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2013-12-29

ザッカリー・ハインザーリング監督『キューティー&ボクサー(CUTIE AND THE BOXER)』篠原有司男&篠原乃り子 "A LOVE STORY"

ニューヨークに在住する81歳の日本人前衛芸術家・篠原有司男と、その妻である篠原乃り子をめぐるドキュメンタリー『キューティー&ボクサー(CUTIE AND THE BOXER)』。監督はザカリー・ヘインザーリング

キャンバスをボクシングのグローブで殴るようにして絵を描く"ボクシングペインティング"で注目を浴びた芸術家、ギュウちゃんこと篠原有司男。1969年にアメリカへ渡った彼は、その3年後に美術の勉強にやって来た20歳以上も年下の乃り子と出会って恋に落ち、結婚する。学業を放棄したとして実家からの仕送りを止められる乃り子だったが、妻、アシスタント、母として有司男を支え息子のアレックス・空海の育児に奔走。59歳となって息子も成長したことから彼女は夫婦の道のりを題材にしたドローイングの創作に取り掛かる。(Grayishskyblue部分、シネマトゥデイより抜粋)

Catb

Memo
最初、あれ?ここは日本?と思うような住まい(本棚に多分「まんが日本の歴史」?が目立って並んでいる)からポンポン飛び交う会話とフットワークの軽さに驚き。
そしてふたりの愛の深さと芸術の業の深さとが綯い交ぜになった描かれ方にグルングルン。
「スピルバーグはジョーズだな」
「最初の作品が1番いいって、あなた言ってたじゃない」
ショートケーキに大きなキャンドル。80歳の誕生日。
肩を揉む。制作風景。手際よく魚をさばいて手巻き寿司。
個展へギャラリーに作品搬入などが次々と映し出される。
家賃が払えないぐらいに困窮した時にはチャッチャと作品を売りに行く。
「これ、売ってくる」
「日本で買いたいって人がいるから」
「ダメよ、そんな値段で売っちゃあ」
「100万ぐらいで売らないと」
すごくリアルに赤裸々に語る二人の会話。
どーみても入らない鞄に作品を入れようとすると「ほら、やっぱり無理だ」とピシリとひと言。けれどギュウちゃんを送り出す後ろ姿はとても心配そう。
ひとりで地下鉄の駅までかばん(キャリー)を持って行きササッと折り畳んで階段を降りていくパワー!
見てすぐに多分そうだろうなぁと思っていたら以前、北野武監督が『アキレスと亀』を撮った際に"ほぼ日"内の記事、北野武×糸井重里対談でふれられていました。武さんも70年代の篠原有司男さんのことを知っていた上で撮った映画だったのですね。
場面を繋ぐブリッジとして清水靖晃の音楽(サックス)がかぶさって、描かれる街や情景のショット。ニューヨーク映画としても秀逸。
最初、作家としての篠原有司男に焦点を合わせて撮り始めた監督がやがて乃り子にもポイントを合わせ始める。
分身であるキャラクター、そして自伝的物語でもある"キューティ"のドローイング。
黒と薄墨、モノクロで描かれたふたりの物語がアニメーションとなって動き出す。その合間に当時撮られたテレビドキュメンタリー映像などがカットバックされていく。
エンドクレジットは上記ポスター画像に使われているシーン。"ボクシングペインティング"で殴り合う姿。美しく愛おしいヴァイブレーション。
キネ旬1月上旬号で1970年代から、おふたりと交流があった小野耕世氏の映画批評に当時、初めてニューヨークで出会ったときのことなどが書かれています。

映画『キューティー&ボクサー』公式サイト
http://www.cutieandboxer.com/

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