タイトルデザイン 32・スティーブン・スピルバーグ監督『リンカーン』
ピュリッツァー賞作家ドリス・カーンズ・グッドウィンの同名ノンフィクションをもとにスティーブン・スピルバーグ監督が映画化した『リンカーン』主演は本作で3回目のアカデミー主演男優賞に輝いたダニエル・デイ=ルイス。出演はトミー・リー・ジョーンズ、サリー・フィールド、ジョセフ・ゴードン=レヴィット、ジェームズ・スペイダー、デヴィッド・ストラザーン、他
※Memo1
●脚本が『ミュンヘン』(「フォレスト・ガンプ」「インサイダー」のエリック・ロスと共同)を書いた劇作家のトニー・クシュナー。
●撮影のヤヌス・カミンスキー、プロダクション・デザインのリック・カーター、編集のマイケル・カーン、音楽のジョン・ウィリアムズとまさに磐石のスピルバーグ組による作品。
●(いわゆる)伝記映画ではなくリンカーン最晩年(しかも1865年1月の約一ヶ月)の合衆国憲法修正13条成立に絞り込んだ人間ドラマの妙。前半がとくに淡々と正確なシンコペーションを打ち続ける音楽のよう。中盤辺りで、これが逆に心地良くなるかならないかで映画全体の印象が変わるかな、と感じた。
●共和党と民主党の2党対立の構図ではなく共和党の中にも保守派と急進派と呼ばれる派閥があったりと今と変わらないなぁと感じた政治の世界。その急進派の先鋒スティーブンス(カツラの頑固な政治家、と自分で言ってましたね←あと、少し懐柔したあとに「彼もいい政治家になってきたわね」と評されるあたりもちょっと面白い)を演じたトミー・リー・ジョーンズ。twitterで早くから今回の得な役回りなどと評されていた。何故、彼はこんなに必死に即時奴隷解放条項盛り込みに拘ったのかがわかるシーンはいかにもスピルバーグ監督らしい描き方。
●いくつかの場面。
打電室でのリンカーンと(使節団についての密約的重要な内容)打電する若者ふたりとの会話(台詞)。
リンカーンに
「私たちはこの時代に生きてふさわしいのでしょうか」
そのカメラワーク(遠景のショットからゆっくりとした顔へのクローズアップ)やそして切り替えして繋いでいく編集リズム、スピルバーグならではの詩的なシーン。堪能!
●もうひとつは13条へ議決投票の日、ひとり静かに待つリンカーン。柱時計の音がコチ、コチ、コチ、コチと劇場後方から全体を包み込むように広がり(天井が高い劇場だったので余計に効果を感じた)、そして決定の瞬間の空砲と歓声の音が重なる。ホワイトハウス前の群衆と青空。
※Memo2
●タイトルデザインは最近公開映画のかなりの割合で"End Title"を制作している Scarlet Letters
あまりによく目にすることからか、さすがにこうコメントしています「私たちはエンドタイトル専門の制作工房という訳ではありません」と。
Scarlet Letters
http://www.scarletletterstitles.com/Film-Titles
映画「リンカーン」オフィシャルサイト
http://www.foxmovies.jp/lincoln-movie/
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