コッポラ監督・人工の街「ワン・フロム・ザ・ハート」
ロケ撮影をいっさい行わずに全てセットとミニチュアで作られたフランシス・フォード・コッポラ監督「ワン・フロム・ザ・ハート」物語・7月4日の独立記念日を明日に控えた、ラスベガスの街。旅行会社に勤めるフラニー(テリー・ガー)の夢は南の楽園ボラボラ島へ行く事。しかし、同棲生活5年を迎える恋人ハンク(フレデリック・フォレスト)はそんな島へ行く事よりも彼女との平凡な家庭生活を密かに望んでいた。そして、そのような性格不一致の2人はささいな事からケンカ、フラニーは遂に家を出て行ってしまう…。
撮影はヴィットリオ・ストラーロ(ベルトルッチ監督作品をほとんど手がける名カメラマン。「ラストエンペラー」でのゴールデンアンバー調の色彩設計はストラーロの特色と呼べるもの)。オープニングのミニチュアの看板を使ったタイトルロールから沿道、そしてフラニーの働く旅行会社のオフィスめがけてショーウィンドウを一気に突き破ってしまうカメラワークは圧巻です。
美術はコッポラ監督と「ゴッドファーザーPART2(正確にはロシア数字表記)」以来の付き合いとなるディーン・タブラリス。コッポラ監督の無理難題にも「俺にできない美術(デザイン)はない ! 」と答える程。
ラスベガスのミニチュアから終盤に登場するマッカーラン空港のセットまで制作したのはグレッグ・ジーン(「未知との遭遇」のマザーシップ!を作ったのはこの人)
そして、公開当時に話題になったのが高品位ビデオカメラを導入して撮影された事(現在のデジタル撮影の「デ」の字も無い時代においては最先端、と、いうか先駆者だったのではと思われます。当然、AppleのMacも生まれていないし、CGも研究段階だった)。
その時の撮影の様子が記録されています。(以下、公開時のプログラムより抜粋)。あらかじめ全ショットを1枚ごとの絵コンテにし、効果音と全台詞を入れたサウンド・テープ(ラジオドラマのようなもの)を作成。この2つをビデオテープにシンクロさせたのち、アテレコの要領でリハーサルを行う。ビデオに収められたコンテに合わせ、役者たちは大体の動きを決めていく。さて、本番。ラスベガスのセットの中で、役者たちはあらかじめ決められたとおりの動きをし、セリフをしゃべる。これを2インチのビデオテープに収め、フィルムにトランスファーしていくのだ。この間、コッポラ監督は何をしていたのかというと現場には姿を見せず、もっぱらトレーラーを改造したビデオ調整室にいて、ブラウン管とにらめっこ。「TV局のディレクターのような仕事ぶり」と評されたわけである。高品位ビデオカメラのおかげで、画質はいたって鮮明。色のひずみも硬さも無い。明るく、そして柔らかい。特に赤が驚く程の発色を見せている。
この映画のキーとなる色彩は青と赤。オープニングとエンディングに現れる緞帳は青。タイトルは赤。フラニーは赤、ハンクは青。ふたりの心情が混じる部分は緑。
と、はっきりと色分けされているのもわかりやすい趣向となっています。
音楽も男心をトム・ウェイツが女心をクリスタル・ゲイルが歌っていて渋く、そしてロマンティックに盛り上げています。
※MEMO
元々は「砂漠の真ん中の街で、撮影ができるか ! 」のコッポラ監督のひと声で、ラスベガスの街を含むオールセット撮影になったという逸話も残っています。
※MEMO2
さて、そのコッポラ監督、現在公開中の「マリー・アントワネット」を監督した娘ソフィアの前々作「バージンスーサイズ」のDVD特典・メイキング映像に(しっかり)嬉しそうにアドバイスしている姿が映っていて結構、微笑ましかったりします。
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