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2014-01-29

テオ・アンゲロプロス監督『エレニの帰郷』イレーヌ・ジャコブ、ブルーノ・ガンツ、ミシェル・ピッコリ、ウィレム・デフォー "第三の翼"或いは"時の埃(The Dust of Time)"

テオ・アンゲロプロス監督の2005年に日本で公開された「エレニの旅」に続く20世紀を主題とした3部作の第2作『エレニの帰郷(The Dust of Time)』。
3作目の撮影中に交通事故により本作が遺作となった。

物語・20世紀末、チネチッタ撮影所。映画監督のA(ウィレム・デフォー)は両親の人生を映画にしようとしていた。Aの母エレニ(イレーヌ・ジャコブ)は大学生の頃、秘密警察に逮捕され脱走。ギリシャ難民の町で恋人スピロス(ミシェル・ピッコリ)と再会する。しかし、スターリン死去による混乱で再び逮捕された二人と、エレニの友人でイスラエル難民のヤコブ(ブルーノ・ガンツ)はシベリア送りになってしまう。

Dust_of_time

Memo1
もはや神話的とも呼ぶべき前作「エレニの旅」
それぞれの作品から受ける印象は違うものになるだろうと以前インタビューで答えていたとおり、シベリア、ベルリン、パリ…ひとつの場所にとどまることはなく、エレニを軸に約半世紀の物語が紡がれていく。
20世紀3部作「もう一つの海」と題された最終作を見ることはできなくなったが"出口が見えなくなった困難な時代"(こちらもいくつかのインタビューより)から続く21世紀への提言は本作から少なからずとも、うかがい知ることができる。
1953年から1999年までの約半世紀。
(長回しも数シーンあることにはあるがリズムが早い)
いつもより足早に過ぎ去る場面、ショット。
アンゲロプロス監督作品での象徴的な「水」や「川」はでてこない。しかしウィレム・デフォー演ずる監督Aが撮影中の映画について、サウンドスタジオでこう語る「エレニはこう言う"目覚めると、朝、指から水がしたたる。あの川の匂いの水が‥"」
そしてそれはラスト‥
死に至る間際椅子に座りこんだエレニのだらりと垂れた指先から水が滴り落ちるシーンへと繋がる。そして雪の舞うブランデンブルグ門の前を同じ名前をもつ孫、エレニとスピロスが走っているシーンへと受け継がれる。
意図的なのか偶然の符合なのか出演者が「美しき諍い女」(1991年)ミシェル・ピコリと「ベルリン天使の詩」(1987年)ブルーノ・ガンツと「時の翼にのって/ファラウェイ・ソー・クロース!」(1993年)ウィレム・デフォー、そして「ふたりのベロニカ」(1991年)イレーヌ・ジャコブと"ある時期"に撮られた作品のキャストと重なる。
そして監督
ジャック・リヴェットとヴェンダース、キェシロフスキと。
「第三の翼」と題された仮タイトルとブルーノ・ガンツ(これは誰しも思うことだから意図的キャスティング?)、そして謎の絵(オリジナル版ポスターに描かれた第三の羽根に手を伸ばす天使、しかし、まだ掴んではいない)
船の上から両手を広げ飛び降りても、そこに羽根はなく「アタランタ号」の如き"乗船完了"にはならないのだ。
エレニを演じたイレーヌ・ジャコブは奇しくもキェシロフスキ監督、アンゲロプロス監督の遺作に出演したこととなる。

Memo2
音楽は「シテール島への船出」からアンゲロプロス作品を手がけているエレニ・カラインドルー
もう音楽だけでドキドキしてしまう…
撮影がお馴染みのヨルゴス・アルヴァニティスではなく共同撮影を続けてきたアンドレアス・シナノス
(本作はIMDbによるとフィルムだが撮影中だった三作目はデジタルの実験もかなり行われていた模様で、その辺り含めて"新世紀の映画"を見てみたかった)
テオ・アンゲロプロス監督が2005年『エレニの旅』公開時、来日の際に行われたティーチ・イン動画(PDFテキストもあり) 演出やワンシーン・ワンショットについて語っています。(フランス映画社サイト)
http://www.bowjapan.com/eleni/angelopoulos/masterclass/

El

オリジナル版ポスター

映画『エレニの帰郷』公式サイト

http://www.eleni.jp/index.html

Teo_1

Teo_2

「旅芸人の記録」
少し遅れての航海となった関西での初公開時のチラシ
(大阪・北浜・三越劇場)
1日2回上映で夜の回がなく時間の都合をつけて見に行ったことをよく覚えています。続く「アレクサンダー大王」も同じ三越劇場で上映。

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» エレニの帰郷 ★★★★ [パピとママ映画のblog]
『永遠と一日』などのギリシャの巨匠、テオ・アンゲロプロスの遺作となった、1953年から半世紀に及ぶ男女3人の愛を描く恋愛ドラマ。スターリンの死やベトナム戦争といった出来事を背景に、時代に翻弄(ほんろう)されるヒロインと、彼女が愛をささげる恋人、ヒロインを愛...... [続きを読む]

受信: 2014-03-07 11:32

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