガー、実は↑この大声で叫んだ部分が起点かも、とも思ったけれど、そのあたりは再見してみないとわからない(円環型のタイムリープものはニワトリが先か卵が先かでつじつまが合う、合わないが出てくるとは思うけれど、その辺忘れてしまうほどにいろいろなシーンのパワーに溢れている)
歌舞伎役者、中村壱太郎さんによる巫女舞の実写を作画ベースにした宮水神社での神楽シーン(彗星にまつわる伝承の舞。しかし祖母一葉、三葉ともに町を襲った大火により古文書などが失われ、それが何を伝えているかは判らないまま形だけが残り伝わっている)
その1000年前の彗星飛来伝承が描かれていたご神体の祠がある洞窟。
口噛み酒を飲む瀧。
そこで時空(未来を変更させるための過去)が変わる。
黄昏時(誰そ彼)に出会うふたり。
(ここで、この台詞?という台詞がイイ)
「エーッ、口噛み酒、飲んだん」
ラストシーン
「ずっと誰かを」
「誰かを」
「さがしていた」
階段ですれ違うふたり。
「あの」
「俺、君をどこかで」
「私も」
(ふたりで)「君の名前は」

映画『君の名は。』公式サイト
http://www.kiminona.com/index.html

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2016-07-25

『クリーピー 偽りの隣人』黒沢清監督、西島秀俊、竹内結子、香川照之、東出昌大、川口春奈、藤野涼子、他

注・内容、台詞に触れています。
クリーピー 偽りの隣人

監督 : 黒沢清
出演 : 西島秀俊竹内結子
香川照之、東出昌大
川口春奈、藤野涼子、他

物語・刑事から犯罪心理学者に転身した高倉(西島秀俊)はある日、以前の同僚野上(東出昌大)から6年前の一家失踪事件の分析を頼まれる。だが、たった一人の生存者である長女の早紀(川口春奈)の記憶の糸をたぐっても、依然事件の真相は謎に包まれていた。一方、高倉が妻(竹内結子)と一緒に転居した先の隣人は、どこか捉えどころがなく…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Creepy

Memo
『CURE』系の得体のしれない恐怖の連鎖。
(つかみどころのない"ぬるり"或いは"するり"とした人物たち)
キャッチコピーにも使われている「あの人、お父さんじゃありません。全然、知らない人です。」
この台詞は原作にも出てくるそうですが(未読)、何より以てしても怖いのは"家"や"場所"自体が怖い。
香川照之が嬉々として演じる隣人、西村。
だが実のところ、出てくる人たち全てがどこかおかしい。
冒頭、高倉が警察署内で起きた人質を盾に逃亡を図ろうとする犯人説得シーン(これがラストと繋がる)
高倉の妻、が初対面の人に手作りチョコレートを引っ越しの挨拶手土産として渡そうとする(返す隣家の西村がチョコレートと聞いて言う台詞「これって一個1000円とかする高いチョコレートですか?」)
元同僚の東出昌大も。
あの家の中が玄関から入って曲がると、すぐに"黒沢清的廃墟"廊下になるのが変にして怖い。(鉄の扉の付け方、さらにはレコーディングルームのような防音壁の部屋)
ここを通り抜けると、そこは足を踏み入れてはならない異界。
まるで魔界から降りてくるようなブルーバックスクリーンによる車の運転ショット(こういう感じ、リンチ監督『マルホランド・ドライブ』冒頭の"アレ"のようだ)
次の居つく先を見つけた西村。
「車の中で2、3日寝泊まりすることになるかな」
「まぁ僕たち4人、もう家族なんだから」
ちょっと飼っている犬が邪魔だなぁ、と自分では撃てないピストルを高倉に渡す。
「音、相当でかいよ」
完全に意識を刷り込まれていたと思いきや…。
「これがあんたの落とし穴だ」
「えっ」
撃たれ倒れる西村。
笑い転げる藤野涼子。
吐き捨てるように。
「ざまぁみろ」
70ページ大ボリュームのパンフレット。
批評(お馴染みの蓮實重彦氏も)や監督、キャストインタビュー、スタッフ証言、撮影記録、対談の他に黒沢清監督によるコメント付き"映画史に残るCREEPYな罪人たち・名作10選" →『M』『狩人の夜』『反撥』『ゾディアック』『10番街の殺人』『ホワット・ライズ・ビニース』など

映画『クリーピー 偽りの隣人』公式サイト
http://creepy.asmik-ace.co.jp/



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2016-07-20

"最初はみんな笑ってた"『帰ってきたヒトラー(Er ist wieder da/LOOK WHO'S BACK)』ダーヴィト・ヴネント監督

帰ってきたヒトラー
Er ist wieder da
LOOK WHO'S BACK

監督・ダーヴィト・ヴネント
出演・オリヴァー・マスッチ
ファビアン・ブッシュ
クリストフ・マリア・ヘルプスト
カッチャ・リーマン、フランツィスカ・ヴルフ、他

物語・ナチス・ドイツを率いて世界を震撼させた独裁者アドルフ・ヒトラー(オリヴァー・マスッチ)が、現代によみがえる。非常識なものまね芸人かコスプレ男だと人々に勘違いされる中、クビになった局への復帰をもくろむテレビマン、ザヴァツキにスカウトされてテレビに出演する。何かに取りつかれたような気迫に満ちた演説を繰り出す彼を、視聴者はヒトラー芸人としてもてはやす。戦争を体験した一人の老女が本物のヒトラーだと気付くが…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Back

Memo
原作未読で鑑賞。
メイキング関連の記事を読むと(よく例えに使われる『ボラット』的な)どっきりカメラ部分は本作、オリジナル。
確かに突然、街中にソックリさんが現れたら現代ドイツにおいては芸人か何かのコメディ収録かと思ってしまうだろうなぁ、と考えたとおりの反応。
(最も多いのがとりあえずスマホで撮影、中には記念撮影をする人も)
これは笑っていいのか、と思わせるところで本作の意図は成功している。
(実際ブラックコメディなのだから、笑えばいいのだが)
こんな笑うに笑えないような台詞
「チョビ髭はガスマスクの幅に合わせて切った」
まるでクローネンバーグ『デッド・ゾーン』で核のボタン押す姿を未来視してしまった男の話のようにザヴァツキは事の重大さに気づき、とめなければと思うようになるのだが…。
怖い台詞
(ラストに向かうに従って)
「この状況は好都合だ」
「あの時も同じ」
「最初はみんな笑ってた」
そして…。
最後はこの台詞で締めくくられる。
「好機到来」
現実社会も、どこかこの映画のように奇妙な様相を呈しはじめていて、なおさらこの映画の語り口は軽んじられない鋭さを持っている。

映画『帰ってきたヒトラー』公式サイト
http://gaga.ne.jp/hitlerisback/

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2016-06-12

『教授のおかしな妄想殺人(Irrational Man)』ウディ・アレン監督、ホアキン・フェニックス、エマ・ストーン、他

注・内容、オチに触れています。
教授のおかしな妄想殺人
Irrational Man

監督 : ウディ・アレン
出演 : ホアキン・フェニックス
エマ・ストーン
パーカー・ポージー
ジェイミー・ブラックリー、他

物語・アメリカ東部の大学。孤独で気力のない哲学科の教授エイブ(ホアキン・フェニックス)は、ある日不快な判事についての話を聞く。自分がその判事を殺害するという完全犯罪を妄想した途端、よどんでいた彼の人生は鮮やかに色づき始める。一方、エイブのことが好きな教え子ジル(エマ・ストーン)は、教授が奇妙な殺人妄想に夢中になっているとは知らず、恋心を募らせていくが…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Wa

※Memo1
なんとも見事な、絵に描いたような太鼓腹のヨレヨレ教授エイブ役のホアキン・フェニックス。
人生の意味を失い鬱気味で、その上、自殺願望があって実存主義の危機を語る、昼間から大学内でもウィスキーを隠し持つ(←隠してないけれど)という、なんとも大丈夫かぁー、と思ってしまう男…が、そういった、ちょっと翳りのある雰囲気がよいのかジルはエイブに惹かれていってしまう(この、やたらとモテる主人公はいつも通り)
ジルに誘われ仕方なく出たパーティで、ロシアンルーレットを平然とやってのけるエイブ。
ここで拳銃が奥の棚から出てきた時に、一瞬、目のいろが変わる。
ここでのシーンありきの、レストランで後ろの席にいた人たちの会話を盗み聞いて知る、よからぬ判事を、この困っている人にかわって始末してあげようと思い立つことに。
この物語展開だと『マッチポイント』の倫理的に否だけど、もっと違う罰を背負うパターンか『誘惑のアフロディーテ』のような「んな、アホな」(目の前にヘ リコプターが着陸してきて、あれよあれよの)ご都合主義的オチか(あるいは偶然も、また真理的オチ)、ウディ・アレンの「アンビリーバボー」と声が聞こえ てきそうな『さよなら、さよならハリウッド』の小咄的オチか。
さて本作は…
喜劇か悲劇か不条理な世界をアイロニカルに。
(哲学喜劇とでも、申しましょうか←これ、以前にどなたかの著書で書かれていた気がするのですが、お名前失念)
判事殺害計画を実行に移してから、突如として"生きがい"を感じ、夜はぐっすり眠れるし、朝食もきっちりとれるようになったエイブ(表情も体型も変化)がジルと遊園地に出かける。
その遊園地でルーレットゲームで景品としてゲットした懐中電灯が、まさかの命取りになるとは!?
見どころ→いつの間にかホアキン・フェニックスとエマ・ストーン、どちらもウディ・アレンに見えてくるところが、可笑しくておかしくて。(←脳内変換可。まるでウディ・アレンとウディ・アレンが話してるような)
特にエイブが実際に殺人犯だと判明したあとのジルの身振り手振りが 笑

※Memo2
エマ・ストーンのファッション、可愛い!←そこかい!(関西弁)
衣装デザイナーは『ブルージャスミン』のSuzy Benzinger
『ブルージャスミン』の時はケイト・ブランシェットのためにカール・ラガーフェルドによるシャネルのジャケットを用意したが、本作はいたってカジュアル。
ピアノを習い、哲学を専攻し、詩にも造詣が深いジルが、いかにも好みそうな、タッセルを用いたヒッピー/フラワーチルドレンムーヴメントの頃の柄や素材を元にしたワンピースが素敵!
撮影監督は『僕のニューヨークライフ』『ミッドナイト・イン・パリ』『ローマでアモーレ』『マジック・イン・ムーンライト』とウディ・アレン監督の近作を多く手がけているダリウス・コンジ
Opening credits – typography
(the Movie title stills collection記事より)
http://annyas.com/screenshots/updates/irrational-man-2015-woody-allen/
Ramsey Lewis Trioの「The "In" Crowd」がほとんどテーマ曲のようにバンバン流れる。あと、David O’Neal「Angel in the Snow」(←美しい曲)が音量的には小さいけれど印象的。 
IRRATIONAL MAN Soundtrack
Song/Music List

http://www.lyricsoundtrack.com/movies/irrational-man-soundtrack-list

ロケ地
ロードアイランド州のウェストグリニッジやサルベレジーナ大学/Salve Regina University、ビーヴァートレイル州立公園(灯台付近の海岸に立って下記、ポスターのような"ホアキン・フェニックスごっこ"ができる!)
こちらは大学での撮影画像
http://www.woodyallenpages.com/2014/08/2015-film-braylin-college-salve-regina-historic-hill-chez-pascal/
画像(約170枚)や各国のポスター、他『教授のおかしな妄想殺人』関連の記事がまとめられたWoody allen Pages
http://www.woodyallenpages.com/films/irrational-man/


Im

映画『教授のおかしな妄想殺人』公式サイト
http://kyoju-mousou.com/

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