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2015-05-19

『百日紅~Miss HOKUSAI~』原恵一監督、杏、松重豊、他 

百日紅~Miss HOKUSAI~
Miss HOKUSAI

原作 : 杉浦日向子
監督 : 原恵一
出演(声) : 松重豊濱田岳
高良健吾美保純
麻生久美子立川談春
清水詩音筒井道隆、他

物語・さまざまな風俗を描いた浮世絵が庶民に愛された江戸時代、浮世絵師・葛飾北斎は大胆な作風で一世を風靡する。頑固で偏屈な天才絵師である父・北斎の浮世絵制作を、陰で支える娘のお栄(後の葛飾応為)も優れた才能を発揮していた。そんな北斎親子と絵師の交流や、江戸に生きる町人たちの人間模様がつづられていく。(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Hokusai

Memo1
原恵一監督の近作(実写「はじまりのみち」を除く)アニメーションとしては90分と短い。
だが、その短さが逆に本作の芳醇さを際立たせている。
『河童のクゥと夏休み』や『カラフル』と同じくアニメーション作品を見た印象よりは、そこに描かれた"お芝居演出部分"が残る。さらにはある種"原恵一監督風味"とでも呼ぶべき後味がいつものことながら、とても好みだ。
ストーリーは百日紅の花が咲いて散るまで。
体が弱く目の不自由な妹、お猶との交流を軸に(父、北斎がなかなか見舞いにもいかないことに対してお栄の台詞「あいつは病気が怖くて会いに行けないんだ」それに続くすれ違いを装っての対面、病気が悪化した際にすかさず魔除けの絵を描くなど実に事細かに連なるように編まれている、など)いろいろなエピソードが綴りこまれている。
お栄が一緒に暮らす父、北斎の家。
なんせ、食べている時と寝ている時以外は絵を書いているわけだから部屋は散らかり放題。
もうどうしようもなく住めないぐらいになると引っ越してしまうというありさま。
おしかけ弟子の善次郎とお栄、北斎と仕事机周りは描き損じた絵がくしゃくしゃにして放ったらかしのまま。
(机の両側上部にろうそく立てが設えてあって、それが今でいうところの電気スタンドとわかる)
「火事と聞けばじっとしていられねぇ」
思わず火の上がっている方向へ走りだすお栄。
ここでも火消しの様子が実に丹念に描かれていて興味深い。
また、北斎が描いていた龍の絵に煙管の火を飛ばしてしまい、お栄が描き直すことになった際の台詞。
「降りてくるのを待つ」
風が吹き天空が曇り、龍が踊る姿へと続く自然描写の妙。
江戸の怪異譚として首が伸びる花魁・小夜衣の挿話はぞくぞくっとした。
もし、夜中に鈴の音が鳴ったら襖を開け部屋に入ってきてよいと告げられる。
小夜衣の高枕、両サイドに付けられた鈴。
真夜中、それがチリリン、チリリンと鳴り、頭がもぞもぞと動く描写の怪しさ。
ラスト
江戸隅田川の風景が現在のスカイツリーのある景色へと変化して終幕。
こんなに変わってしまったけれど昔から脈々と連なる。

Memo2
エンドクレジットに世界に10点ほどしか現存しない葛飾応為(お栄)の著名なる『吉原格子先之図』が登場します。
(実物は26.3×39.4㎝と写真などで見た印象よりかなり小さい。しかし精緻←ちょうど太田記念美術館で開催中の「広重と清親展」に於いて特別展示された←2015年5月28日まで)
追記
北斎 ―富士を超えて―
あべのハルカス美術館2017年10月6日から
『吉原格子先之図』は11/6~11/19に展示予定。
http://hokusai2017.com/index.html

映画『百日紅~Miss HOKUSAI~』公式サイト
http://sarusuberi-movie.com/index.html


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