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2012-07-31

細田守監督『おおかみこどもの雨と雪』

注・内容、台詞に触れています。
細田守監督・長編最新作『おおかみこどもの雨と雪
脚本は奥寺佐渡子。キャラクターデザインは貞本義行。花の声を宮崎あおい、“おおかみおとこ”の声を大沢たかお。ほかに菅原文太、染谷将太、谷村美月、麻生久美子

物語・人間の姿で暮らす“おおかみおとこ”に恋をした大学生の花。やがて妊娠し、雪の日に女の子の、雨の日に男の子の《おおかみこども》を産む。姉弟は雪、雨と名づけられる。ところが、ある日突然“おおかみおとこ”が帰らぬ人に。遺された花は子供たちを人間として育てるか、おおかみとして育てるか悩み、山奥の古民家に移り住む。日々成長する快活な雪と内気な雨。小学生になった2人にそれぞれ転機が訪れる。(SkyBlue部分、goo映画より抜粋)

Ametoyuki

圧倒的強度(経年劣化しない意味も含め)を持つアニメーション。母親の物語、子育て映画というよりは寛容であることとか継承についてなど、いろいろ考えさせられた。

Memo1
始まって10分足らずで自分のことを「おおかみおとこ」であることを明かす、そして20分で死してしまう「おおかみおとこ」(ふいに襲ってくるシーンでちょっとショッキング)
そのわずかな時間の中で出会い、デート、暮らし始め、出産、育児、突然の死が慈愛あふれる描写で描かれる。
生まれたばかりの雪の指がおおかみおとこの指を掴む。
そして、この台詞
「やさしい子に育つといいな…」
この冒頭部分があるからこそ"花"の「ちゃんと育てる」決意がブレることなくラストまで続いていくことがわかる。
暖色と寒色。色彩設計。髪の毛の色分け(幼少期と小学校高学年時で変化していく)。
子供の時は父親のセンシティブな部分を受け継いでいる"雨"。絵本に描かれていたことを気にして母親に「おおかみはどうして人間に嫌われてるの」と聞いていた"雨"はやがて自然の中で戯れるうちに逞しく変化をとげる。逆に快活で明るく絶対、おおかみとしての自分を選ぶと思っていた"雪"は「もう絶対おおかみにならないって決めたの」と人間としての生活を決意する。("花"のスタンスは引っ越したことも含め、あくまでもどちらとして生きるのかはふたりに選んでもらうこと)

「もっといろいろと聞いておけばよかった…」"花"がポツリと告げる台詞。
 
小学校に行きたいという雪に花が教えた"おまじない"
「おみやげ3つたこ3つ」
高学年になってもずっと唱えていたことがわかる件が用意されていて、このあたりの健気さもちょっとグッとくる。
転校生の草平の何気ない一言。
「お前のところ犬飼ってない」
「どうして」
「なんかケモノ臭い」
それでなくても多感な時期に「なんか臭わない」はキツイと思う。ましてずっと隠してきたことについて(おそらくは)ほのかに気になっている男の子に言われたわけだから。(自分は"おおかみこども"であることと向きあうことにも)
そして避ける雪に「どうして避けるんだよ」とくってかかる草平に、ついに…。
そしてエポックとなるシーン
豪雨で学校に取り残されたふたり、雪と草平(草平は自ら)。
教室。揺らぐカーテン。雪のシルエット
「おおかみに襲われたって言ってたけど、あれは、わたし…」
「知ってた」
「わかったからもう泣くな」
切なくも美しい場面。
監督のインタビューや奥寺佐渡子さんとの対談でも語られているとおり相米慎二監督「台風クラブ」を想起させる秀逸なシーン。

Memo2
ふたつのポイント
・13年間の衣装変化。アニメーションでは珍しい(と、いうかあまり聞いたことがない)スタイリストととして参加した伊賀大介さんによるもの。
・雨と雪と観客に向けて"ひとまえでおおかみにならないでね"劇中絵本を描いたのは森本千絵さん。パッと雰囲気が変わって映画の中のアクセントに。
折々に登場する図書館(大学、公共、田舎に移ってからは移動図書館と)。本棚や読んでいる本の変化も面白い。(「ライオンと魔女」や「森は生きている」とか確認できた)

映画「おおかみこどもの雨と雪」
http://www.ookamikodomo.jp/index.html

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2012-07-29

大林宣彦監督『この空の花 ―長岡花火物語』

この空の花 ―長岡花火物語
出演 : 松雪泰子、髙嶋政宏、原田夏希、猪股南(新人)、富司純子、寺島咲、尾美としのり、柄本明、他多数!
監督:大林宣彦


物語・地方紙記者の遠藤玲子は、新潟県長岡市で教師をする昔の恋人・片山健一から、生徒が創作した舞台と花火を見てほしいという手紙を受け取り導かれるように長岡を訪れる。中越地震を乗り越え復興し東日本大震災の被災者を迅速に受け入れた同地の様子を新聞記者として取材したい思いのあった玲子は行く先々で出逢う人々と数々の不思議な体験を重ねてゆく。そしてそのほとんどが実際に起きた長岡の歴史と織り合わさっていた……(Darkgreen部分、goo映画より抜粋)

Konohana

Memo
いやー、噂には聞いていたけれど圧倒的な情報量の多さにビックリ。特にテロップの出し方は斬新(TVのテロップとは意味が違っていていいなぁ)。台詞だけだと同音異義語になってしまうものも文字として見せられると(意味の取り方を間違えることもなく)更に見ることと読むことの二重のメッセージにハッとすることしきり。
これはもしかして夢?そう思わせるほどの幾重にも重なるイメージ。時間も空間も形式も映画さえも超えてしまった体験。考える余裕も与えない密度。戊辰戦争、太平洋戦争での長岡大空襲、中越地震、東日本大震災、7月豪雨…。それらを結びつける大輪の花火。

本作を見終わって、ふと、画家の横尾忠則さんが公開制作で200号サイズの油絵を描いている姿を思い出した。速さとか、迷いのなさとか、自由さ、とか。
新人の猪股南が演ずる元木花。一輪車で縦横無尽に駆け巡る。あちら側もこちら側も関係なく越境し浮遊する。
"みんなが爆弾なんかつくらないで きれいな花火ばかりつくってたいら きっと戦争なんか起こらなかったんだな"
「たま」でパーカッション、ボーカルを担当していた時から山下清スタイルでドキッとさせられていた石川浩司がそのものズバリご本人を演じたのが本作というのも素晴しい。実際にあった花火師とのエピソード、そして有名な作品「長岡の花火」

5台のデジタルカメラに5人の撮影カメラマン。そして一台のパソコンでの編集。まさに8ミリカメラを玩具の如く愛でて扱われていた大林監督の新たなる出発点がこの作品。是非、劇場で体験を(長く上映を続けていきたいと監督がインタビューで語っていたので、まだ公開されていないところでも見られる機会があると思います。ホントに映画が終わったときが"おわり"ではない。そんな現実とも陸続きの作品だと思います)。

映画『この空の花 ―長岡花火物語』
http://konosoranohana.jp/

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2012-07-27

クリストファー・ノーラン監督『ダークナイト ライジング』(The Dark Knight Rises)

クリストファー・ノーラン監督ダークナイト ライジング
注・内容、台詞、ラスト他触れています。今回は特に鑑賞後に読まれることを前提にメモしています。
The Dark Knight Rises
DIRECTOR : Christopher Nolan
CAST : Christian Bale, Anne Hathaway, Tom Hardy, Marion Cotillard, Joseph Gordon-Levitt, Michael Caine, Gary Oldman, Morgan Freeman

Tdkr1

Memo1
マリオン・コティヤール演ずるミランダ。ベイン(トム・ハーディ)が「影の軍団」を率いていたラーズ・アル・グール(リーアム・ニーソン)の子供と思いきや実は彼女こそが本当の計画の実行者だった(撮影中に公開されていた写真でややネタバレ感はあったが…←特に衣装)
ラーズ・アル・グールが渡辺謙→リーアム・ニーソンだったようにベイン→ミランダ(タリア・アズ・グール)、という構図がノーラン的グリッド世界っぽいと勝手に思ったり
核爆弾を持ってザ・バットで飛び立とうとするラスト。
ゴードン(ゲイリー・オールドマン)へのこの台詞
「座り込んでいる少年に上着をかけて励ます者のことだ」
(はっと気づく)
「ブルース・ウェイン?」
両親を殺害され警察署で怯えているウェイン少年とゴードンの出会いのシーン(回想)がカットインされグッとくる場面。
キリアン・マーフィが出てきた時によぎったのは「バットマン・ビギンズ」「インセプション」に続いて、またしてもズタ袋を被せられるのでは?と一瞬ドキッとして期待もしたり…w
キャッツアイよろしく女怪盗セリーナ・カイル"キャット・ウーマン"(アン・ハサウェイ)が登場からバットマンとタッグを組んでの陸空攻防戦まで見どころ多数!
で、キャットウーマンの猫耳がゴーグル仕様でとてもよいなぁー←これ発売したらいいのに(って、もしかして既にあるのかな?)
フォックス(モーガン・フリーマン)がザ・バットをブルースウェインに見せたときのひと言。
「黒にもできます」
「ユリイカ」のノーラン監督特集でのインタビューでズームレンズを使わないことなどテクニカルなことについてインタビューに応えている(貴重!)
タイトルデザインはSCARLET LETTER(エンドタイトルお馴染みの黒バック白文字)

Memo2
本作の原題が「The Dark Knight Rises」ヘミングウェイの「日はまた昇る」の原題が「The Sun Also Rises」この辺りベインの牢獄「奈落」から這い上がるときにも使われていたRiseと併せて考えると興味深い。もちろんビギンズと対をなすライズスでもある。
闇の騎士は死して(と、いうことになっている)ゴッサムシティを救った"ヒーロー"として銅像が建てられている。また前作「ダークナイト」で自らデント殺しの濡れ衣を被っていたバットマンの汚名を晴らしたのがベインの演説という構造も見事。逆にゴードンはそのことを隠していたことを晒されることとなる。

Memo3
アルフレッド(マイケル・ケイン)が本編で語っていた夢のシーンがラストで。カフェにいるアルフレッド。ふと前の方の席を見るとウェインとセリーナ(正面からではないので断言できないけど、あのネックレスをつけている)が。目線が合うウェインとアルフレッド。
ザ・バットに半年前に自動操縦のための修正パッチが施されていた。
ゴードンの窮地を救った警官ジョン・ブレイク(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)。彼の本名がロビンと判明。そしてウェイン邸宅地下の本拠地にたどり着くニヤリとさせられるラスト。
そして新調されていたバットマンを呼ぶためのサーチライト…

見事なる大団円。そして円環の着地点。

映画『ダークナイト ライジング』公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/batman3/

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