テレンス・マリック監督『トゥ・ザ・ワンダー (TO THE WONDER)』
『ツリー・オブ・ライフ』に続く『天国の日々』『シン・レッド・ライン』のテレンス・マリック監督最新作【トゥ・ザ・ワンダー (TO THE WONDER)】
物語・ニール(ベン・アフレック)は旅行で訪れたフランスのモン・サン・ミッシェルで、シングルマザーのマリーナ(オルガ・キュリレンコ)と出会い、付き合うことになる。アメリカで一緒に暮らし始めたふたりだったが、やがて心が離れていくように。そんなある日、ニールは学生時代の友人ジェーン(レイチェル・マクアダムス)と久しぶりに会い、やがて彼女に心の安息を感じるようになり……。
※Memo1
●カメラに向かって廻る躍動する遠ざかる、ブランコ、手のひら太陽かざし、揺れるカーテン窓越し自然光、マジックアワー、そして「天国の日々」を思い起こさせるシーンなどお馴染みのマリックトーンだが非常にすっきりしている。開巻、モンサンミッシェルから始まるグレイッシュなブルートーンから黄金色のオクラホマまで際限なく続く映像にうっとり。(あ、実は)オルガ・キュリレンコに(うっとり)見とれていて2時間があっという間(とも言えるぐらい、ある種ミューズ)。
●愛の覚醒(めざめ)から終焉、そして再生まで
愛について語られる幾つもの言葉。
「何故 愛は憎しみに変わる?」
「強すぎる愛は不安を与える」
「私の中に2人の女が
ひとりはあなたを深く愛してる
もうひとりは地上に引きずり下ろされる」
「新生児のように、私は目を開く。そして溶ける。永遠の闇に光を放ち、炎のなかへ落ちてゆく」
ひとりの男とふたりの女性。悩みを打ち明けられるも自らも自分の使命に逡巡している牧師(ハビエル・バルデム)。
●映っているもの、被さる声(モノローグ、ボイスオーバー、ナレーション)、それを捉える観客、ジョハリの窓ではないがそれらは決して一致することはないかもしれない。ただ、その映像に五感(或いは第六感も含めて)で感応すればよいのだ。読みとることより委ねること。
●エンドクレジットの最後の最後に重なる電車の音。(これは出逢い、もしくは1番輝ける思い出のシーンに関係?)。ふとオリヴェイラ監督「ブロンド少女は過激に美しく」のラスト、列車ショット(音も含め)を想起した。
●前作「ツリー・オブ・ライフ」から宇宙の起源、恐竜パートなどの部分を除いた感じに近いと評される「トゥ・ザ・ワンダー」。実はまだ見ぬポスプロ中のIMAX「Voyage of Time」(ナレーションがブラッド・ピット、エマ・トンプソン)と、もしや対(つい)?
●ラスト、かぶさる言葉は。
「愛に溢れている」
「Merci (ありがとう)」
※Memo2
●タイトルデザインがPrologue Films、しかもカイル・クーパー名義になっていてビックリ。派手なエフェクトがかかったモーショングラフィックではなくBlack on Whiteの文字のみによるシンプルなもの。このエンドクレジットにすっと立ちあがるタイトルロゴが美しい。
●クラシック音楽の使用(部分的な使い方が絶妙)。ラフマニノフ「死の島」、ワーグナーの舞台神聖祭典劇「パルジファル」前奏曲やレスピーギ「リュートのための古風な舞曲とアリア」など多数。
映画『トゥ・ザ・ワンダー』公式サイト
http://www.tothewonder.jp/
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「さて、
今日はチャチャッと喋っちゃうかな」
----えっ。あのテレンス・マリック監督の映画でしょ。
そんなことしちゃっていいの。
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「(汗)
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「To the Wonder」 2012 USA
小説家志望のアメリカ人ニール、ウクライナ生まれのフランス人シングルマザーのマリーナ、そしてニールの幼なじみジェーンが織りなす神秘的なラヴ・ストーリー。
ニールに「アルゴ/2012」のベン・アフレック。
マリーナに「パリ、ジュテーム/2006」「007/慰めの報酬/2008」「故郷よ/2011」「陰謀のスプレマシー/2012」のオルガ・キュリレンコ。
ジェーンに「幸せのポートレート/2005」「あぁ、結婚生活/2007」「消されたヘッド... [続きを読む]
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映画「トゥ・ザ・ワンダー」を鑑賞しました。
男とシングルマザーの女が出会い付き合う
アメリカで一緒に暮らし始めるが やがて心が離れていき・・・
こんなことを書いたが、ストーリーはないといったら大袈裟か
愛を、そして その愛の移ろいを見せていく
ただ それだ...... [続きを読む]
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