"クサとチョコバナナとパンケーキ"『インヒアレント・ヴァイス(Inherent Vice)』ポール・トーマス・アンダーソン監督、ホアキン・フェニックス、ジョシュ・ブローリン、他
『インヒアレント・ヴァイス』
Inherent Vice
原作 : トマス・ピンチョン
監督 : ポール・トーマス・アンダーソン
出演 : ホアキン・フェニックス、ジョシュ・ブローリン
マーティン・ショート、リース・ウィザースプーン
ベニチオ・デル・トロ、オーウェン・ウィルソン、他
物語・1970年代初頭のロサンゼルス。ビーチを拠点に活動するマリファナ中毒のヒッピー探偵ドック(ホアキン・フェニックス)を、以前付き合っていた女性シャスタが訪ねてくる。彼女の依頼を受け調査を進めるドックだったが、いつしか巨大な陰謀に巻き込まれていき…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)
※Memo1
●サブタイトルを付けるとするならば"クサとフローズンチョコバナナとパンケーキ"(「部屋とティシャツと私」みたいな 笑)
とにかく最初から最後までクサを吸うドック。
朦朧体とでも呼ぶべき文体のようなもので描かれている物語につき、現実なのか夢なのか判別しにくい。
それ故、ここ2作のPTA作品の強度とはうって変わって、やや軽い印象。でも、この飄々と綴っていく語り口は好み。すごくリラックスして楽しめた!
●誰もがイメージした『ブレード・ランナー』「ひとつで十分ですよ」に匹敵する「ちょっと、もっとパヌケーク、もっと」「ハイ ハイ ハイ」(←変な返事ともあいの手とも、とれる)シーン。(バックに小さく流れるは坂本九「スキヤキ」←やや、聞き取りづらかったので音の位相がしっかりとした上映環境で見てみたい)
●ドックがたどり着いた巨悪は(これもはっきりとした実在として描かれるわけではないが一応、こう呼ばれている→)ゴールデンファングではなく実は原題でもある「インヒアレント・ヴァイス」"内在する欠陥"としてのアメリカという国が持つ矛盾と内包する問題点のようなものを表しいるともいえる。(それは1960年代から始まって今も脈々と続く)
●最初、女性のナレーションが誰なのかが、わからないが見ていくうちにドックの事務所で働いていたソルティレージュによるものとわかる。(一瞬、シャスタかと勘違いした)
そのソルティレージュのウィジャボード(←?)によるお告げに導かれて行く場所(クサがここにあると言われてシェスタと行く。この雨が降る中に流れるニール・ヤングの曲がまたイイ!)とドックがたどり着く奇妙な形をしたゴールデンファングに関わるビルが同じ。(この奇妙なビルの形状は原作にも書かれていました)
●ラスト。
原作にはないジョシュ・ブローリン(怪演!そして顔がデカイ!)演ずるビッグフットのマリワナの皿まるごと食いシーン(綺麗に盛られたフグ刺しを皿ごと端からツルーって食べるあの感じ 笑)
もう、ムシャムシャと食べる姿はめちゃくちゃでござりますがなw
※Memo2
●タイトルはScarlet Letter
ネオン管イメージのロゴは原著から踏襲。
メインタイトルの出し方がカッコイイ
トマス・ピンチョン原作冒頭のエピグラフはエンドクレジットロール最後の最後に出てきます。
舗道の敷石の下はビーチ! 1968年5月、パリの落書きより
●CUT5月号「ポール・トーマス・アンダーソン監督全作品を語る」『インヒアレント・ヴァイス』についてインタビュアーがピンチョンに会ったことは?とかピンチョン自身は本作品は見たのですか?などの質問を浴びせていて面白い(「ユリイカ」におけるインタビューとあわせて読むと、多分会っているのは間違いないかなぁ、と予測。ピンチョンが出演していると噂されるシーンは未確認)
●キネ旬に載っていたピンチョン作品の翻訳者として著名な佐藤良明氏へのインタビューで「ドックとビックフットのこじれた友情は何を表してるのでしょう」という問いに対して「ピンチョンの復讐です」と答えていたのが印象的。
●衣装デザイナーはPTA監督と組むのがこれで5度目となるマーク・ブリッジス。
ドックの衣装についてインタビューで「ニール・ヤング的な因習打破主義者で、むさくるしくゆったりした、少し擦り切れているのにほとんど偶然に格好よく見える姿をイメージした」と語っていました。
映画『インヒアレント・ヴァイス』
オフィシャルサイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/inherent-vice/
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