省略と跳躍。マノエル・ド・オリヴェイラ監督『ブロンド少女は過激に美しく』
「妻にも友にも言えないような話は、見知らぬ人に話すべし…」
ゆれるカーテン、夕べの鐘、くるくると廻される扇、クイッとあがる踵、リスボンの街。
先日(12月11日)103歳の誕生日を迎えたマノエル・デ・オリヴェイラ監督『ブロンド少女は過激に美しく(Singularidades de uma Rapariga Loura)』は64分の上映時間ながら、その数倍の濃密さで描かれるショットと体感時間に驚かされる。(原作はエッサ・デ・ケイロスの短編小説『ある金髪女の奇行』)
物語・列車で隣り合わせた婦人(レオノール・シルヴェイラ)に衝撃的な体験を語り始めたマカリオ(リカルド・トレパ)。彼は叔父に雇われて洋品店の2階で会計士として働き始めた折、通りの向かいの家に姿を現したブロンドの少女ルイザ(カタリナ・ヴァレンシュタイン)に一目ぼれし、結婚の許しを得ようとするまでに至ったというが…(ブルー部分シネマトゥデイより抜粋)
※MEMO1
●艶のある画面、ショットを堪能するために最前列で再見。説明は必要なく、それどころか物語の必要性もいらないぐらいの省略と跳躍。まるで額縁の中にいるように見える窓際に立つルイザ。マカリオの仕事部屋のベランダと隔てた距離感も掴みにくい。
公証人の豪邸・マカリオとルイザが立つゲーム室越しに音楽室を捉えたフレーム内フレーム。両側の壁に掲げられた絵。一瞬で時間跳躍する固定撮影で撮られた夕暮れ、夜、夜明けの街並み。マカリオが一財産築くために行ったカーボヴェルデの事は手紙で。いろいろな事柄やショットが跳躍し見ているこちら側の体感時間をもグラグラさせる。
※MEMO2
●無くなったハンカチ、無くなったチップ、伯父の言葉…。予兆はいくつも描かれているがマカリオと同じく気付かない(そんな展開?と思ってしまっている)。はたして、不意におとずれるルイザの事実。そしてラストの脚を広げガックリとうなだれるルイザのショット。しかし、このショットはマカリオが列車で隣に座った婦人へ語った訳ではないので象徴的「オチ」とも呼べるだろうか。(ポスターのメインビジュアルに使っている国もあるみたいですが、これは一種のネタバレ的になるかも?と、思ってしまう)
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