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2013-12-18

山下敦弘監督、前田敦子主演『もらとりあむタマ子』

「苦役列車」に続いて山下敦弘監督前田敦子が再びタッグを組んだ『もらとりあむタマ子』脚本は盟友、向井康介。出演は康すおん鈴木慶一伊東清矢、中村久美、富田靖子

物語・東京の大学を卒業した23歳のタマ子(前田敦子)は、父親がスポーツ用品店を営む甲府に戻って来る。彼女は特に就職活動をするわけでもなく、ほぼ毎日惰眠をむさぼり、ぐうたらな日々を送っていた。父親に仕事を探せとせっつかれても聞く耳も持たず、たまに起きているときはマンガやゲームに没頭していたが…(Brown部分シネマトゥデイより抜粋)

Tamako

Memo
「ゼロ・グラビティ」が遙かなる宇宙から"Home"を見ているとするならば、こちらは半径1㎞周辺の"Home"を中心としたミニマム宇宙。しかしながら、どちらも傑作というところが映画の面白いところ。前作『苦役列車』でこれ以上ない見事な間(ま)で頭突きを食らわした前田敦子が本作でも予測不可能な方向からリアクションを返してくる。
ほぼ、あて書きによるオフビート感たっぷりの山下敦弘監督と前田敦子によるユルく見えて実は強度たっぷりの映画。
必ず言及される食べるシーン
と、いうかこれだけ食べ物出てきたらそれはそれは印象に残るはず。いきなりロールキャベツをガッツリと食べる、で、まだ口に残っているけど食べる、食べる(これなら三口で食べ終わる)
そのロールキャベツ、炊き込み御飯と秋刀魚、すいか、ゴーヤーチャンプルー、カレーライス、団子、春編の(オーディションを受けるためのダイエット中って分り易すぎるタマ子)温野菜レンジでチンまで、準主役のように出てくる出てくる。(この特別でない食事がまたイイ)

秋から始まるタマ子の物語はちょうど一巡して夏に終わる(はず)←はずですよね?(←続編、期待)
・秋〜映画冒頭
父親・善次が店の看板を出しマットを引き洗濯を干すシーンから。タマ子の下着も淡々と干す父。
とにかく見て見ぬふりなのか切り出せないのか、どうもモゾモゾしていた父だが、あまりのグータラぶりにさすがに切れ気味に怒る。
対してタマ子
「その時が来たら動く!」
「少なくとも……今ではない!」
・パシリのように写真撮影や後述の父親のお見合い相手偵察に行かされる中学生・仁。
1番笑った、そして劇場でウケていた会話
「恋に部活に大忙しなんだよね、誰かさんと違って」

その彼女と帰宅途中、タマ子の待伏せ
彼女が仁に。
「誰?」
「好きなの?」「脅されてるの?」
「違うよ」
「あのひと、友だちいないんだ」
・翌年の夏
父親が妙に嬉しそうなので、じーっと観察。
どうやら"ねるとん"(←と、会話から察知)してきたみたいだ。これは自分の居場所危機と思ったか、今でも連絡をとっている母親とのこともあるからなのかにわかに行動に出るタマ子。
駅前でアクセサリー教室をやっているらしいと聞きつけ第一陣、中学生・仁を偵察に。
続いて(仁の話ではイメージが浮かばなかったのか自ら)様子をのぞきに行ったところアクセサリー教室で体験授業を受けて話し込むことに。
(もしかすると、この人いい人かもと思い始めるタマ子。で、ここで父親のことをなんだかんだと話している姿に「どうして再婚しないのかなぁ、と思ったんだけど、なんかわかった気がする」「だって、タマ子ちゃん面白いもん」と先生)
このアクセサリー教室の先生役が富田靖子。
今年は奇しくも"さびしんぼう"富田靖子と"時をかける少女"原田知世という大林宣彦監督つながりのおふたりに、それぞれ別の映画でスクリーン再会。しかも、本作「もらとりあむタマ子」「ペコロスの母に会いに行く」共に傑作ということも嬉しい。

・お店の前のベンチで
アイスクリームを食べながら
(ダラーと足を前にだしてダレた感じで)
「え、彼女は?」「別れた」
「どうして」
「自然消滅」
「自然消滅って久々に聞いた」
・店の看板を出しマットを引き洗濯を干すタマ子
(ただし、冒頭父親と違って洗濯物カゴから父親のパンツが出てきた時は嫌〜な顔をして干す、で、干した手を洗ったばかりのタオルで拭く)
でも、これは一年経って(一周廻って)ほんの少しだけだけれども、1歩進み始めだしたことがわかる、いいシーン。
離婚して、23歳の娘にどう対処していいのかわからないけれど愛情いっぱいの父親・善次役の康すおん唯一のお友だち(笑)中学生、仁役の伊東清矢のふたりがうまくて、可笑しみいっぱい。
元々は音楽専門チャンネルからのオーダー「番組の合間に流す映像を前田敦子主演で」から始まって「秋冬編」だけ出来上がっていたものを追加&再構築した作品。撮影が違っているのはそのため。(この辺りの詳細はオフィシャルサイト・プロダクションノートに記載されています)

映画『もらとりあむタマ子』 オフィシャルサイト
http://www.bitters.co.jp/tamako/

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