ケン・ローチ監督『天使の分け前』(The Angels' Share)
ケン・ローチ監督『天使の分け前』(The Angels' Share)、脚本は監督作では、お馴染みポール・ラヴァティ(←「カルラの歌」「麦の穂をゆらす風」多数)。
"ウイスキーなどが樽の中で熟成されている間に、年2%ほど蒸発して失われる分のこと。10年もの、20年ものと年数を重ねるごとにウイスキーは味わいを増し、それとともに天使の分け前も増していく"
物語・スコッチウイスキーの故郷スコットランド。育った環境のせいでケンカ沙汰の絶えない若者ロビー(ポール・ブラニガン)は、恋人レオニーと生まれてくる赤ん坊のために人生を立て直したいが、トラブル続き。務所送りの代わりに社会奉仕活動を命じられ、現場の指導者でウイスキー愛好家でもあるハリー(ジョン・ヘンショー)と、3人の仲間たちと出会う。ハリーにウイスキーの奥深さを教わったロビーは、これまで眠っていた“テイスティング”の才能に目覚め始める。そして…(以上公式サイトより抜粋)
※Memo
●2012年カンヌ国際映画祭・審査員賞受賞作(つい先日、今年の同賞を是枝監督が受賞したばかり)。
公開終了前に滑りこみで見て、よかったー、と"声に出して言いたい愛すべき作品"
●予告編を見た印象からテイスティングで道を拓いていく成長物語かと思っていたけど、そこはイギリス映画、そしてケン・ローチ監督。普通のいいこちゃんに更正していくプロットではなく「ホットロック」みたいな、ちょっと(痛快にしてお茶目系)泥棒ストーリー(ほんのり人情話)になってる辺りが楽しい。
●「麦の穂をゆらす風」とか「SWEET SIXTEEN」と同じ監督とは思えないような展開。でも書きながら「エリックを探して」も、そうだなぁ、とかチームで云々(今回は"スカートを履いた泥棒さんチーム"w)話も多い監督さんですね。
●主人公ロビーが手に入れていたのは、思いもよらぬ"ティスターとしての鼻の発見"もそうだが実は社会奉仕活動で知り合った仲間と、よきメンター(ハリー)だったんだなぁ、ということが途中からじわっと浮かび上がってきます(その仲間、ちょっと油断すると盗みをはたらいてしまうモーや、大事なところでドジってしまうライノ、アルバートなど困ったちゃんが多い←で、モーが蒸溜所見学の際に盗んだウィスキーを見て「ハリーさんが困るだろ」といつの間にやら注意するようになっているロビー)
●と、言いつつ100万ポンドの樽入り超高級ウイスキーを(丸々一樽ではなく数本)バルブレア蒸溜所から盗みだす大作戦(チューブを使った、かなりちゃちい方法)を行う事となるロビーと仲間たちではあります。(でもスコットランド北部の風景と相俟って、どこかのどかで憎めない悪さといった感じがいい)
●ウィスキーを味わい楽しむことが趣味のハリーは質素ながらも人生も楽しみ味わい深いものとした生活だ。そんな彼に最後の最後に本当の"天使の分け前"がやってくる粋なラストに思わずニンマリ。
※蛇足ながら
原節子さんとケン・ローチ監督って同じ誕生日なんだと発見(それを言うなら嵐のニノも麻生久美子さんもでしょー、とツッコミが入る)
映画『天使の分け前』公式サイト
http://tenshi-wakemae.jp/
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