2021-07-10

『Arc アーク』石川慶監督、ケン・リュウ原作、芳根京子、寺島しのぶ、岡田将生、倍賞千恵子、風吹ジュン、小林薫、他

Arc アーク

原作 : ケン・リュウ
監督 : 石川慶

芳根京子
寺島しのぶ
岡田将生
清水くるみ
井之脇海
中川翼
中村ゆり
倍賞千恵子
風吹ジュン
小林薫


Arc2
Memo1
まさに円弧を描いた物語に呼ばれるように、もう一度最初のシーンから見てみたくなる再見必須の作品。
原作未読で見たら、どんな印象だったのかは今となっては不可逆。
はたして、この物語を映画にすることは可能なのだろうか?
あゝ2パターン体験できたら..と思う心がSF。
原作を読んだ時に感じたのは自分より若い母親に会う息子。
(「インターステラー」の自分より外見が若い父親に会う娘を想起)
映画ではその息子役を小林薫、パートナーである芙美(原作にはない役)を風吹ジュン。
リナによるプラスティネーションの”舞”のシーン。
低い姿勢でスーッと動いたつま先が円弧を描く。
師であり恩人でもある永真(寺島しのぶ)がのりうつったようでもある。
不死の施術を受けたリナの手から消えるホクロ。
それは逆の意味での印(しるし)
好きなシーン。
「パパ、おはよう」
娘のハルがプラスティネーションが施された天音の腕(手)に挨拶。
そのまま貝殻のレリーフに触れて2階へ。続いてリナもレリーフに触れて上がっていく。
カラーからモノクロへ転換する中盤。
夫、天音(岡田将生)の死後、ひとり不死のまま残るリナとハルの世界。
時間が止まっているという意味でも静謐さにあふれたシーンの数々。
さらに終盤、モノクロからカラーに移る瞬間。
暗室の真っ赤な画面。浮かび上がるモノクロ写真。
うまい転換方法。
そして、また動き出すリナの時間。
音楽が奇しくも(偶然?)芳根京子主演の朝ドラ『べっぴんさん』を手がけた世武 裕子
(あとで知りましたが師事した作曲家がガブリエル・ヤレド)
石川監督とは3度目のピオトル・ニエミイスキによる撮影。
前半と後半でルック自体が変わる。驚いた。
カラーグレーディングもポーランドで行われ、キエシロフスキ監督に通底する透明度。
美しい。
原作にも映画にも登場する台詞
ラスト。
リナ(ここでは倍賞千恵子・135歳)と娘ハル(ここでは中村ゆり・50歳)が海岸で語らう。
「永遠に生きるチャンスを得た最初の女性は、それを諦める最初の人間にもなるのね」

Arc1
Memo2
パンフレット。
鑑賞後、表紙の写真自体に感激した(エッ?!此処?を使うという冒頭の灯台シーン)。
監督、原作ケン・リュウ、主演の芳根京子はもちろん、造形コンセプトデザイン、振付、美術、撮影、音楽、衣装デザイン全てにおいてインタビュー、キーワード(会話・専門用語・事象)などが掲載されている。
副読本としてもオススメ。
リナの孫にあたるセリの写真が1枚も掲載されていない。
このセリも芳根京子が演じていて、オーバーオール姿ではしゃぎ気味に走り回る姿にはビックリした。
ラストは3人が同一画面にいることになる。
リナ(135歳)ハル(50歳)そしてセリ。
『SFマガジン』8月号。
『Arc アーク』公開記念特集。
石川慶監督インタビュウで是枝裕和監督『真実』劇中劇がケン・リュウ「母の記憶に」だったことについて触れてる!確かに「あ!」って思っただろうなぁ。
ケン・リュウ「不死」をテーマとした姉妹編とも言える作品。
『円弧(アーク/Arc)』を地球編『波(The Waves)』はさしずめ宇宙編。(2015年「紙の動物園」訳者あとがき)
VIDEO SALON 2021年7月号
特集 : 映画に学ぶ映像編集術
『Arc アーク』の舞台裏。
石川監督との共同編集者、太田義則インタビュー。
「年代を表すキャプションについて有る無し含め、フォントの種類、ポイント、位置などミリ単位で詰めた」
デザイン的にも硬質な、あの感じはこういったところまでと驚く。
Arc
Memo3
不老不死というと、やはり『火の鳥』を思い出す。
ただ、こちらのテーマは繰り返される円環のドラマであるという違いがありますが。
『アーク/Arc』は始まりと終わりのある円弧。
「DVD&動画配信でーた」7月号。
あの人が選ぶ映画3本立てプログラムで石川慶監督が最初に挙げた作品がアンドリュー・ニコル監督『ガタカ』
そこでのCGを多用せず既存の建物を用いてのフューチャー感を出す手法は『Arc アーク』でも試みたと答えている。ちなみにスワヴォミール・イジャックは石川監督が通っていた大学の大先輩だそう。
Hinotori1



|

2021-06-06

「やだ、ここから始める?」『クルエラ(Cruella)』クレイグ・ガレスピー監督、エマ・ストーン、エマ・トンプソン、マーク・ストロング、他

クルエラCruella

監督 : クレイグ・ガレスピー

エマ・ストーン
エマ・トンプソン
ジョエル・フライ
ポール・ウォルター・ハウザー
ジョン・マクリー
エミリー・ビーチャム
マーク・ストロング

Cr1

Memo1
まさにエマ・ストーン劇場
予備知識なしで見たので70年代 使用楽曲にいちいち反応してしまった(リスト後述)。
細かいところでは35ミリと65ミリが使用された撮影も素晴らしい。
(この質感は劇場スクリーンでこそ堪能できる!)
「やだ、ここから始める?」
エステラ/クルエラ(エマ・ストーン)のモノローグから始まる。
しかも逆さまで 笑
「まだ1964年。女の時代はもう少し先」
学校で浮くエステラ。
この辺りをエマ・ストーンのややハスキーな声でかぶせてスムーズに綴っていく手際よさ、面白さ。
そしてロンドンでの2人と一匹(眼帯してるチワワ、カワイイ)との出会い。
「エステラは無理。クルエラは達成する」
ふたつの人格をファッションとヘアメイク、動作、発音で見せていく。
IMDb、RottenTomatoともに初日評価より上がっていくパターン。
見た人が増えてヴィラン誕生譚だけでは語られない作品であることが浸透し始めたのかも、と勝手に予測。
クルエラとジャスパー、ホーレスがドナルド・E・ウェストレイクの『ホットロック』他のドートマンダーとその仲間たちのような、『アントマン』のスコット窃盗団のような、ドロンジョとドロンボー一味のような。
アーティ(ブティック店主、ファッションショー協力者)ともう一人(実は味方→)ジョンも加えるとさらに一味感が増す。
この顔ぶれで続編も作れるなぁ。
刑務所に入ったバロネス(エマ・トンプソン)が脱獄してクルエラに復讐しようとする...って、なにやら『ピンクパンサー』シリーズのクルーゾーとドレフュス署長みたいな 笑


Cruella_p
Memo2
ファッションがキー。
ということでパンフレットが写真とイラストとコラージュで彩られた新機軸スタイル。
ネタバレとなるラストシークエンスだけ最終ページに記載しているのも親切設計。
衣装デザイナー、ジェニー・ビーヴァンのパンフレット掲載インタビューにエステラの外見の発想はニーナ・ハーゲン(!)の写真から始まったとある。
コスチューム制作秘話。
https://www.vogue.co.jp/celebrity/article/cruella-costume-designer-jenny-beavan-interview-cnihub
タイトルデザイン
Main on End Titles and Newspaper Headlines Designed by ELASTIC DESIGN
End Crowl SCARLET LETTERS
使用楽曲全リスト
Cruella soundtrack: All the songs featured in the Disney prequel movie
https://www.radiotimes.com/movies/cruella-soundtrack-music-movie/

『クルエラ』公式サイト
https://www.disney.co.jp/movie/cruella.html




|

『BLUE/ブルー』吉田恵輔脚本・監督、松山ケンイチ、木村文乃、柄本時生、東出昌大、他

BLUE/ブルー

監督・脚本 : 吉田恵輔

松山ケンイチ
木村文乃
柄本時生
東出昌大、他

B1

Memo1
直球ど真ん中のボクシング映画。
東出昌大の目つきが後半、シャープで本当にボクサーのよう。
誰よりもボクシングが好きなのに優しさからか弱さからか受けの心持ちの松山ケンイチ。
最初はモテたい気持ちで軽く始めたが徐々にのめり込んでいく柄本時生。
3人の描き方の妙。
3人のボクシングへの気持ち。
そして、ままらないことへのもどかしさ。
107分。その最近の映画にしては短い上映時間内に過不足なく全てを描きこむ絶対的映画の力。
タイトル文字の出し方からして既にアガる。
で、木村文乃のバンテージ巻くシーンよいなー。
パンフレット読んだら監督がファンで「やっと木村文乃に会える」って答えていて、あー、なるほどー、と納得。
『あしたのジョー』両手ぶらり作戦ではないけれど、ステップバックしてアッパー入れる、といった戦法、実際にありそう。
そういった意味では当たるか当たらないかのギリギリのところで避けたり、ジャブ入れたり、スウェイバックしたりと実戦に近い試合を写した初のボクシング映画といえる。

Memo2
吉田恵輔監督のことを小林信彦さんは随分前からコラムに書いている。
以下引用 ~『麦子さんと』は、どなたかが これは堀北真希の代表作だ と書いていたのが正しい。
吉田恵輔さんは「純喫茶磯辺」というハートフルコメディを作っていて、僕はずっと信用している。
次回作の古田新太・松坂桃李共演『空白』まだ見ていないけれどキャスト、(伝え聞く)ストーリー、漂う空気からガツンと一撃の気配を感じる。
パンフレットの表紙がリングのみ。
これはグッとくる。素晴らしい!

Blue_p

映画『BLUE/ブルー』オフィシャルサイト
https://phantom-film.com/blue/







|

『あのこは貴族』山内マリコ原作、岨手由貴子監督・脚本、門脇麦、水原希子、高良健吾、石橋静河、山下リオ、他

あのこは貴族

監督・脚本 : 岨手由貴子
原作 : 山内マリコ

門脇麦
水原希子
高良健吾
石橋静河
山下リオ、他

Kizoku

Memo1
ものすごく品の良いショットの数々にうっとり。
持って入ったコーヒー飲むの忘れるほど惚れ惚れしました。
冒頭、新年祖母を囲んでのお食事会あと、ゆったりとした坂を歩く家族、姉と並んだ門脇麦のショット。
8mmで撮ったら、こんな外光になってたなぁと画面の豊かさに眼福。
普通に考えたら演じる役は逆だろうけれど、そこが入れ替わっているところがキャスティングの妙。
門脇麦が別荘で着ているセーターとブラウス、終盤水原希子、山下リオが手にしているのがスタバでなく、マウントレーニアなところとか些細なところツボりました。
あと(おそらく意図的に整音していると思うけれど)暖炉のパチパチといった火の音や弟が手に取るカサカサカサと聞こえるお菓子袋の音、雨の音とかも本作の端正さのひとつ。
役者陣の生き生きとした演技、そして声がまた、よいわー。
ショットのつなぎと音楽のバランスも絶妙。
テレビがついている画面や音もなくて(ちらっとぐらいはあったのかな)うるさくなくてよかったー。
これって最近の映画やドラマでは珍しいかも。(そもそも榛原家も青木家テレビ無いかも?)

Memo2
原作と映画、それぞれの表現
(以下追記予定)
障子の開け方、挨拶の作法、敷居の跨ぎ方、座布団へは最初座らないことなどあらゆる所作を値踏みするかのごとき眼で見つめる青木家。
ひとつ上のクラス(階級)からの視線。
映画にはない結納シーン。
挙式の話からオークラ本館が取り壊しになる話へ。
「あのロビーラウンジがなくなるとは残念ですね」「ほら、あの有名な照明」とオークラランタンやなまこ壁のことを。
「帝国にいるのにオークラオークラって、なんだか悪いわねぇ」(文庫版 200~203P)
「青木の母は、まだホテルが経つ前の、大倉さんのお邸だったころの様子を覚えているそうですよ」
「うちは父親の代から神谷町なもので」
逸子(石橋静河)が青木家のことを呟く「私たちの家より上の階級だね」これは「閨閥の世界」ということになるのかな (昔、家系図付きのルポルタージュを読んだことがあるが、まあそれはそれは恐ろしい内容でした)

Memo3
大島依提亜さんデザインのパンフレット。
この用紙にして箔押し、一枚めくると特別な紙。
本文メイン使用紙もよく黒が沈み込み、くっきりはっきり印刷。
奥付印刷会社、チェックしてしまった 笑

画像はポストカード、パンフレット、原作(文庫版)
Pan

映画『あのこは貴族』公式サイト
https://anokohakizoku-movie.com/




|

『まともじゃないのは君も一緒』前田弘二監督、高田亮脚本、成田凌、清原果耶、小泉孝太郎、泉里香、他

※注・内容に触れています。
まともじゃないのは君も一緒

監督 : 前田弘二
脚本 : 高田亮

成田凌
清原果耶
小泉孝太郎
山谷花純
倉悠貴
大谷麻衣
泉里香、他

001_20210327211301

Memo1
コミュニケーション能力ゼロ予備校先生と、その指南役が恋愛経験ゼロ高校生という設定時点で可笑しい。
成田凌、清原果耶、息(会話)が合ってはいけない役回りで息がピッタリってなんのこっちゃーですが、素晴らしいです。
早口台詞のズレた心地よさ、テンポ。楽しい!
いつのまにかミイラ取りがミイラに展開や”ほんのり艶話”はスクリューボールコメディの王道展開。
本作も、あのシーンでこーなるだろうなー、がそうなって爆笑(小声で拍手)。
(それにしても小泉孝太郎、よくこの役受けたなぁ、と別の意味で感心)
会話劇ですが室内が多いわけではなく緑の多いロケ含め、全体トーンが清々しく、初夏シーズンにもぴったりです。
清原果耶さんの「てか、何?」の言い回し、うまいなぁー。
あと、何十回も出てくる「普通」というワード。
さて、何回出てるでしょう。答えはパンフレットに。

Memo2
スクリューボールコメディの成分。
『レディ・イヴ』や『パームビーチ・ストーリー』『ヒズ・ガール・フライデー』『赤ちゃん教育』から『初体験/リッジモント・ハイ』最近の『ある日モテ期がやってきた』最後は増村保造監督『青空娘』まで出てきて、こういう話が聞きたかった!
前田弘二監督×高田亮脚本×根岸洋之プロデューサーによる鼎談
https://cinefil.tokyo/_ct/17438555

THE CHARM PARK「君と僕のうた」
(Special Collaboration Movie)
このコラボムービー見たら、再見したくなる。
定量的に 笑
https://www.youtube.com/watch?v=mWsp8JPIy_A


で、よくよく考えると最初の時点でふたり揃って普通じゃなくない?
002_20210327211301

番外編
スクリューボールコメディとロマンティック・コメディとソフィスティケイテッド・コメディをどう分けるのか(あるいは分けているのか、同じものなのか)。
小林信彦さんが以前、スクリューボール(奇想)コメディと書かれていたような記憶がある。
線引き、難しいところだが本作の持っているカラッとした温度感のあるコメディ。
もっと、もっと見てみたいと思った次第。
前田、高田コンビに期待!

映画『まともじゃないのは君も一緒』
公式サイト
https://matokimi.jp/







|

«『騙し絵の牙』吉田大八監督、大泉洋、松岡茉優、佐藤浩市、國村隼、木村佳乃、他