『FOUJITA』小栗康平監督、オダギリジョー、中谷美紀、アナ・ジラルド、加瀬亮、他
注・内容、台詞に触れています。
『FOUJITA』
監督 : 小栗康平
出演 : オダギリジョー、中谷美紀
アナ・ジラルド、加瀬亮
りりィ、岸部一徳 、アンジェル・ユモー
マリー・クレメール、他
物語・1920年代パリ、日本人画家・フジタ(オダギリジョー)が描く裸婦像は「乳白色の肌」と称賛され、彼は時の人となった。一躍エコール・ド・パリの人気者となったフジタは、雪のように白い肌を持つリシュー・バドゥー(アナ・ジラルド)と出会い、自らユキと名付け彼女と共に暮らし始める。やがて第2次世界大戦が始まり、フジタは日本に帰国し戦争画を描くようになるが…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)
※Memo1
●1920年代のパリ、1950年代の日本。
ふたつの時代が並置して描かれる。
「半生」を追うのでもなく「心情」を物語るのでもなく、ただそこに「映像」がタピストリーのように綴られていく。
それにしてもパリの夜、街頭の灯りと石畳、ところどころに見える窓からの光。きっと当時の明るさもこんな感じだったのだろうなぁ、と思わせる甘美なる撮影。
●美術も素晴らしい。
狂乱のフジタナイト
女装したフジタ。
白い布で模されたセーヌ川。
1900年パリ万博の女神を模したオブジェや招き猫。
マネの「笛を吹く少年」に扮した少年の笛で幕を開ける花魁道中(の再現)。
●「五人の裸婦」が発表された内覧会でのシーン。
その絵の前でフジタが。
「白はそれだけで白色でなければならない」
会場にピカソが訪れている。
「ユキ、ですか?」
「はい」
「絵よりきれいだ」
●画面に字幕が出ない1920年代パリから1940年代日本への転換部分のシーン。
ベッドに並んでいるフジタとユキ。
「スキャンダラスになればなるほど、バカをすればするほど自分に近づく。画がきれいになる」
続けて「ユキ、雪の女王」が飾られている部屋と廊下。
(この後のシーンから1940年代に)
●布切れの中からマドレーヌのスケッチが出てくる。
それを見て君代夫人
「マドレーヌさんは布に例えると何かしら」
「ユキさんはシルク?」
「私は?」
「うーん、今は物資不足だからなぁ」
「なにさ、それ」
(このシーン、微笑ましくてよかったなぁー)
●疎開先のF村。
軍服にマント、下駄の奇異な扮装(いでたち)で出歩くフジタ。
前述と呼応する自らのスタンスが垣間見られる台詞。
「画家は放っておくとどんどん洗練されてきてしまって大衆から離れてしまう」
60年に及ぶ画業生活の中で一度も立ち止まることなく制作し続けられたのは、この(ある種の)プロデュース力といい意味でのしたたかさによるものなのだなぁ、と思った。
●狐の伝承話のシーン。
寛治郎(加瀬亮)の台詞が日本という国の本質を表している。
「話が人から人へと伝わっていく間に変わっていってしまう。話をするそれぞれの人の気持が話を変えてしまう。そしていつの間にか主語がわからなくなって、みんなの話になってしまう」
まさにフランス(西欧)における近代と日本との差異。
(しかもラストには、本当に狐に化かされるシーンも用意されています。)
●川の中に沈んでいる「サイパン島同胞臣節を全うす」
(実際に最後の戦争画。前のシーンでぽつりと「戦争画はこれが最後になるかもしれませんねぇ」とつぶやいていた)
そしてエンドタイトルが少し流れてランスの礼拝堂が映しだされる。そこに描かれているフレスコ画に並んでフジタと君代夫人の姿。
※Memo2
●テーマが違うので当然なのですが絵を描くシーンはほとんどなく、近年(2006年の生誕120年の大規模展覧会の頃)あきらかになってきたキャンバス(画布)やボードへの地塗りや乳白色についてのシーンもありませんでした。
(とは言え、面相筆ですっと一気に線画を描くところをアップで映すシーンはドキドキしましたが…)
●『美術手帖』に対談 : 菊畑茂久馬×椹木野衣「フジタを抱く」が掲載されています。
●「五人の裸婦」と劇中登場する戦争画3点が現在東京国立近代美術館でまとめて展示されています。
『MOMAT コレクション 特集:藤田嗣治、全所蔵作品展示』
http://www.momat.go.jp/am/exhibition/permanent20150919/
映画『FOUJITA』公式サイト
http://foujita.info/
※PLUS Memo
●劇中、フジタが「貴婦人と一角獣」をじっと順番に見つめていくシーンがありましたが、2013年に日本で「触覚」「味覚」「嗅覚」「聴覚」「視覚」そして諸説ある「我が唯一の望み」の6面全てが公開される展覧会がありました。
こちらはその時の記念撮影スポットの写真。
●このタピストリーを見ているシーンのあとに「五人の裸婦」制作のシーンが出てきます。
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