そして歩き出す「私は行くよ」『東京オアシス』
注・内容、台詞に触れています。
「マザーウォーター」の松本佳奈と本作がデビューとなる中村佳代が共同で監督した『東京オアシス』。出演は小林聡美、加瀬亮、原田知世、黒木華(野田秀樹演出の舞台「表に出ろいっ!」でヒロインに抜擢された)。音楽は大貫妙子。
物語(と、いうか第1エピソード)・深夜の国道。トラック運転手のナガノは、トラックの前に飛び出した女性をとっさに助ける。喪服を着ていたその女性はトウコと名乗り、女優だという。ナガノのトラックに乗り込み話を聞いてみたが、どこまで本当なのか分からない。しかし、ナガノのことを「レタスのダンボールを運んでいる人に悪い人はいない」というトウコの言葉にはひとつ芯があるように思えた。ナガノもまた、行く先を無くした1人だったのだ。(ブルー部分、goo映画より抜粋)
全部で3つのエピソード。1. 高速道路、2. 映画館、3. 動物園。どのエピソードも東京の喧騒とは違った場所や時間で描かれる。3つのエピソードも後になってみると印象的なのだが中でも「これから始まる感」溢れた最後のエピソードが好み。
※Memo
●トウコは各エピソードで人と出会う。それら出会った人たちを普通(物語としては)どこかで絡ませて、繋がらせて、ふくらませていくのだが本作での小林聡美は(今までの作品とも違って料理を作ることもなく)ひたすらスタスタと歩いて行く、吹き抜ける風のように出会う人に出会う人にインスパイアを与えて…(そして、自分にも)。考えて見れば最初の高速道路でのエピソードからしていつもと違うただならぬ雰囲気で始まっていました。続く映画館でのキクチ(原田知世)とも、ほぼ1シーンの会話劇(このシーンで語られる「となりの座席」に座った人のことはキーポイント)。
●映画を見終わった後、多くの人が間違いなく検索したであろう「ツチブタ」。確かにカンガルー的でアリクイにも見える。で、劇中のイラスト、上手いということも判明。
●(イメージを連ねると)こんな感じで。
(夜のコンビニ)→喪服→回転レシーブ→レタス→きつねうどん→アキ・カウリスマキの映画→コーヒー→みかん→履歴書→ビール→ツチブタ→(昼間の動物園)
●今までの作品(場所の変遷)。
ヘルシンキ→与論島→チェンマイ→京都→東京。
●ラスト、トウコとヤスコ(黒木華)の台詞
「私は行くよ」
「どこへですか」
トウコ答えずに。
「それじゃあね」
歩いていくトウコ
ヤスコのセリフ
「私も…」
●パンフレットデザインは大島依提亜さん。マットなインクで印刷されたモノクロ写真や「凄い絵コンテ」。毎回特徴的なロゴのフォント、ゴシックの変奏曲(本作は太ゴをベースに作字されたそうです)。表紙に地球、表4にきつねうどん。
今回は更に出演まで果たしています( ´ ▽ ` )/
前述の動物園で「ツチブタ」の餌やりの時間を待っていたトウコとヤスコの前に現れた看板を外しにきた飼育係役。(なかなか看板の針金が外れなかったので焦った、とはご本人談)
東京オアシス
http://www.tokyo-oasis-movie.com/
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