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2012-04-27

アスガー・ファハルディ監督『別離』(Nader and Simin, A Separation)

注・内容(あるシークエンスは詳細)に触れています。
第84回アカデミー賞外国語映画賞、第61回ベルリン国際映画祭金熊賞など世界中の映画祭で賞を獲得した『別離』。監督は前作『彼女が消えた浜辺』が一昨年公開されたアスガー・ファハルディ監督。出演はペイマン・モアディレイラ・ハタミペイマン・モアディシャハブ・ホセイニサレー・バヤトサリナ・ファルハディ、他

物語・シミンとナデルはテヘランに住む夫婦。娘のテルメーとナデルの父と4人で暮らしている。シミンは娘の将来を考え、家族揃っての国外移住を考えていたが、夫ナデルの父がアルツハイマーに罹ってしまい、夫は介護の必要な父を残しては行けないと主張してきかない。娘のためには離婚も辞さないと言うシミンは、実家に戻ってしまう。ナデルは家の掃除と父の介護のために、敬虔なイスラム教信者のラジエーという女性を雇う。

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Memo
原題は「ナデルとシミンの別れ」
冒頭、裁判所のシーン。ナデルとシミンがカメラに(裁判官・調停員)に向かって、それぞれの言い分を語る。(かなりの状況説明だったのでもう少し長いと思ったが実際、タイトル「別離」と出るまでで5分)

そして30分経過したところで問題のシーン(ナデルの父親が外に出てしまい車が往来する中を歩いている)←この部分が観客にミスリードを呼び同時に最後まで物語を引っ張っていく核となる。
ゴミを「出して」と娘に言うラジエー。酸素マスクをいじる娘。困るナデルの父親(苦しんでいるようにも見える)。ゴミ袋を引きずりながら階段を降りて破いてしまい汚す。服を汚して怒るラジエー。「お爺ちゃんがいない」のひと言に慌てて階段を降りる。通りの向かい側の新聞売り場にいるのを発見。ひっきりなしに通る車。道路を渡ろうとする。それを見てラジエーが…(クラクション)→そこでパッと場面が変わってサッカーゲームに興じるナデルとテルメー、父親、ラジエーの娘。あー、無事だったんだと思わせながら実は!(ここが脚本としてのポイント)。続くシーンは具合が悪い様子でバスの中で倒れそうになるシーン。(この後に問題の父親が倒れていたり、階段へ押し出すシーンなどが続く←約15分)。この問題のシーンから階段までの一連のシークエンス。いったい何が起こっているのか何が起こるのかわからないままスクリーンに釘付けになった。あるポイントを見せない(隠す)ことで構築されるドラマ。

ほんとに上手い役者が多くて驚いた、前作「彼女が消えた浜辺」に出演していた俳優が多数。メイキング映像を見ると入念なリハーサル含め緻密な演技への指示を出しているのがわかる。(あ、それと最初のコピー機の撮影やガラスの割れるシーンのアナログ的手法、いい!)
撮影はマームード・カラリ(キアロスタミ監督作品他イラン映画界を代表する撮影監督)。ナデルが父親を涙ぐみながら浴槽で洗うシーンでカメラをのぞき込みながら涙するシーンがあった(それぐらい悲痛さに溢れた場面だった)
編集(これまたスゴイ)は前作に続きハイェデェ・サフィヤリ(他に「ペルシャ猫を誰も知らない」など)

娘テルメー役を演じたサリナ・ファルハディは監督の実娘(これまた実に上手い)。このテルメーの視点(視線)がもうひとつのキーポイントになる。ドアの隙間越しに見えるテルメーの姿(逆にテルメーの視線)それらが実に巧妙に映しだされている(2回目を見たときに、その伏線のはり方の妙に驚愕した)

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映画『別離』公式サイト
http://www.betsuri.com/

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2012-04-23

トーマス・アルフレッドソン監督【裏切りのサーカス】Tinker Tailor Soldier Spy

※注・内容、台詞、"もぐら"について触れています。
ジョン・ル・カレの小説「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ( Tinker Tailor Soldier Spy )」を「ぼくのエリ 200歳の少女」のトーマス・アルフレッドソン監督が映画化『裏切りのサーカス』 出演はゲイリー・オールドマンコリン・ファースマーク・ストロングトム・ハーディジョン・ハートキアラン・ハインズトビー・ジョーンズデビット・デンシックベネディクト・カンバーバッチ、他

物語・東西冷戦下、英国諜報部MI6=通称"サーカス"のリーダーのコントロールは、幹部の中にソ連の二重スパイ"もぐら"がいるという疑いを持ち、ある指令を出す。しかし作戦は失敗しコントロールは責任を取って右腕のスマイリーと共に組織を去った。その後、引退したスマイリーのもとに組織内の裏切り者を捜せという極秘命令が下る。(DarkGreen部分、goo映画より抜粋)

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2回見ることがこんなにも楽しい作品は久しぶりかもしれない。原作は"旧訳版を読破することを途中で諦めた組"なので、ほぼ白紙で1回目→新訳版・原作を読み→2回目というベストなパターン(だと思う)で鑑賞。
ゲイリー・オールドマンのスマイリーはもちろんのこと配役陣の渋い演技、そして実はあのシーンにも(後々出てくる人たちが)しっかりと登場していたのか!という発見の喜び。さらに映像の色彩設計から美術に到るまでの一貫した美意識も。
ブダペストでの作戦場面に続くオープニングタイトルシークエンスで(後に関連することも含めて)描ききる手腕→"サーカス"を去るスマイリーとコントロール。それを見るピーター・ギラムやコニーの姿。書類リフトと金庫。眼鏡を新調するスマイリー。コントロールの死(ベッドからずり落ちるような姿で)。玄関ドアの木片。アン(スマイリーの妻。家を出ている)ヘ届いている手紙。掛けられた絵…
クリスマスパーティのシーン
(関わるべき人たちを一同に会するための素晴らしいアイデア。スマイリーが目撃する"あのこと"も)
そして、それらは("サーカス"がうまく機能していた時代との分岐点という意味も含めて)
この台詞に集約される
「あの時から」
フリオ・イグレシアスLa Mer」が流れる中、冒頭部分と同じく流麗に描かれるラストシークエンス。グラスをふたつ持って(誰かに渡す、もしくは探している)ビル・ヘイドン。ジム・プリドーと目が合う。笑みをもらすふたり。そして…"もぐら"殺害のシーン。帰宅するスマイリー。アンの後ろ姿、肩に手を置く。サーカスへの帰還。本部内、ギラムと(会話は交わさずにすっと)すれ違う。ニヤリと笑みを浮かべるギラム。コントロールが座っていた場所に座るスマイリー(ここでEND)

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Helveticaを使用した端正なTitle Design. デザイナーはBjörn Kusoffsky
衣装を担当したのはジャクリーン・デュラン(ジョー・ライト監督作品多数)。サーカスに属する男達はサヴィル・ロウ(オーダーメイドの名門紳士服店が集中する通り。現在も30近くの店舗がある。日本の「背広」の語源)で洋服を仕立てているという想定からサヴィル・ロウの元・テイラーにスマイリーのスーツをオーダー。
クリエィティブサポートとしてポール・スミスがクレジットされています。70年代ロンドンの世界観についての重要なムードやカラーのアドバイスや、撮影アプローチについてのアイデアを提供。
そのひとつ。UK&US版として特別に作成されたポスター。(美しい!)
Creative Review - Posters for Tinker Tailor Soldier Spy by Paul Smith
http://www.creativereview.co.uk/cr-blog/2011/september/posters-for-tinker-tailor-soldier-spy-by-paul-smith
脚本はブリジット・オコナー&ピーター・ストローハン。監督からの依頼で女性の視点が必要ということで起用されたそうです(イリーナとリッキー・ターのエピソードやアンとスマイリー、ビルについての会話などホントに上手い)
Tinker Tailor Soldier Spy  SCRIPT
下部ナビゲーションバーのDOWNLOAD THE SCRIPTからPDFで読めます(なお再録ではないので本編とは違う部分あり。ラストあたりも)。
http://www.focusawards2011.com/#/tinker-tailor-soldier-spy/

※ +Memo
(細かすぎるけど発見)→ BRUTUS(2012年4月15日号)「大友克洋、再起動」92P、一番上の写真にスマイリー3部作、ジョン・ル・カレ「スクールボーイ閣下」の単行本が!(しかも1979年刊行の単行本!)
ネットに削除シーンが(DVDなどに収録のもの?)
ギラムとロイ・ブランドがエレベーターを降りたところで顔を合わせ(このシーンカメラアングルにドキッとさせられます)「これから何処へ」「ランチ」に続くシーンが。
BBCドラマ版の違いで一番驚いたのはジム・プリドーによる"もぐら"殺害のシーン。ドラマ版は夜にベンチに座っているところを一撃で殴り殺し(と、いうか倒れたときに首が曲がって崩れ落ちている)、ある意味衝撃的。映画版は一瞬、目があった瞬間にライフルで、とかなり印象が違う(ここは映画版の方が個人的に好み)。
そしてジム・プリドーが教師となっている小学校の生徒。ジム・ローチがドラマと映画版そっくり(イメージ通りということですが)
原作で出てくる台詞
(ジム・プリドーがジム・ローチに名前を聞くシーンで)
「わたしの知り合いにもビルは大勢いた。みんないいやつだった」

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映画『裏切りのサーカス』公式サイト
http://uragiri.gaga.ne.jp/

TINKER TAILOR SOLDIER SPY (USサイト)
http://www.tinker-tailor-soldier-spy.com/
映画にも出てくる書類リフトを模したサイト(壁紙、アイコン、ガイドブックPDFなどがダウンロードできます)


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2012-04-21

"もも"とオジサン“妖怪3人組” 沖浦啓之監督『ももへの手紙』

注・内容、台詞に触れています。
沖浦啓之監督
が約12年ぶりに手掛けた劇場用長編第2作『ももへの手紙』(製作はプロダクションI.G)。声の 出演は美山加恋優香西田敏行山寺 宏一チョー。主題歌はサザンオールスターズの原由子

物語・小学校6年生のももは、夏のある日、母に連れられ瀬戸内海に浮かぶ汐島に向かっていた。父を突然の事故で亡くしたももは、母のいく子がかつて暮らした島に引っ越してきたのだ。喧嘩をしたまま、仲直りする間もなく父と永遠の別れが訪れたため、ももは心の中にわだかまりを抱えたままだった。瀬戸内の穏やかな風景の中で新生活を始めたももの身の回りで、やがて奇妙な事件が起こりはじめる。そして突然3人組の妖怪が現れて…。(Blue部分、goo映画より抜粋)

Momo

Memo1
いいなぁ( ´ ▽ ` )/ 感動作という表現より"コメディ要素を持ったフランク・キャプラ作品的物語"印象をうけた。その辺りと"だいだらぼっち"やイノシシ(襲ってくるシーンなど特に)、妖怪などの既視感で「観たことあるなぁ」と捉えられてしまいがちだが、すごく丁寧に造形されたすぐれたアニメーション。舞台設定が島(瀬戸内、大崎下島がモデル)というところもよい(限定することで軸がブレない。またラストの橋のシーンがいきる。←橋を渡った側のシーンを出していないところからも、監督の意図が見て取れる)
オジサン“妖怪3人組”
黄表紙からモチーフとした百鬼夜行的妖怪の造形が"パッと見"気持ち悪いのだが物語が進むにつれ愛着がわいてくる。(そして最初怖がっていた、ももが元気を取り戻していくことともなる)
(監督インタビュー曰く旧・ソ連映画「不思議惑星キン・ザ・ザ」からおじさんっぽい妖怪にしたかったとのこと)
イワ、カワ、マメ。イワに西田敏行、カワに山寺宏一ともうピッタリなボイスキャスト(体型から想起?)
マメの声を演じたチョーさん、「ONE PIECE」ブルック役、『ロード・オブ・ザ・リング』吹替え版でゴラム役をやっていた方なのですね(三人の妖怪のアクセントになっていて、すごくよかったなぁ)。優香、美山加恋のキャスティングもマッチしている。
父親が残した「ももへの手紙」
便箋の最初にたった"一文字"。
「もも
「へ」を「は」に書き換えて"天界"へ送り返すイワ(三人組妖怪。実は、そういう役目を持ってももの元へやってきた見守り組としての"二級天使"のような役回り)←その報告書をマメが作った書き出しと勘違いして「いかんなぁ。書き出しから間違えとる。そう言って「へ」を塗りつぶし「は」に変えて、こう続ける。
「もも元気です
この文面が布石となって、ちょっと"クスっと"そして"クシュッと"させてくれる素敵なエンディングへと繋がる。
ももとの台詞
クライマックスへ繋がるマメのひと言。
「オイラやっていいことと悪いことの区別がつかないから、いいよ」
ラスト、ももとカワの会話
「絶対忘れないから」
「これだから女は信用できないんだ」

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監督・沖浦啓之、作画監督・安藤雅司、美術監督・大野広司の磐石たるスタッフで描かれる世界はいわゆる"影付きアニメ"とは違ったリアルな動き(風になびく髪の毛、動作から生じる服のシワ)とコミカルさを含むファンタジー性を共存させて素晴しい。
主題歌:原由子「ウルワシマホロバ ~美しき場所~」

『ももへの手紙』公式サイト
http://momo-letter.jp/

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2012-04-16

映画と衣装デザイン(リンクメモ)

Clothes on Film | Screen style & identity 】
映画の衣装デザインについて記事・インタビューなど
http://clothesonfilm.com/
めまい、ハンガーゲーム、グロリア、カンバセーション…盗聴…、レザボア・ドッグス、他(新作から名作まで多数の記事があります→サイト上部Archive & Searchから記事INDEXへ移動)
その記事の中から↓
ブラック・スワン
衣装デザイナー、エイミー・ウェストコット(Amy Westcott)
デザイン画&インタビュー
http://clothesonfilm.com/black-swan-amy-westcott-interview/18997/
ダンスウェアに「YUMIKO」ブランドを使用したことも触れています。

永遠の僕たち
衣装デザイナー、ダニー・グリッカー(Danny Glicker)
ミア・ワシコウスカの、あの衣装スケッチやインタビュー
http://style.mtv.com/2011/09/16/danny-glicker-restless/

Restless2

 

Dressed Cinema
映画と衣装デザイン、そして(作品からインスパイアされた)ファッションコレクション
(トップページではありませんが「カサブランカ」「アニー・ホール」なので)
http://dressedcinema.blogspot.jp/search/label/Influenced

その記事の中から↓
美しい! > McQueen and Gaultier 2010コレクションと【AVATAR】カラーパレット
http://dressedcinema.blogspot.jp/2011/01/spotted-avatars-message-and-color.html

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2012-04-07

ミシェル・アザナヴィシウス監督『アーティスト』(THE ARTIST)

注・内容、台詞(サイレントなので字幕カード)に触れています。
モノクロでサイレント(無声映画)作品で見事、第84回アカデミー賞の作品賞、主演男優賞、監督賞など5部門を受賞した『アーティスト』(サイレント映画が作品賞を受賞するのは、第1回アカデミー賞以来83年ぶり)。監督はミシェル・アザナヴィシウス監督。出演はジャン・デュジャルダンベレニス・ベジョジョン・グッドマンマルコム・マクダウェルミッシー・パイル、他

物語・1927年のハリウッド。サイレント映画の大スター、ジョージ・ヴァレンティンは、ふとしたハプニングで女優志願のペピー・ミラーと出会う。やがてジョージは、オーディションを受けにやってきたペピーと再会。その日を境にペピーはエキストラから少しずつ上位の役をものにする。1929年、トーキー映画が登場。しかしサイレントにこだわったジョージは自ら監督・主演した映画が失敗し、失意のどん底に。一方、ペピーは大スターになってもジョージを思う気持ちは変わらなかった。(glay部分、goo映画より抜粋)

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これは楽しい( ´ ▽ ` )ノ !サイレントからトーキーへの移行期を描いた映画というとすぐに「雨に唄えば」を思い起こすが、本作はその時代をモノクロ&サイレントで再現。散りばめられた映画記憶。ダグラスフェアバンクスからスワンソン、ムルナウ、ワイルダーからマルセル・カルネ、ジャック・タチまでいろいろ浮かんできます♪

この台詞(字幕)
" If you want to be an actress, you need to have something no one else has.
"
「女優を目指すには何か目立つ特徴が必要」とアイライナーでほくろを描く。このつけぼくろ(beauty spot)がペピーの支えであり(観客にとっても)彼女の想いが変わらないことの印でもあることがわかる。
ジョージの愛犬(アギー・見事カンヌ映画祭イベント、パルムドッグ賞を受賞)がカワイイ。アギーがずっとジョージにくっついてるのがいい(話は全然違うけれど「チャップリンの犬の生活」を思い出したり ← 大金掘り当ててラッキードッグ。そしてチャップリンはホントにたくさん犬と共演している。やはり物言わぬ犬とサイレント映画という部分があるのですね←他にも「黄金狂時代」「街の灯」「モダン・タイムス」)
あとゼメキス監督「ユーズド・カー」に出てきたカート・ラッセルの飼っていた(中古車を買いに来たお客さんが試乗した車に轢かれて死んだフリをするw)ワンちゃん以来の名演技(アギーの倒れ方、抜群!)。
サイレント映画というとメル・ブルックス監督「サイレント・ムービー」を思い出す(随分タイプは違いますが…)。ポール・ニューマンやライザ・ミネリ、アンバンクロフトらスターはひと言もしゃべらず唯一パントマイマーのマルセル・マルソーが、ひと言喋るだけという洒落っ気で当時、結構ウケていた記憶。
ジョン・グッドマン演ずるキノグラフ社長の風体がワインスタイン会長っぽい(多分さんざん言われたこと、かな?)。で、もう一つジョー・ダンテ監督「マチネー/土曜の午後はキッスで始まる」では映画監督を演じていたなぁ、と、思い出したり(←観終わった後、色々な映画が浮かぶということ自体がいい)

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35mm (Kodak Vision3 500T 5219 ← まず適したフィルムの在庫を確保したとインタビューで答えています)使用によるフィルム撮影。カメラはPanArri 435 ESとPanavision Super Speed MKII
アスペクト比は1.37:1(22フレーム←こちらもこだわりの低フレームレート)のスタンダード(サイレント映画スタンダード・サイズは1.33:1)。カラーフィルムで撮影後、白黒フィルムにコンバート(デジタルによるカラーコレクション)。いろいろなところで書かれている衣装のケー(スターからトーキー移行を拒んで落ちぶれていくジョージの衣装)
撮影監督ギョーム・シフマンへのインタビュー「The Artist’s Cinematographer Speaks | Studio Daily」(上記、テクニカル系の話、ペピーの輝きのある顔の撮影のこと、コントラストのことなどが語られています)
http://www.studiodaily.com/2012/02/the-artists-cinematographer-speaks/
衣装デザイナーはマーク・ブリッジス(Mark Bridges)
本作でアカデミー賞衣装デザイン賞受賞。オフィシャルサイトを見ると「あ、あの作品も」と驚き!
http://www.elevenoclockfashionshow.com/
タイトルデザイナーはLaurent Brett
WEB SITE(MOVIE TITLESから「アーティスト」他、見ることが出来ます。鑑賞後にご覧ください)
http://www.laurentbrett.com/

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映画『アーティスト』公式サイト
http://artist.gaga.ne.jp/






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2012-04-03

"Don't Think Twice, It's All Right" テイト・テイラー監督『ヘルプ~心がつなぐストーリー~』(THE HELP)

注・内容、台詞に触れています。
キャスリン・ストケット
のデビュー小説「ヘルプ」の映画化『ヘルプ~心がつなぐストーリー~』 監督はテイト・テイラー、出演はエマ・ストーンヴィオラ・デイヴィスオクタビア・スペンサーブライス・ダラス・ハワードジェシカ・チャスティンシシー・スペイセクシシリー・タイソン

物語・60年代前半の米国南部の町ジャクソン。大学を卒業して実家に戻ったスキーターは、生まれ故郷の保守的な町で旧態依然の人種差別が公然と行われている事にショックを受ける。友人たちは皆結婚して家事も子育ても黒人メイドに任せっきりの暮らしに何の疑いも抱いていない。進歩的で作家志望のスキーターは、メイドたちの虐げられた実態を伝える本を書こうと決意するが、報復を恐れる彼女たちの口はなかなか開かなかった…(orange部分、goo映画より抜粋)

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黒人と白人、雇用主とヘルプ、古い因習や男尊女卑、女性の友情、母と娘、いろいろな事柄が軽やかに盛り込まれた「この語り口」
背景として挟み込まれる公民権運動の演説シーン、ケネディ大統領暗殺、ミシシッピー事件などの扱い方もテレビやラジオを通じて伝える事によって、そちら方向にドラマの軸がぶれないあたりもよい。
テーマとしては重くなるところを、そうならなくて146分を見られるのはユーモア溢れる台詞の数々と絶妙なキャスティング、そして演技。

その、いろいろな台詞
冒頭エイビリーンのボイスオーバーで
「赤ん坊は丸くて柔らかいものが好き」
脚の上に座らせている。
いかにメイドによって白人女性の子供たちが育てられていくかがよくわかる導入部分。
そして何かあると必ず、子供にこう言い聞かせる。
「You is kind. You is smart. You is important.」
(エイビリーンは母親のエリザベスに対して「母親失格と思ってる)

また、スキーターもコンスタンティンというメイドに丁寧に育てられていた。
自分の容姿について悩むスキーターに。
「ママは自分の人生を選ばなかった。でも、お嬢さまはきっと大きなことを成しえますよ」
そんなコンスタンティンを「ある事件」がきっかけで母親はスキーターが大学に行っている間に辞めさせてしまう。
その回想シーンは本当に胸がつまる。
柱に記されたスキーターと自分の娘の身長の記録を手でなぞるコンスタンティン。

シーリアとミニーの料理会話
(これが実に楽しい。そして屈託なく接してくれるシーリアの性格も出ているシーン)
全然料理ができないというシーリアに
「ショートニング」
と、言ってCriscoのショートニングを手に持っている。
「これがあればなんとかなります」
フライドチキンに粉をまぶす。
これでもかというぐらいシャカシャカするシーリア。
「そんなに振らなくても、もう鶏は死んでますよ」
また、こんな台詞も
(ミニーの料理に対する自信の表れ)
「私がチキンを焦がすなんて」
(これ、小説が出版されてスキーターが原稿料として送ってくれた、お金を見て喜びすぎてチキンを焦がすシーンのおまけ付き)

場内、1番の大爆笑だったシーン。
ヒリーの母親、ミセスウォルターズ(シシー・スペイセク!)がミニー特製、あの◯◯入りパイの事を話す
「あなた二切れも食べたのよ」

ラスト近く。
作家への第一歩、ニューヨーク行きが決まっているにもかかわらずジャクソンの町に残るというスキーターにふたりが。
「大丈夫」
「私には彼女がいるし、彼女にも私がいる」
そう言って送り出すエイビリーンとミニー。
3人の友情が浮かび上がるいいシーン。

ラスト。
ボイスオーバーでエイビリーンの台詞
「息子は家族の中から作家が出ると言ってたけれど、私がそうなるとは」

サウンドトラック(使用されている楽曲)。
Mary J. Bligeのテーマ曲「The Living Proof」や「ヘルプ」が出版されて、その様子が綴られるシーンにBob Dylan"Don't Think Twice, It's All Right"(くよくよするなよ)、遠くで聞こえているラジオからのサウンドもいい(ちょっと聴きとれなかったので、また再見の折にチェック)
※注・サントラはスコア盤と挿入歌集、2種類あります。

Memo2
タイトルデザインはPROLOGUE FILM
ラスト、それぞれが新しい道を歩き出す。
懲りずにエイビリーンをまだ貶めようとするヒリー、同調するエリザベスに対して「NO」を突きつけメイドを辞め一歩を踏み出す長く伸びたロードを歩く後ろ姿に控えめながら実に美しくタイトル、そしてキャストが浮かび上がる。
衣装、ファッションについては山崎まどかさんによるパンフレット掲載の記事「女性たちの服装から浮かび上がるパーソナリティとジャクソンの保守性」が素晴しい。

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ヘルプ~心がつなぐストーリー~|公式サイト
http://disney-studio.jp/movies/help/



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2012-04-01

ニコラス・ウィンディング・レフン監督、ライアン・ゴズリング主演『ドライヴ』(Drive)

注・内容、台詞、ラストシーンに触れています。
ジェイムズ・サリスの小説を原作にニコラス・ウィンディング・レフン監督が映画化『ドライヴ』。出演はライアン・ゴズリングキャリー・マリガンオスカー・アイザック、他。

物語・天才的なドライブ・テクニックを武器に昼はアクション映画のカースタント、夜は強盗の逃走を請け負う運転手をしている"ドライバー"(ライアン・ゴズリング)。ある晩、彼はアパートの同じ階に住むアイリーン(キャリー・マリガン)という若妻と偶然エレベーターに乗り合わせ、ひと目で恋に落ちる。だが彼女には服役中の夫スタンダードがいた。やがて服役から戻り更生を誓うスタンダードを見たアイリーンは、ドライバーを思いながらも家族を守る選択をする…(DarkGreen部分、goo映画より抜粋)

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"ドライバー"の流儀。
「5分間車の中で待つ」
「その5分間に何が起きようと必ず待っている」
「だが5分を過ぎたら面倒はみない」
ウォルター・ヒル的80年代ムービーにエレポップ(Kavinsky"Nightcall"や"A Real Hero"、"Under Your Spell"など。スコアもソダーバーグ組クリフ・マルチネス)を重ね、幾つもの映画からサンプリングした一見、捉えどころのない、しかし確実に確信犯的技巧とルックを持った映画。
あまりの浮遊感にこれはもしかして"夢"かも?と思わされる。なんといっても主人公に名前はない。ただ「ドライバー」と。当然アイリーンもその子供ベニシオも名前をよぶシーンはない。
これはイーストウッド監督「ペイルライダー」の主人公にも名前がなく単にPreacher(牧師、伝道師)だったことを想起させる。
エレベーターの中で幾つもの事柄が。
1.最初、逃走請負の仕事から帰ってきた"ドライバー"とアイリーンはエレベーターが着いた駐車場ですれ違っている(この時は知り合っていない)。
2.
アイリーンとベニシオと3人でエレベーターに乗っているシーン。(嬉しそうにしていて微笑ましいシーン)
3.
アイリーンとドライバー、そしてヒットマン。ここでのアイリーンとのキス。そのあとのヒットマンへの容赦ないドライバーの姿。駐車場で扉が開き、後ろに下がりながら出ていくアイリーン。閉まる扉。
最後に"ドライバー"がアイリーンと電話で交わした会話。
「君とベニシオと過ごせたのがよかった」
そしてラスト、"ドライバー"と黒幕バーニー(物腰とは違ってホントに怖い。ナイフと剃刀のコレクションケースにはゾッとした)は刺し違える形になるのだが…
しばらく間があいて…
またハンドルを握り"ドライバー"は車を走らせだす。
(※未確認・この辺りのショット、もう一回確認しないと判らない部分をはらんでいます)

Memo2
「来るぞ!」というシーンを「来た!」という期待通りのショットで決めてくれる。スローモーションや空撮による俯瞰、そして仰ぎ見るショット。また夜間撮影(車内のフォーカスがピシッと決まっている中、外に向けられたフロントガラス越しの道路など)が本当に素晴しい。
使用カメラはArri Alexa。他にCanon EOS 5D Mark II(こちらとの組み合わせパターン多数)
メインタイトルはもちろんのことエンドタイトルの最後まで「Brush script系イメージ」のフォントを使用していました。(このパターン結構珍しいかも)

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映画『ドライヴ』公式サイト
第64回カンヌ国際映画祭 監督賞受賞|
http://drive-movie.jp/

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