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2013-01-22

変わるもの、変わらないもの『東京家族』山田洋次・監督

監督50周年を迎えた山田洋次監督81本目の作品。名匠・小津安二郎監督の名作『東京物語』をモチーフとした(現在)の家族の物語『東京家族』。出演は橋爪功吉行和子西村雅彦夏川結衣中嶋朋子林家正蔵妻夫木聡蒼井優。音楽は初の山田組参加となる久石譲

物語・東京で暮らしている3人の子どもに会うために瀬戸内海の小島から上京してきた周吉ととみこ夫妻。だがそんな両親を自分たちの忙しさや苦手意識のためにおろそかにしてしまう。そして…

Tokyo

Memo
変わるもの、変わらないもの、変えたこと、変えなかったこと、言わせたこと、言わせなかったこと。本作は最初、予想していた「東京物語」を現代の設定に置き換えただけの話ではなかった。山田洋次監督はなんと大胆ですごいことをやってのけたのだろう。そう、これはリメイクでなく「東京物語」の骨格を借りた現代の家族の物語(宣伝コピーみたいですが^_^;)。東京タワーや新幹線の無かった昭和20年代後半が舞台の「東京物語」。それらはスカイツリー、新幹線(それも品川駅に停まっている)、はとバスツアーで案内される秋葉原、(「もう帰りたくなったんじゃ、ありませんか」の熱海での有名なシーン)は横浜インターコンチネンタルホテル前へと置き変わっている。それは「東京物語」では戦死した次男昌次と未亡人紀子(原節子)が、いかにも現代的なそして(震災後という意味も含めて)本作のポイントでもあるカップルの昌次(妻夫木聡)と紀子(蒼井優)へと変更されている。
戦後ということが(静かに)描かれていた「東京物語」。「東京家族」では東日本大震災後という部分が何箇所かに描かれていた。(壁に掛けられたカレンダーが2011年。昌次と紀子が知り合ったのが震災後のボランティアで。周吉が亡くなった友人の妻から聞く「はい、今年の3月11日に…」「母親が陸前高田市で」の台詞)
言わせた台詞→禁酒をしていた周吉が居酒屋でつぶやく「いつからこの国はこんなことになってしまったのか」(これは必要な台詞だったのか、どうかは微妙なところだが、まったく愚痴のようなことを言わない人がボソッということもあるかもしれない、などとも思う)
「東京物語」を幾度となく見ているので逆に見たことがない人がどういう感想を持つのか興味深い。(逆に本作を見た後に「東京物語」を見た場合も)。これは今後の映画評、ブログ記事などが楽しみなところ。
Y字路に建つ、次男・昌次(妻夫木聡)の住むアパートの佇まいがイイ(駐車場には古いフィアットが)。その角をクルリと紀子(蒼井優)の自転車が回ってくる。こういうショットが印象的。Y字路→(アドバイザーに横尾忠則さんの名前があった)。ちなみに昌次の部屋にもポスターが貼られていた(もっと、ちなみに居酒屋の外に「東京家族」の横尾さんデザインの「東京家族」Y字路版ポスターが)
蒼井優演ずる紀子が登場した時から突如、物語の速度、雰囲気が変わる。昌次が「こんな女性と巡りあう事は二度と無い」と思って何回かのデートの後、すぐにプロポーズ(予約)したと語っていたが、その立ち居振る舞いや存在に周りも魅了されていくのがよくわかる。

ラスト。背中を丸めて、ひとり爪を切る周吉。有名な「東京物語」のラストシーン(あの窓越しに横切っていくおばさんは出てきませんが)へのオマージュ。しかし、「東京物語」での無常観ではなく、どこか清々しささえ感じ入る鑑賞後感だ。
周吉が紀子に昌次のことを語った台詞
「あいつは母親似で母親の優しいところを引き継いたんだなということが、よくわかった」

映画『東京家族』公式サイト
http://www.tokyo-kazoku.jp/

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2013-01-12

『LOOPER/ルーパー』ジョセフ・ゴードン=レヴィット、ブルース・ウィリス

注・内容、重要なプロット、結末に触れています。

物語・2044年。未来(2074年)から転送されてくるターゲットを始末する殺し屋のジョーの前に、30年後の自分自身が送られてきたことから始まるスリリングなSFアクション。失敗の許されない殺し屋が未来の自分を前にしたときに躊躇ってしまった隙をついて、未来から来たジョーはある目的を遂げるため逃走する……。

現在のジョーをジョセフ・ゴードン=レヴィット、30年後の未来から来たジョーをブルース・ウィリスが演じる。他にエミリー・ブラントポール・ダノジェフ・ダニエルズ。監督・脚本は「ブリック」でもジョセフ・ゴードン=レヴィットと組んだライアン・ジョンソン。(以上goo映画より抜粋)

Looper_j

Looper_b

Memo
公開前から"面白い"と話題になっていたので、なるべく情報を遮断しての鑑賞。細部に「あれ?」というところがあっても、いろいろ詰め込みすぎて整理されていないところがあったって、そんなことは別にいいんじゃない、と思わせる不思議な魅力的ある作品。
大きく分けると3ブロック。前半がルーパーの仕事、その組織、2044年の近未来社会。中盤に未来から来た自分と遭遇(実はルーパーを送り込む未来の犯罪組織の独裁者レインメーカーを探し出しに来た←レインメーカーに妻を殺され、それを阻止するため)、未来2074年に起きる出来事、逃亡と追跡、それを更に追う組織と元締めエイブ。後半はジョーが逃げ込んだ農場でのサラ(エミリー・ブラント)とその息子シドとの出会い。レインメーカーの正体(実はシドの未来の姿・2044年に人々に備わり始めたささいな力"いわゆるテレキネシス的な能力"の強大なパワーを持っている←「ブリキの太鼓」とか「オーメン」とか、いろいろ想起)。未来と今の自分が対する決着(シド=やがてレインメーカーに対してという意も)

ジョセフ・ゴードン=レヴィットの鼻の下&口元&眉毛スペシャルメイクの事を知らずに見たら、そういう顔って思われないだろうか…(などと危惧するほど、驚いたー)
その特殊メイクを担当したのはリック・ベイカーに師事していた辻一弘(既にアカデミー賞に2回ノミネート)。もちろん、このスペシャルメイクあっての全然似ていないふたりによる自分と対する自分なのだがジョセフ・ゴードン=レヴィットがブルース・ウィリスの喋り方、声のトーンなどを見事に再現していて、これがまた絶妙。

同僚だったルーパー、セス(ポール・ダノ)が未来から送られてきた自分を殺すことになったことに怖気付いて逃走。ルーパー監視役"ガットマン"から逃げてきたところを一時は匿うが、結局(自分が稼いできた報酬"銀"のために)組織へ引渡してしまう。そんなジョーにこういう台詞が投げかけられる「人のためにとか考えたことはあるのか」(←随分前の試写なので細部違うと思います)
そしてラスト。自分の存続(存在)ではなくシドの将来(未来の救済)を選びジョー(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)がとった行動はまさに…。

映画『LOOPER/ルーパー』公式サイト
http://looper.gaga.ne.jp/

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2013-01-01

New Year!2013 & 2012 BEST MOVIE

Cinema2013

2012年の10本
(2012年鑑賞リストから直感的に選んだ10本)
ミッドナイト・イン・パリ
フランケンウィニー
裏切りのサーカス
桐島、部活やめるってよ
ライク・サムワン・イン・ラブ
アルゴ
鍵泥棒のメソッド
おおかみこどもの雨と雪
ヒューゴの不思議な発明
別離
+1 この空の花 ―長岡花火物語
(twitterで先に上記10本をツイートしてから気づいたこと→大林宣彦監督「この空の花 ―長岡花火物語」昨年公開作品扱いと思い込んでいて見たのは2012年だけどリストから外れていたため選びそこなっていました。なので+ONE)
※ベスト10に選びながらブログ記事を書いていない作品→4作品あり

テレビドラマ (2012年) 黒沢清監督「贖罪」是枝裕和監督「ゴーイング マイ ホーム」渡辺あや脚本「カーネーション」(←完結が2012年3月31日)

映画(2012年・旧作から5本)
カリフォルニア・ドールズ」(爆音上映年末ギリギリ滑り込み)、「白夜」(35mmニュープリント上映・セーヌ川をゆく船、夢のよう)、「レベッカ」(午前十時の映画祭・昔、インターナショナルプロモーションの配給1本立てで見て以来幾度となく見ている)、「稲妻」「幻の馬」(共に大映70周年記念特集上映として鑑賞。「幻の馬」はソフト化もされていないので、まさに幻)「旅芸人の記録

2012年ベストタイトルシークエンス
「Blur Studio」制作の「ドラゴン・タトゥーの女」あとゲイリーとウォルターの成長を描いた秀逸なオープニング「ザ・マペッツ」こちらの制作はPIC AGENCY。お馴染みのPROLOGUE FILMはヘルプもアルゴもシャーロック・ホームズ、他と例年通り多作

2012年ベスト衣装デザイナー
ジェーン・エア」マイケル・オコナー。「アーティスト」マーク・ブリッジス(ポール・トーマス・アンダーソン監督作品衣装多し2013年公開「ザ・マスター」も)。あと「裏切りのサーカス」のジャクリーン・デュラン(ポール・スミスがクリエイティブサポートで参加) で、映画ではないけど「SHERLOCK」カンバーバッチのコート(ベルスタッフ)

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