「ユメ十夜」こんな夢を見た。
夏目漱石原作の短編「夢十夜」を10組11人の監督によって映像化した「ユメ十夜」。夢なんだから物語が迷走しても全然、大丈夫大丈夫。原作に近い雰囲気のものから大きく脚色し直した派手なものまで「いろいろな夢の形」を見せてくれます。これだけバリエーション(豪華なキャストも含めて)があると自分の好みにあったものに出会えるのでは ? 注・以下、各エピソード内容、台詞に触れています。
プロローグ
清水厚・監督
まずは掴み。漱石先生が書き出すところから始まります。「時間」についての取っ掛かりでもあります。「この作品がわかるまでには100年もの歳月がかかるであろう」
第一夜
実相寺昭雄・監督
小泉今日子、松尾スズキ
さすがにテイストが近い題材を演劇的ケレン味演出で見せてくれます。サラサーテの「チゴィネルワイゼン(映画クレジット表記通り)」が使われていて一瞬、鈴木清順監督の「ツィゴィネルワイゼン」を思い出しました。小泉今日子の白と青の着物が涼しげで綺麗〜。
第二夜
市川崑・監督
うじきつよし、中村梅之助
モノクロ、サイレント !! 90歳を超えても尚アバンギャルドにしてスタイリッシュ。短刀の鞘(さや)のみ赤が使われている。漱石原作では「こころ」と「吾輩は猫である」を撮っている。
第三夜
清水崇・監督
服部圭亮、香椎由宇
やはり、ここは清水監督ということでホラーテイスト満開の「ユメ十夜」中、屈指の怖さ。悪夢が続いた際のもどかしさ「夢なら覚めてくれ」感が最も出ている作品。
第四夜
清水厚・監督
山本耕史、菅野莉央
懐かしい光景。セピア風画面。墜落する飛行機が上空を飛んでいく。駅の伝言板。「思い出」もまた「夢」。師である実相寺監督のトーンを受け継いでいて今後楽しみな監督。
第五夜
豊島圭介・監督
市川実日子、大倉孝二
原作の天深女(あまのじゃく)が出てきますが、ほとんど「ケムール人」か「T2」ノリでビックリ。まさに悪夢とよべる「夢」。市川、大倉ふたりが出ていると演劇的でもあり映画的でもある。
第六夜
松尾スズキ・監督
阿部サダヲ、TOZAWA
モノクロ、BBS風字幕、英訳。アニメーションダンサーTOZAWAによる運慶ハイパーダンス。10分という制約を逆にMUSIC VIDEO仕立てに作りあげた。どう締めるのかと思っていたら「木彫りの熊オチ」って…、まさに松尾スズキ監督。
第七夜
天野喜孝、河原真明・監督
Sascha、秀島史香(共にVoiceCast)
3DCGアニメーションによるファンタジー。ファンタジーなのだから「まさに夢」。紫の色調で整えられたピアノのシーンが流麗。
第八夜
山下敦弘・監督
藤岡弘、、大家由祐子、山本浩司
原稿用紙にむかう漱石のイメージ世界。シュール。石原良純のシーンは夢オチ ? 「書いちゃえ」の一言が本オチ?
第九夜
西川美和・監督
緒川たまき、ピエール瀧
最も「映画らしい映画」。個人的には、この「第九夜」が最もよかった。緒川たまきの佇まいが美しい。お百度参りのシーンとピエール瀧演じる出征しようとする夫との確執シーンとの色彩対比も極めて美的。
第十夜
山口雄大・監督
松山ケンイチ、本上まなみ、
安田大サーカス、板尾創路、石坂浩二
最後の最後に弾けまくった大暴走 ! 本上まなみの「あっ!」と驚く「ぶひっ」から突然平賀源内、豚丼まで「何でも有り」のまさに「夢の脈絡のなさ」を体現。
エピローグ
清水厚・監督
場所は現代。ビルの広告パネルの「時間」が激しく流れていく。戸田恵梨香扮する女学生が「まだ100年かかるのかな〜」と呟いて、雪。
そして、エンドクレジット。
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