« 2015年5月 | トップページ | 2015年8月 »

2015-06-24

『海街diary』是枝裕和監督、綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すず、他

注・内容、台詞に触れています。
海街diary
原作 : 吉田秋生
監督・脚本・編集 : 是枝裕和
出演 : 綾瀬はるか長澤まさみ夏帆
広瀬すず、大竹しのぶ、堤真一、加瀬亮
風吹ジュン、リリー・フランキー
前田旺志郎、鈴木亮平、池田貴史
坂口健太郎

物語・鎌倉で暮らす、幸(綾瀬はるか)、佳乃(長澤まさみ)、千佳(夏帆)。そんな彼女たちのもとに、15年前に姿を消した父親が亡くなったという知らせが届く。葬儀がとり行われる山形へと向かった三人は、そこで父とほかの女性の間に生まれた異母妹すず(広瀬すず)と対面する。身寄りがいなくなった今後の生活を前にしながらも、気丈かつ毅然と振る舞おうとするすず。その姿を見た幸は、彼女に鎌倉で自分たちと一緒に暮らさないかと持ちかける。こうして鎌倉での生活がスタートする。(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Umimachi2

Umimachi1

Memo1
原作と同じ朝、彼氏の部屋で目覚める佳乃のシーンから映画は始まる。
(携帯からスマホに。電話はかけずにメールで父親の死を知る)
原作のかぶさるような会話部分が映画の中で再現されているところと省略されているところが絶妙のバランス。
是枝監督、傑作法事映画『歩いても歩いても』に続いて「キタァー!!」と思った法事シーン(お葬式シーン)が最初と最後と真ん中に配置された構成。
父親の葬儀、祖母の七回忌、海猫食堂店主二ノ宮さん(風吹ジュン)の葬儀。
それぞれに本作のキーポイントとなるシーンが配されている。
佳乃の性格を表す台詞
(と、いうか、これだとずっと飲んでるみたいですが 笑)
・山形、旅館に着いた途端。
「あー、あ〜、ビール~」
・海猫食堂で「あー、何にしようかな」と千佳たちが迷ってる時に、すかさず「とりあえずビール」
・「3人で話しませんか」とすずの提案に。
「あー、もうめんどくさいなぁ」「梅酒!ロックで」
メイキング特番で実際の撮影前に四姉妹そろっての顔合わせ。
実際に料理を作ったり、拭き掃除をしたり、障子を張り替えたりほんとに四姉妹で生活しているような形を体験させるところからはじまる、まさに是枝監督ならではの手法。
(障子の張替えシーンは本編にも使われた)
すずと幸、佳乃、千佳とそれぞれふたりだけになった時と四姉妹全員で話している時との会話や空気の違いが実に見事に描かれている。
(人によって話す内容が知らず知らずに変わってしまうこと、ありますよね)
・すずと幸。
キッチン(台所)に並んで料理の下ごしらえ中。
「奥さんがいる人を好きになるなんて、お母さんよくないよね」
・すずと千佳。
お祖母ちゃん直伝のちくわのカレーを食べながら
「わたし、ちっちゃかったから、ほとんど父親のこと覚えていないんだ」
「また、話せるようになったら、はなし、聞かせてね」
少し間をおいて、すずが「わたし、嘘ついてたんだ。しらす丼、よくお父さんがつくってくれたんだ。」
「あと、釣りに連れてかれた」
へらぶな釣りをやっている千佳がなんともいえない嬉しそうな顔になる
(ここは、ほんとよいシーンだなぁ)
・ラスト。
幸がすずを連れて高台へ登っていく。
鎌倉の街を見下ろす、その風景は山形ですずがよく父に連れられて登った高台の景色と同じような雰囲気だ。
「わーっ」
突然、叫び出す幸
「おとうさんのバカーっ」
「すずも叫んでみて」
一瞬、躊躇するが声を限りに叫ぶ、すず。
「おかあさんのバカーっ」
抱きしめる幸
「お母さんのこと、話していいんだよ」
「ここにいていいんだよ」
幸とすず。
どことなく似ているのは、この台詞に集約される。
あの娘、子供時代を奪われちゃったんだよ
(幸は出ていった母親のかわりに小さかった妹の世話をし、すずは父親の再婚で連子のいる継母の元気苦労が絶えない上に父親の病気の看病が重なったりと…。)
それゆえの、あのラスト。
すずと同級生の風太とのシーン。
こころにとどめている本音がちらほらのぞく台詞が何度か。
山猫亭でマスター考案のしらすトーストを食べた後、風太と歩きながら。
「お父さん、あそこの店に行ってたのかも。」
「わたし、お姉ちゃんにうそついちゃった。」
砂浜に舞落ちた桜の花びら。
「もう、終わりなんだ…。山形だとこれからなんだけれど」
そのあとの桜のトンネルへ連なる美しい流れ。
また、こんなシーンも。
「わたし、ここにいていいのかな」
「おれ、三男で、女の娘期待されていたのに、あー、男かって感じで、一番写真少ないんだ」(と、なんだか、的はずれな気もするけれど精いっぱいな励ましがすずには嬉しかっただろうなぁ、と思える、これまたいいシーン)
と、他にも母(大竹しのぶ)と幸の会話など本当にたくさんのいいシーンが四季折々の自然や空気の中に綴られた、四姉妹のまさにダイアリーなのである。

Memo2
ロケ地がお馴染みの極楽寺駅や桜橋(下を江ノ電が通る高架)など定番中の定番。ちなみに原作1巻の表紙は近年「スラムダンク」OPとして観光スポット化している鎌倉高校駅前交差点踏切。
印象的な食事シーン。
フードスタイリストは飯島奈美さん。
しらす丼、しらすトースト、ちくわカレー、おはぎ、アジフライ、そして梅酒…
四姉妹の性格、キャラクターがはっはりわかるファッション。
衣装は伊藤佐智子さん。
冒頭、父親の葬儀の際の喪服の違いまでもが如実(バッグや小物、靴にいたるまで)。話題となっていた浴衣も。
撮影は瀧本幹也さん。
(パンフレット掲載インタビューより抜粋)日本家屋を美しく描いてきた名匠たちの系譜がありますねの問いに「最初に四姉妹の座り位置を決める時、是枝さんがずっと悩んでいたのが印象的でした。円卓を斜めに向けると成瀬になる。畳に対して真っすぐに座ると小津になるって」

Umimachi3

アートディレクションは「空気人形」テレビドラマ「ゴーイングマイホーム」に続いて森本千絵さん。
パンフレットの紙質が「空気人形」と同じタイプのもの。選ばれたフォント、色彩チャート(例えば、四姉妹キャストインタビューページの紫陽花をイメージさせる四色の使い美しさ)は是枝監督作品と同じ静謐さ。これはデビュー作から脈々と続いている。
(「幻の光」から「花よりもなほ」「歩いても歩いても」は葛西薫さんによるアートディレクション「そして、父になる」は服部一成さんによるもの)

映画『海街diary』公式サイト
http://umimachi.gaga.ne.jp/




| | トラックバック (20)

作詞活動四十五周年トリビュート『風街であひませう』

松本隆さんの作詞活動四十五周年トリビュート盤『風街であひませう』がリリースされました。(文中敬称略)

1975年頃~1980年にかけては自分にとって、まさに吉田拓郎 - 松本隆 - 太田裕美を"見て、聴いて、追っかけて"度合いが濃密な時期だったので、今回の限定盤ディスク2「風街をよむ」での太田裕美による「外は白い雪の夜」朗読は「おぉっ!これは、あの"背中合わせのランデブー"(※)の変奏的再現ではないかぁ!」とちょっと小躍りしてしまった。
※『背中あわせのランデブー』A面吉田拓郎作曲、B面太田裕美による作詞作曲。

Kazemachi

Memo
「外は白い雪の夜」を初めて聴いたのは当時、吉田拓郎がパーソナリティだった「セイ!ヤング」(文化放送・金曜日深夜オンエア)で『ローリング30』レコーディング中、箱根ロックウェルスタジオからの生中継(1978年8月)
そこから実際に生での演奏や出来上がったばかりのピカピカのマスターテープなどがオンエアされた。
「これはレコーディングメンバー全員が大絶賛したという曲を今からやります」「えー、タイトルは"そして誰もいなくなった"というのですが」まだ曲名が「外は白い雪の夜」ではなかった。
ちなみに他にも生演奏で「旅立てジャック」「人間なんて」(「ちょっと、あれ、あれやってみようか」と少しだけ演奏)
箱根から特急便で文化放送に送っていた3曲から「君が欲しいよ」「虹の魚
ハートブレイクマンション」(「日当り良好(ひあたりりょうこう)」の部分をふり仮名間違いで「ひでりりょうこう」と歌っている間違いバージョン)が流された。
箱根ロックウェルスタジオは当時としては画期的なリゾート型レコーディング&リハーサルスタジオとして人気の高かった場所。フォーライフレコードの4人(吉田拓郎・井上陽水・泉谷しげる・小室等)による「クリスマス」アルバムもここでレコーディングされた)。
そして、不思議なめぐり合わせというか、このロックウェルスタジオは、その後原田真二が「Modern Vision」と名前を変えてオーナーとなった時期があった(今、どうなのでしょう?←すみません未確認)
そして、さらには、その原田真二デビュー作「てぃーんずぶるーす」(松本隆作詞、原田真二作曲)も箱根ロックウェルスタジオでレコーディング(確かアルバムもだったと記憶)

前述『背中あわせのランデブー』に収録されている「失恋魔術師」はシングルとは別アレンジで、これが続く「花吹雪」「」(この3曲が松本隆作詞)への流れにピッタリ。この3曲、拓郎節と言われる独特の譜割りとコード進行全開で名曲だと思う。
限定盤ディスク2「風街でよむ」ディレクターの是枝裕和監督、ブックレット掲載のコメントで知りましたが太田裕美さんのファンだったのですねー( ´ ▽ ` ) ちょっと嬉しい。初めて買ったレコードが中学1年の時の「木綿のハンカチーフ
ブックレットが130ページ。これだけで独立した書籍の趣き。
(もちろん本文縦組み)
風街でうたう、集う、よむ、撮る、創る、語る、思う。
それぞれに応じた内容で綴られる、アルバムや購入者特典の限定公開是枝裕和監督ディレクターズカット「風街でよむ」など全体通して、これ以上ないのではないかと思える至極の仕上がり。

風街であひませう
http://www.jvcmusic.co.jp/kazemachi45/


| | トラックバック (0)

2015-06-14

『トゥモローランド(TOMORROWLAND)』ブラッド・バード監督、ジョージ・クルーニー、ブリット・ロバートソン ラフィー・キャシディ、他

注・内容に触れています。
トゥモローランド
TOMORROWLAND
監督 : ブラッド・バード
出演 : ジョージ・クルーニーブリット・ロバートソン
ラフィー・キャシディヒュー・ローリー、他

物語 :17歳のケイシー(ブリット・ロバートソン)が見覚えのないピンバッジに触ると、自分が思い描いた別世界へと入り込んだ。バッテリー切れで現実の世界に戻ってきた彼女の前に、不思議な少女アテナ(ラフィー・キャシディ)が現れる。そしてケイシーにトゥモローランドに戻りたいのなら、フランク(ジョージ・クルーニー)という男性を訪ねるよう助言する。(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Tomorrow

Memo
いったい、いつからピカピカの都市、流線型デザインの明るさに満ちあふれた未来をイメージしなくなったのだろうか?ということを、ふと考えた。
そんなことを思い起こさせてくれたという時点で映画としては成功しているのかも。
(アメリカだとベトナム戦争泥沼化以前、日本だと1970大阪万博あたりだろうか?)
1964年ニューヨーク万博と未来が地続き。
(リアルどこでもドアも出てくるし)
アテナが登場した時点で動き方が少し変なように演じていて「あ、これはロボットだな」と気づく(少年のフランクはわかっていなくて、アテナにほのかな恋ごころ。で、ロボットと気づいた時と訪れる未来の暗さも相まって厭世的極地の偏屈オヤジとなって秘密基地の中に閉じこもってしまう)
ちょっとアホアホな未来からの追っ手から逃げるアテナとケイシー。
車の中での会話。
「ロボットなの?」
「オーディオアニマトロニクスよ」
※実際のディズニーランド「イッツ・ア・スモールワールド」の人形のことを1964年NY万博の時からオーディオアニマトロニクスと呼んでいた。
「<未来>のつくり方 シリコンバレーの航海する精神」(池田純一著・講談社刊)という本を読んでいたら、こういうことが書いてあった。
「未来はやってくるものなのか」
「自ら築き上げるものなのか」
この2点の差異と本作における未来の捉え方のことも、いろいろと考えさせられた。
選民主義云々で批判的意見もあるようだけれど、そもそもが監督がインタビューなどで答えているとおり本作は極めて『未知との遭遇』的。
マザーシップに導かれていく銀色のユニフォームを着用したサングラスの人たちはの姿(←これ、公開時に見たときに?!と思った記憶が)は、まさに『トゥモローランド』のラストでピンバッジを世界にばらまいていくリクルーター達だし、発端となる1964年時点でのトゥモローランドへ入っていける人たちも選ばれていた。
『未知との遭遇』では、その選ばれた人とは別に何かを感じとったロイ(リチャード・ドレイファス)がラスト、マザーシップに乗り込んでいく。これまた、はじかれた形となっていたフランクやケイシーが"トゥモローランド"へと到達する。しかも、暗澹たる未来になることが判っている現代の未来をチェンジさせる人となって。
秘密結社プルス・ウルトラ
Plus Ultra→ラテン語でもっと先へ、更なる前進の意。
そもそもが未来(FUTURE)の語源がラテン語「これから起ころうとする(こと)」の意というのも面白いところ。
先にブログ記事で紹介した人工知能スリラー『エクス・マキナ(ex machina)』というタイトルも『トゥモローランド』のプルス・ウルトラ(Plus Ultra)もラテン語という繋がり。
プルス・ウルトラが仕掛けておいたエッフェル塔秘密基地と"トゥモローランド"入り口のためのロケット。
そこに登場するメンバー(人形)
トーマス・エジソン、ジュール・ヴェルヌ、ギュスターヴ・エッフェル、そして!ニコラ・テスラ(←クリストファー・ノーラン監督『プレステージ』でデヴィッド・ボウイが演じた発明家、さらには『インセプション』『インターステラー』と続くノーラン多元世界アプローチへのキーパーソンでは?と常々思っていたので、ちっと「おぉっ」と嬉しくなった)
未来を明るい方向へ変える件(くだり)のシーンで"broadcast"の日本語字幕が"洗脳"になっていたけれど、これはアイロニカルにして、的を得た素晴らしい訳(日本語吹き替えはどう言ってるのだろう?)
タイトルデザインは yU+co
レトロフューチャー・モダンなアニメーションは本作にピッタリ。
エンドクレジットの最後の最後にピンバッジが出てきて、それに触れたとたんプツッと画面が消えてディズニーのシンデレラ城ロゴが出てくる(オープニングはピカピカの未来仕様のお城というかタワーロゴ)

トゥモローランド
http://www.disney.co.jp/movie/tomorrowland.html

| | トラックバック (16)

2015-06-12

『娘と私』堀川弘通監督、獅子文六原作、原節子、山村聰、星由里子、杉村春子、他

娘と私
原作:獅子文六
監督:堀川弘通
出演 : 山村聰星由里子
原節子杉村春子、他

物語・フランス人の先妻エレーヌ(フランソワーズ・モレシャン)との間のあいだに生まれた一人娘・麻里(星由里子)と小説家である"私"岩谷士郎(山村聰)。そして後妻としてやってくる千鶴子(原節子)との戦前から戦後にかけての家族の物語。
(原作はラジオドラマの後、朝のNHK連続テレビ小説第1作となっている)

0001

0002

Memo
原節子の(引退作「忠臣蔵」はほんの少ししか出ていないので)事実上ラスト。
後妻でやってきたばかりの時と終盤での話し言葉が違っていることに気づいた(←細かい!)
初めは「わたくし」と随分控えめな振舞いと言葉遣い、印象も暗め(老けメイク)だったのが、後半、岩谷が小説家として成功をおさめ、家を建てようかというあたりでは若返っているようにも見える雰囲気に。
そして着物の柄の変化。
山村聰が娘と話しながらお裁縫(と、いうなんとも微笑ましいシーン)や杉村春子の出てくるだけでニンマリさせるコメディエンヌぶりや時代に応じて変化する風俗描写など、いろいろ楽しい。
(音楽がやや重めのメロディラインが「?」なのだが…)
星由里子が女学院生になってから以降の娘役。
すごくさっぱりとした父と娘の会話が、とてもよい(当時は、こういったタイプを「現代っ子」って呼んでたのかなぁ??)
これは子供の時から。
(全寮制のミッションスクールに入る際の会話)
寂しくないか?の問いかけ。
「麻里は大丈夫か」
「へっちゃらさ」
「へっちゃらか」
娘・麻里の結婚相手、外務省の山崎役が山崎努でビックリ。しかも山村聰とふたりでキャッチボールしてるしw(そして投げる球が早い!)
最近復刊ブームの獅子文六。再発見のはじまりは『コーヒーと恋愛』
(曽我部恵一による帯文がさらに人気を)
で、思ったのが「獅子文六原作・特集上映」って、どこか企画してくれないかなぁ。
川島雄三監督『箱根山』『特急にっぽん』(←原作タイトル『七時間半』←最近、復刊されました)『てんやわんや』『やっさもっさ』『バナナ』(←全て渋谷実監督)『夫婦百景』『続・夫婦百景』(井上梅次監督)『大番』(シリーズ4作)、そして本作『娘と私』
朝の連続テレビ小説映像
「NHK名作選 みのがしなつかし」に4分24秒のダイジェスト映像が。
(結婚式のシーン、ラストのパリへ旅立つ麻里を見送るシーン)
http://cgi2.nhk.or.jp/archives/tv60bin/detail/index.cgi?das_id=D0009010085_00000

| | トラックバック (0)

« 2015年5月 | トップページ | 2015年8月 »