フランシス・F・コッポラ製作総指揮、ウォルター・サレス監督『オン・ザ・ロード (ON THE ROAD)』人生のすべては路上にある
ジャック・ケルアックが1957年に発表した「路上/オン・ザ・ロード」をフランシス・F・コッポラ製作総指揮、ウォルター・サレス監督が8年がかりで映画化した『オン・ザ・ロード (ON THE ROAD)』出演はサム・ライリー、ギャレット・ヘドランド、クリステン・スチュワート、トム・スターリッジ、キルスティン・ダンスト、ヴィゴ・モーテンセン、エイミー・アダムス、他
物語・父親の死を引きずり鬱屈とした日々を過ごす青年作家サル・パラダイス(サム・ライリー)。ある日、彼は内省的な自分とは正反対である奔放な男ディーン(ギャレット・ヘドランド)とその幼妻メリールウ(クリステン・スチュワート)と知り合う。社会規範にとらわれずにセックスやドラッグをむさぼるディーンの生き方、メリールウの美貌に惹き付けられたサルは、彼らと一緒にニューヨークを飛び出して各地を放浪することに。(Brown部分、シネマトゥデイより抜粋)
※Memo
●「ディーンに出会ったのは父が死んでからそれほど後ではなかった」
主人公サルは父親を亡くし、ほどなく出会ったディーンもまた父親が行方不明という境遇だった(あまり執拗に描いていないが、ほぼ全体に父権の影が無い)
(まわりから作家先生と呼ばれていたサル)
目の前にタイプライター
まだ書けない
まだ打てない
まだ始まらない
まだ降りてこない
旅の途中、ひたすら書き綴られるメモ、メモ、メモ。
紙を買うお金が無くなった時は広告チラシを拾い、その隙間を埋めるように書きとめているシーンがあった)。とにかく溢れんばかりのメモ、刻み込まれる言葉たち。
実際の小説「路上/オン・ザ・ロード」も起承転結型の物語を追う、紡ぐタイプではないので、この描写によっていかに生まれていったかがよくわかる。
映画終盤、わずか3週間で書き上げたと言われている執筆開始時点のシーン。タイプ用紙を巻物(スクロール版)のように繋ぎあわせてセットアップするところが描かれる。そして、蓄積されたエネルギーが爆発するかのように打たれるタイプライター。
これはメイキング・オブ・小説「路上/オン・ザ・ロード」の物語でもある。
●モデルとなった人物は?
・サル=ケルアック本人
・ディーン=ニール・キャサディ
・カーロ・マルクス=アレン・ギンズバーグ
・オールド・ブル・リー=ウィリアム・S・バロウズ
バロウズを「裸のランチ」に出演したヴィゴ・モーテンセンが演じていて、ベタな言い方をすると"おいしい役"。しかも登場の仕方含めてかっこ良く描かれている。さらに妻、ジェーンを演じたエイミー・アダムスが「ザ・マスター」の時に見せた目つきと同じような眼で登場する(このあたりもスゴイ)。
カメオ出演のスティーヴ・ブシェミが(これこそ"おいしい役"かw)出てきて、しばらくしたら、あららというシーンに。(でも、ここはディーンの事を知る上で重要なポイントにもなっている訳ですが…)
●サルが常に持ち歩いているプルーストの"失われた時を求めて"「スワン家のほうへ」。劇中、その書影がいろいろなところで登場する。テーブルの上、車中で読む姿、メリールウが読んで涙ぐむシーン、そしてサルとディーンとカーロが出会ったニューヨークでの別れ際に撮った写真が2つに分けられて半分はディーン、そして半分はサルの持っていた「スワン家のほうへ」へと挟まれる。この写真はラスト、その身なりからも判る通り以前の場所から抜け出たサルと変わらないままのディーンとの再会シーンの後、1枚となって合わさり物語の終を告げる。
●撮影が「モーターサイクル・ダイアリーズ」のエリック・ゴーティエ「Aaton Penelope」での35mmフィルム撮影。鑑賞はデジタル上映だったので、是非このフィルム版でも見てみたいものです。
●音楽が「ブロークバック・マウンテン」「バベル」と2年連続でアカデミー作曲賞を受賞しているグスターボ・サンタオラヤ。もちろん「モーターサイクル・ダイアリーズ」も。
●路上に出た若者たちは生き急ぎ、溢れ出る感性の放出を止めることはない。そして、それらの経験が小説や詩や音楽などへと昇華されていく。そんな、やがては終わるであろう"一瞬の夏"とでも呼ぶべき時間をジャズの旋律にのせて描き上げた。
※追記(excuseと蛇足)
●ケルアックの原作を読んで既にン10年。当時、拓郎→ディラン→ギンズバーグ→ケルアックとミーハー的にたどり着いた小説でもあり、ほぼ内容は覚えてい
ない上での鑑賞ということで映画に限っての感想メモとして記しています。(全くもって蛇足的に浜田省吾ツアーやってたら検索関連、紛らわしかっただろう
なぁ、などということも思ったり。ちなみにツアータイトルに「ON THE ROAD」を付けたのは1982年から)
映画『オン・ザ・ロード』公式サイト
http://www.ontheroad-movie.jp/
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『オン・ザ・ロード』 を観賞しました。
クリステン・スチュワート渾身の脱皮映画
【ストーリー】
父親の死を引きずり鬱屈(うっくつ)とした日々を過ごす青年作家サル・パラダイス(サム・ライリー)。ある日、彼は内省的な自分とは正反対である奔放な男ディーン(ギャレット・ヘドランド)とその幼妻メリールウ(クリステン・スチュワート)と知り合う。社会規範にとらわれずにセックスやドラッグをむさぼるディーンの生き方、メリールウの美貌に惹(ひ)き付けられたサルは、彼らと一緒にニューヨークを飛び出して各地を放浪する... [続きを読む]
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出演: サム・ライリー 、ギャレット・ヘドランド 、クリステン・スチュワート 、キルスティン・ダンスト 、ヴィゴ・モーテンセン 、エイミー・アダムス 、トム・スターリッジ 、アリシー・ブラガ 、エリザベス...... [続きを読む]
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ディーンと出会ったのは父の死の少し後だ。「何もかも終わり」とひどく落ち込み重い病気になってーやっと立ち直った頃だ。
から始まる本作。小説「路上ーオン・ザ・ロード」の始まりと同じだ。
1950年代のビート・ジェネレーション文学の代表作である「路上ーオン・ザ・ロード」が映画化されると聞き、そしてそれが私の生涯ベスト10に入るだろうと思われる「セントラル・ステーション」の監督ウォーター・サレスが監督すると知った時、正直一体どんな作品になるのか予想もつかなかった。
登場人物が生きている... [続きを読む]
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「On the Road」 2012 フランス/USA/UK/ブラジル/カナダ
母親とニューヨークに暮らす駆け出し作家のサルは父親の死に打ちのめされ虚脱状態。そんなある日、中西部からやって来たディーンに誘われ放浪の旅に出る…
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□監督:ウォルター・サレス◆サム・ライリー◆ギャレット・ヘドラ...... [続きを読む]
受信: 2014-01-12 17:50