« 横尾忠則さんの22面体ジャケット | トップページ | DVDには、なっていないけれど_7 »

2006-06-26

春の雪・美術、衣装、撮影

三島由紀夫が人生最後に手がけた長編4部作「豊饒の海」の第1部「春の雪」を「世界の中心で、愛をさけぶ」の行定勲が監督した意欲作(主演・妻夫木聡・竹内結子)。

春の雪

美術は行定監督とは本作で3作目となる山口修。
松枝家は振興の貴族ということで清顕の部屋は緑、食堂は赤、地下にある童球室は黄色、舞踏会の会場となる大広間はグレーと色彩豊かな作りとし、逆に綾倉家は没落貴族という設定ですから由緒正しい家柄として「和」の世界でまとめたそうです。(このあたりの色彩の対の形式は前述・2006-06-15「ロミオとジュリエット・暖色と寒色」にも記載しています)

衣装は浜崎あゆみと行定監督とのCollaboration「月は沈む」も担当した伊藤佐智子。大正時代といえば和洋折衷が最も華開いた時代として、その衣装は重要なキーとなっています。コンセプトは美術の場合と同じく松枝家は武家の成り上がりなので洋装主体、綾倉家は由緒正しい貴族とということで和を重んじた衣装としたそうです。清顕は衣装の数を絞り、当時の学習院の制服を再現したものを中心にし、ストイックさが表現されていました。
そして、やはり目をひくのが聡子が初めて画面に登場する際のエメラルドグリーンの着物です。映画の中でもキービジュアルになっている蝶が大胆にあしらわれていて大変印象的なシーンとなっています。聡子用に用意された衣装は和洋あわせて全部で24点にも及びました。ある雑誌のインタビューで行定監督がこんな話をしていました。「たとえば着物でいうと、大正時代には半襟を、たっぷり出すスタイルが主体で、女性はそこでセンスを競っていたそうです。でも最近の日本映画は、どの時代を描いても現代風に襟を詰めてしまう。衣装デザインの伊藤佐智子さんと膨大な資料にあたりました。そういう美意識に関する考証は、とことんまでやっています」なるほど、と思わせる言葉ですね。

伊藤佐智子プロフィールのホームページ
http://www.brucke.co.jp/

春の雪 Be My Last(DVD付)

撮影はリー・ピンビン。盟友だったカメラマン篠田昇(前述・2006-06-22・「真夜中まで」と撮影監督篠田昇さん・参照)が亡くなった後、果たして三島文学を監督の意図した感覚で撮れる人はいるだろうかと危惧されていたが、さすがに台湾で既にその実力が実証されていたカメラマンだけあって、その世界を見事に再現していました。
リー・ピンビン
「恋恋風塵」「春の惑い」など。最近では日本で撮影された浅野忠信主演の「珈琲時光」(何かご覧になられた方は「春の雪」につらなる色彩感覚が思い浮かんだのでは?)

(記事内・敬称略)

珈琲時光 侯孝賢傑作選DVD-BOX 80年代篇

|

« 横尾忠則さんの22面体ジャケット | トップページ | DVDには、なっていないけれど_7 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 春の雪・美術、衣装、撮影:

» NO.153「春の雪」(日本/行定勲監督) [サーカスな日々]
「春の雪」から五年、連作最終話を渡して、 三島由紀夫は転生への旅に出た。 「勝ち組と負け組みの二極化社会」「セレブ主義」「六本木ヒルズ族」・・・超社会主義国家といわれた日本にあって、少し「格差」が露骨にみえる現象がおきると、すぐにマスコミによってレッテル張りされることになる。テレビでは「現代のお殿様(マダム、お嬢様)」と称して、お屋敷が披露されたり、飾り付けられたブランド品の数々が、紹介されたりする。そんなものをどれだけ露�... [続きを読む]

受信: 2006-06-26 15:06

» 「春の雪」レビュー [映画レビュー トラックバックセンター]
「春の雪」についてのレビューをトラックバックで募集しています。 *出演:妻夫木聡、竹内結子、高岡蒼佑、及川光博、宮崎美子、岸田今日子、真野響子、榎木孝明、大楠道代、若尾文子、他 *監督:行定勲 *原作:三島由紀夫『春の雪』 *主題歌:宇多田ヒカル『Be My Last』 ..... [続きを読む]

受信: 2006-08-03 04:39

« 横尾忠則さんの22面体ジャケット | トップページ | DVDには、なっていないけれど_7 »