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2010-07-14

『ぼくのエリ 200歳の少女』

注・内容(ネタバレ)、ラストに触れています。
鑑賞後にお読みください。

スウェーデンのスティーヴン・キングこと、ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストのベストセラー小説『モールス』を映画化した『ぼくのエリ 200歳の少女』。監督はトーマス・アルフレッドソン。ハリウッドでリメイク(今秋全米公開予定)。

物語・周囲を雪深い森で囲まれたストックホルム郊外。12歳の少年オスカー(カーレ・ヘーデブラント)は、学校で同級生のいじめにあっていた。そんなオスカーがある晩、アパートの隣の部屋に引っ越して来たエリ(リーナ・レアンデション)という少女と出会う。エリに惹かれていくオスカーだが彼女は夜にしか姿を見せない、知れば知るほど謎が深まる少女だった。その頃、時同じくして青年が逆さづりにされてノドを切り裂かれ、血を抜き取られるという残忍な殺人事件が起きる。

原作を読んでから見た場合と原作を読まずに見た場合、原作を読まずに映画だけ見た場合で印象が、まったく違ってみえる可能性大。まずエリと暮らすホーカス(実は血の採集者)。親なのか使用人なのか、特別な関係なのか、はっきりした描かれ方をしていないが原作ではかなり驚いた事実がある。この部分は映画ではバッサリとカットしていて(判りにくくなってはいるが)、オスカーとエリだけに物語の軸が置かれて逆によかったと思える。

この惹かれ合う孤独な存在としてのふたり。オスカーとエリ。ジャングルジムでの出会い。ルーックキューブ。そっとふれる手。モールス信号。忍びこむエリ。オスカーの背中越しに指を這わせる。したたり落ちるオスカーの血。せつなさと危うさ。美しいシーンがストックホルム郊外の風景とも相まって紡ぎだされる。
ヴァンパイア譚としての脇のエピソードも素晴らしい。もちろん、いじめっ子への決着としての(ここまでやるか)プールのシーンも。

Osk

※問題のシーン
血の味のファースト・キスのあと、エリが血まみれになった服(白い服)を着替えているのをオスカーがドア越しに覗いたときにエリの言っていた意味がわかる。一瞬映るエリの下半身(縫合された…)→オスカーに借りた母の洋服が上からかぶさる→ハッとするオスカー。(この大事なシーンでボカシが入るのは映画全体の意味を変えてしまうかも…)※友人の持っている輸入盤で確認。

ラスト、電車に乗って立ち去っていくオスカーとエリ(太陽に当たらないように箱に入っている)。楽しそうにモールス信号を送りあう。実は、この後のことを考えるとエリは年を取らないがオスカーは普通の人間だ。ホーカスのような道をたどるのか、ヴァンパイアとなるのか…、そんなことまで考えさせられる余白を多く持った映画だ。
しかし、それにしても…驚いた…。今、この文章を読み返して受ける印象と映像の印象が、まったく違うのだ。まさに映画なのだ…

追記(MEMO)
twitterでもツイートしましたが再掲。
『借りぐらしのアリエッティ』が「トーマの心臓」、『ぼくのエリ 200歳の少女』が「ポーの一族」と奇しくも萩尾望都さんの作品を思い出すという事に、ふと気付く。「トーマの心臓」については宮崎駿監督がインタビューで言及していました。

ぼくのエリ 200歳の少女
http://www.bokueli.com/

Eli

MORSE〈上〉―モールス (ハヤカワ文庫NV)

MORSE〈下〉―モールス (ハヤカワ文庫NV)

Let the Right One In

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受信: 2010-07-15 02:02

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