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2015-04-23

"恋は魔法?"『マジック・イン・ムーンライト(Magic in the Moonlight)』ウディ・アレン監督、コリン・ファース、エマ・ストーン、他

注・内容、台詞、ラストに触れています。
マジック・イン・ムーンライト
Magic in the Moonlight
監督 : ウディ・アレン
出演 : コリン・ファースエマ・ストーン
ジャッキー・ウィーヴァーマーシャ・ゲイ・ハーデン
アイリーン・アトキンスハミッシュ・リンクレイター
サイモン・マクバーニー

物語・魔法や超能力など信じない皮肉屋のイギリス人マジシャン、スタンリー(コリン・ファース)は、ある大富豪をとりこにしているアメリカ人占い師の正体を暴いてほしいと頼まれる。南フランスの富豪宅を訪ねるも占い師ソフィ(エマ・ストーン)が発揮する驚異的な透視能力にただただ驚かされ、それまでの人生観を覆される羽目に。その上、かれんな容姿で明るく活発な彼女に魅了されてしまい…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Moon2

Memo1
「タロットカード殺人事件」のウディ・アレン本人によるトランプマジックあたふたも楽しかったけど本作におけるコリン・ファース演ずるスタンリー(モデルがいるらしい)の"天才悪魔フーマンチュー"的というか"ハイ、わたし中国は広島の生まれ"ゼンジー北京師匠的マジシャン姿もいきなり怪しオモシロでつかみバッチリ!しかも超毒舌(ファンがサインを求めてきても「あー、ハイハイ」とばかりに無視 w)
本作の時代設定もあって、いわゆる妖精事件を扱ったシャーロック・ホームズをピーター・オトゥールがフーディニをハーヴェイ・カイテルが演じていた『フェアリーテイル』を思いだした。(神秘主義と科学のせめぎ合いという意味でも)
ウディ・アレン作品の中では軽め(とはいえ職人芸)だが、この上なくロマンティックなトーンとラストシーンをもった本作、いいなぁー
突然の雨に逃げ込んだ天文台。
子供の頃、空が怖かったというスタンリー(このあたりの会話で実は未知なるもの、大いなるものに対して畏怖の念を持っていたのだなーということが垣間見られる)
天体望遠鏡のための天井を開けたとき見えたのは雨が上がった空に輝く月。
"人生は喜劇か悲劇か"
それはウディ・アレン作品の幾つかの作品でもよく見られるテーマ。(『メリンダとメリンダ』のように、それこそ同じ事柄をふたりのメリンダから喜劇編、悲劇編とはっきりとわけて描いていた作品もある)
そして今回はマジックか本物のの占い師(霊能)か、ロジックかスピリチュアルかの対照的図式。
スタンリーが初めてソフィに会ったとき「中国に何か関係している?」と言い当てられてドキッとしたのと同時に実はソフィに対して一目惚れ的にもドキッとしていたのでは?
(その後スタンリーが信頼している伯母さんとの自分だけしか知らない秘密を当てられてすっかり、これは本物の超能力霊能だ!とあっさり信じてしまう←この転向具合がアレンらしい隠しアイロニーw)
よくよく考えてみると友人がスタンリーを騙すために仕組んだ大芝居。このことがないとスタンリーとソフィは出会ってなかったわけだから、そう、それこそまさに"恋は魔法"
ラスト
(前段階として降霊術シーンで返事として机を叩くような音が1回の場合はイエス)
自分がどんなにソフィーのことを愛していたかを告げているスタンリー
「その大きな瞳と笑顔にもう一回会いたい。聞こえるなら返事をしてほしい」
するとドンと机を叩く音が1回。
「ソフィー?」
もう一度机を叩く音が1回
「僕と結婚してほしい」
また1回
ふりかえるスタンリー。
ソフィの姿が。
キスをする二人でエンドクレジットへ。

Memo2
撮影はダリウス・コンジ
『ミッドナイト・イン・パリ』『ローマでアモーレ』のトーンは本作にも引き継がれアレン好みのウォームカラーで整えられている。
タイトルデザイン
Black on Whiteによるお馴染みのタイトルカード
Typefaceは他の多くの作品と同じWindsorでした。
(特に「&」の部分に特徴がよくでています)
衣装デザイナーはウディ・アレン作品には欠かせないソニア·グランデ
スケッチと電話インタビュー。デザインに際して使用した写真や絵画も掲載されたNational Post記事
http://news.nationalpost.com/arts/movies/woody-allens-costume-expert-on-magic-in-the-moonlight
監督が青色について嫌がっていること(前述通りウォームトーン好み)を常に念頭においているということや素材についても語っている。
ソフィの(ラスト近く、スタンリーと仲違いして富豪と結婚することに!?となった際の)婚約指輪と伯母さんにまつわるジュエリーがVan Cleef & Arpelsのハイジュエリーが用いられていました。
(エンドクレジットの一番最後に謝辞が)
『王様のブランチ』でのウディ・アレン特集。
アレンの仕事場「マンハッタン・フィルム・センター」でのインタビュー。
地上波でこれぐらい長い特集は初めてかもという約15分。既出インタビューだと思うけど『マジック・イン・ムーンライト』コリン・ファース&エマ・ストーンインタビューも少々。
演出術などを語ったのち『マジック・イン・ムーンライト』についてこう締めくくり→「とてもロマンティックでマジカルな映画をつくりました。見れば気に入ると思うけど、もし気に入らなかったら僕に電話して文句を言えば善処するよ」

Moon1

映画『マジック・イン・ムーンライト』公式サイト
http://www.magicinmoonlight.jp/

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2015-04-17

『セッション(Whiplash)』デイミアン・チャゼル監督、マイルズ・テラー、J・K・シモンズ、メリッサ・ブノワ

注・内容、台詞、ラストに触れています。
セッション
Whiplash
監督・脚本 : デイミアン・チャゼル
出演 : マイルズ・テラーJ・K・シモンズメリッサ・ブノワ

物語・名門音楽学校へと入学し、世界に通用するジャズドラマーになろうと決意するニーマン(マイルズ・テラー)。そんな彼を待ち受けていたのは、鬼教師として名をはせるフレッチャー(J・K・シモンズ)だった。ひたすら罵声を浴びせ、完璧な演奏を引き出すためには暴力をも辞さない彼におののきながらも、その指導に必死に食らい付いていくニーマン。だが、フレッチャーのレッスンは次第に狂気じみたものへと変化していく。(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Wh

Memo
そもそもが音楽映画のようで実は音楽映画ではない。
(異形なタイプの音楽映画を意図していたのでは?などとも思ってしまう、と書いたところで監督自身がアクション映画、戦争映画云々語っているインタビューがいろいろなところで見受けられるので、まさにそうなのですね。参考にした映画になんと『レイジング・ブル』が入ってる!)
そこに描かれるのは鬼教官(教師)としごかれる有能だと思しき新兵(新入生)←(結局のところフレッチャーは伸ばそうとしていたのではなくニーマンを潰しにかかっていたと見受けられる)
そしてスピルバーグ監督『激突』でのタンクローリーとたまたま追い越してしまったがために追われ続ける乗用車のような1対1のシンプルな構図。
フレッチャーは冒頭の会話から既に底意地が悪さが。
(以下、正確な字幕再現ではありませんが)
ドラムを練習するニーマン。
部屋に入ってきたフレッチャーに気づく
「何故、演奏を止める」
叩き始めるニーマン
「誰が初めて良いと言った」
「すみません」
「わたしは何故演奏を止めたかを聞いただけだ」
「プレイを見せてみろ」
また叩き始めるニーマン。
ドアの閉まる音(←おいおい聴かずに出て行くの??)
また入ってくるフレッチャー
「ジャケットを忘れた」
これはニーマンが練習に加わってからもテンポが早いと遅いを繰り返してプレイし続けさせるシーンに増幅。(さらには口でリズムを刻ませフレッチャーはビンタの応酬をする、愛のムチを通り越したシゴキ)
とにかく、このJ・K・シモンズ(アカデミー賞受賞は衆目の一致するところ)演ずるフレッチャーの一挙一動リストを作ってもいいぐらいにスゴイ(練習時間に一秒のズレもなくジャスト9時にやってきて、すっと帽子や服をかける、そこの部分だけで既に圧倒される)
監督でもあるデイミアン・チャゼルによる脚本
(PDFで読めます)
whiplash screenplay
http://www.sonyclassics.com/awards-information/whiplash_screenplay.pdf
若干、映画とはシーン入替やカットもあるけどドラムプレイなど細かく書かれていて驚く。
それにしてもニーマン。
自分から声をかけておきながら、あまりに身勝手なニコル(メリッサ・ブノワ)への態度。
「僕は音楽に打ちこみたい」
「もっと練習がしたいから別れてくれ」って、どないなっとんねん(と、あえて関西弁で言いたいぐらいにどないなっとんねん)
で、前述の脚本の話。
ニーマンがニコルをデートに誘うシーンの順番が脚本と完成本編では入れ替わっていた。
フレッチャーに「明日の朝、6時30分。遅れるな」(←これも嘘の時間で実際には9時開始)と選ばれたことに意気揚々としたシーンのあとになっているが脚本では逆になっていて、実際の本編順番の方が"気分が盛り上がって声をかけた感"が高くなっている。
多くの方が指摘するようにニコルとのエピソードはなくても成立していたかも(実際ニコルとのデートシーンはピザを食べに行くところぐらいで、あとは前述別れてくれシーンになってしまうので唐突さが高い←故にニーマンの思い込み度を表してるとも言えるのだが)
ちなみに父親との関係性を表す数々のシーンはニーマンの(最低限わかっていないといけない)バックグラウンドとして必要だと思います。
ラスト
全てを覆す約10分弱のエンディング。
ニーマンは退学。
フレッチャーは学校を追われての再会。
カーネギーホールでのプロによるジャスバンドに参加しないかと声をかけられドラムセットにつくニーマン。
練習してきた「Whiplash」と「Caravan」だから大丈夫だと言われていたにも関わらず告げられたタイトルは「UPSWINGIN」
まんまとフレッチャーに騙されたと気づくニーマン。
しかし譜面もなく練習をしたこともない曲を叩けるわけもなくボロボロに。
「お前が告げ口したんだろ?」
舞台を降り父親とハグしてそのまま帰るのかと思いきや、再びステージにあがりフレッチャーを無視して「Caravan」を叩きはじめる。
これは自分のための演奏と言わんばかりに。
ここからの、まさにボクシングの世界タイトルマッチを見せられているような一戦は劇場で見てこそ味わえる高揚感。
ドラムソロに至って、ついにはある種のつながりが。
お互いの目のアップ。
ジャンと演奏が終わりエンドタイル(このタイミングは絶妙!)

映画『セッション』公式サイト
http://session.gaga.ne.jp/

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