フランシス・フォード・コッポラ監督『テトロ 過去を殺した男』(Tetro)
注・内容、ラストシーンに触れています。
フランシス・フォード・コッポラ監督
『テトロ』原題 : Tetro
2008年にブエノスアイレス、パタゴニア、スペインで撮影
2009年カンヌ国際映画祭監督週間オープニング作品として上映
日本では2010年第7回ラテンビート映画祭で上映。コッポラ作品にして(まさかの)DVDスルーかと思われた2012年1月に無事公開されました。
物語・長い間、音信不通だった兄がブエノスアイレスで暮らしているのを知った17歳のベニー(アルデン・エーレンライク)。ベニーは、兄・アンジー(ヴィンセント・ギャロ)の家を訪れることを決めた。しかし、久しぶりに会った兄アンジーは自分をテトロと呼べと命じた。さらに、周りにはベニーを友人と紹介して…。(オレンジ色部分、goo映画より抜粋)
※Memo1
●デジタル、フィルム、白黒、カラー、画面サイズ、ロングショット、クローズアップ、演劇、映画、バレエ、言語、ロケ地… 様々な事柄が渾然一体となって押し寄せてくる。編集の妙、ディティールの集積。光と影。もう、これ久々に映画酔した!
●本編もフィックスで撮られた絵画レベルの映像にウォルター・マーチの編集と、もうホントに目のご馳走オンパレードでした。
●明滅する光。山麓の雪が反射された光、ヘッドライト、テレビカメラクルーのライト。数多くの光の束がデジタル撮影(デジタル上映)によって強烈なコントラストを生む。
●物語はカンヌでの初公開時から語られてきたとおり、(父親、カーマインコッポラを連想する)作曲家の父とのオィデプス王の逆転写的様相を帯びている。そのドラマツルギーを支えるヴィンセント・ギャロ、アルデン・エーレンライクら演技陣も素晴らしい。
●ラスト
出生の秘密(兄ではなく父親であったこと)を知り道路に出て車の方向へフラフラ歩き出すベニー。ヘッドライトの光に一瞬よろめく。
後ろから目を塞ぐテトロ
「光を見るな」
そして「THE END」
前作『コッポラの胡蝶の夢』もそうでしたが長いエンドクレジットはなく、シンプルに(ハリウッドの伝統的なスタイル)「THE END」で幕を閉じる
●様々なスタイルを実験的に繰り返すコッポラ監督だが本作をもって、そろそろ終りにしたいと前作公開時のインタビューで答えていました。
(以下「Esquire・2008年10月号」より蓮實重彦氏によるコッポラ監督電話取材記事より抜粋)
「映画のスタイルは、作品のテーマを表現すべきものだと信じています。そしてスタイルはテーマに対し完璧なものであるべきだと。それで毎回作品のテーマに最も合うと思われる撮り方をしてきました。しかし私も歳を取ってきましたので、今回の作品と次回作(「テトロ」のこと)を作ってみて、そろそろスタイルに関する実験的なことはやめて、今後は私が今まで試みてきた中で最も好きなスタイルを使って作品を撮っていくべきではないかと考え始めました。」(この後、小津監督もそうであったこと等が語られる)
※Memo2
Tetro Film
(YouTubeリンクですがアップされた日付から察するに半オフィシャルと思われるので記載しました) → 予告編、メイキング(バレエシーンのメイキング映像も)、インタビュー、冒頭3分間のシーン(美しいタイトルバックも)見ることが出来ます。
http://www.youtube.com/user/TetroFilm
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