アキ・カウリスマキ監督『ル・アーヴルの靴みがき』(Le Havre)
注・内容、台詞に触れています。
「ラヴィ・ド・ボエーム」から20年ぶりのフランス語作品、そして「街のあかり」以来5年ぶりとなるアキ・カウリスマキ監督の新作『ル・アーヴルの靴みがき』
出演は(お馴染みの)アンドレ・ウィルムス、カティ・オウティネン、ジャン=ピエール・ダルッサン、ブロンダン・ミゲル、ライカ、そして唯一の"悪いひと"密告者(通報者)として(あの「大人は判ってくれない)ジャン=ピエール・レオが!(←「ラヴィ・ド・ボエーム」にも出ていましたが)
物語・かつてパリでボヘミアン生活を送っていたマルセル・マックス。今はノルマンディーの港町ル・アーヴルで靴みがきを生業に、最愛の妻アルレッティと愛犬ライカと共に暮らしている。ある日、港に漂着したコンテナに乗ったアフリカからの不法移民たちが警察に検挙されるが、ただ1人逃げ出したコンゴの少年イドリッサと偶然出会ったマルセルは少年を匿う。が、同じ頃、アルレッティが病に倒れ病院へ。そして…(Skyblue部分、goo映画より抜粋)
※Memo1
●おなじみのカウリスマキ節に頬が緩む(前作から5年。カウリスマキ成分がかなり不足していた〜)。さらに今作はなんとも素晴しいエンディングまでもってきている超絶ストーリーと語り口+「社会問題」(監督メッセージが発表されていてパンフレットにも掲載)
●目の前でテロリストと思しき人物に何かが起こっても「お代はいただいてる」と関せずだったマルセルが(ふと思ったことだと思うが)イドリッサを目的地のロンドンに送ってやれないものかと奔走する(リトル・ボブ復活コンサートまでも)、いつものカウリスマキ作品にはなかった展開。(前述「社会問題」含め)
●(理由としては)ひとつはイドリッサの育ちの良さ、品性のよさ(お金を返しにきた、その話し方、お皿の洗い方、ソファのベッドメイクの仕方)もあるだろうし、堤防に座って海を見ている後ろ姿を見つめてる時だったのかもしれない。(途中、難民についてのニュース映像というカウリスマキ作品に無かったシーンも挿入されている)
●2008年の個人的ベストワン「画家と庭師とカンパーニュ」で庭師を演じていたジャン=ピエール・ダルッサンが出てて、これがもうめちゃめちゃいいー!(ルネ警視・役)。(聞き込み中、八百屋で買った)パイナップルを持ってカフェに現れる姿にぷっと吹いてしまった(この姿で既にいいひと←その前のコンテナを開けるシーンでも態度に現れていました)
●いろいろな台詞
医師とアルレッティの会話
(不治の病と告げられて)
「奇跡が起こるしかない」
「最近、近所では起こってないわ」
靴みがきという職業についてのマルセルのひと言。
「靴みがきと羊飼いは人々のものだ」
●ラスト1
(ルネ警視の助けもあり)無事イドリッサ少年をロンドンへ向かう船に乗せて、マルセルとルネ警視の会話
「私はあなたを誤解していたようだ。お詫びのしるしに一杯」
「カルヴァドスなら」
●ラスト2
病院へ黄色い花を持って向かうマルセル
だが病室にはアルレッティの姿はなく、包装された洋服の包がベッドの上にぽんと置かれていた。急いで医師のもとへ。
もったいぶった言い回しで、残念だと言ってるような口ぶり←見ているこちらも一瞬「エッ」と思った、が…
そこには頼まれて持っていった(リトル・ボブ復活コンサートでその日に行けないマルセルに代わってイドリッサ少年が届けた。アルレッティと初対面の少年。この時の台詞「子供みたいな人ですから早くよくなってあげてください」)黄色い(花の柄のついた)服を着たアルレッティが立っていた。
「治ったの」「奇跡が起こったのよ」
「帰りましょう」
帰宅した"ふたり"を満開の桜の花が。
※Memo2
●パンフレットデザインは大島依提亜さん。イドリッサ少年の着ているセーターの柄が表紙(カワイイ)。1ページめくると現れるのは奇跡の象徴的黄色い花が目に飛び込んでくる。そしてセンター、パイナップルとリトル・ボブコンサート告知に挟まれて映画シーンが高精細印刷によるカラー16ページ。総ページ数表紙含め44ページ。映画と共に完結。オススメ!
※Memo3 (賞、その他)
●2011年カンヌ国際映画祭では国際批評家協会賞、エキュメニック賞スペシャル・メンション、2011年シカゴ国際映画祭グランプリ、2011年ルイ・デリック賞作品賞(そして→)+愛犬ライカの名演にパルム・ドッグ審査員特別賞(パルムドッグ賞は「アーティスト」のアギーに)
●カウリスマキ監督が選んだクライテリオン・コレクションTop10
Aki Kaurismäki’s Top 10 - Explore - The Criterion Collection
http://www.criterion.com/explore/163-aki-kaurismaki-s-top-10
●映画「小津と語る」(1993年公開)でカウリスマキ監督出演シーンで→「76年、兄に強引にロンドンで見せられたのが「東京物語」でした。その時から私は文学への憧れを捨てて"赤いヤカン"を探すことにしました。」「ル・アーヴルの靴みがき」の中にも幾つも赤い品々が出てました。
映画『ル・アーヴルの靴みがき』公式サイト
http://www.lehavre-film.com/
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原題 LE HAVRE
製作年度 2011年
製作国・地域 フィンランド/フランス/ドイツ
上映時間 93分
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アルレッティに「街のあかり」のカティ・オウティネン。
モネ警視に「ダニエラという女/2005」「サン・ジャックへの道/2005」「画家と庭師とカンパーニュ/2007」「バレッツ/2010」のジャン・ピエール・ダルッサン。
イドリッサにブロンダン・ミゲル。
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社会問題となっている難民問題を扱ってはいるものの、目線がとても優しい。フランスの港町ル・アーヴルを舞台に、靴みがきで生計をたてている初老のマルセルと、アフリカから不法入国した少年イドリッサとのふれあいを描く。
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