『ふきげんな過去』前田司郎監督、小泉今日子、二階堂ふみ、高良健吾、板尾創路、他
注・内容、台詞に触れています。
『ふきげんな過去』
監督 : 前田司郎
出演 : 小泉今日子、二階堂ふみ
高良健吾、板尾創路、他
物語・東京・北品川に位置する食堂で生活している女子高生・果子(二階堂ふみ)の前に、18年前に他界したはずの伯母・未来子(小泉今日子)が突然現れる。とある事件によって前科持ちとなった未来子は果子の実母だと告白し、そんな彼女の登場に周りの家族はうろたえる。自分の部屋に住み込む空気を読めない未来子に、イライラする果子だったが…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)
※Memo
●全体的に彩度を下げてレンズフィルター、オレンジをかけたような色調は好み。
そして、それはまた北品川の運河を行き来する"ここではないどこか"の曖昧領域な人たちにピッタリのトーン。
さらには、これはいい風が通り抜けるのだろうなぁー、と、思えるエジプト風豆料理店の雰囲気や2階の果子の部屋、着ている衣装などから醸しだされる"夏の空気"映画でもあります。
●twitterにも書いたけれど最初、ずっと『ふきげんな過去』のことを『ふざけんな過去』と思い込んでいた(あながち間違ってなさそうな気もしたけれど果子と過去をかけていることを考えると"ふざけんな"は無いよなぁー、などと)
●母(実母ではない)サトエの友人、レイの娘カナちゃん(←『花子とアン』でヒロインの幼少期を演じていた山田望叶がめちゃくちゃ上手い!)と果子のやりとりにしばしば現れる"ふきげんな言動"
「面白さなんて期待するほうが間違いでだいたい同じことの繰り返しの中で感覚を麻痺させていくのよきっと」
「想像を超えることなんて起こらない、起ったとしても、すぐに対処できて、想像内の出来事に収まっていくの」
「だから、もともとつまらないものなの、世界は」
なんとペシミスティックな 笑
そして、いちいち反応するカナに対して受け答えしていて、どこか禅問答のようでもあり面白い。
●二階堂ふみが小泉今日子に向かって言う台詞を借りるならば、遠くを見ながら"いいこと"言ってる映画。
そのシーンの台詞。
「みんな寂しいんじゃない?ひとりで居ても家族と居ても」
「(前略)〜欲望が人と人を結びつけるのよ。でもね、誰かと結びついたら、それはやっぱり孤独なのよ〜(後略)」
「欲望の行き着く先は結局孤独なの。それでも人は欲望するんだわ」
実際の母娘であるふたりの言動は(実のところ)よく似ていることがわかる。
やがて、果子は(爆弾を嬉々として作ったりしている)未来子に停滞したままの過去に絡み取られた現状から、まさに未来を垣間見るのだ。
それがラストの(噂だけで本当にいないと思われた)ワニが現れ、暴れ逃げ出すところを見ていて「これ、これ、これですよー」と言い出しそうなイキイキとした果子の表情に繋がる。
●前田司郎監督、演劇的な間合いを感じるところもあるけれど台詞回しの妙として、これまた好みの領域。
(要はお気に入り色彩トーンの中でのあーだこーだ会話とかを絶妙のカメラポジションで撮ってくれることが嬉しいのだ)
●パンフレット(オフィシャルブックとして書店売りも有り←こちらは帯が付いてる)デザインは大島依提亜/中山隼人
映画本編、ラストを華々しく(笑)飾るワニがモチーフの表紙。
(写真、インタビュー、対談など90ページ)
シナリオが掲載されているのは嬉しい。
(実際の脚本の最初に載っていたという年表も掲載←映画本編では多くを語られない登場人物たちを巡る"激動の歴史" 笑 が詳細に)
※文中敬称略
映画『ふきげんな過去』公式ホームページ
http://fukigen.jp/
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* * * * * * * * * *
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カコ(二階堂ふみ)が不機嫌そうな面持ちで運河の縁に立っていす。そこへ、ギターを背負ったヒサシ(山田裕貴)がやってきて、「なあ」とか「ねえ」とか言って彼女にまとわりついています。
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