『思い出のマーニー』米林宏昌監督、高月彩良、有村架純
注・内容、台詞に触れています。
『思い出のマーニー』
監督 : 米林宏昌
原作:ジョーン・G・ロビンソン
脚本:丹羽圭子/安藤雅司/米林宏昌
物語・心を閉ざした少女杏奈(高月彩良)は、ぜんそくの療養を目的に親戚が生活している海沿いの村にやって来た。そんなある日、彼女の前に誰もいない屋敷の青い窓に閉じ込められた、きれいなブロンドの少女マーニー(有村架純)が姿を見せる。(物語項、シネマトゥデイより抜粋)
※Memo1
●舞台は北海道に移してあるけど、かなり元原作に忠実につくっている。
アンナ→杏奈、マーニー→マーニー、ミセス・プレストン→頼子・おばちゃん(と、呼んでいる養母、のち"母です"と紹介するシーンが用意されている)
プリシラ→さやか(湿っ地屋敷に新たに住むことになった女の子。マーニーが書いた古い日記を見つける。最初、屋敷を見ていた杏奈のことをマーニーだと思って声をかける←今までのジブリキャラの系譜からいくと完全コメディリリーフとなる感じだが、こうき心旺盛な非常に良い子として登場している←やがて杏奈と古い日記のことを探っていくうちに最後は本当の友だちとなる)、ギリー→久子(湿っ地屋敷の絵を描いている。マーニーのこと、そこで起こっていたことを知っている)
風車小屋→サイロ、等々…
児童文学である上に米林監督がインタビューで「映画にするのは難しいだろうなぁ」と答えているとおり、大きなスペクタクルが用意されているわけでも大事件が起こるわけでもないふたりの会話の物語。
脚色していく際にもう少しミステリー要素に振りきることやマーニーの真実についのネタばらしシークエンスをケレン味ある見せ方にすることも可能だったかもしれないが、そこはあえてやらなかったのかなと思える部分が多々。
●いくつかの台詞。
・「私はわたしのことが嫌い」
冒頭、公園でひとり運動をする輪から外れて絵を描いている杏奈。
(上手いが人物が描かれていない。描こうとして消してしまう)
近づいてくる先生。
「どれどれ、見せてくれる」
(もう、その所作から"わたしにかかわらないで""放っておいて"オーラが漂っている杏奈)
握りしめた鉛筆がスケッチブックの端で軋む。
・村の七夕祭りで短冊に書いた言葉
「毎日、普通でいられますように」
その時に「何書いたの、ちょっと見せてよ」と村の子に言われ、嫌がる杏奈。
つい、"太っちょ眼鏡ブタ"と叫んでしまう。
返された台詞が
「あなたは(気づいていないけど)見たとおりに見えている」
真実を言い当てられた杏奈。
そのことが更にこころの奥へといざなってしまう。
そして、湿っ地屋敷でマーニーと出会うこととなる。
(前段階として、まるで何かに惹かれるように屋敷近くまで行くシーン、そこで一瞬、誰もいないはずの屋敷に灯りがついているのを見ている)
「ふたりのことは誰にも秘密よ」
マーニーと心通わせていく杏奈。
やがてマーニーにも人に言えなかった秘密が…。
(ここから杏奈が次第に周囲に対して、接し方が少しずつ変わりはじめ良い方向に向かっていく。逆にマーニー側に微妙な変化が現れ、反転現象が丹念に描かれていく)
・「あなたのことが好きよ」
これは本作全体を貫く大事な台詞。
●散りばめられている謎に対するヒント。
・全く描かれていない実の両親のこと、大好きな祖母のこと。
・前述の村の子に、こう言われる。
「ほら、杏奈ちゃんってよく見ると眼の色がすごく青くない?」
・両親が亡くなったとき、誰が育てるかでもめている親戚たち。
その影に怯える杏奈。
ギュッと抱きしめている人形の姿(洋服、ブロンドの髪)は、まさにマーニー。
そう、マーニーとは…
(以下ネタバレ)
ラスト、決定的な出来事となるサイロでの件(くだり)
やがてマーニーとの別れが…。
「わたしのこと、赦してくれる」
そこでのぽろぽろと溢れでて流れ落ちる涙。
マーニーを許すことはすなわち自分を許す(赦す)こと、
湿っ地屋敷の話を聞かせてくれたマーニーお祖母ちゃんを許すこと(正確には承認すること)
ひいてはマーニーの娘、そう自分の母を許すこと。
全ての自分を取り巻く世界全体を許すこと…。
※マーニーは日本人と結婚してるので杏奈の実の母親はハーフ、そして(どういう相手か描かれていないが)父は日本人、で、杏奈はクオーター。
(ある疎外感はそこに一因があったかもというのは深読みし過ぎだろうか)
●実は最初に公開されたチラシに書かれていたコピー
そこには既に本作の結末を匂わせていた言葉。
この世には目に見えない魔法の輪がある。
※Memo2
●美術監督は種田陽平さん。
日テレ「笑ってコラえて」ジブリ特集。
実写と同じように模型を作っていることが紹介されていました。アニメーターの方々は絵がかけるので間取りなどの図面が描かれることはあっても、模型を作ることはなく本作が初めて、とも。
●『借りぐらしのアリエッティ』はアリエッティの洋服の赤、本作では庭になってるトマトの赤。
共に草の緑に対しての補色。
(見事に映える)
あと、西瓜の赤も印象的。
本作の魅力のひとつは湿っ地の水の表現だと思うのですが米林監督の色彩的ワンポイントとして赤という色が今後も印(しるし)として描かれるのかもしれないと、ふと思った。
●そして、もうひとつカラーポイント。
ムシャリンドウの紫の花
(原作ではシーラベンダー)
●主題歌は「Fine On The Outside」
プリシラ・アーン(2013年末に「三鷹の森ジブリ美術館」で開催されたクリスマス・コンサートに参加)。
映画『思い出のマーニー』公式サイト
http://marnie.jp/index.html
思い出のマーニー×種田陽平展
http://www.marnietaneda.jp/
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