『山河ノスタルジア(MOUNTAINS MAY DEPART)』ジャ・ジャンクー監督、チャオ・タオ、チャン・イー、リャン・ジンドン、ドン・ズージェン、シルヴィア・チャン、他
注・内容、台詞、ラストに触れています。
『山河ノスタルジア』
MOUNTAINS MAY DEPART
監督 : ジャ・ジャンクー
出演 : チャオ・タオ、チャン・イー
リャン・ジンドン、ドン・ズージェン
シルヴィア・チャン、他
物語・1999年、山西省汾陽の小学校で教師を務めるタオ(チャオ・タオ)は、炭鉱作業員リャンと実業家のジンシェン(チャン・イー)から求愛されていた。その後タオはジンシェンを結婚相手に選び、二人の間に男の子が生まれダオラーと名付けられる。2014年、離婚して汾陽で一人暮らしのタオは離れて生活しているダオラーと久々に顔を合わせるが、ジンシェンと一緒にオーストラリアに移り住むことを知らされ…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)
※Memo1
●タイトルから悠々たる大河ドラマを想像してしまうが全く違う展開をみせて驚く。そして、各ショットも驚くほど短い。だが挿まれた何気ない風景は不可逆なる取り戻せない時間と失いつつあるアイデンティティの残像のように心に沁みる。
冒頭とラストに使われたPet Shop Boys"Go west"が輪舞曲のよう。
●スクリーンサイズが過去、現在、未来と年代に応じてスタンダード、アメリカン・ヴィスタ、スコープサイズと変わる。
そして色彩も。
目にも鮮やかな赤が踊る1999年。
(時折挿入されるビデオ映像の荒れた画質に彩度の高い映像)
そのビビッドな活力あふれた色彩の世界は時が経つにつれ、人々の繋がりが薄れていくとともに、すっきりとした(光に溢れた)しかしどこか空虚な感じのするペールトーン主体のイメージへと変わっていく。
●タオの台詞
「それは幾何?関数?」
「三角は1番安定してるのよ」
最初の三角関係は形を変えて2025年パートまで続く。
●1994年パート
息子を送り届ける<、母タオ。
「どうして特急に乗らないの?早く着くのに」
「こうすれば長くいられる」
(急速に移り変わっていく中国や中国人への暗喩的な意味もあるのだろう。座っている向きも進行方向とは逆だ)
●2025年オーストラリアパート
全く広東語が話せなくなっているダオラー。
逆に英語が話せない父親のジンシェン。
ダオラーが言う。
「Google翻訳の息子」
中国語学校の教師ミア(シルヴィア・チャンが演じていてビックリ!)
母の記憶としての面影と思慕。
「前にこんな場面があった気がする。デジャヴのような」
ミアもまた、中国を離れ自らのルーツが薄らぎつつある。
ふたりでみつめる水平線の先には母国が…。
「タオ‥」
母の名をポツリとつぶやくダオラー。
ふと、声を聞くタオ。
●そのシーンに続いての終幕。
犬の散歩に出かけた先の風景は、炭鉱などがあった、あの河の近く。
雪が舞う中、冒頭のダンスを踊るタオ。
しんしんと降る雪の音。
(この音がいい!)
肯定的な美しいラストだ。
●"麦穂餃子"が3つのパート全てに出てくる。
・タオとリャンが仲良く食べるシーン。
・父親の葬儀のために帰ってきた7歳のダオラーに冷まして食べさせるシーン。
・ラスト、時が経っても変わらずに麦穂餃子を作っているタオ。
●また1999年パートでタオが着ていたカラフルなボーダー柄のセーターは2015年パートで2代目ワンちゃんのセーターに編み直されている。
・三国志に出てくるような大刀を持った少年が青年となって一瞬、出てくる。
・唐突にタオの目の前で起ったセスナ機の墜落シーン。
2014年パート、その道路の場所に佇む親子(遺族?)など、年代を通してさりげなく織り込まれている。
※Memo2
昨年のフィルメックス含め、いくつもの監督インタビューやQ&Aが公式に公開されています。
●2015/11/28 『山河ノスタルジア』Q&A
TOKYOFILMeX
有楽町朝日ホール
https://youtu.be/lGykOoHbAvY
●『山河ノスタルジア』半野喜弘 レコーディング映像
https://youtu.be/UgakiAE1b9Q
映画『山河ノスタルジア』オフィシャルサイト
http://www.bitters.co.jp/sanga/
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