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2011-11-13

演劇的祝祭空間。園子温・監督『恋の罪』

注・内容に触れています。
1990年代、渋谷区円山町のラブホテル街で起きた実際の事件をベースに「冷たい熱帯魚」の園子温監督が描く最新作『恋の罪』。出演は水野美紀冨樫真神楽坂恵児嶋一哉二階堂智津田寛治小林竜樹大方斐紗子ほか。

物語・殺人課の刑事・吉田和子はラブホテルで浮気の最中に呼び出され、渋谷区円山町の殺人現場に向かう。そこにあったのはマネキンと接合された無惨な女性の死体。彼女は私的な興味を覚えながら捜査を進めていく。専業主婦のいずみは、夫にベストセラー作家を持ち安定した静かな生活を送りながらも、寂しさと虚しさを感じていた。ある日、近くのスーパーでアルバイト募集の貼り紙を見た彼女は、そこで働く事にする。慣れないそぶりのいずみにスーツ姿の女性が話しかけ…。(ブルー部分、goo映画より抜粋)

Romance

Memo
「冷たい熱帯魚」での村田(でんでん)が本作での尾沢美津子(冨樫真)にあたるのだが(いわゆる道先案内人)、ラストの事実を伏せておくためによるものなのか、3人のエピソードに分散したためか、直線的なパワーは前作の方にある。が、個人的には本作の演劇的祝祭空間の方に「まだ掴みきれていないけれど、ある種の感慨」を感じた。
(まるでコントのようにも思える)菊池いづみ(神楽坂恵)の夫で小説家の由紀夫(津田寛治)との日常の描写。ドアを開けた、その一歩から正確に置かれているスリッパ「うん。いい位置だ」きっちりと時間の計られた紅茶「うん。よくなってきたね」そしてソファの両端に座って過ごす夫婦。
(まるでホラーのようにも思える)尾沢美津子と母(大方斐紗子)との関係性。(大方斐紗子が本作で最も奇っ怪にして怪演!)
(まるで踊るサイコ・サスペンス刑事もののようにも思える)吉田刑事(水野美紀)のエピソード。しかし彼女も(どこか満たされておらず)夫の友人と関係を持っている。
3人の女性たちは「どこにもいけないで、もがいていたのだ」。そして3人は繋がり、留まる者、突き抜ける者、破滅する者とに帰着する。 

1990年代、渋谷。すぐに思い浮かんだのが、その時期猛烈な勢いで作品群を生み出していた一連の村上龍さんの小説「ラブ&ポップ」「イン・ザ・ミソスープ」「コックサッカーブルース」「トパーズ」「イビサ」など。当時、実際に円山町などを取材して描かれた世界はまさに本作と強烈に重なる。

詩人・田村隆一の詩「帰途」の引用。
「言葉なんかおぼえるんじゃなかった
日本語とほんのすこしの外国語をおぼえたおかげで」
「意味が意味にならない世界に生きてたら
どんなによかったか」
(前述のとおり)この詩のおかげか、いつにもまして演劇的印象をうけた。※何故か(全く関係はないが)ポランニーの「意味と生命」など思いだしたり…。
マーラーの交響曲第五番」(これは監督もインタビューで語っている通り「ベニスに死す」ですね) 
追記
3人の女性たちの(接点にして)劇場(演劇的祝祭空間としての芝居小屋)となるのは渋谷区円山町の廃墟アパート。事件解決後(終演後)、水野美紀演ずる吉田刑事がゴミ出しに間に合わずゴミ清掃車を追いかけて、たどり着いた場所が、この廃墟アパート。そして幕。

園子温監督『恋の罪』公式サイト
http://www.koi-tumi.com/

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