「ミュンヘン」における撮影手法
スピルバーグ監督の盟友、ヤヌス・カミンスキーによる撮影が効果的だった「ミュンヘン」(「シンドラーのリスト」「プライベート・ライアン」でアカデミー撮影賞を受賞。このCOLOR of CINEMAでも以前、取り上げましたが彩度を落とした銀残し※という現像手法と手持ちカメラのドキュメンタリータッチといえば、この人)
そのヤヌス・カミンスキーの撮影における色彩設計についてのコメント(以下プレスより引用)「映画には8ヶ国が登場する。そこでそれぞれの国ごとに視点を変える事にした。絵の具を変えるみたいな感じ。微妙な差異だけど。この方法でマルタとハンガリーで大部分撮影されたにもかかわらず、それぞれの国の個性が生まれた。中東の出来事はよりカラフルで暖かみが溢れている。でも、その地を離れパリ、フランクフルト、ロンドン、ローマへ移動すると色彩はより冷たく、彩度も減っていく。それがヨーロッパの国々それぞれの個性と色彩になる」
例えばキプロスのシーンでは鮮やかさと陽光照りつける黄色を強調、一方、アテネのシーンではパレットの色はエーゲ海のブルーへと変化する。そしてパリのシーンではパレットの色彩は雨空の雰囲気をたたえた、よりソフトな色彩になるという具合。それに合わせ照明も変化する。暗殺チームの面々が初めて互いを知る気の置けないディナーのシーンでは心温まるトーンで始まり、任務に対し恐怖感と疑念が増すに従い、登場人物の心に内的葛藤が沸いてくると、それを反映するかのような光科学形成過程をふんだんに用いた、よりコントラストのきついシーンへと変化していく。また、ミュンヘンオリンピックのテロ場面はオープニング以外はフラッシュバックで挿入されますが、それらのシーンは全て銀残し※を用いたざらついた画面で表現されています。(これは不吉なイメージとして、ことのほか有効な手法でした)
他にもプロダクションデザイン、衣装など現在撮影されたにもかかわらず70年代当時を再現する見事な仕事ぶりに感心させられました。(テイスト自体がまるで、70年代の映画を見ているような気に錯覚してしまうほどでした)
※銀残し
スキップ ブリーチ(Skip Bleach)と呼ばれる現像手法で仕上がり画像の特徴としては以下のような点があげられます。
・コントラストが増す
・黒がしまる
・サチュレーション(彩度)が落ちる
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