マノエル・ド・オリヴェイラ監督『家族の灯り(GEBO AND THE SHADOW)』
注・内容に触れています。
100歳を超えてなお現役の映画監督であるマノエル・デ・オリヴェイラ監督による新作!!『家族の灯り(GEBO AND THE SHADOW)』出演はマイケル・ロンズデール、クラウディア・カルディナーレ、ジャンヌ・モロー、リカルド・トレパ、他
物語・帳簿係として勤務するジェボ(マイケル・ロンズデール)は、妻ドロテイア(クラウディア・カルディナーレ)と息子の嫁ソフィア(レオノール・シルヴェイラ)と暮らしている。8年前、息子のジョアン(リカルド・トレパ)は突然行方がわからなくなってしまった。決して裕福ではないながらも、三人は肩を寄せ合いながら一様にジョアンの帰りを心待ちにしていたが…。(物語項、シネマトゥデイより抜粋)
※Memo
●突然訪れる不意打ちのようなラストは、またしてもオリヴェイラ監督にしてやられたと嬉しい衝撃。
●絵画の中の演劇(映画)。
冒頭、波止場のシーン。
ほとんど動いていないので一瞬、"絵画"?と思ってしまうのだが波がたっているので"映画"だと判別できる。
続く息子のジョアンが錨に手を置き、画面とは全く違う方向(真横!!)のショットも奥行きがなく極めてフラットな構成。
それは室内の中に移っても続く印象。
かつてデジタル処理によって絵画(油絵)に溶け込ませた映画「グレースと公爵」(エリック・ロメール監督)を思い出したが本作はそれこそ絵画のような映像の中で繰り広げられる演劇と言える。
●ほぼ室内劇。
窓から見える外の景色とランプの灯り具合でかろうじて時刻がわかるぐらい。
とにかく動かないフィックス画面で続けられる会話。
話を聞いていくと出て行った息子ジョアンのことが浮かび上がってくる。
失踪した息子を待つ母、(その失踪の理由を知っているとおぼしき)父、そしてジョアンの妻。
驚くべきはお茶を飲みにやってきくる近所のジャンヌ・モロー。
完全にカメラの方(観客の方)に視線を向けて真正面を向いているのだ。
●元が戯曲(ラウル・ブランダン)ということもあってか三幕物の体裁で紡がれている。
・まず失踪しているジョアン不在の中での家族の会話
・続いて帰ってきたジョアンと家族
・そして父ジェボの預っていたお金を盗んで再び出ていったジョアン、そして残された父とジョアンの妻
(母に「このことは言えない」と言う父親が下した決断が…)←このラストではじめて陽がさしたショットが出現する。
その眩しさ。
まさに不意打ちのように訪れる。
●(もう、とにかく驚いた→)「ブロンド少女は過激に美しく」から、さらに誰も登ったことのない頂に立つかのような挑戦的な作品を撮ったマノエル・ド・オリヴェイラ監督。
今年(現在)105歳。
世界最高齢の現役監督にして、このラジカルさ!
見られよ!
『家族の灯り』
http://www.alcine-terran.com/kazoku/
追記Memo
※現在入手できるオリヴェイラ監督作品のDVD-BOX(Blue Rayさらにソフト化も無い!)は上記リンク(価格表示されていないもの)にあるように中古市場で非常に高価。再発、そして「ブロンド少女は過激に美しく」のソフト化を。
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