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2014-05-09

『ある過去の行方(THE PAST)』アスガル・ファルハディ監督、ベレニス・ベジョ、アリ・モサファ

ある過去の行方
原題 : THE PAST
Le passé

監督は前作『別離』で第84回アカデミー賞外国語映画賞を受賞したアスガー・ファルハディ

物語・4年前に別れた妻マリー(ベレニス・ベジョ)と離婚手続きを行うため、イランから彼女のいるパリへと飛んだアーマド(アリ・モサファ)。かつて妻子と日々 を過ごした家を訪れると、マリーと長女のリュシー(ポリーヌ・ビュルレ)が子連れの男サミール(タハール・ラヒム)と一緒に暮らしていた。マリーとサミールが再婚する予定だと聞かされるものの、彼らの間に漂う異様な空気を感じ取るアーマド。そんな中、マリーと確執のあるリュシーから衝撃の告白をされる。(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Past1

Memo
アスガル・ファルハディ監督『ある過去の行方』は前作までの特徴であったハンディカメラではなく、きっちりとした止め画(え)で見せてくれる(ハンディでも撮られているがステディカムタイプで揺れない)。そして例によって会話の中から関係性や出来事を読みとっていくタイプの構成となっている。その日常(夫婦間のことや男女のこと、親子関係など)を描いているにも関わらず、なんというスリリングさ。紡ぎ出されゆく物語タペストリーの巧みさ(最初に見た初ファルハディ監督作品「彼女の消えた浜辺」でうけたインパクトも、まさにこの語り口)。
タイトルバック
ワイパーの動きに合わせてかき消される「THE PAST(Le passé)のタイトル。
空港から始まって車内での会話(「ビフォー・ザ・ミッドナイト」の冒頭15分間延々と続くシーンを思い出す)。
この先何かよからぬ事が起こりそうな不安を帯びた描写、雰囲気が延々と続く。
(空港で迎えに来ているマリーが手を振っているのに気づかないアーマド、降りだした雨、手に怪我しているマリー、そのためのおぼつかない運転、駐車違反になるからと車での移動を余儀なくされリュシーの学校を廻るアーマド、サミールの息子が寝る場所でもめる、果ては、その息子がトウモロコシをナイフでガシガシ削っているだけで冷や冷やしてしまうぐらいどこか異様だ)
場所が自宅旧友のレストランクリーニング店薬局
それらを繋ぐブリッジは車内歩道と監督初のパリでの撮影にもかかわらず、ほとんど限定された場所(インタビューによると意図的にパリっぽくない場所になるように組まれていたとか)。
あとはその中で次第に判ってくる事実、不穏当さの理由。一種の謎解き的な趣を持っていて飽きさせない。
ジレンマ(登場人物たち全てが抱えているものとも言える)
そして、結果としてどちらかを選ばないといけないこととなる。
事の真相が判って娘リュシーに言う台詞
「このまま話さずに一生、悩み続けるか、話すかだ」
ラストショット
果たして昏睡状態からサミールの妻は目覚めたのか、否か(錯覚か)。
どちらにせよ、この先に待っていることは"さらなる物語の始まり"を予感させて映画は終わる。
(このシーン。寝ている妻の手を握るところは画面下に隠して写していない。巧みな計算されたショット。続く、香水をつけて声をかけるサミール、その手のアップでストップ←見ているこちら側にもどちらとも取れるような握り方)

Past2

映画『ある過去の行方』公式サイト
http://www.thepast-movie.jp/

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