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2014-10-22

『誰よりも狙われた男(A MOST WANTED MAN)』ジョン・ル・カレ原作、アントン・コービン監督、フィリップ・シーモア・ホフマン

注・内容に触れています。
誰よりも狙われた男
A MOST WANTED MAN
原作 : ジョン・ル・カレ
監督 : アントン・コービン
出演 : フィリップ・シーモア・ホフマン
レイチェル・マクアダムス
ウィレム・デフォー
ロビン・ライト
ニーナ・ホス 、他

Mwm

Memo1
原作既読で鑑賞。
58ページ "職業にスパイ活動しか選べない人々がこの世にいるとしたら、バッハマンはまさにそのひとりだった" そのバッハマンをフィリップ・シーモア・ホフマン(以下P・S・ホフマン)が演じる。
原作はイッサと匿う親子のエピソードや銀行家トミー・ブルー(ウィレム・デフォー)、人権弁護士のアナベル(レイチェル・マクアダムス)のことがもう少し描かれているが2時間の軸の中で、こうまとめるのか、と脚色の(省略の)手際よさもよかったように思う。
そして原作を読んで最も驚いた最後の2ページでほぼ全てひっくり返された、この衝撃を映画はどう描くのかと思っていたら、見事に盛り上げて(音楽がここのシーンだけ違っていてサスペンスフルになる←これは意図的?)途方にくれさせてくれる。
おまけにP・S・ホフマンの、ビックリするFワードの言い回しも見られる(悔しさと怒りとやるせなさといろいろ感情が混じった時の人はこういう所作をみせるものなのか、と)
CIAのマーサ(ロビン・ライト)とバッハマン。
中盤と後半で同じ台詞を言う(正確には反証の意味を込めて)
「世界を平和にすること」
かつて自分の持っていた情報網をつぶされた経緯があるバッハマン。その上での本作ラストはやるせなさすぎる。
バッハマンの右腕イルナを演じたニーナ・ホスが素晴らしい。なんとなくふたりの間に宿る感情までも視線や動作で伺わせてみせる(カムフラージュのキスシーンの時など)
公開初日にtwitterでツイートしたけれどバッハマンが本部内で使っているマグカップがムーミンのミイが描かれたものでかわいい(笑)
(ちなみに後半でイルナも同じマグカップを使っていたみたいですが使い回し?笑)
文字通りフレームから去っていく後ろ姿をタクシー車内から捉えたショットがラストショットとなったP・S・ホフマン。
返す返すも不慮の死が残念だ。

Memo2
エンドクレジットで流れた曲はトム・ウェイツ"Hoist That Rag"
タイトルデザインはTom Hingston.
スコープサイズの左右下部に小さくクレジット(かなり小さく、このパターンは珍しい)が出た後、ロゴタイプによるモーショングラフィックス。
その他手がけられたデザインも掲載されたスタジオニュース
http://www.hingston.net/news/

映画『誰よりも狙われた男』公式サイト
http://www.nerawareta-otoko.jp/

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2014-10-09

『フランシス・ハ (Frances Ha)』ノア・バームバック監督、グレタ・ガーウィグ主演

注・内容、台詞に触れています。
フランシス・ハ
Frances Ha
監督・脚本 : ノア・バームバック
主演・脚本 : グレタ・ガーウィグ

物語・バレエカンパニーの研究生で27歳のフランシス(グレタ・ガーウィグ)は、大学在籍時の親友ソフィー(ミッキー・サムナー)とニューヨークのブルックリンで共同生活をしていた。ある日、彼女は恋人に一緒に暮らそうと誘われるが断り、その後別れることに。ところがソフィーがアパートの契約更新を行わず、引っ越しすると言ったことで…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Fh1

Memo1
グレタ・ガーウィグの身体性のスゴさ!!
噂のデヴィッド・ボウイ『モダンラブ』にのせてのチャイナタウン疾走シーン(約1分弱と思っているより短かったけれどモーションのバリエーションは多々)やキャッシュディスペンサー求めて走って走って走ってお店に飛び込んで、また走って走って、そして転けるシーンなど、唯一無二の動き。("のしのし歩き"の訳には笑ってしまった)
グレタ・ガーウィグは同監督による『ベン・スティラー 人生は最悪だ!』や『ダムゼル・イン・ディストレス バイオレットの青春セラピー』が共に配信スルーというのも残念な話。(人生は最悪だ!はスター・チャンネルで放映もあったけど、今後のパッケージ化に期待)
モノクロの理由
時代や時間を特定しにくくするために、よく用いられると思うのですが本作の場合は、あえて場所を曖昧にさせることに役立っているみたい。
そう、そこがニューヨークだろうがサンフランシスコだろうがパリだろうが場所や住むところを変えても実のところ、何も変らないのだ。
(何が重要か、フランシスが気づくまでは)
いろいろ台詞
・とにかくじゃれ合う
公園で地下鉄で部屋で、と
いつもピッタリくっついているフランシスとソフィー。
そんなふたりを評してフランシスのセリフ。
「セックスレスの熟年レズビアンカップルみたい」
・地下鉄の中で。
指輪が外れなくて困るフランシスにソフィーが「手を上にあげて血を下げれば取れる」
で、そのポーズのまま。
「私、はてな(クェッション)マーク?」
・2回出てくる台詞
冒頭、すぐにベッドでのシーンで1回
それと後半、フランシスは住所がなくなって私書箱、そして大学の寮住まいとなってしまう。かたやソフィーも幸せな結婚(婚約)のはずがどうもうまくいいかなくなっていてバッタリ出会ったフランシスの寮に夜中、訪ねてくる。
(その時にさんざん婚約者に悪態をつく)
その時にもソフィーがフランシスに、こう言う。
「靴下は脱いでね」
タイトルの『フランシス・ハ』
先述の寮を訪ねてきた(おしかけてきた)ソフィーが朝、出て行くのを裸足で追っかけるフランシス。
で、ふと裸足の足を見る。
(この"地に足付けて"といってるようなショットがいい!)
そして、背伸びをして(意地もあって)断っていた事務の仕事や教室の講師をするフランシスの姿。
最後に新しい部屋が映され、そして!
(タイトルの意味が、直後のシーンで)

Memo2
タイトルデザイナーはSam Lisenco
ロケ地
(下記ロケーションガイドではタイトルカードで出てくるヴァンダーヴィルトやワシントンハイツは掲載されていないみたいですが←ブルックリン周辺で部屋をシェアしていたフランシスが最後に出てくる一人暮らし住所がワシントンハイツというところもリアルな選択だなぁ)
New York Film Locations
http://onthesetofnewyork.com/francesha.html

Fh2

映画『フランシス・ハ』公式サイト
http://francesha-movie.net/

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2014-10-02

『ジャージー・ボーイズ(Jersey Boys)』クリント・イーストウッド監督

※台詞、内容に触れています。
ジャージー・ボーイズ
Jersey Boys
監督 : クリント・イーストウッド
出演 : ジョン・ロイド・ヤング、エリック・バーゲン、
マイケル・ロメンダ、ヴィンセント・ピアッツァ、
クリストファー・ウォーケン、他


物語・ニュージャージー州の貧しい町で生まれ育った4人の青年たちは、その掃きだめのような場所から逃れるために歌手を目指す。やがて彼らは「ザ・フォー・シーズンズ」というバンドを結成しトップスターの座に就くが…。(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

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Memo1
いわゆるジュークボックスミュージカルの映画化だがイーストウッドが監督すると、こうなるのかとビックリした。
とにかくテンポが心地良い。
このサクっと撮った感じにして実は結構なギャング映画。芸能界とマフィア(ギャング)との関わり合いなど暗部もとりこんでいるのに、なんだか品が良い(というか品格がある)のもイーストウッド作品ならでは。それは簡潔にして明瞭な語り口と省略の妙によるものだと思う。
ニュージャージーという場所。
フランク・シナトラの出身地ということもあって、写真が飾られていたり会話に出てきたりスイートルームの名前になっていたりする。
この土地柄が持つ呪縛性は有名になったにもかかわらず、どこか逃れられない怖さを秘めていることが映画が進むにつれてうっすらと判ってくる。
クリストファー・ウォーケン演じる地元ギャングのボス、ジップが早くから気にかけていたヴァリの声。
「マイ・マザーズ・アイズ(My Mother’s Eyes)」を歌ってるところを涙しながら見ている。
そして終演後。
「母の好きな曲を歌ってくれて、ありがとう」
ドル紙幣を半分にして「これは引換証だ。困ったことがあったらいつでも言ってくれ」と手渡される。
(引換証は後にトミーが度重なる問題を起こした中で立ちいかなくなったときに使われることとなる)
いろいろな台詞。
・「この町から出る方法は3つ。 “軍隊に入る“ でも殺される。 “マフィアに入る“ それも殺される。 あるいは“有名になる“ 」
・フランキー・ヴァリに対して、後に(すぐに)姉さん女房となるメアリーの台詞。
「フランキー・ヴァリのヴァリは"Y"ではなくて"I"よ。
ヴァリ"ィ"」
・ザ・フォー・シーズンズのベース担当、ニックの(いよいよグループとしての活動がアウトになった場面での)台詞「リンゴ・スターのポジションだ」←この台詞の意味は(ちょっと、おいおいと思う人もいるかもしれないので)是非、劇場で。
いきなり出演者がカメラに向かって語りかけてくる。
最初、トミーだけかと思いきや突如前述のニックが演奏中ベースを弾きながら語りかけてきたのには驚いた。
(トミーを訪ね楽屋にまで押しかけてきたマフィアの金貸しのことが明るみになったシーンで)
若き日の(と、言うのか 笑)ジョー・ペシ(別の役者が演じている)が「あー、若い時からこの喋り方だったんだなぁ」と思わせて可愛らしいw
有名な「君の瞳に恋してる(Can’t Take My Eyes Off You)」が発表されるシーン。
最初は少人数編成のバンドのみで演奏されていてサビの部分に入った瞬間、後ろの幕が上がり大人数のブラスセクションが現れ加わるシーンはエンディングヘ向かう最高の場面。

Memo2
イーストウッド監督へのインタビュー(Cut掲載)
「健康の秘訣は?」に対して「朝の5時や6時に起きないことだ(笑)」
(「老いを取り込まないこと」とも)
衣装デザイナーは今世紀に入ってからイーストウッド監督作品全てを手がけているデボラ・ホッパー(Deborah Hopper)
フィナーレで登場キャスト全てが揃ってのカーテンコールとも呼ぶべき至福のダンスシーン。
(ここは50年代〜70年代にかけての衣装が出てくる意味でも素晴らしく華やか)
撮影監督もイーストウッド組、トム・スターン
「チェンジリング」「J.エドガー」と彩度を抑えた撮影に特徴が現れていると思うのだが本作、夜間シーンもその流れとして印象的。
タイトルデザインは90年の歴史を持つPacific Title.
「許されざる者」「ペイルライダー」「ミスティック・リバー」他、イーストウッド監督のほとんどの作品 (端正なフォントによる静謐さがピッタリ)

プラスMemo
思い出したことなのでちょっと書き記し。
吉田拓郎がよしだたくろうと表記されていた時代のアルバム「元気です」に収録されていた「加川良の手紙」の中に出てくる歌詞。
「あの日見た映画"ダーティ・ハリー"はどうでした〜」
「クリント・イーストウッドっていいでしょー、今度も学割で見られたらと思いまーすぅー」で(映画に興味がなかった人も)イーストウッドのことを知った方、多かったのでは?
(最も本作でビックリ"ヒッチコック風"登場シーンがあった「ローハイド」もありましたが)
それと、この時代(1960年代ハイトーン&ファルセットボイスポップス)のメロディ(デル・シャノン「悲しき街角」など)が本人も時々ラジオなどで語っていたとおりルーツなんだなぁ、ということを実感したり。

メイキング映像(10分58秒)
Jersey Boys: Behind the Scenes
http://www.youtube.com/watch?v=_x7JtTdWcHk&feature=youtu.be

映画『ジャージー・ボーイズ』
オフィシャルサイト

http://wwws.warnerbros.co.jp/jerseyboys/

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