『サンローラン(SAINT LAURENT)』ベルトラン・ボネロ監督、ギャスパー・ウリエル、ジェレミー・レニエ、ルイ・ガレル、レア・セドゥ、ヘルムート・バーガー、他
注・内容に触れています。
『サンローラン』
SAINT LAURENT
監督 : ベルトラン・ボネロ
出演 : ギャスパー・ウリエル
ジェレミー・レニエ
ルイ・ガレル、レア・セドゥ
ヘルムート・バーガー
ドミニク・サンダ、他
物語・1967年フランス・パリ。イヴ・サンローラン(ギャスパー・ウリエル)は斬新なコレクションを次々と発表し多忙を極めるとともに、カルチャーアイコンとしてもその名をとどろかせていた。しかし、サンローランはプレッシャーから次第にアルコールや薬に依存していく。(物語項、シネマトゥデイより抜粋)
※Memo1
●ある程度のサンローランのヒストリーアウトラインを知った上で鑑賞することをオススメ。
(結構、場面々々がとぶのと人物に対して詳細な説明がなされない)
本作はドキュメンタリーのような全体を網羅するものではなくモンドリアンルック発表の1965年から1976年のロシアコレクションまでの10年間に時間軸を絞っている。
華やかな60年代から1971年のヒッピー文化と時代と逆行したかのような不評たるヴィンテージ服のコレクション発表のちのスランプ、薬やアルコールまみれ、ジャック・ デ・バシェー(ルイ・ガレルが実に妖しく演じている)との危険な関係などの退廃的なる時期をはさんで復活する1976年コレクションまでがエポックな出来事と共に描かれる。
●それらはヘルムート・ニュートンがパリの舗道でスモーキング・ルックの超有名なポートレートを撮影するシーンがはさまれたり(ちょっと幻想的だ)、コレクションにも取り入れていたモンドリアンの絵画を想起させるレイアウトによるスプリット・スクリーン、「トリスタンとイゾルデ」流れる中センセーションを巻き起こした自身のヌード撮影シーンなどをおりまぜて多種多様な趣きだ。
(同時に描かれる公私共にパートナーだったピエール・ベルジェを軸としたファッションブランドのビジネス的側面の攻防も面白い)
●そしてラストの大盛況を博した1976年コレクション“Collection russe”発表シーンの見せ方もスプリットスクリーンで。
その前段階として描かれたデッサン画やスケッチを見てスタッフ達が「すごいボリュームだ」「全部は間に合わないかもしれない」と口々に語る中、オートクチュールが完成していく描写は本当にエキサイティングだ。
(サンローランがとり憑かれたようにスケッチを描く姿も)
●キャステイングの妙。
晩年のサンローランをヘルムート・バーガーが演じていたのはさすがに驚いた。(しかも本編中にヴィスコンティの映画を見るシーンがあった!)
同じく母親役がドミニク・サンダ(これもビックリ!)
●ふたりのミューズ、ベティ・カトルーとルル・ド・ラ・ファレース。そのルル役をレア・セドゥが演じていて(おぉっ!また、ここにも)と思いつつ嬉しかった。(いいポジションの役に必ず関わっている気が…)
●ラストショット。
死亡説の流れる中、メゾンのアトリエに入ってくる記者たち。
その姿に対してサンローランが不敵(アイロニカルともシニカルともなんとも如何しがたい表情)でニヤリと微笑を浮かべるショットで幕を閉じる。
なんたる大胆不敵にして巧妙な映画スタイル!
エンドタイトルへの音楽のタイミングも抜群。
※Memo2
●衣装デザインはボネロ監督の『メゾン ある娼館の記憶』も担当したアナイス・ロマン。内容が内容だったためかサンローラン"非公認"の映画となった本作でファッションショーでの衣装から当時のファッションまでもを再現していくという大変な作業をこなした(セザール賞の衣装デザイン賞を受賞)
●ピエール・ベルジェとベティ・カトルーへのインタビューを中心に書かれた『GQ JAPAN』の記事(1〜3のパートに分かれています)
イヴ・サンローラン、 天才デザイナーの苦悩と真実
http://gqjapan.jp/more/people/20110420/yves-saint-laurent01
●タイトルや年代(1967などのように数字のみ)を表すサンセリフ体のフォントが画面センターにほどよいサイズで現れる。随所に現れるこの見せ方はとても好み。そして美しい。
●そういえば、かつてセゾン美術館でイヴ・サンローラン展が開かれたことがあったことを思いだした。チェックしてみると今から25年前(!!)
(図録が秀逸だった。貸しだしたまま手元になくて画像が紹介できなくて残念)
映画「SAINT LAURENT/サンローラン」
公式サイト
http://saintlaurent.gaga.ne.jp/
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