主演・市川海老蔵、三池崇史監督『一命』
注・内容、台詞に触れています。
1952年に発表された滝口康彦の『異聞浪人記』を原作に(1968年「切腹」として映画化)、三池崇史監督が再映画化した『一命』。音楽、坂本龍一。出演は市川海老蔵、瑛太、役所広司、満島ひかり。
物語・江戸時代初頭。井伊直孝の大名屋敷に津雲半次郎という初老の浪人が現れ、切腹のため玄関先を貸して欲しいと言う。時は合戦もなくなった泰平の世、食い詰めた浪人たちが大名屋敷で切腹を申し出、金品や士官の口をせしめる狂言切腹が流行していたのだ。応対に出た井伊家家老の斎藤勘解由は、かつて井伊家に狂言切腹
に訪れ「当家では狂言切腹は通用せん」と実際に腹を切らされた若い武士・千々岩求女の死に様を、津雲に話し始める…。(ブルー部分、goo映画より抜粋)
吾輩は猫である。刀(真剣)はもう無い…。
ただ普通に生活が送りたかっただけなのに(貧しさ故の結果)竹光で切腹を強いられることになった侍の悲劇、その叔父、また娘の父としての悲痛…。
※Memo
●市川海老蔵の殺陣のすごさ。
最後の最後に二箇所。
ひとつは山門(と、おぼしき場所)
シネマスコープサイズを生かした横移動。
上段構えたまま、前に足がすぅぅっとすべる。
(こんな殺陣は初めて見た)
もうひとつは大名屋敷での数十人を相手にした竹光での殺陣。
雪の降りしきる中、
廊下、屋敷内、中庭、鎧部屋と縦横に繰り広げられる。
●台詞いろいろ
「ふたりで食べたほうが美味い」
そう言って娘に2つに割った饅頭を渡す、父、津雲。
(さりげなく大きい方を娘に渡す)
次のシーンでは、その娘と娘の夫とが同じ会話。
このシーンだけで(貧してはいるが)慎ましやかな中での
穏やかな家族の情景がうかがえる。
津雲半次郎が実は腹を切らされた若い武士・
千々岩求女の叔父であることが明かされて対する家老に。
「面目…」
「くだらない、実にくだらない」
そしてラスト、津雲の台詞
「私は生きているだけだ」
「そして春を待っているのだ」
●家老役の役所広司は「十三人の刺客」で「斬って切って斬りまくれ」と叫んでいたが本作では、情勢不利な場面でそそくさと退散し始める役というのが面白い。(おまけに大名当主には見事な取繕いをする最後のシーン)←いつの世も同じか…。
●つるりと食す「さざえ」、食べずに懐へ入れた和菓子、落ちて割れてしまった生卵を啜る…。(既にいろいろな方が言及されていると思いますが)食と猫が暗喩的、暗示的。
●美術は「十三人の刺客」に続き林田祐至。
ありえないほど巨大な家紋(橘紋)が施された廊下。
象徴的な赤い鎧。赤と黒の世界。
極めて演劇的にして祝祭的空間、
ケレン味に溢れた舞台。
まさに海老蔵、大立ち回りの為に用意された如しセット。
衣装は黒澤和子。
津雲の着物が月日とともに徐々にほころんでいくリアルさ。
汚しのテクニックの粋。
映画「一命」公式サイト
http://www.ichimei.jp/
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» 一命 [花ごよみ]
市川海老蔵と瑛太が主演。
海老蔵が津雲半四郎。
瑛太が千々岩求女を演じます。
満島ひかり 役所広司 竹中直人
青木崇高 新井浩文 波岡一喜等が共演。
監督は三池崇史。
時代劇初の3D作品ということですが
2Dで見ました。
半四郎(市川海老蔵)が
娘婿、千々岩...... [続きを読む]
受信: 2011-10-19 23:33
» 『一命』 [ラムの大通り]
----これって、昔の映画のリメイクだよね。
「そうなんだけど、
あまりそのことを、前面に出してはいない。
やはり、小林正樹監督の『切腹』が
あまりにも名作だからかもしれないね。
で、その元となった原作『異聞浪人記』の映画化の方が
強調されているみたい。
ぼくは...... [続きを読む]
受信: 2011-10-19 23:40
» 一命 [LOVE Cinemas 調布]
『十三人の刺客』、『クローズZERO』の三池崇史監督最新作。滝口康彦の「異聞浪人記」をベースに作られた武士の世界を批判的に描いたヒューマンドラマだ。1962年に仲代達矢主演で公開された『切腹』と同一原作でもある。主演は歌舞伎俳優・市川海老蔵。共演に『まほろ駅前多田便利軒』の瑛太、『悪人』の満島ひかり、『十三人の刺客』の役所広司といった実力派が揃った。... [続きを読む]
受信: 2011-10-19 23:47
» 一命2D [佐藤秀の徒然幻視録]
大河ドラマ「それからの武蔵」風
公式サイト。英題:Hara-Kiri: Death of a Samurai。滝口康彦「異聞浪人記」原作、小林正樹監督「切腹」(1962)のリメイク。「十三人の刺客」に続くジェレミー ... [続きを読む]
受信: 2011-10-19 23:50
» 「一命」命と引き換えに伝えたかったお金でない命の是非 [オールマイティにコメンテート]
「一命」江戸時代にお家が改易となった貧しい武士の家で貧しいながらも暮らしていた武士の家族がある事がキッカケに切腹をしたいと武家の家に申し出た事からそれを巡る武士の在り ... [続きを読む]
受信: 2011-10-19 23:51
» 一命 [映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評]
狂言切腹を通して武家社会の矛盾とそれに立ち向かう侍の運命を描く時代劇。静かな静かな3D映画だ。江戸時代初頭。相次ぐ大名家の御取り潰しにより、仕事を失い困窮した浪人たち ... [続きを読む]
受信: 2011-10-19 23:56
» 映画「一命」@松竹試写室 [新・辛口映画館]
今回は「Yahoo!映画 ユーザーレビュアー試写会」に招かれました。試写会の客入りは平日の昼間と言うことで6割くらい、観客の年齢層は高い。 [続きを読む]
受信: 2011-10-20 00:32
» 一命 [だらだら無気力ブログ!]
井伊家こそイイ迷惑。 [続きを読む]
受信: 2011-10-20 01:25
» 劇場鑑賞「一命」 [日々“是”精進! ver.A]
武士が守るべきは義か、愛か・・・
詳細レビューはφ(.. )
http://plaza.rakuten.co.jp/brook0316/diary/201110150001/
キネマ旬報 2011年 10/1号 [雑誌]
posted with amazlet
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キネマ旬報社 (2011-09-20)
Amazon.co.jp で詳細を見... [続きを読む]
受信: 2011-10-20 04:49
» 一命 [あーうぃ だにぇっと]
一命@丸の内ピカデリー1。
9月26日(月)舞台挨拶付き3D試写会。
チケットはネットオークション1,540円で入手。
舞台挨拶付き完成披露試写会のわりに安かったのでカサキケイくんに落札してもらって二人で観に行った。... [続きを読む]
受信: 2011-10-20 05:37
» 一命/市川海老蔵、瑛太、満島ひかり [カノンな日々]
『十三人の刺客』でエンターテイメントなアクション時代劇を成功させた三池崇史監督が再び時代劇に挑み1968年に『切腹』というタイトルで映画化された滝口康彦の『異聞浪人記』を原 ... [続きを読む]
受信: 2011-10-20 09:16
» 一命 [Akira's VOICE]
哀しみの果てに・・・
[続きを読む]
受信: 2011-10-20 10:17
» 一命 3D [とらちゃんのゴロゴロ日記-Blog.ver]
滝口康彦の「異聞浪人記」を原作に、三池崇監督が最新の3D技術を使って映画化した作品だ。武家諸法度に反したと、安芸備後50万石を没収されて信濃国高井野藩4万5千石に改易させられた。その歴史的事実を元に、浪人とならざるを得なかった男たちの末路を描いている。生まれる... [続きを読む]
受信: 2011-10-20 23:37
» 映画「一命」感想 [タナウツネット雑記ブログ]
映画「一命」観に行ってきました。
滝口康彦の小説「異聞浪人記」を原作とし、江戸時代初期に蔓延したと言われる「狂言切腹」を題材に「武士の生き様」に対し疑問を投げかける作品。
2010年11月に暴行事件を起こしニュースになった市川海老蔵が主演ということで話題になった映画です。
1630年(寛永7年)の冬... [続きを読む]
受信: 2011-10-21 08:15
» [映画『一命』を観た(すまん、短信)] [『甘噛み^^ 天才バカ板!』 byミッドナイト・蘭]
☆『十三人の刺客』を見たとき、ノリ気じゃない姪っ子だったが、観終えて、「悔しいけど、面白かった^^;」と言った。
で、今回、半ば無理矢理に彼女を、
「名作『忍たま乱太郎』と同じ監督だからさ^^」
と言って、連れて行ったら、観終えて、「『忍たま乱太郎...... [続きを読む]
受信: 2011-10-21 23:53
» 『一命』 [京の昼寝〜♪]
□作品オフィシャルサイト 「一命」□監督 三池崇史 □脚本 山岸きくみ □原作 滝口康彦(異聞浪人記)□キャスト 市川海老蔵、瑛太、満島ひかり、役所広司、竹中直人、 新井浩文、笹野高史、中村梅雀■鑑賞日 10月16日(日)■劇場 TOHOシネマ...... [続きを読む]
受信: 2011-10-22 08:51
» 「一命」 武士の面目と武士の情け [はらやんの映画徒然草]
戦国時代が終わり泰平の世が訪れた徳川時代初期、浪人たちの間で"狂言切腹”なるもの [続きを読む]
受信: 2011-10-24 18:25
» 一命・・・・・評価額1650円 [ノラネコの呑んで観るシネマ]
猫様は見ていた。
「一命」は、滝口康彦の短編小説「異聞浪人記」を原作に、1962年に発表された小林正樹監督の「切腹」のリメイクである。
舞台は豊臣氏の滅亡により、天下太平の世が訪れた寛永年間の江戸...... [続きを読む]
受信: 2011-10-25 21:30
» 映画「一命」 [FREE TIME]
映画「一命」を鑑賞しました。 [続きを読む]
受信: 2011-10-25 23:02
» 一命☆独り言 [黒猫のうたた寝]
三池監督の『一命』観てきました。リメイクながらオリジナルは観たことありません。だから比較もできないけどね。かなり緊張感維持しつつの鑑賞でした。太平の世、食い詰めた浪人たちの狂言切腹が流行っているという。武士の情け、と言いながら大名の江戸屋敷の玄関先で切腹... [続きを読む]
受信: 2011-10-28 00:08
» 一命 [映画的・絵画的・音楽的]
『一命』を吉祥寺のバウスシアターで見ました。
(1)原作の滝口康彦著「異聞浪人記」(注1)を映画化したものとしては、小林正樹監督の『切腹』(1962年)があり、それに甚だ感銘を受けたことがあり、また『十三人の刺客』の三池崇史監督の作品ということもあって、映画...... [続きを読む]
受信: 2011-10-30 18:38
» 映画「一命」映像がちょっともったいつけすぎ [soramove]
「一命」★★★
市川海老蔵、瑛太、満島ひかり、役所広司主演
三池崇史 監督
127分、2011年10月15日公開
2011,日本,松竹
(原作:原題:滝口康彦の小説『異聞浪人記』)
人気ブログランキングへ">>→ ★映画のブログ★どんなブログが人気なのか知りたい←
「江戸時代初頭、戦国の世は終わり
幕府の難癖から多くの大名の御家取りつぶしが起こり
生活に困窮した浪人の間で流行った... [続きを読む]
受信: 2011-11-02 09:17
» 『一命』| 武士道はあれど、その道を歩く者なし。 [23:30の雑記帳]
「『一命』を一名ください」と
チケット売り場で言えなかった小心者です。
まだまだ修行が足りません(泣)
まずは簡単なあらすじ紹介から。。。
(ネタバレあります!)
... [続きを読む]
受信: 2011-11-05 01:11
» ■映画『一命』 [Viva La Vida! <ライターCheese の映画やもろもろ>]
それは、こんなに気合いの入った映画の撮影が終わったら、ちょっとハメを外したくもなるよね…。
と、ちょっと市川海老蔵の心境に思いを馳せてしまうこの映画『一命』。
この映画にはやっぱり海老蔵の才能が必要だったし、海老蔵がいなくてはなりたたない作品だと思うのです。... [続きを読む]
受信: 2011-11-20 20:26
» 一命 [銀幕大帝α]
HARA-KIRI: Death of a Samurai/11年/日本/126分/時代劇ドラマ/劇場公開(2011/10/15)
−監督−
三池崇史
過去監督作:『十三人の刺客』
−原作−
滝口康彦『異聞浪人記』
−音楽−
坂本龍一
−出演−
◆市川海老蔵…津雲半四郎
◆瑛太…千々岩求女
過去出演作:『なくも...... [続きを読む]
受信: 2012-04-15 02:02
» 一命(2011-086) [単館系]
1962年に仲代達矢主演で公開された『切腹』と同一原作
リメイクではないらしい。
狂言切腹というのが有るらしい。
切腹を申し出て面倒事を避けたい大名はお金や職を与えて
思いとどませるらしい。
と...... [続きを読む]
受信: 2012-04-16 07:36
» 一命 [映画、言いたい放題!]
もう随分前に
ある演出家から勧められて、
この映画の元になった「切腹」と言う映画を観ました。
当時、古い作品であるその映画はなかなか見つからず、
やっと見つけて観たのですが、
見ごたえがあり、内容にもショックを受けました。
そのリメイクであると聞いて
これは是非... [続きを読む]
受信: 2012-05-01 03:46