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2014-06-28

スパイク・ジョーンズ監督『her/世界でひとつの彼女』ホアキン・フェニックス、スカーレット・ヨハンソン、ルーニー・マーラ、エイミー・アダムス、他

注・内容、ラストに触れています。
(そして、この記事はアップデートされるサマンサのように加筆、訂正ありです)
her/世界でひとつの彼女
(her)
スパイク・ジョーンズ監督
ホアキン・フェニックス、スカーレット・ヨハンソン
ルーニー・マーラ、エイミー・アダムス、
オリヴィア・ワイルド、クリス・プラット、他

物語・近未来のロサンゼルス。セオドア(ホアキン・フェニックス)は相手に代わって思いのたけを手紙にしたためる代筆ライターをしていた。長きにわたり共に生活してきた妻キャサリン(ルーニー・マーラ)と別れ、悲嘆に暮れていた彼はある日、人工知能型OSサマンサ(スカーレット・ヨハンソン)と出会う。そして…

Her_1

Memo1
スカーレット・ヨハンソンの声だけの演技は噂以上の豊かな表情をみせる(そう!姿はないのだが、まさに表情なのだ)
セオドアは音楽にせよチャットの相手にせよ、直感的に声で選んでいる訳だから、まずその声に惹かれたのだということもよくわかる。
・それにしても校正までしてくれる人工知能OSなんて、羨ましいぞー(←陰の声)
代筆業といっても「声」を届けるのではなく、わざわざ紙にプリントアウトした「手紙」として贈る(送る)ことになっている仕事が存在する近未来。
(最後に「本」として出てくるエピソードも含め)興味深い話。
「she」ではなくて「her」というタイトルにしていることの意味はラストで深みを増す
何千という人と会話し、そのうちの何百という人に恋をするサマンサ。
突如、サマンサと会話(アクセス)ができなくなって狼狽するセオドア。やっと繋がった時にうろたえつつも冷静さを取り戻そうと階段に腰をかけて、ゆっくり周囲を見渡す。
すると自分と同じようにOSに話しかけている多くの人たち。
そう、"彼女"はひとりであり、ひとりではない。
そのことを知る現実。
「君は男と女の両方、持っている」とセオドアに語りかける上司。
OS自体が元々性別の違いを持っていないことを考えてみるとこの台詞、実にうまく本質をついている。
セオドアがなかなかクリアできないでいるゲーム。
その中に出てくるエイリアン・チャイルドが口が悪くてちょっとTEDを思いだしたり。(スパイク・ジョーンズ監督自身が声の主)
さて、その声であとから(エンドクレジットで)気がついたのがはじまってすぐチャットに登場する女性の声がクリスティン・ウィグ。
これまた至芸な豹変ぶり声の演技で面白い。
人が変化していくことと同じように(いや、もっと速さと深さをもって)変化するサマンサ(人工知能OS)
決して肉体をもって抱きしめ合うことができないもどかしさのあるセオドア。
終盤。
哲学者アラン・ワッツの会話やデータなどから構築された人工知能OSのアラン・ワッツがサマンサから紹介されセオドア含め、3人で会話をすることに。
記述することができないような、さらなる高みへ移っていこうとするサマンサ。
人工知能同士が同時並行に語り合っている世界。それはもはや肉体をもたないものだけで完結してしまい人が入り込む余地がない。そこに生まれる疎外感、嫉妬…
そして、去りゆくサマンサ。
説明することはできない、と。
そのときに気づくセオドア。
今まで、こんな気持ちで愛してこなかったことを…。
代筆ライターとしてではなく
キャサリンに向けて
初めて自分の気持を素直に綴るセオドア。
「世界のどこにいようと君のことを想っているし感謝している」
そして、開放される…
(大きくため息)
屋上に登り空を見上げ座る。
隣には、同じように長年連れ添った相手と別れ、同じように人工知能OSと友人になっていたエイミー(エイミー・アダムス)が。
そっと頭を肩に寄せたところでエンドタイトル。

※メディア論的アプローチとして書かれた記事
【粉川哲夫のシネマノート】(短期集中ブログ) スパイク・ジョーンズ『her 世界でひとつの彼女』を考える。 
前述のアラン・ワッツのことが詳細に書かれています。また小津へのオマージュ、ウディ・アレンのあの映画にひっかけた文章の話など
http://herspikejonze.sblo.jp/

Memo2
メインキャストのあとに『her』タイトルが浮かび上がり"Dedicated to our friend"としてジェームズ・ガンドルフィーニ(James Gandolfini)、モーリス・センダック(Maurice Sendak)、アダム・ヨーク(Adam Yauch)、ハリス・サヴィデス(Harris Savides)の名前が。
ジェームズ・ガンドルフィーニは「かいじゅうたちのいるところ」でキャロルの声を演じていた方。
クリストファー・ノーラン監督次回作『インターステラー』も手がけるホイテ・ヴァン・ホイテマが撮影監督。
全体に暖色系のレンズフイルターをかけたトーンは本作の肝となるキーカラー。
特に海岸やキャサリンとの回想シーンなど陽光射す場面からくる暖かさは印象的。
下記インタビュー記事で「her」撮影に際して如何にSF的イメージの「青」を排したかについてコメントしています。
また、監督から川内倫子さんの写真集から多くのイメージをインスパイアされたことも語っています。
Cinematographer Hoyte Van Hoytema on capturing Spike Jonzes Her through a non-dystopian lens
衣装デザイナー、ケイシー・ストーム(Casey Storm)
前述の撮影とも重なる部分ですが、色のルールとして未来の人がどういう色を好むかを追求した結果、居心地がよくて温かいオレンジ黄色といった色を多様することにしたとインタビューで語っていました。
メインタイトルデザインや劇中のオフィス、携帯デバイス、地下鉄ロゴ及び路線図などを制作
ジェフ・マクフェトリッジ(Geoff McFetridge)
(『かいじゅうたちのいるところ』やソフィア・コッポラ監督『ヴァージン・スーサイズ』のタイトルデザインも)
http://championdontstop.com/site3/clients/Her/Her.html

撮影風景
Her - Behind the Scenes
http://www.youtube.com/watch?v=-BprhBgweJA
雪の中、山荘でウクレレをひきながらサマンサと唄う「The Moon Song
Her - Karen O and Spike Jonze _The Moon Song
http://www.youtube.com/watch?v=CxahbnUCZxY
Arcade Fireのストリングスアレンジなどを手がけるオーウェン・パレットによるスコア部分も非常に美しい。
Arcade Fire and Owen Pallett Scoring Spike Jonze's Her
http://www.youtube.com/watch?v=Q_0hTBNQhSM

映画『her/世界でひとつの彼女』公式サイト

http://her.asmik-ace.co.jp



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2014-06-18

吉田拓郎さんのNewアルバム『AGAIN』

6月18日吉田拓郎さんのNewアルバム『AGAIN』がリリースされました。

Again_b

セルフカバーアルバムだけれども自身で過去歌っていない高木ブーさんへの楽曲提供曲「僕の大好きな場所」(作詞・篠原ともえ)と新曲「アゲイン(未完)」が含まれている。
「アゲイン(未完)」は拓郎さんの(突然消えるかもしれない文章と画像のブログ)「拓つぶ」によるとコンサートで完成ということに。(←もしかしてライヴ収録あり?)
※その同じ「拓つぶ」2/11の時点では「これ入れるかなー悩む」と語っていた「ワシらのフォーク村」も無事収録されていて思わず頬が緩む( ´ ▽ ` )
(そして、秘密のコーラスって…。)
歌詞カードにそれぞれの曲と対になるようなコメント、というか短文集。
どれがどの曲にということを考えて読むと、いろいろしみじみ。
前述「アゲイン(未完)」と対の短文は問いかけでもありモノローグでもあるという本アルバムと共振しあう"ことば"
短編小説のような「アキラ」(年齢的には違うけれど映画「スタンド・バイ・ミー」的だったり"おちんちん"フレーズで、ふと冨樫森監督「ごめん」を想起したり)
オリジナルバージョンもよいけれど、今回のもよいなぁ。
ついつい聴き入ってしまうストーリー。
レゲエを取り入れた曲として初披露時から人気の高い「いつか夜の雨が
徐々にギターカッティングリズムによるレゲエ打ちではなくなってきていたが今回は更に。
レゲエに関しては過去にこんなブログ記事も→『ボブ・マーリー/ルーツ・オブ・レジェンド』を見て思い出す1979年、そして吉田拓郎「アジアの片隅で
https://color-of-cinema.cocolog-nifty.com/blog/2012/09/post-9e29.html
個人的には思い入れのあるアルバム「Rolling30」(1978年)から3曲。
・裏街のマリア

・素敵なのは夜
ライヴでは1979年「アイランドコンサート in 篠島」で歌っただけと思われる「裏街のマリア」がセルフカバーされているだけで"ご飯200杯もの"なほど嬉しい( ´ ▽ ` )ノ
素敵なのは夜』は当時のLP形態では2LP+シングル1といった形でリリースされたなかのシングルに入っていた楽曲。
これも白石ありすさんの独特の詩の世界をベースラインが♪だんだんだんと降りていくアンニュイな雰囲気アレンジがオリジナル、今回のセルフカバー共に好きな曲だ。

この写真は前述「アイランドコンサート in 篠島」で臨時停船場近くの堤防に立てられた看板(製作途中)の写真(古い写真をスキャニングして加工)

Shinojima_2

今回のアルバム未収録となった「僕の唄はサヨナラだけ」ダウンロードカード・プレゼントキャンペーンで何回となく本作を聴いて発見したのはラジオから流れる音とCDをスピーカーで鳴らす音とiPhoneなどをheadphoneで聴く音が違う(感じ方が違う)ことをあらためて発見した次第。
アゲイン(未完)」はスピーカーとheadphone、両方で聴いてみると特に!

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2014-06-17

タイトルデザイン_43 (Picture Mill) 『デンジャラス・バディ(The Heat)』ポール・フェイグ監督、サンドラ・ブロック、メリッサ・マッカーシー

デンジャラス・バディ
(The Heat)
ポール・フェイグ監督
サンドラ・ブロック
メリッサ・マッカーシー

物語・麻薬組織の捜査を命じられた(真面目な)FBI捜査官サラ・アッシュバーン(サンドラ・ブロック)と(登場した時点でわかるぐらいw)の不良刑事シャノン・マリンズ(メリッサ・マッカーシー)は、お互い不本意ながらコンビを組んで事件の解決を図るのだが…

Heat_j

Memo1
全くタイプの違うふたり。そして反発しあいながらも次第にわかりあえていくというバディもの王道ストーリー骨格。それを演じるのがメリッサ・マッカーシーとサンドラ・ブロックという部分ですでになにやら可笑しい。
開巻すぐにガサ入れシーン。
サラがあんたは超能力者か、と思えるほどテキパキと麻薬や武器を見つけていく(その辺りが同僚から杓子定規的な印象で煙たがられ気味)
あ、警察犬の鼻もかたなし(←シュンとするw)
案の定、出会った瞬間から全く合わないふたり。
マリンズの捜査手法はドカンドカンの見たままの突進ぶり。サラは基本に忠実、手順を踏んでの捜査と対照的。(取調についても、そう)
そのふたりが、と、いうかサラが徐々にタガが外れ始めていくきっかけとなるシーンが2回。
クラブへの潜入。
その格好では銀行員みたいだとマリンズに袖を切り、パンツも短パンスタイルへ破かれる。(髪の毛が形状記憶しているのかというぐらいに乱れないサラw)
そこでの(奇妙な)ダンス。
もうひとつは、せっかく重要なキーマンを逮捕したにもかかわらず、DEAとの歩調合わせのためにサラに捜査から外れるように告げるFBI上司。
なぐさめるように「警官が仕事の後に飲みに行かないでどうする」とパブへ連れて行くマリンズ。
そして。
タオルでバンダナ、テープを貼ってブタ鼻、同じ曲で26回以上踊る、髪の毛は乱れ着衣も乱れ(下着も顕に)、勢い余った乾杯で手を怪我したりとメチャクチャなことに。
翌朝…。
ポールフェイグ監督。
ひとつのシークエンスが長くなるきらいがあるが、そのベタな呼吸が好きな人にはたまらない(例えが違うかも知れないけれど吉本新喜劇の間寛平と池乃めだかの猫ギャグに通ずる!?)
例えばこんなシーン→マリンズの弟が事件にかかわっているために命を狙われるかも知れないということで家族全員で隠れるための移動だけで10分。
そのあとのまさかのスプラッターかというレストランでのパンケーキ喉つまらせ騒動にも10分。
(直後の電話奪い合いも 笑)
途中でサラの生真面目な性格の出目(孤児だったという)が判ってくるのだが、そのことを踏まえてのバディでもなくこういった(アルバムの最後に書いてあった)言葉で締めくくられているのが、ちょいホロ(ちょっとほろり)で素晴しい。
"FOSTER KID-
NOW YOU HAVE A SISTER.
Mullins"

やたらとタイトルにデンジャラスを入れられてしまうサンドラ・ブロック。
「ゼログラビティ」も全米での高評価&ヒットがなければ「デンジャラス・グラビティ」になっていたかも(と、これは蛇足)

Memo2
メインタイトルシークエンスはPicture Mill
70年代風味のバディものタイトルを想起させるワクワク感に満ちたメインタイトル。(このタイプの見せ方、ここ数年増えているような気がします)
タイトル部分動画あり
http://www.picturemill.com/TheHeat.html

Heat

THE HEAT US公式サイト
http://www.theheatmovie.com/

(

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2014-06-16

ソフト(DVD. Blue Ray)にはなっていないけれど_1

「DVDにはなっていないけれど」改め「ソフト(DVD. Blue Ray)にはなっていないけれど」(VHSで過去に販売されたりDVD発売直後に売切れ、入手が難しいといった作品をまとめて「ソフトにはなっていないけれど」という形で掲載していきます)

過去記事(「DVDにはなっていないけれど」)で未DVD化作品が既に、発売及びオンデマンド販売、レンタル(TSUTAYA発掘良品)などが始まっているものがかなり増えました。
まあ、その中で何と言ってもフィリップ・ド・ブロカ監督リオの男」のソフト化は嬉しい!(待ってましたー!しかも吹替が山田康雄さん!)

と、いうことで一回目はつらつらと未ソフト化作品を並べてみます。

Bojusuviqaah05xjpg_large

ピーター・セラーズ『別れの街角』ジェーン・フォンダ、ジョセフ・ロージー監督『人形の家』ラリーピアース監督『あの空に太陽が』ウィリー・ネルソンとエイミー・アービング『忍冬の花のように』ジョセフ・ボトムズ(4兄弟全員役者)、ジョン・バリー音楽の『ダブ』…
そしてオットー・プレミンジャー監督ローズバッド』CIA情報部員にピーター・オトゥール、ゲリラ側指導者にリチャード・アッテンボロー。内容的にソフト化が難しいのか未だVHS時代からソフト化無し。で、これタイトルデザインがソール・バス。シネラマOS劇場で見た一回限り

Cinema

日本映画は未ソフト化の宝庫ですがYTVの深夜映画枠「CINEMAだいすき」の配布されていたパンフを見返していて思い出した作品→市川崑監督愛ふたたび』(1971年)主演 : 浅丘ルリ子ルノー・ベルレー(「個人教授」で当時絶大な人)、脚本:谷川俊太郎、音楽:馬飼野俊一(康二の兄)。あまりの並びにクラクラした。パリ・ 金沢・東京、愛の三都物語。浅丘ルリ子の妹役で桃井かおりが映画初出演。

(この頃の東宝作品。文芸路線とよばれるラインがあったなぁ、と。『雨のアムステルダム』『アフリカの光』『櫛の火』『阿寒に果つ』や市川崑監督の『吾輩は猫である』など未ソフト化かな?)

リチャード・レスター監督『ローマで起った奇妙な出来事』タイトルデザインが「ピンクパンサー」や「カジノ・ロワイヤル('67)」「ロジャー・ラビット」を手がけたリチャード・ウイリアムズ(Richard Williams)
このエンドタイトル、最初に映っているのはバスター・キートン
http://www.youtube.com/watch?v=kNqptHlkjAA&feature=youtu.be

Img_2971

そして締め括りはブロカ監督ベルモンドの怪盗二十面相
こちらは公開時の二色刷り(片面のみ)のチラシ。
もしかしてVHS化もされていないような…。
あ!
その前に『おかしなおかしな大冒険』ソフト化を是非!

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2014-06-13

エットーレ・スコラ監督『あんなに愛しあったのに(C'eravamo Tanto Amati)』(1974年)

あんなに愛しあったのに』(1974年)
C'eravamo Tanto Amati
エットーレ・スコラ監督
ニーノ・マンフレーディ
ヴィットリオ・ガスマン
ステファノ・サッタ・フロレス
ステファニア・サンドレッリ

エットーレ・スコラ監督作品は「マカロニ」「特別な一日」「BARに灯ともる頃」と好きな映画が多いのだが、その中でもフェバリットな一本。
本作は今挙げた作品より先に撮られた1974年の作品(日本では1990年公開)。
第二次大戦中のレジスタンス仲間アントニオジャンニニコラの3人とルチアーナ(ステファニア・サンドレッリ←『暗殺の森』のあの女優さん)という女性をめぐる30年にわたる物語。

Amati_1a

Memo
過去はモノクロ、現代(1960年代〜)はカラー
広場に描かれた絵がモノクロからカラーに変わっていく切り替わりのシーン
映画的引用が素敵。
ニコラが『自転車泥棒』に衝撃を受けるシーンで実際にその作品映像が使われています。
フェデリコ・フェリーニ監督マルチェロ・マストロヤンニヴィットリオ・デシーカ監督本人が出演している。
「甘い生活」撮影中。
あのトレビの泉シーンで(女優となった)ルチアーナとマストロヤンニがチェアに座って会話をしているところへアントニオが偶然出会すという設定。
フェリーニ監督「甘い生活」はモノクロ作品だが、このシーンが本作ではカラーで撮られているところが新鮮。考えて見れば本作撮影時期は10年も経っていないわけだからマストロヤンニ、フェリーニ監督が実際に出演しても違和感がない訳だ。(逆に本作『あんなに愛しあったのに』が公開されてから既に40年近く過ぎていることを考えると、その稀少性、偶然性にあわせて驚く)
ラストは最初にルチアーナと結ばれたにもかかわらず別の女性と結婚してしまったジャンニがひとり豪邸にいる姿を三人が見て、そのまま立ち去るところで終わっている。
音楽がイタリア映画においては欠かすことのできない作曲家アルマンド・トロヴァヨーリ
ほぼ全てのエットーレ・スコラ作品(同じく同監督未DVD化の『ジェラシー』は音楽としてもベストな一作)や『昨日・今日・明日』『黄金の七人』『女性上位時代』など200作以上!
未ソフト化(VHSのみ過去に出たことはありましたが未DVD、Blue Ray)作品。

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2014-06-09

大林宣彦監督『野のなななのか』常盤貴子、品川徹、寺島咲、安達祐実、他 "見ることによって語り継がれる映画"

注・内容に触れています。
野のなななのか
大林宣彦監督
出演 : 常盤貴子、品川徹、寺島咲
安達祐実、他
音楽 : パスカルズ

物語・北海道芦別市で古物商を経営する元病院長の鈴木光男(品川徹)が、3月11日の14時46分に逝去。92年に及ぶ人生の幕を閉じる。告別式と葬儀の準備をするため、鈴木家の親族が故郷である芦別に集結。大学教授の冬樹(村田雄浩)、原発職員の春彦(松重豊)、看護師のカンナ(寺島咲)ら、光男の長男、次男の子どもたちが久々の対面を果たしていると、清水信子(常盤貴子)という女が訪ねてくる。やがて、彼女を通して1945年に起きた旧ソ連の樺太侵攻で光男が体験した出来事を彼らは知る。(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Nananoka1

Memo1
自由なる筆致で描かれる"大林宣彦絵画"
全く途絶えることのない言葉の洪水。
言いたいことが溢れでてスクリーンから濁流のように押し寄せてくる、その情報量に一回見ただけでは全体を把握することはほぼ判別不能なほど。
しかし考える余裕すら与えてくれない展開と密度にも関わらず、ずっといろいろ考えさせられる3時間。
部分は全体であり全体は部分でもある不思議な映画的時間。
実際、冒頭からたたみ込むように物語は幕を開ける。
カンナがやかんに触れて「痛っ」と声を上げた瞬間よぎる想い。
そしてカンナのおじいちゃん、鈴木光男が倒れて入院、集まってくる親族たち。その会話。誰と誰が、どのような繋がりかわからないスピードになっている。
清水信子がすっとドアの向こうから現れて「まだ、間に合いましたか」と入ってきてベッドの横につき「ただいま戻りました」
傍らに立つ医師が。
「ご臨終です」
時間は14時46分。
「おじいちゃんの時計、ずっとこの時間で止まってた」
すっと自分の時計(かなり古い)を見る信子。
…その時計も14時46分で止まったままだ。
生と死の境界線が曖昧な「なななのか」(四十九日)の時間の中に死者も生者も現在も過去もさらに遠い過去もすべてのものが綯交ぜとなって存在する。
「誰かの代わりに生まれ誰かの代わりに死んでいく」
その場に常盤貴子と安達祐実のふたりがいたことによって急遽、撮影されたシーン(のちにポスターとなる)
まさに生まれ変わりなのではないか、ということを思わせるコーヒーカップの持ち方、髪を片手でかき分ける仕草(その瞬間にパチッと繋がったとあるインタビューで監督が答えていました)
このシーンに至るまでの演劇的ともいえる表現は本作中、最も熱を帯びいろいろなピースがつながっていく白眉な展開になっている(観客側の空気もそう感じた)
「団塊の世代」が完全に「空白」として扱われていて(他界している設定で)誰ひとり登場しない。(←鑑賞後に読んだインタビューなどであと付け的に再確認)
なるほどと思ったのは確かに、そこの年代の登場人物がいないことによって映画初見では家系図的な繋がりがわかりにくくなっていたのか、と。
「団塊の世代=戦争を知らない子供たち」の不在は戦争を体験した者たちと語り継ぐ者(こども)たちを浮かび上がらせる。
本当に鋭い論考だなぁ、と。
時計の針は14時46分から止まったまま。
(未来を生きはじめることによって動き始める)
そして、この映画もまた、これからも見ることによって語られ止まるこなく動きつづけていく(生き続けていく)。
幾度となく再見したい映画だ。

Memo2
パンフが表1〜4を含めずに実際の本文のみで64ページもの大ボリューム。
最初に書かれている「映画館から家に帰るまでに読み切れない冊子を」通り濃い内容です!
高畑勲監督との対談、椹木野衣さんによる長編批評など掲載。

Nananoka2

映画『野のなななのか』公式サイト
http://www.nononanananoka.com/

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2014-06-06

ウェス・アンダーソン監督『グランド・ブダペスト・ホテル (THE GRAND BUDAPEST HOTEL)』レターヘッドなどのデザイン周りからアスペクト比、その他いろいろ

注・内容に触れています。
グランド・ブダペスト・ホテル
(THE GRAND BUDAPEST HOTEL)
ウェス・アンダーソン監督
出演者: レイフ・ファインズトニー・レヴォロリ、他(多すぎて多すぎて、本当の本当のカメオ出演ジョージ・クルーニーはどこに出ていたのだ、という質問が絶対にあるだろうなー、というぐらい大勢)←終盤の誰が誰を撃ってるんだーシーンらしいですが出てました?

物語・1932年、品格が漂うグランド・ブダペスト・ホテルを仕切る名コンシェルジュのグスタヴ・H(レイフ・ファインズ)は、究極のおもてなし(実は艶っぽいこと)を信条に大勢の顧客たちをもてなしていた。しかし、常連客のマダムD(ティルダ・スウィントン)が殺されたことでばく大な遺産争いに巻き込まれてしまう。そして…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Gbh1

Memo1
例によって頭の先から尻尾までぎっしりとウェス・アンダーソン監督あんこがつまったウェス・アンダーソンたい焼きと呼ぶべき映画(たい焼きではない)
で、けっして甘ーいだけではないビターな部分も内包されている。
(やや大げさに言うと)綺麗な色〜、と思って食べたら毒キノコだったみたいな感じ。
それは、いくつかの批評で指摘されているとおりバックグラウンドとして本作のきっかけとなった作家シュテファン・ツヴァイクの作品と経歴、その時代に起った出来事などが大きい。
そう実際、本作の最初は墓地から幕を開ける。

スクリーサイズ(アスペクト比)が年代に合わせて3パターン(1932年スタンダード、1968年スコープ、1985年ビスタと)変化するけれど現在の上映環境(幕が閉まらない)だとスコープサイズの張りキャンがベストということになるのだろうか?
海外の映画館サイトでレジュメらしきものを発見したけれど画像がちょっと判別しにくいのでリンクはカットしますが指定されたサイズはスコープになっているので日本もおそらくそれに準じた上映?

絵画ネタ(エゴン・シーレっぽい絵、クリムトっぽい絵←限定はしていないので"っぽい"ということで←描いた作家サイトあり←それにしても架空の画家名がホイテルってちょっと殺虫剤っぽいというか、ぼいぼい)、デザインネタ(レターヘッド周りが年代によって変わっていく、もちろんフォントも)、スイーツネタ(メンデル←多分メデル?)と、いつものように周辺ディテールいろいろあって楽しめます。
青山真治監督がパンフレットに「今回めでたく初参加したマチュー・アマルリックに注目していただきたい。彼の機敏な動作とつねに動揺しきった目は今後WA映画に必須となるかもしれない」って書いてる通りマチューよかったです。それとレア・セドゥとの同一フレームも!
PRADAショートフィルムでのレア・セドゥと違ってちょっと地味めに判別しにくい登場(すぐにわかるけど)

ハーヴェイ・カイテルがタトゥー描いてる、という冗談のようなホントの話 (ホント)
こちらも、パッと見わからなかったレベル。
そのあたりも本作のお楽しみ。

クスクスというウケ方
マダムDが亡くなって遺言について親族会議が行われるシーンで(エイドリアン・ブロディ)の隣で(声には出していないけれど)「よっしゃー」といった目つきでジョプリング(ウィレム・デフォー)が指をポキポキってならすところ。

90度正確にクルリとパンしたり水平横移動したり真上から撮ったりシンメトリーしたりしつつ、キューブリック監督へのWA監督いつもと違ったはっきりした目配せもあったり変化も。
(インタビューでも参考にした映画なども公表している)

物語を語る人物として作家(役名はYoung Writer)のジュード・ロウ、その物語となるグランドブダペストホテルのムスタフが実際に起きたことを聞かせるという入れ子構造。
語るジュード・ロウというと『レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語』も、そうであったようにこういう役、似合うなぁ。
衣装デザインがWA監督とは昨年のショートフィルムに続いて(「ダージリン急行」など他にも)アカデミー賞常連のミレーナ・カノネロ

Memo2
グラフィックデザイナー Annie Atkins インタビュー http://www.creativereview.co.uk/cr-blog/2014/march/grand-budapest-hotel
劇中登場するレターヘッド他写真あり
Annie Atkins - Graphic Design for Filmmaking
http://annieatkins.com/
メイキング映像
The Grand Budapest Hotel Complete B-ROLL
http://youtu.be/SfYOXnyzBos
メインでVFXを行ったLOOK EFFECTS そのメイキング映像(1分15秒の中におぉっ!と思えるカットが多数)
http://vimeo.com/96938056
※参考・そのLOOKFXのサイト "LOOKFX - WELCOME TO THE NEW LOOKFX!!"
その他のVFXに関わった作品が→既に公開されているものから間もなく公開のものまで!
http://www.lookfx.com/
使用されたホテル・オリジナルミニチュアモデル
(映画館のロビーに展示されたそうですが日本でも見られないかなぁ…)
http://hollywoodmoviecostumesandprops.blogspot.jp/2014/03/the-grand-budapest-hotel-original-model.html
今回は前作「ムーンライズ・キングダム」のようなPDF BOOKではないけれど相変わらずの凝ったUSサイト
左上 Enroll now!から入るとレターヘッドなどのデザイン周りが
http://www.grandbudapesthotel.com/

※その他ウェス・アンダーソン監督関連リンク
ウェス・アンダーソン監督の真上からのショットや中心線(左右対称)ショット
http://vimeo.com/kogonada/videos
(他にもキューブリック監督のパースペクティブ画面、小津監督の廊下通路ショット、テレンス・マリック監督の火と水のショットなどをまとめた動画いろいろ掲載されています)
ウェス・アンダーソン監督の配色を掲載したtumblr
Wes Anderson Palettes
http://wesandersonpalettes.tumblr.com/
(これを見るとワンショット毎に配置された小物までをも考えられていてすごいなぁ)
こんな感じで映画の配色に関してはディスク再生しながらAdobe Kulerなどでサクっと5色抜き出しチェックできるから、いろいろ参考になって楽しい。(自分でパレット化すると、どうしても暖色寄りになる)
その名もスバリ!
Wes ANDERSON tumblr
Mac&PC環境で121Pあり
旧作も含めて完全にネタバレとなる画像も多数あり
http://wes-anderson.tumblr.com/

※さらにその他関連リンク
斜面を昇る山岳列車がステキだったので調べたら、やっぱりあったFunicular(ケーブルカー・鋼索鉄道)のサイトに紹介されているリアル『グランド・ブダペスト・ホテル』列車とバーティカルリフト
http://www.funimag.com/photoblog/index.php/20140317/the-grand-budapest-hotel/
ホテル内装飾についてインスパイアされたというチェコのグランドホテル・パップ(Grandhotel Pupp)
・PhotoGalleryなどを見る限り、あくまでも装飾部分だけなのかも。
http://www.pupp.cz/en/

Gbh2


「グランド・ブダペスト・ホテル」公式サイト

http://www.foxmovies.jp/gbh/

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