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2014-03-27

フィル・ロード&クリストファー・ミラー監督『LEGO(R)ムービー(The Lego Movie)』"Everything Is Awesome"

注・内容に触れています。
「くもりときどきミートボール」「21ジャンプストリート」のフィル・ロード&クリストファー・ミラー監督による玩具“レゴブロック”を使って描く長編3Dアニメーション『LEGO(R)ムービー(The Lego Movie)

物語・ひょんなことから突然"世界"を救う大役を任されてしまった平凡な青年エメットが、巨大な悪"おしごと大王"に立ち向かっていく姿を描く。オリジナルボイスキャストはクリス・プラットウィル・フェレルエリザベス・バンクスウィル・アーネットリーアム・ニーソンモーガン・フリーマン、他

Lego

Memo1
字幕版(3D)と吹替版(2D)両方で鑑賞。
(字幕版が東京と大阪1館ずつのため、以下吹替版ベースで記載)
プロ声優8人が複数キャラを吹替ていて、丁寧な仕事ぶり。
ちなみに予告編と吹替担当してる人まで変わってた。そして、おしごと大王"おしごと社長"(ウィル・フェレル)は山寺宏一、魔法使いウィトルウィウス(モーガン・フリーマン)を羽佐間道夫という磐石さ。
途中でメタ構造では?ということはなんとなく判ってしまうけど、そんな事を吹き飛ばす連続的チェックしたいディテールの嵐、クリエィティビティ!
バットマン(ワイルドガールの彼氏設定)、ワンダーウーマン、スーパーマンらが続々登場。
グリーン・ランタン不憫ネタからガンダルフorランブルドアそっくりさんネタ、スター・ウォーズ"ハイパードライブ"ネタ、椅子ごと飛ぶリンカーンまで。
そして、まさかのウディ・アレン!(笑)
グリーンランタンの声をジョナ・ヒル、スーパーマンをチャニング・テイタムという「21ジャンプストリート」コンビが担当していて可笑しい。
そして、これはお父さんが子供を連れてついでに見にきたはずが、不覚にもうっすら目がしら熱くなるタイプ映画。
そう、かの「クレしん嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲」や亀を吊るしてガメラ~とか言っていた昭和親父が平成ガメラのギュルルルーと高速で飛ぶ姿に小さくガッツポーズをした、そんな気持ちにさせてくれた映画たちと同じ年齢を超越した楽しさに溢れています!
"世界"をひっくり返すメタ構造
ジャジャーン、と登場。
実写ウィル・フェレルとエメット君
こんな会話
「ここで遊んじゃダメだって言ってるだろ」
「これは大人のものなんだ」
「だって5歳から12歳って書いてあるし…」
(やや「うっ、す、鋭い…」という表情で)
「それは便宜上、そう書いているんだ」
この後に続く"マニュアル通りのものを創るのではなく自由になんでもつくろう"という展開は拍手もの。
そーくるかぁ 笑 オチの台詞
「お前がここで遊べるようになるということは、もうひとり増えるということだ」
「エッ!?」
「妹だ」
そして"レゴ世界"に登場するのは!!

Memo2
タイトルデザイン("Everything Is Awesome"にのせて繰り広げられる楽しいメインエンドタイトル部分)→Typographyやコンセプトボード、レンダリングサンプルまで素晴しいメイキングレポ(動画あり)
http://www.artofthetitle.com/title/the-lego-movie/
『LEGO(R)ムービー』を手がけたアニマルロジック(Animal Logic)ウェブサイト
他に「ガフールの伝説」「エンジェルウォーズ」や「華麗なるギャツビー」VFXなど
http://www.animallogic.com/

LEGO® ムービー
http://wwws.warnerbros.co.jp/lego/


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2014-03-24

エマ・トンプソン、トム・ハンクス主演、ジョン・リー・ハンコック監督『ウォルト・ディズニーの約束(Saving Mr. Banks)』

注・内容に触れています。
1964年のミュージカル
映画『メリー・ポピンズ』の誕生秘話を描いた『ウォルト・ディズニーの約束(Saving Mr. Banks)』監督はジョン・リー・ハンコック。出演はエマ・トンプソントム・ハンクスポール・ジアマッティコリン・ファレルジェイソン・シュワルツマン、他

物語・1961年、パメラ・L・トラヴァース(エマ・トンプソン)はウォルト・ディズニー(トム・ハンクス)が長年熱望する「メリー・ポピンズ」の映画化について話し合うためにロサンゼルスに向かう。傑作児童文学の著者である彼女は気難しい性格で周りを困惑させる。スタッフたちはどうにかしてトラヴァースに映画化の契約書に署名してもらおうと心を砕くが…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Marypoppins

Memo1
「メイキング・オブ・メリー・ポピンズ」ではなく、どちらかというと"その背後に隠されていた物語"がキーポイントになっている。
とはいえ、ディズニーファンがわくわくするようなシーンも用意されている。
ウォルト・ディズニー本人がパメラ(トラヴァース夫人)を案内するディズニーランドのシーンでは1960年代当時のディズニーランドを再現。
面白いのは入場者(おっと、ゲストですね)からサインをねだられると予め用意していたサイン入りの小さいカードを配っているところ。
シャーマン兄弟(ジェイソン・シュワルツマンとB・J・ノヴァク)と脚本家ドン・ダグラディ(ブラッドリー・ウィットフォード)を交えてのやり取りも最高に楽しい。
ボードに貼りだされたスケッチ、その場で作られていく歌詞など文字通りの創作の現場!
「メリー・ポピンズ」を見てから鑑賞すると本作自体のさりげないところが多くリンクされていることに気づく。
・冒頭、父親のトラヴァース(コリン・ファレル)が唄うように語るナレーション
「東の風が吹いたら〜」は「メリー・ポピンズ」大道芸人バートが公園でくちずさむように唄う台詞と同じ。
・ディズニーランドで「これだけは是非乗ってほしかった」とウォルトがパメラと乗る回転木馬シーンは「メリー・ポピンズ」のアニメと実写合成パートを連想させる。
・パメラのロンドン自宅前には桜の木。そして「メリー・ポピンズ」にも(完成した映画の披露試写会場レッドカーペット両サイドにも桜並木が)
ビバリーヒルズホテルの部屋に入ってビックリ。
部屋中に置かれたミッキーやプーさんのディズニーキャラクターのぬいぐるみ。
そのプーさんを見てひと言
「かわいそうなA・A・ミルン」
この"お金か原作のスピリットを守るか"のせめぎあいは内と外で繰り広げられる。それは、またかつてウォルトも経験してきたこと。こんな台詞が出てきていました→
「彼女が頑なになるのもわかる」
「私も"ねずみ"の権利(※)を奪われてしまうかどうかという選択をせまられたことがあるから」
※パット・パワーズとの契約をめぐるトラブル(ミッキー生みの親でもあるアニメーター、アブ・アイワークスを巻き込んでの有名な話)
パメラは何故、梨がNG(ホテルの部屋のバルコニーからプールへ放り投げる)なのか、何故急に赤い色を使いたくないと言い出したのかが終盤近くでわかる。
それにしても、かなり意地悪で頑なで皮肉屋で意固地なキャラクターとして描かれているパメラ。
ディズニースタジオで秘書から
「あ、それから彼のことは"ウォルト"と」
「"ディズニー"と呼ばれることを嫌いますので」
で、いきなり初対面の際に
(聞く耳持っていないのか、わざとか)
「"ディズニー"さん」と挨拶するパメラ
一瞬「!?」となるウォルト。
「"ウォルト"と呼んでください。"ディズニー"は父の名前だから」←実はこの台詞、かなりの前フリだけど、ウォルトの子供の頃の秘密が)
自分のことはパメラではなく"トラヴァース夫人"と呼ばせている(何度も出てくる。そして言いなおしている)←このことは同じくパメラの頑なさの理由のひとつでもある。
・さらに、自分の原作「メアリーポピンズ」にアニメは使わせないということを言った際の台詞
「あなたの"金のなる木"にはさせない」とスッパリ
("金のなる木"英語ではプリンティングマシンって言ってたw)
・また紅茶をウォルトにいれてもらっているのに命令口調で
「紅茶はミルクから」
などと、かなり慇懃無礼。
専属の運転手ラルフを演じたポール・ジアマッティがいいなぁ。
"運転手映画"というジャンルがあるとしたら「ドライビング・ミス・デイジー」と並んで選ぶ一作。
ラルフとの交流はパメラが徐々にこころを開いていくきっかけとなっている。
(「今日はいい天気でよかった」の理由、車椅子で不自由な生活をおくっている娘のことを知ったことも)
空港での台詞
「あなたが唯一、好きになったアメリカ人だわ」と。

Memo2
タイトルデザイン(main-on-ends)はShine STUDIO
(エンドタイトルシークエンスの動画あり)
http://shinestudio.com/saving-mr-banks/
『メリー・ポピンズ』
幾度となくリバイバル公開された時のチラシ

Poppins2

ウォルト・ディズニーの約束 | ディズニー映画
http://www.disney.co.jp/movies/walt/

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2014-03-21

マノエル・ド・オリヴェイラ監督『家族の灯り(GEBO AND THE SHADOW)』

注・内容に触れています。
100歳を超えてなお現役の映画監督であるマノエル・デ・オリヴェイラ監督による新作!!『家族の灯り(GEBO AND THE SHADOW)』出演はマイケル・ロンズデールクラウディア・カルディナーレジャンヌ・モローリカルド・トレパ、他

物語・帳簿係として勤務するジェボ(マイケル・ロンズデール)は、妻ドロテイア(クラウディア・カルディナーレ)と息子の嫁ソフィア(レオノール・シルヴェイラ)と暮らしている。8年前、息子のジョアン(リカルド・トレパ)は突然行方がわからなくなってしまった。決して裕福ではないながらも、三人は肩を寄せ合いながら一様にジョアンの帰りを心待ちにしていたが…。(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Oli_1

Memo
突然訪れる不意打ちのようなラストは、またしてもオリヴェイラ監督にしてやられたと嬉しい衝撃。
絵画の中の演劇(映画)。
冒頭、波止場のシーン。
ほとんど動いていないので一瞬、"絵画"?と思ってしまうのだが波がたっているので"映画"だと判別できる。
続く息子のジョアンが錨に手を置き、画面とは全く違う方向(真横!!)のショットも奥行きがなく極めてフラットな構成。
それは室内の中に移っても続く印象。
かつてデジタル処理によって絵画(油絵)に溶け込ませた映画「グレースと公爵」(エリック・ロメール監督)を思い出したが本作はそれこそ絵画のような映像の中で繰り広げられる演劇と言える。
ほぼ室内劇。
窓から見える外の景色とランプの灯り具合でかろうじて時刻がわかるぐらい。
とにかく動かないフィックス画面で続けられる会話。
話を聞いていくと出て行った息子ジョアンのことが浮かび上がってくる。
失踪した息子を待つ母、(その失踪の理由を知っているとおぼしき)父、そしてジョアンの妻。
驚くべきはお茶を飲みにやってきくる近所のジャンヌ・モロー。
完全にカメラの方(観客の方)に視線を向けて真正面を向いているのだ。
元が戯曲(ラウル・ブランダン)ということもあってか三幕物の体裁で紡がれている。
・まず失踪しているジョアン不在の中での家族の会話
・続いて帰ってきたジョアンと家族
・そして父ジェボの預っていたお金を盗んで再び出ていったジョアン、そして残された父とジョアンの妻
(母に「このことは言えない」と言う父親が下した決断が…)←このラストではじめて陽がさしたショットが出現する。
その眩しさ。
まさに不意打ちのように訪れる。
(もう、とにかく驚いた→)「ブロンド少女は過激に美しく」から、さらに誰も登ったことのない頂に立つかのような挑戦的な作品を撮ったマノエル・ド・オリヴェイラ監督。
今年(現在)105歳。
世界最高齢の現役監督にして、このラジカルさ!
見られよ!

Oli_2

『家族の灯り』
http://www.alcine-terran.com/kazoku/


追記Memo
※現在入手できるオリヴェイラ監督作品のDVD-BOX(Blue Rayさらにソフト化も無い!)は上記リンク(価格表示されていないもの)にあるように中古市場で非常に高価。再発、そして「ブロンド少女は過激に美しく」のソフト化を。

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スティーヴン・フリアーズ監督『あなたを抱きしめる日まで(PHILOMENA)』主演ジュディ・デンチ、スティーヴ・クーガン

注・内容に触れています。
マーティン・シックススミス
著作「The Lost Child of Philomena Lee」をベースにスティーヴン・フリアーズ監督が映画化『
あなたを抱きしめる日まで(PHILOMENA)』出演はジュディ・デンチスティーヴ・クーガン、他

物語・1952年アイルランド、未婚の母フィロミナは強引に修道院に入れられた上に息子の行方を追わないことを誓約させられてしまう。その後、息子をアメリカに養子に出されてしまった。それから50年、イギリスで娘と暮らしながら常に手離した息子のことを案じ、ひそかにその消息を捜していたフィロミナ(ジュディ・デンチ)は、娘の知り合いのジャーナリスト、マーティン(スティーヴ・クーガン)と共にアメリカに旅出つ。そして…。(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Philomena

Memo1
今年おじいちゃん映画「ネブラスカ」に続いておばあちゃん映画の傑作!しかも同じロードムービーの趣(おもむき)をもった、とても丁寧な作り。
スティーヴ・クーガン演じるマーティン
皮肉屋でやや杓子定規、信仰心がない。
BBCのキャスターを辞めたばかり。
そんな"ブータレ"マーティンへのフィロミナの接し方が面白い。そしていつしか母のように。
(実際に息子が亡くなっていたことを知り落胆しているフィロミナの部屋の電話が通じないことで心配になりホテル側に「母です」と嘘をつき部屋に入れてもらう。その時の顔と顔)
最初、ちぐはぐな会話だったフィロミナとマーティン。
時に説教されたり、時にロマンス小説のあらすじを全部話されたり(←いるいる、こんなおばちゃん 笑)「神は信じない」と言うマーティンの頑ななこころを揉みほぐしたりと。
そして気がつけば本当の親子のようになっている、その過程の語り口の素晴らしさ。
そのフィロミナを演じたジュディ・デンチ。
もう、素晴しいの一語に尽きる。顔のアップと表情だけで全てが語れてしまう上手さ。そして、その雰囲気(Atmosphere)と態度(Attitude)
何も知っていなさそうで実は機知に富んでいて会話にもウィットがある。息子マイケルのことも小さい時からゲイの傾向があることもよくわかっていて、実際にその事実にふれても全く驚きをみせない。むしろ、自分と同じように(レーガン政権下でのスタッフという立場上)ゲイということを隠し続けなければならなかったことに対して「つらかったでしょうに…」と慈しむ。
そして持ち続けた贖罪。隠し続けられた真実を知ったとき、出た言葉が(罵倒でも怒りでもなく)「シスター、ヒルデガード。わたしはあなたを赦します」
それは、ある意味最も強烈な楔のような言葉でもあるのですが…
エンドクレジットに実際の作者マーティン・シックススミスとフィロミナの写真、近況が出たとき、一瞬ザワっとした。実話だったんだぁ…ということに対してのざわ。
※映画「マグダレンの祈り」で実際にそのようなことが行われていたことを知った。
本編でも「マグダレン」に触れる台詞が一箇所出てきます。
ラストの台詞
マーティンとフィロミナの車が走っていくところを俯瞰で。
あらすじを喋り続けるフィロミナ
こう締めくくる
「最高の結末、100万年に一回よ」

Memo2
メインタイトルデザインはMatt Curtis
既に何回も当ブログ記載通り、ダニー・ボイル作品多数。
ジュディ・デンチ出演作ではイギリスのFugitive Studios Produced名義で「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」も手がけている。

映画『あなたを抱きしめる日まで』公式サイト
http://www.mother-son.jp/


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ピーター・バーグ監督『ローン・サバイバー(LONE SURVIVOR)』マーク・ウォールバーグ、テイラー・キッチュ、ベン・フォスター、エミール・ハーシュ"パシュトゥーンの掟"

注・内容、ラストに触れています。
アメリカ海軍の特殊部隊ネイビーシールズ(Navy SEALs)史上最悪の惨事と呼ばれるレッド・ウィング作戦。唯一生還した兵士マーカス・ラトレルの回顧手記『アフガン、たった一人の生還』を原作に映画化『ローン・サバイバー(LONE SURVIVOR)』。監督は『キングダム』『バトルシップ』などのピーター・バーグ。出演はマーク・ウォールバーグテイラー・キッチュベン・フォスターエミール・ハーシュエリック・バナ、他

物語・2005年6月、アフガニスタンの山岳地帯である特殊任務に就いていた4人のネイビーシールズは200人を超えるタリバン兵の待ち伏せに遭い、猛攻撃を浴びてしまう。それは世界最強の戦闘能力を持つ精鋭部隊といえども、死に等しい絶望的な状況だった。そんな想像を絶する極限状況の中、一人の兵士が生き延び奇跡的に生還する。(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Lone_survivor

Memo
タイトルバックでアメリカ海軍の特殊部隊ネイビーシールズ(Navy SEALs)の厳しい訓練状況が映し出される。
続いて「レッド・ウィング作戦」決行前の待機中のバグラム空軍基地での様子。
先行偵察隊となる本作での4人をメインにテンポよく描かれる。
そして実際に現地に降り立って着々と目標ポイント(ビールの名前がついている)をクリアしてターゲット地点まで向かう姿が映し出される。
(アパッチが他の戦地へ駆りだされていたり、ターゲット地点を見下ろすポイントが樹木によって視界が遮られ見通しが悪いため少し位置をずらしたりと微妙な"よくない兆し"のような事も描かれている)
そして、遭遇してしまうのだ…
タリバンではないが農民3人と。
ここでの決断が絶対的窮地を呼び込む。
音響の凄さは、これこそ劇場体感型と言えるもの。かつて「プライベート・ライアン」が公開されたとき、その弾丸の飛んでくる音に衝撃を受けたことを思いおこす。
当然、弾丸やヘリの音などもすごいが、それにもまして崖から転げ落ちる(滑り降りる)時の音、見てるだけで「痛い!!」と叫んでしまいそう。骨が「バキッ」と折れた音も…
何故、ひとりだけ生還できたのか。その要因の一つである"パシュトゥーンの掟"とは?(いろいろな掟があるが、そのうちの"客人を歓待する掟"によりマーカスは助かることとなる)
本作を読み解く鍵でもある、そのことは公式サイトに記載されている池上彰氏の寄稿文「パシュトゥーンワーリ」(パシュトゥーンの掟)に詳しい。
http://lonesurvivor.jp/column/
さて、そこで気にかかるのが、この"パシュトゥーンの掟"を先に知って鑑賞した場合と知らずに鑑賞した場合の作品への印象が大きく変わるのではないか、ということ。
タイトルや宣伝などから、マーカスひとりだけ生還することは判った上で本作を見る人が大多数だと思いますが…(この判った上でもハラハラ、そして緊張を強いられる場面の連続はスゴイ)
本作で描かれるものにテーマや訴えかけたいものというものは"答えの出ていないものに答えは無い"としか言いようのないもの(パッと見、善=ネイビーシールズ、悪=タリバンという図式だが)。ただ、戦場は過酷で痛いのだ。それだけははっきりと残る。そして偶然、見つかった村人が"パシュトゥーンの掟"を守ったことによって助けられたことの不思議さと(言及されないが最初に村人に見つかったとき、助けて逃がしたことによる"いわゆる因果応報的なもの"とも違うのかなぁー、などとも)
※作戦で命を落としたシールズ隊員含む16名の写真が映し出される。(ほとんどが家族や恋人、妻、子供との写真)
最後の一枚は、あの村人とマーカスの姿が。

『ローン・サバイバー』公式サイト
http://www.lonesurvivor.jp/

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2014-03-17

ジョゼ・パヂーリャ監督『ロボコップ(Robocop)』(2014年公開版)ジョエル・キナマン、ゲイリー・オールドマン、マイケル・キートン、サミュエル・L・ジャクソン

注・内容に触れています。
1987年製作(日本公開は1988年正月第二弾)のポール・ヴァーホーヴェン監督作"ロボコップ"再起動版『ロボコップ(robocop)』監督はジョゼ・パヂーリャ。出演はジョエル・キナマンゲイリー・オールドマンマイケル・キートンサミュエル・L・ジャクソン、他

物語・舞台は2028年、巨大企業オムニコープがロボット・テクノロジーを支配する世界。海外ではオムニコープのロボットが軍事利用されている一方、アメリカでは法律で禁止されており、国内でもその技術を広めるため機会を窺っていた。アメリカ・デトロイトで愛する家族とともに暮らす勤勉な警官アレックス・マーフィ(ジョエル・キナマン)は重症を負うが、オムニコープの最新のロボット技術により“ロボコップ”として新たな命を得る。そして…。(物語項、オフィシャルサイトより抜粋)

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Memo1
パット・ノヴァク(サミュエル・L・ジャクソン)が右派バリバリのホストを務めるTVショー(全く持論以外の意見には聞く耳持たない、形勢不利な場合は途中で打ち切る)で幕をあける(正確にはMGMマークのライオンの声にかぶさって「ぷるぅるぅるぅ〜」と発声練習している部分から)←これ、よくOKが 笑
このパートが軍需産業、煽動番組などに対してのアイロニカルな部分を受け持つ形となっている。
極めて面白く見られたのはマンマシンインタフェースについての話でもある事と人と機械を分ける2%(制御不能状態に陥った際に脳がコントロールする部分を2%まで下げたときに交わされる会話が興味深かった)についの考察でもあるから。
両手を失ったギタリストが「アルハンブラの思い出」を義手で弾くシーン。最初は上手く弾けているのに感情を込めて気持ちが高まってくると、とたんに乱れてしまう。
果たして感情とロボット(機械)部分とのインターフェースとは?
よく言われてきた脳だけが残り、他は全て機械となった場合、それは「人」なのか、どうかという命題。
その部分を掘り下げるところまでは描かれないところが惜しい(もっとも、そこをテーマにするとまた別の話になるのかもしれないし、ちょっとジレンマ)←相当、カットされている(カットした)形跡も多いし。
「やっと同じ色になったな」
相棒のルイス刑事とブラックボディ・ロボコップで再会したシーンでの台詞。
(もう少しバディムービー化するかと思った)
その前にシルバーボディ・ロボコップのデザインに対して「もっとミリタリー性のあるデザイン」要望により変更された経緯がある。

ポール・ヴァーホーベン版『ロボコップ』のメディア風刺と暴力性とはまた別の描き方となっている2014年版「ロボコップ」はロゴ(ベクターデータが出回ったほどの改変不可な"あのデザイン")、テーマ曲(こちらも高揚感のある旋律は唯一無二)、動作音、フィル・ティペットデザインのED-209、そして結果として元に戻ることとなるロボコップデザイン(元のシルバーボディデザイン)、とオリジナル作品へのリスペクトを持ちつつ既に現実的になる身体の部分ロボット化の時代変化に応じた内容になっている(オムニコープ社の教官や警備員などが着用しているパワードスーツなども含め)。そしてデトロイト管轄内犯罪者の全データがインプットされ、さらに監視カメラやその他データなどへのアクセス権を持っていることも怖いし既にリアルな現実とリンクしている。
そういった部分を内包しつつロボット化された夫(父親)と家族とのエピソードをもう一軸に物語は展開される。
それにしてもゲイリー・オールドマンとマイケル・キートンが同一画面に、しかもある意味表裏一対となる役柄で対峙するとは。いやー、ビックリした。本編自体も面白かったが、ここだけでも嬉しかった。

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ポール・ヴァーホーベン版『ロボコップ』公開時のタブロイド紙型のフライヤー。1、4面が城久人氏による劇画。
センター見開き面にロボコップやED-209、使用されるガンなどの詳細紹介が掲載された秀逸な仕上がり。

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Robocop87_b

ロボコップ | オフィシャルサイト
http://www.robocop-movie.jp/

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2014-03-15

荒川弘原作、吉田恵輔監督『銀の匙 Silver Spoon』中島健人、広瀬アリス、他

週刊少年サンデーで連載中の荒川弘原作コミックを『さんかく』『ばしゃ馬さんとビッグマウス』『麦子さんと』などの吉田恵輔監督が実写映画化した『銀の匙 Silver Spoon』主演はSexy Zoneの中島健人。共演には広瀬アリス市川知宏黒木華中村獅童、他

物語・受験失敗をきっかけに北海道の大蝦夷農業高校へ入学した八軒勇吾(中島健人)は、同級生のアキ(広瀬アリス)や駒場(市川知宏)のように明確な将来の展望を抱けない自分に違和感を抱きつつも、酪農実習や部活に奮闘していた。(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Silver_spoon

Memo
原作未読(通読していないけど数回分読んでいる程度)でアニメ版の方は1期と放映中の2期(秋編)共に全編見ている状態で鑑賞。ゆえに物語のアウトラインなどがわかって見ているので全く素の観客はどう見えているのだろう?と、とても気になった(結構、笑いが起こっている箇所があり、それらはアニメで先に知っている箇所のため)
青春ドラマとしても"八軒勇吾・成長物語"としても、すごくよくできているので白紙状態感覚で見てみたかったー、と逆に思った次第。
主役の八軒を演じた中島健人はじめ、原作の再現性高いー。稲田多摩子=タマコ(演じるのはオーディションで選ばれた安田カナ←27歳!?)はもはやタマコにしか見えないし。
原作だと"こんな奴はいねーよ"と言いたくなる捉えられた宇宙人みたいな背丈の校長先生役はダチョウ倶楽部の上島竜兵
父親が竹内力で叔父が哀川翔(←絵に描いたようなとても、いかつい一家 笑)という「デッド・オア・アライブ」以来の共演。キャスティングで既に楽しい。
オリジナル脚本作品ばかりだった吉田恵輔監督初の原作もの。
原作から抽出した八軒が名前をつけたブタ"豚丼"の話と収穫祭での"自分たちでのばんえい競馬"エピソードを大軸に約一年間が描かれる。
タイトルの「銀の匙」の意味も含めて実際、エゾノーで行われる授業、夏休みのアキ実家でのバイト、馬術部でのことなどが綴られる。
※屠殺シーンをきっちり撮影しているのもよい。
大蝦夷農業高校(エゾノー)に通う生徒のほとんどが実家が農業、酪農、林業などに従事している。そんな中、八軒だけが受験に失敗し、「なんのため私学の中学に入れたんだ」とプレッシャーのキツイ親の元を離れたくて全寮制という理由のみで将来の夢もなくエゾノーに入学していた。
その八軒が触れていく仲間、家畜という意味(食べることの意味)、そして農業・酪農の厳しい現実。
本作でも経営難から離農してエゾノーを辞める駒場のことなども描かれている。
原作(アニメ版)ではタマコの実家牧場が近代型経営を行っているシーン(巨大な牧場)なども盛り込まれ現在の農業・酪農の実態も浮かび上がるようになっている。
ばんえい競馬を描いた根岸吉太郎監督『雪に願うこと』に出演していた吹石一恵がばんえい競馬を見ている「おぉっ」と思えるシーンがあって嬉しい。
2回出てくる八軒への台詞。
「計算、早っ」
(豚丼、一頭の値段の時とバルブを閉め忘れて流れてしまった500リットルの牛乳の値段を聞いたときの2回←単価を聞いた瞬間に即答する八軒に対して)←ちなみにこのツッコミ間合いは吉田監督の間合いともいえるタイミング。

映画『銀の匙 Silver Spoon』
オフィシャルブログ「たまこブログ」
http://ameblo.jp/ginsaji-tamako/

映画『銀の匙 Silver Spoon』公式サイト
http://www.ginsaji-movie.com/index.html

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2014-03-12

製作総指揮ジョン・ラセター、監督クリス・バック、ジェニファー・リー『アナと雪の女王(FROZEN)』"Let It Go"

注・内容に触れています。
アンデルセン「雪の女王」にインスパイア(エンドクレジットに表記されていますが原作ではなくSTORY INSPIRED BY "THE SNOW QUEEN)され製作された『アナと雪の女王(FROZEN)』製作総指揮をジョン・ラセター、監督はクリス・バックジェニファー・リー

物語・エルサとアナは美しき王家の姉妹。しかし、触ったものを凍らせてしまう秘められた力を持つ姉エルサが真夏の王国を冬の世界に変化させてしまった。行方不明になったエルサと王国を何とかすべく、妹のアナは山男のクリストフ、トナカイのスヴェン、夏に憧れる雪だるまのオラフと一緒に山の奥深くへと入っていく。(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Frozen

Memo1
ひとつの楽曲が全ての物語を引っぱっていくことがあるのだなぁ、と思った力強きレット・イット・ゴー"Let It Go"
それを唄うエルサの声は『ウィキッド』のブロードウェイ版・初代エルファバを演じたイディナ・メンゼル
長い呪縛から解かれエルサが山の奥地に氷の宮殿を建てるシーンは幾度となく全編が劇場にかかり、その場面と歌自体が本編プロモーションを兼ねるというシークエンスの前後繋がりって、いったいどうなっているのだろう?と気になっていた部分。
(前→アレンデールの事をハンスに任せてエルサを探しに馬に乗って城門から出て行くシーンに吹雪いている山の奥へカメラが進み歩いているエルサへ
後→氷の宮殿。歌い終わった瞬間に閉じられるバルコニーの窓。雪の斜面を昇る馬に乗ったアナ)←割とスパッと違和感なく抜き出せる形で出来ていたんだなぁ、と納得。
"Let It Go"字幕版エンドクレジットでのアップテンポなデミ・ロヴァートによる歌唱も雪の結晶がモチーフとなったアニメーションと相まってよい。
※評判のよい日本語吹き替え版(松たか子神田沙也加版)未見です。
"王子様は必要なし"?
王子様とのキスで魔法が解かれめでたしめでたしのシンデレラ、白雪姫系プリンセス物語ではなく(既に前段階として「塔の上のラプンツェル」「シュガーラッシュ」ピクサーでの「メリダとおそろしの森」などのヒロインのポジショニングが変化したものがある)
見かけで判断は…。
アナはエルサの戴冠式の日に出会った、いかにも王子様容姿と振舞いのハンスにポーッとなって婚約までしてしまう(まあ城から一度も出ていないこともあるのだが)
で、エルサからも「ダメ」と言われ、そのエルサを追いかけていく途中に出会った山男クリストフからも「エッ!君は会ったその日に婚約したって言うのか?相手のことをよく知りもしないで。好きな食べものは?靴のサイズは?」と言われる始末。
※実際、ハンスは上に12人の兄がいて絶対王位継承できない立場のため、逆玉の輿狙い王国乗っ取りを企てていたとんでもない王子。(←見かけで判断してはダメという点で「トイ・ストーリー3」のピンクのクマ、ロッツォを思いだした)
凍りはじめたアナを助けようとトロールの元を訪ねたクリストフ。
てっきり「おー、クリストフが彼女を連れてきたぞー」「やったー」と喜ぶトロール達。
しかし…
「おいおい、アナにはフィアンセがいるんだ」
トロールたちはアナがハンスと婚約しているときいて以前の作品タイプだったら「あー、それは残念」となるところを「その程度では問題ない」「指輪もつけてないし」「婚約者を追い出せばいい」となる辺り面白い(楽曲・愛さえあれば "Fixer Upper")
日本公開のかなり前から海外サイトで話題になっていた隠れキャラ。
ラプンツェルとフリン・ライダー、ミッキーマウス。ラプンツェルとフリンは予告編でも見ることができる「楽曲・生まれてはじめて "For the First Time in Forever"」のシークエンス中で後ろ姿としてわかったけど、ミッキーはわからなかったなぁ。(さすがにネタバレ見た)
(アナとエルサが子供の頃に作っていた姿かたちというところがポイントの大事なキャラ→)夏に憧れるスノーマン(雪だるま)オラフ。おいおい、そんなことは叶うはずがないのにー、と思いながらの頭上に"小さい専用雪雲"結末(ちなみに暖炉に火を灯してアナを温めようとするシーンという「溶けてしまうよー」ヒヤヒヤシーンも用意されている)←トナカイ・スヴェインとの"ニンジン愛"も
悪い魔女や絶対的な宿敵がいる対立構造の物語ではない"姉妹を中心としたストーリー展開"(これも対立しているわけではなく誤解から生じている※1)を成立させてしまっているところが、公開と共にクラシカルである事を求められているディズニーアニメーションの中にあっての本作の新しさの要因では?と思います。
※1終盤、"真実の愛"が実は"姉妹としての愛"と描かれるアナが選ぶ、ある瞬間のシーンへと結実

Memo2
Brittney Lee コンセプトアート、デザインワーク
エルサ、アナのドレスや衣装。アレンデール王国のタペストリーなどのデザイン画などが見られます。
http://britsketch.blogspot.com
エンドタイトルはSCARLET LETTERS
アートデザインはLISA KEENEDAVID WOMERSLEY
LISA KEENEは本作コンセプトアートも
:: Lisa Keene - Online Portfolio ::
http://www.lisakeene.com/index.html

アナと雪の女王
http://www.disney.co.jp/movies/anayuki/

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タイトルデザイン_41(Troublemaker Studios_Kurt Volk)『マチェーテ・キルズ』ロバート・ロドリゲス監督、ダニー・トレホ主演

タランティーノとロドリゲスによる『グラインドハウス』内で流したフェイク予告編を基にロバート・ロドリゲスが長編映画として製作・監督した『マチェーテ』その続編『マチェーテ・キルズ』主演はもちろんダニー・トレホ。出演はミシェル・ロドリゲスジェシカ・アルバレディー・ガガメル・ギブソンアンバー・ハードキューバ・グッディング・Jr、カルロス・エステベス(=チャーリー・シーン)、他

物語・アメリカ大統領(カルロス・エステベス)から、メキシコの極悪人マッドマン(デミアン・ビチル)を倒すよう依頼された元捜査官マチェーテ(ダニー・トレホ)。しかし、マッドマンは多重人格者である上に、停止すると同時にワシントンをターゲットにしたミサイルが発射されるという恐ろしい連動機能を備えた心臓の持ち主であった。それを解除できるのは世界一の武器商人として悪名をとどろかせているヴォズ(メル・ギブソン)のみ。そして…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Mk1

Memo
是非"これの本編が見たい"という意味で、またしても登場した予告編。
(全く関係ないけど)メル・ブルックス『珍説世界史PART1』のPART2予告編集「宇宙のユダヤ人」とか「氷上のヒトラー」とか思い出した 笑
(まあ、終わり方からして似ている→メル・ブルックスと同じく予告編が作りたかったのだなぁ、と)
それにしても「帝国の逆襲」ネタ…
ロドリゲス監督がダニー・トレホの事を初めて見たときに「俺のマチエーテ(※)がここにいる」と言ったとか言わないとか、というぐらい前作、本作と充て書かれたような作品。
例によって(もはや例によってが慣用句)監督・原案・製作・撮影監督・編集・音楽は全てロバート・ロドリゲス(磐石)
※マチェーテ(machete)は中南米で使われている農業や林業用の山刀のスペイン語・呼称。
「マチェーテ、ノースモーキング」
(意外と健康志向)
に、しても、これ「ローン・レンジャー」テレビ版でやってた「インディアン、ウソツカナイ」と節回し同じ。他にもこの短い「マチェーテ、…」という台詞が幾つか。
レディ・ガガ映画初出演。
はたして、どのような役?
→殺し屋カメレオンのひとつの顔。
その変遷→ウォルトン・ゴギンズ→キューバ・グッディング・Jr→レディー・ガガ→アントニオ・バンデラス(で、最期はなんとも、あっけないトホホな結末w)
(そう考えると多重人格(マッドマン)といい、変装(変身)殺し屋カメレオンといい、いろいろコロコロ変わるというのが都合がよいというか本作の肝)
肝といえばミシェル・ロドリゲスVSアンバー・ハードの強烈な戦いが終盤に。(次回作あるとすればアイパッチは両目?)
衣装デザイナーは「Troublemaker Studios」のニナ・プロクター
タイトルシークエンス、他デザインワークは「Troublemaker Studios」のKurt Volk
下記サイトにて前作含めシン・シティ、グラインドハウスなどのGraphicswork含め多数見られます。
Kurt Volk サイト(ポートフォリオページ)
http://www.kurtvolk.com/portfolio.html

Mk2

映画「マチェーテ・キルズ」公式サイト
http://www.finefilms.co.jp/machetekills/


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2014-03-05

J・C・チャンダー脚本・監督、ロバート・レッドフォード主演『オール・イズ・ロスト~最後の手紙~(All Is Lost)』"インド洋ひとりぼっち"

注・内容、ラストに触れています。
76歳(撮影時)のロバート・レッドフォードが挑む"インド洋ひとりぼっち"。究極(という言葉が陳腐に思えるほどの人間ドラマにして)サバイバル映画『オール・イズ・ロスト~最後の手紙~(All Is Lost)』監督・脚本はJ・C・チャンダー(長編デビュー作『マージン・コール』でアカデミー賞オリジナル脚本賞にノミネート)

物語・自家製ヨットでインド洋を航海中の男(ロバート・レッドフォード)。突然、海上の浮遊物がヨットに衝突したことから旅が一転する。浸水や無線のトラブル、さらには天候悪化に見舞われ、自然の脅威、飢えや乾き、孤独との闘いを強いられる。そして…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Ais2

Memo1
男の名前はない。英語サイトにおいても"Our Man"とだけ記されている。エンドクレジットがスルスルと上がっていき出るキャストがひとりというのも初めて見たかも。
そして台詞もほんの僅か(ほぼ無いに等しい…もう、どうしようもなくなって初めてつく悪態「クソッ」と助けを呼ぶ「ヘルプ」ぐらい)
冒頭、うっすらと夜が明け始める水平線に漂うコンテナ。
そこにモノローグが被さる。
(これが手紙部分)
「全てを失った…。
そして、もう半日の食料しか残っていない…
最後まで戦った」
いくつかの懺悔の言葉ののち、
最期はこう締めくくられている。
"I miss you. sorry."
次々と起こる出来事
・目覚めた瞬間、水の音。海水が入ってきていることにハッと気がつき、すぐに何をするべきかを判断して手際よく物事(ぶつかったコンテナを引き離す、海水の排出、開いた穴の修復など)を進めていく。この流れだけで"この男"がとっさの判断と洞察力、サバイバル術に長けていることがわかる。そして諦めない性格であることも。
・マストに登って修理していたとき、遠くに暗雲。嵐がくるとわかるやいなや飲料水をポリタンクに移し、瓶など割れるものを回収、ヒゲを剃る(これはジンクスかなにかかな?)。そして最早、ヨットはアウトだと判り救命ボートに乗り移る。
(ここまでで約半分ぐらい)
※この前半(ヨットの上での動きを追いかける形)と後半(海底からボートの底をやたらと映す)でカメラアングルが変わるのも意図的だと思われる。
・救命ボートに移ってから、まずはコンパス(六分儀)で位置を確認。コンテナ船などが通る航路に向かっていることを確認。
・せっかく貯めていたポリタンクに海水が入り飲み水ゼロ。水蒸気によるほんの僅かな水滴を集めて水にすることを思いつく。(←一瞬諦めかけるも、やはり諦めない)
通った2隻のタンカーにも見つけてもらえず発煙筒も尽き、航路からも離れもはやこれまでかということで冒頭の手紙を書き瓶に入れて流す。
その夜に遠くに灯りが見え、発煙筒が無いのでポリタンクの中で紙を燃やし助けを求めるもボートごと炎上…
沈んでゆく"Our Man"
「ありゃー」タイトルからイメージした通りに最期は亡くなってしまうのか、と思いきや救命ボート自体が燃え上がったことで見つけられたのか近づいてくるボートの船底の影と光。必至で海上を目指す。そして、伸ばした手の先には…
(実はこのラスト、いろいろ解釈がとれるようなショットになっています。そこに至るまでの水面下からの小魚を大きな魚が、その魚を鮫がという捕食シーンとの繋がりも含め。またタイトル"オール・イズ・ロスト"の意味も…)

Memo2
撮影カメラはArri Alexaによるデジタル、編集にはAVID
エドワード・シャープ&ザ・マグネティック・ゼロズのリーダーにして長編劇映画の作曲を手掛けるのは本作が初めてというアレックス・エバート(しかしながら第71回ゴールデン・グローブ賞の作曲賞を受賞。)
エンドタイトルに流れる楽曲"AMEN"

Ais1

【公式サイト】
映画『オール・イズ・ロスト~最後の手紙~』

http://allislost.jp/

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アマンダ・セイフライド主演、ピーター・サースガード出演、ロブ・エプスタイン&ジェフリー・フリードマン監督『ラヴレース(Lovelace)』"何がリンダに起ったか?"

『レ・ミゼラブル』『マンマ・ミーア』のアマンダ・セイフライドが1972年に公開されアメリカで社会現象となった映画『ディープ・スロート』に出演した伝説のポルノスター"リンダ・ラヴレース"の半生を描いた『ラヴレース(Lovelace)』出演はピーター・サースガードシャロン・ストーンロバート・パトリックフランコ・ネロクロエ・セヴィニー、他。監督はドキュメンタリーを多数撮っているロブ・エプスタイン&ジェフリー・フリードマン

物語・21歳のリンダ(アマンダ・セイフライド)は、敬虔なカトリック教徒の父(ロバート・パトリック)と母(シャロン・ストーン)とフロリダで生活していた。ある日、彼女はバーの経営者チャック(ピーター・サースガード)と知り合い、誘われるままに付き合い始める。そして…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Lovelace

Memo
最初、観るまでは「ブギーナイツ」タイプの作品をイメージ、が、後半から結構真摯な描き方をしている(途中までは「あれ?なんだか、すんなりと映画出演してしまって、そんなに軽くていいの?」と思っていたら、やや巻き戻し気味に"実はあの時こういうことが"ということが判ってくる構成)
アマンダ・セイフライドはこの映画自体が興味本位で撮られるものではないということがわかって、この役を受けたのだな、ということが判る作り。
(真実を語る)自伝出版の際に本当の話かどうかを確認するために出版社がポリグラフ(嘘発見器)に応じているシーンがあった。それほど公開時の喧騒ぶりと行われていた夫の暴力(銃をつきつけて映画に出演させていたこと)との剥離があり俄に信じられなかったということだろう。
シャロン・ストーンが母親役で出演しているが最初わからなかった(ノーメイクだし首とあごの境界がわからないほどの横顔を撮らせたりと驚いた)←本作、最大の衝撃かも。
そして何より夫、チャックを演じたピーター・サースガードはさすがの上手さで強烈な演技。
・「プレイボーイ」編集長ヒュー・ヘフナー役でジェームズ・フランコが登場した時(二ヤケ顔に)ヒューヒュー言いたかった(←どうみてもジェームズ・フランコ)。そのヘフナー主催のパーティシーンに登場するサミー・ディヴィス・Jr.は(そっくりさんとして著名?)Ron Pritchardが演じていた。
・冒頭、ニクソン大統領がテレビで話している。後に起こるウォーターゲート事件への目配せ?(ワシントン・ポスト編集局次長が映画にちなんで名付けた内部情報提供者名が「ディープ・スロート」だった)
しかし当時6億ドル稼いだってメチャクチャ凄すぎ。(ギャラは1250ドルだったとラスト字幕が)。
1970年代の雰囲気を再現のため、16mmで撮影されたものを35mmにブローアップ。音楽ももちろん「つきせぬ想い」(グラディス・ナイト&ザ・ピップス)や「Spirit in the Sky」(ノーマン・グリーンバウム)そしてKC&ザ・サンシャイン・バントなどの70年代フューチャー。
インテリア、ファッション、ヘア&メイク、当時の豪邸、ホテル…細かいディテールまで再現されている。この辺りドキュメンタリー監督コンビらしい徹底した仕上がり。(アマンダ・セイフライドが演じているリンダが自伝出版当時に出たTVショー画面が違和感ない溶けこみ具合)
タイトルデザインはARON KANTOR
「ディープ・スロート」撮影中シーン(助手席にカメラ、後部座席に監督)、車を運転しているリンダの右側にタイトルロゴが被さる。

映画『ラヴレース』公式サイト
http://lovelace-movie.net/

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2014-03-03

スティーヴ・マックィーン監督『それでも夜は明ける(12 Years a Slave)』

それでも夜は明ける(12 Years a Slave)』監督は『SHAME -シェイム-』のスティーヴ・マックィーン。主演のソロモン役をキウェテル・イジョフォーが演じる。共演にはマイケル・ファスベンダーベネディクト・カンバーバッチブラッド・ピットポール・ダノ、他

物語・1841年、奴隷制廃止以前のニューヨーク、家族と一緒に幸せに暮らしていた黒人音楽家ソロモン(キウェテル・イジョフォー)は、ある日突然拉致され、奴隷として南部の綿花農園に売られてしまう。狂信的な選民主義者エップス(マイケル・ファスベンダー)ら白人たちの非道な仕打ちに虐げられながらも、彼は自身の尊厳を守り続ける。やがて12年の歳月が流れ…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

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Memo1
原題「12 Years a Slave」ではあまりにも直球すぎて、そのままだし、邦題「それでも夜は明ける」では感動作のように聞こえてしまう。しかし、この映画実際にはそういった単純なテーマでは括りえない重層な語り口を持っている。
淡々としているがショット、ショットの揺るがない意志、決意のようなものが積み重ねられる映画だ。
本作を見るまで自由黒人という呼び方があること(もはやその言葉自体が差別的だが)を全く知りませんでした。(その歴史的背景も)
そして衝撃的なのはニューヨークで普通に家族と暮らしていたソロモンがサーカスなどを組み込んだ興行旅行の奏者を探しているという話で騙され(この話を持ってきている二人組がベラベラ喋り続けていかにも胡散臭いのだが)酒に酔わされ気がついたときは手脚を鎖につながれていた。
この、いきなりの描写によってソロモンと同体験の如く見ている観客そのものを奴隷市場へと連れ去っていかれることとなる。
突然、奪われる自由。その恐怖…
(それは現代においても、いろいろな意味を含め起こりうることなのだ…)
ルイジアナ州に連れてこられたソロモン。
ベネディクト・カンバーバッチ演ずる農園主フォードは理解があるのだが大工のテイビッツ(ポール・ダノ)はやたらと丁寧な言葉づかいと仕事ができるソロモンのことが気に入らない(そしてテイビッツ自体、卑小な性格でもある)
ついには仲間を呼んできてソロモンを樹に吊るし上げ足がつくかつかないかのところで放置したままにしてしまう。この時のフィックスで撮られたシーンは息が詰まる。そして、背後を何も無いように(見て見ぬふりの者たちもいる)ふるまわれ、子どもが遊んでいる。
ついにはサディストにして嫉妬深い、残虐なエップス(マイケル・ファスベンダー)の元に渡されることに。気に入っている黒人女性のパッツィー(ルピタ・ニョンゴ)を虐げるエップス。そのことを気に入らない妻のメアリー(実は1番残酷かも)。さらに酷いこととなっていく…。
惜しむらくはブラッド・ピット(カナダ人の大工、奴隷制度に反対している)が登場してくると物語的にほぼ終盤にさしかかっていることもあって「あー、これで助かるんだな」ということが読めてしまうこと。(本作の製作者のみでよかったかもしれない、が、資金集めの際の条件でブラッド・ピット出演条項があったのかもしれないとも思う←それにしてもよく本作を完成させた、その手腕に拍手です)
12年の歳月
ソロモンがニューヨークで暮らしていたときの顔と12年奴隷として過ごしたあとの顔、その変わり様、その眉間の深い(険しい)皺。
険しい皺が刻まれた顔を長回しでずっと捉えたショット。
その表情からいろいろなことが浮かび上がっていく。
本作、締めくくりの白眉なるシーン。
※ラストは家族との12年振りの再会(孫までできている)
※1853年に原作が出版されたということなどが字幕にて記載(今から150年以上前!)

Memo2
衣装デザイナーは今年82歳の大御所(本作を含めアカデミー衣装デザイン賞ノミネート6回)のパトリシア・ノリス
Vanity Fair : スケッチと記事
http://www.vanityfair.com/vf-hollywood/12-years-a-slave-costume-design
最初のノミネートはテレンス・マリック監督『天国の日々』!
Main/End title designerはAntony Buonomo
メインロゴと同じデザインのタイトルが手紙の上に描かれている。
エンドタイトルの使用フォントとそのサイズなど端正な仕上がりも本作の真摯さを表していて素晴しい。
撮影はスティーヴ・マックイーン監督の前2作に続いてショーン・ボビット(ニール・ジョーダン監督「ビザンチウム」やリメイク版「オールドボーイ」も)
アカデミー賞ノミネートは無いが、今後出てきそうな予感(かなり遅咲き?)
音楽、ハンス・ジマー(バンバン劇伴ではなく繰り返し使用される情緒ある主旋律によるシンプルなもの)
「それでも夜は明ける」シナリオPDF保存できます。
(Foxsearchlighサイトで公に公開されているものです)
http://d97a3ad6c1b09e180027-5c35be6f174b10f62347680d094e609a.r46.cf2.rackcdn.com/film_scripts/12YAS_SCRIPT_BK_COVER_PAGES_FINAL.pdf

追記
第86回アカデミー賞
作品賞、脚色賞、助演女優賞(
ルピタ・ニョンゴ)を受賞

映画『それでも夜は明ける』公式サイト

http://yo-akeru.gaga.ne.jp/


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2014-03-01

ピーター・ジャクソン監督『ホビット 竜に奪われた王国(The Hobbit : The Desolation of Smaug)』"ゆきて帰りし物語"が待ち遠しい!

注・内容に触れています。
「ロード・オブ・ザ・リング(以下「LOTR」)3部作のピーター・ジャクソン監督が、同シリーズの60年前を舞台にした前日譚を描く3部作・第2弾『ホビット 竜に奪われた王国(The Hobbit : The Desolation of Smaug)』

物語・ホビット族のビルボ・バギンズ(マーティン・フリーマン)は魔法使いのガンダルフ(イアン・マッケラン)や屈強なドワーフの一行と共に、たった一頭で一国を滅亡に導くと伝えられる邪悪な竜スマウグに奪われたドワーフの王国を奪取すべく旅に出る。物語項、シネマトゥデイより抜粋

Hobbit1

Memo1
『ホビット 思いがけない冒険』が原作に近い形のお話でゆったりと進んでいたのが本作、突然走り出します!
しかも原作とは大きく異なったレゴラス(オーランド・ブルーム)登場、そしてタウリエル(エヴァンジェリン・リリー)とキーリ(エイダン・ターナー)との三角関係、LOTRとの関連付けをハッキリとさせた"サウロン"のことなどなど。
※途中、ガンダルフとビルボとが二手に別れたことによって前作であったガンダルフがドワーフたちの引率者みたいに常に「9、10、11…、よし全員」と人数確認する微笑ましいシーンが見られなくなったのは残念(逆に言うと成長した、もしくはドワーフのキャラクター描き分けがはっきりしてきたとも考えられる)
※冒頭、旅の始まる1年前、ガンダルフとトーリン(リチャード・アーミティッジ)が出会うシーン。キーとなるアイテム、アーケンストーンを取り戻す話から岩山よりひょいと顔をのぞかせるビルボ。もう、この掴み部分から最高の序段。
3部作中間部分に傑作が多いと言われているとおり、飽きの来ないブリッジ作品となっている。
そして続く完結編が大団円へ向かうことを予感させる(「エーッここで終わり〜」でもありますが)見事なラスト。
はなれ山から飛び立つスマウグ。
「アイ・アム・ファイアー」
向かうは湖の町。
そこにはかつて一歩のところでスマウグを仕留め損なったバルド(ルーク・エバンス)が。
「何をしてしまったんだ…。」
見つめるビルボ。
そしてエンドタイトルに流れる曲
Ed Sheeranによる "I See Fire"
歌詞はそのまま物語とリンクする。
話題のひとつ。
「SHERLOCK シャーロック」のフリーマンとベネディクト・カンバーバッチの“共演”
"ドラゴン界のハンニバル・レクター"と称していたぐらいに狡猾さを持った邪悪なる竜、スマウグ。そのやりとりの面白さ。本当に驚くほど巨大な竜と向いあうのが小さき者ビルボだというLOTRとの繋がり(あの「王の帰還」大団円。誇らしげなホビットたちと対を為す)
超スピンオフ映画で"ベーカー街のビルボ・バギンズ"ってどうだろう?
逆の"ベーカー街のスマウグ"では『サラマンダー』になってしまうw
(←と、ちょっと妄想)
ピーター・ジャクソン監督がカラコレ(色彩調整)にかなりの時間を割いたというだけあって前作を大幅に上回るスーパーマリオ並のアクション(※)でも疲れなかった(彩度調整などの影響が大?)。
※そのアクション
・樽に乗っての川下り、追いかけるはアゾグを首領としたオークたち、さらにタウリエルのちらりと燃ゆる恋の炎からの手助けと想いを寄せるレゴラスがひらりひらりと樽から樽へ(しかも縁ぎりぎりだったり)弓矢を放ちつつの大乱戦。
・ドワーフチームとビルボによるダンジョンよろしくスマウグとの追いかけっこ。そしてスマウグへのトラップ大作戦。これは随分サイズとか違うので例えにならないかもしれないけれどクッパとマリオの隙を見て戦う戦術を思い起こした。さらに湖の町でのレゴラス、タウリエルとバルドたちとオークの戦いが同時進行で描かれる。
HFR(ハイフレームレート:1秒間24コマ・フレームレートを倍の48コマで撮影、上映する)と3Dの相性もいい!(前作よりさらによくなっていると思う)
スマウグが動くたびにサラサラ流れる金貨が見える!

嗚呼、完結編"ゆきて帰りし物語"が待ち遠しい!

Hobbit2

Hobbit3_2

Memo2
The Hobbit Blog -
The official blog of THE HOBBIT movies
http://www.thehobbitblog.com/
見た後に必ず聴きたくなるエンドテーマ
The Hobbit: The Desolation of Smaug -
Ed Sheeran "I See Fire"
http://www.youtube.com/watch?v=mllXxyHTzfg

映画『ホビット 竜に奪われた王国』公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/thehobbitdesolationofsmaug/

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アレクサンダー・ペイン監督『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅(Nebraska)』父と子の"ゆきて帰りし物語"

『アバウト・シュミット』『サイドウェイ』『ファミリー・ツリー』のアレクサンダー・ペイン監督による父と子の"ゆきて帰りし物語"『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅(Nebraska)』主演のブルース・ダーンは本作でカンヌ国際映画祭男優賞を受賞。

物語・100万ドルが当たったという通知を受け取ったウディ(ブルース・ダーン)。それはどう見てもインチキだったが、徒歩でもモンタナからネブラスカまで金を受け取ろうとするウディに息子のデイビッド(ウィル・フォーテ)が付き添うことに。こうして始まった父と息子の4州をまたぐ車での旅。途中、立ち寄った父の故郷で、デイビッドは父の意外な過去を知ることになる。(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

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モノクロ、スコープサイズ。
どこまでも広がる何もない土地、同じような風景が連なる道行。
故郷ホーソーンのがらんとしたなんともいえない侘しさ。
撮影はペイン監督とは3作目となるフェドン・パパマイケル
モノクロにありがちなハイキーさはなく、やわらかい画調が本編にピッタリ。
"アレクサンダー・ペイン落語"とも言うべき語り口を味わう映画。ブルース・ダーンも上手いが奥さん役のジューン・スキップが受けと攻め、両面から上手い(ぼやき漫才の人生幸朗・生恵幸子師匠の「何言うてんねん、この泥亀!」という威勢のいいツッコミを思い出した)
同じペイン監督『アバウト・シュミット』でもジャック・ニコルソンの妻役で出演(←これもネブラスカ州!)
あとウディ・アレン『アリス』が映画デビュー作というのも、ちょっと驚き。
父と子、夫婦、縁遠くなっていた親戚、故郷の友人たち、それぞれの距離感に「あるある」と思ったりホロッとしたり人それぞれの受け取り方ができる、あとになればなるほどじわ~っとくる映画。
会話ないよなー、とか(テレビをみつめる絵面が観客側を向くことになる。そのショット、キツイわー)、大金が入ったことによって俄に活気づく周囲のひとたち(怖い…)、久々に会った友人が実は…、母ケイトより前に父がつきあっていた女性とか、カラオケで唄われている"タイム・アフター・タイム"のもの哀しさ…、淡々とそして的確に描かれている。
一筋縄ではいかない老人たちが多数。おじいちゃん版ハングオーバーとも言える(これから公開される)「ラスト ベガス」と連なる"おじいちゃん映画の系譜"?
父親のお墓の前で毒舌吐きまくるケイト(ジューン・スキップ)
「もう少し顔がよかったらねぇ」
「ルター派と同じ場所になんか埋葬しないわよ」
「すぐにパンツの中に手をつっこんでくるんだから」
おまけにはスカートまでまくりあげて墓の前に立つ始末。
そんなケイトだが100万ドル当たったと思ってお金をせびってくる親戚たちにピシャリと「とっとと、くたばれ」と言い放つ姿やラスト近く、病院から兄ロス(ボブ・オデンカーク)と先に帰る際に寝ているウディの髪を整え、そっとキスをしたりと、ちょっと他人にはわからない夫婦の機微も垣間見えて素晴しい。
なんだかんだと言いながら、すぐに人の言うことを信じてしまうウディを守ってきたんだなぁー、と。
可笑しみある台詞。
笑えるぐらいバレバレの覆面強盗(同じ体格のオッサン甥っ子ふたりw)に当選の手紙を盗まれた上、捨てられる。
その場所にさがしにいくふたり。
「入れ歯を見つけるよりは簡単だろ」

※蛇足
ネブラスカの春~は~何も無い春です~♫(吉田拓郎「襟裳岬」のメロディで)とか同じ拓郎さん「おやじの唄」とかブルース・スプリングスティーンのアルバム「NEBRASKA」(「BORN IN THE USA」の反動とも言うべきアコースティックギター、自宅録音で製作された労働者階級を唄った本作サントラでもいいんじゃないのというぐらい印象がモノクロ的静かな作品)や浜田省吾『Home Bound』(原点回帰の意味の込められたタイトル)とか、全く関係なさそうなありそうなことがいろいろ思い浮かんだ。
下記US版ポスターがディランのアルバム『Bob Dylan's Greatest Hits』ジャケットみたいだ。

Nebraska2

映画『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』公式サイト
http://nebraska-movie.jp/


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