ニール・ジョーダン監督『ビザンチウム(BYZANTIUM)』"私の物語は決して語ることができない"
注・内容、台詞に触れています。
モイラ・バフィーニ原作の舞台「A Vampire Story」を映画化。ニール・ジョーダン監督によるヴァンパイアストーリー(「狼の血族」「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」と共に三部作の体をなす)『ビザンチウム(BYZANTIUM)』出演はシアーシャ・ローナン、ジェマ・アータートン、サム・ライリー、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ
物語・16歳の少女エレノア(シアーシャ・ローナン)は、彼女の保護者である8年つ上のクララ(ジェマ・アータートン)と長年定住することなく街から街へと放浪する日々を送っていた。そんなある日、海辺のリゾート地に建つゲストハウス「ビザンチウム」にたどり着く。そこでクララは難病のため余命わずかの青年フランクと出会い、恋に落ちてしまう。そして…。
※Memo
●「私の物語は決して語ることができない」
書き終えては捨てられる"エレノアの物語"
冒頭、その物語(ノート紙片)を拾った老人がエレノアを招き入れる。
「人生には秘密を語るべき時が一回はある」
拾ったノート紙片の何枚かがアルバムに貼られている。
(エレノアがヴァンパイアであることに気づいている)
「準備はできてるよ」
「もう十分すぎる時間を送ってきた」
すーっと伸びるエレノアの爪
(この牙ではなく爪が伸びるアイデアは秀逸。それがゆえに心寄せ合うも身体を触れ合うこと自体が危うくなるのだ←そのようなシーンが後半に)
●エレノアが語る物語(モノローグとしてかぶさる)
姉妹のように見えるが実は母親であり守護者でもあるクララ。掟(女性はヴァンパイアを生みだしてはならない)を破ったことから、その血族(教団)に200年追い続けられている。
「母は私に3つのことをしてくれました。」
「ひとつは私が生まれた日にわたしのことを手放した。もうひとつは孤児院にいるわたしを養育費を払って育ててくれた。そして最後のひとつは決して語ることができない物語を私に与えたこと」
●(妖艶なる男性ヴァンパイアが主人公の)「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」と対(つい)を為している、ある種の告白形式。
また、ふたりのヴァンパイアの特徴も対(つい)。一瞬の戸惑いもなく人を襲う、強く激しい"動"としてのクララ(外見は妖艶)、静かに慈しむように死を向かい入れる準備のできた人からのみ血を得る"静"エレノア(外見は清楚)と全くもって対照的。
●遡ること200年。キャプテン・ルーベンとダーヴェル、ふたりの将校。忌まわしき災いを届けるルーベン(クララ、エレノア母娘共に襲い娼婦としてしまう)と身体が弱って病をわずらい不死の体を得ようとある場所について調べるダーヴェル(結局、ふさわしき者の匂いを嗅ぎつけて近づいてきた血族から地図をもらい神殿のある島でヴァンパイアに)。このふたりとクララが出会ったことから全てが始まるようにエレノアがフランクと出会うこと(惹かれ合うこと)によって保たれていた何かが一気に動き出す。時間軸の切り返しがやや判りにくいがラストまで進むと全体が読み取れる。クレアとダーベル、エレノアとフランク。2組のヴァンパイア(フランクはエレノアに導かれて神殿のある島へダーヴェルは一緒に追ってきたもうひとりのヴァンパイアを始末しクレアと共に行くこととなる)が対を為す。
それぞれのモノローグ。
「わたしたちには時間がある」(クレア)
「もうひとつの物語がはじまる」(エレノア)
●そのフランクとエレノアの出会った時の台詞。
(本編中少しだけ微笑を持つシーン)
「ピアノはどれぐらい練習したの」
「200年よ」
●ヴァンパイアになる神殿(祠)のある島、ホテル・ビザンチウムの建つ海辺の風景、上下二階層になった遊歩道などロケ地選定含めての醸しだされる空気感が素晴しい。
●ヴァンパイアストーリーということで当然のことながら赤がキーカラーではあるけれど、見事な夜間撮影も相まって全体の色彩トーンなどとっても好み。撮影ショーン・ボビット(「SHAME -シェイム-
」「ひかりのまち」←街中のシーンが美的.「オールド・ボーイ」リメイクも)、あと音楽が「パンズ・ラビリンス」のハビエル・ナバレテ!
【公式サイト】映画『ビザンチウム』
http://www.byzantium.jp/
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