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2016-12-30

『この世界の片隅に』こうの史代原作、片渕須直監督・脚本、のん、細谷佳正、稲葉菜月、尾身美詞、小野大輔、潘めぐみ、岩井七世、他

注・内容、台詞、原作に触れています。
この世界の片隅に

原作 : こうの史代
監督・脚本 : 片渕須直
出演(Voice Cast) : のん
細谷佳正、稲葉菜月
尾身美詞、小野大輔
潘めぐみ、牛山茂、新谷真弓
岩井七世
小山剛志、津田真澄、他

Konoseka1

Memo1
129分の上映時間。長いのかな?と思っていたら「エッ!?もう終わり」あっという間。
もう少しこの世界に浸っていたい。
本当に素晴らしすぎてなんだかボーっとしてしまった。
映画史に残る映画に出会うことは、そうざらには無い。
(もしかすると映画を見始めてからの40数年の中でも、数本あったか無かったかといったレベル)
終映あとの場内。
そんな瞬間に立ち会ったのではないのか!?、と、いった感慨が"この喩えようのない言語化不可能な鑑賞後すぐの気持ち"となって現れているのではないだろうか?とも思える空気。
これこそ"劇場で映画を見るということの魅力"の最大要素だと思います。
いろいろ驚いた事だらけなのだが、まず動き幅が小さくてジワーと動いていくすずさんたちのアニメイト部分。
公式ガイドブック、パンフレット共に片渕監督がインタビューでロングレンジとショートレンジの"仮現運動"について語っているところが面白い。
(あとは、その実験精神!)
google第2検索ワード候補として"傘"が出てくる!
割りと早い段階(←公開初日)から出ていたので初見ですぐに検索数が増えたのではと推測。

Konoseka_book

Memo2
パンフレットに"すずさんの生きた時代"として"世の中の動き"と"すずさんの日々"が対比して年表になっている。これがまたなんともなんとも細かくて「中野本町に海苔を届けに行く」とか「もんぺを縫う」とか。
すずさんのぼぉ〜っとしたところが現れた(ちょっと細かめの)好きなシーン。
呉の港に浮かぶ戦艦や巡洋艦の名前に詳しい晴美ちゃん(晴美さん←すずさんは"晴美さん"と呼ぶ)
指さしながら、すずさんに説明する。
「へぇー、ほいじゃあ、うちもお礼に」
「大きな雲じゃろう」
「うん」
「かなとこ雲、言うてね」
「うん」
「大雨になります」
「えっ!?」
(ちなみに原作だと、ほんの8コマのシーンだけれども、こういった細やかなところもアニメーション化しているところもスゴイ、そして何よりもリスペクトに溢れている)
音響監督も片渕須直監督。
(些細な音、微細な音から爆撃時の凄まじい音まで、その緩急つけられた隅々まで行き届いた音響も素晴らしい)
「その冬は雪が多うて春が待ち遠しかった」の(ナレーション)台詞に続く遠く響き渡る空襲警報のラッパの音!!
(この音響定位の見事さ)
鑑賞後すぐに、ふと思い浮かんだこと。
拓郎さんの全編広島弁の歌詞「唇をかみしめて」がよぎった。
人が生きとるネー
人がそこで生きとるネー
人がおるんヨネー
人がそこにおるんヨネー

Voice_konoseka

Memo3
本作は徐々に支援していく番組(媒体)などが増えていったことでも、まさにエポックメイキングな映画ともいえます。
そのうちのひとつ→上記、画像(テレビ撮り)MBS夕方のニュース『Voice』で放送された「楠公飯」レシピの特集。
実際に記者が炊いていくところから撮影。(確かに分量は増えているけれど、美味しくなさそう…。)
※MBSは「ちちんぷいぷい」でも『この世界の片隅に』を大きく時間を割いて取り上げていました。
『BRUTUS』No.837年末恒例の映画特集。
予告編による映画選び4パターンの1本として『この世界の片隅に』の記事
特筆すべきは、ヒロインを演じる「のん」の声。ナレーションではなく劇中からのセリフのからの引用だが、吸引力が半端でなく、本予告編のための録り下ろしに聞こえるほどの生々しさがある。(解説文より抜粋)
最後に。
(誰もが書いていますが)
そう!この、のんさんの声がまさに本作のひとつの肝となったとも言える"すずさん"そのものでした。

追記
片渕監督がtwitterで"いわゆるCG、一切使ってません。手描きと切り紙アニメばっかり"の発言に新年早々ビックリ!!

Konoseka2

劇場用長編アニメ「この世界の片隅に」公式サイト
http://konosekai.jp/


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2016-12-29

『ヒッチコック/トリュフォー(Hitchcock/Truffaut)』ケント・ジョーンズ監督、マーティン・スコセッシ、デヴィッド・フィンチャー、黒沢清、他監督多数

ヒッチコック/トリュフォー
Hitchcock/Truffaut

監督 : ケント・ジョーンズ
出演 : マーティン・スコセッシ
デヴィッド・フィンチャー
アルノー・デプレシャン
ウェス・アンダーソン、黒沢清
ウェス・アンダーソン
ジェームズ・グレイ
オリヴィエ・アサイヤス
リチャード・リンクレイター
ピーター・ボグダノヴィッチ
ポール・シュレイダー

Ht1

Ht2

Memo1
堪能した!
(そして短い!延々と見ていられる。もし完全版なるものが存在するならば、是非Blue Ray化などの際に出してほしい!)
そして、これは世にも珍しい『映画術』という本(名著)についの考察およびメイキング(この場合メイキングと呼ぶのはおかしいけれど…)
ポール・シュレイダー監督がマーティン・スコセッシ監督と一緒に見たと語っていた『めまい』
(当時はビデオもなく、ましてや上映されることもなかったので海賊版の16ミリフィルムをくいいるように見たとも)
ビデオが無い→つまりは映画館にかけられた時にしか見られない!→「映画術」掲載の『サイコ』シャワーシーン連続写真や『知りすぎた男』のカット写真、『鳥』絵コンテなどの貴重なこと貴重なこと。
パンフレットに滝本誠氏が書かれていたけれども、ヒッチコックとトリュフォーの生々しい声(合間に漏れた喘ぎ声のようなものなど)が本作の、まさに貴重なる肝だと思える。
ラストの記念撮影のやり取りなどもボツになったコマ部分も見せつつ、とても面白い。
ヒッチコック作品、ロードショー公開時にリアルタイムで見られたのは『ファミリー・プロット』が最初にして最後。
(現在のTOHOシネマズ梅田の地に、かつて華々しく構えられていた旧・北野劇場で)
あと、当時はヒッチコック側(ヒッチコック財団)が権利を保有していて公開されていなかったカラー5作品(『めまい』『裏窓』『知りすぎた男』『ロープ』『ハリーの災難』)が見たくても見られない渇望状態だったので1984年にヒッチコックフェスティバルと銘打たれて公開されたときは小躍り状態だった、と記憶(それは世界的なことで本編中スコセッシ監督が海賊版と思しき状態で見た話を語っている通り『めまい』などは本当に幻。
小林信彦さんのコラムを遡って読むと『サイコ』や『北北西に進路を取れ』『鳥』などの当時のリアルタイムな世評、状況なども含めて垣間見ることができる。

Fp

Memo2
いくつかの興味深いリンク
(2016年12月時点でのリンク切れ無し確認)
淀川長治 解説 "めまい"(動画)
https://youtu.be/pKakG8WAFR0
黒沢清監督「映画の全てが込められている」
『ヒッチコック/トリュフォー』トークショー
(動画)
(於 : Tokyo International Film Festival)
https://youtu.be/fDJQSX1-lcs
映画『ヒッチコック/トリュフォー』
K・ジョーンズ監督が選ぶ、自分に影響を与えた映画5本
http://rollingstonejapan.com/articles/detail/27280

映画『ヒッチコック/トリュフォー』公式サイト
http://hitchcocktruffaut-movie.com/

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2016-12-23

タイトルデザイン_46 PROLOG FILM/Kyle Cooper 『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー(Rogue One: A Star Wars Story)』

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー
Rogue One: A Star Wars Story

監督 : ギャレス・エドワーズ
出演 : フェリシティ・ジョーンズ
ディエゴ・ルナ、ドニー・イェン
ベン・メンデルソーン、マッツ・ミケルセン
アラン・テュディック
フォレスト・ウィテカー
リズ・アーメッド、チアン・ウェン、他

Ro

Memo
ディズニー傘下になってからの如実なヒロインを軸とした構成は、本線含めて良いなぁー。
語られていたローグ中隊(若干整合性が無いような気もするけれど、そういうことはどうでもよい)の物語。
監督も語っているとおり、まさに戦争映画になっている。
なんといってもドニー・イェン演ずる盲目の剣士チアルート!
唱えるはフォース念仏とも呼べる信念のフレーズ。
そして、この台詞。
「正しい者のあとに続く」
モルディブで撮影された南国イメージの惑星ビジュアルは初。
宇宙空間との色彩対比が美しい。
ダース・ベイダーの隠れ家(そしてドック)、逆光を背に登場する"見栄"のある場面。
そして何より、設計図を奪われ怒りに燃えて自ら反乱軍の舟に乗り込んでいく鬼気迫る姿。ライトセーバーによる殺陣の恐ろしさ。このシーンに続いてep4を見ると印象が変わるだろうなぁ(←まだ見直していない)
ここが描かれたことによってダース・ベイダーの怖さの部分が強調されて(思い出させてくれた)
"A long time ago,in a galaxy far,far away...." に続いてのメインテーマがなく、そのまま物語に移行していく。
(なるほどサイドストーリーは、オープニング部分をこういう手法をとっていくのか、と膝をうつ)
そしてジン・アーソの子供時代を描いたシーンに続いてメインタイトル。

エンドクレジットを見ているとタイトルデザイン周り(バックグラウンドイメージ、プロデュース)がPROLOG FILM/Kyle Cooperと表記されていた。
(ギャレス版『ゴジラ』からの流れもあってのこと?)
End Titles and Roller Design & Produced > FUGITIVE
http://www.fugitivestudios.co.uk/

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー
http://starwars.disney.co.jp/movie/r1.htm

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2016-12-08

『ダゲレオタイプの女(La Femme de la plaque argentique/DAGUERROTYPE)』黒沢清監督、タハール・ラヒム、コンスタンス・ルソー他

ダゲレオタイプの女
La Femme de la plaque argentique
DAGUERROTYPE


監督 : 黒沢清
出演 : タハール・ラヒム
コンスタンス・ルソー
オリヴィエ・グルメ
マチュー・アマルリック
マリク・ジディ

Kurosawa1

Memo
(個人的)黒沢清監督作品のお気に入りベスト3に入る傑作!
フランス人スタッフと共にフランスで撮影された作品であるにもかかわらず漂う『雨月物語』のような気配と品に満ちた作品!
マリーを演じたコンスタンス・ルソー
そのインタビュー他記事でよく目にした"瞳が微妙にぶれている"という特質のせいか独特の脆さ、儚さを醸し出していて素晴らしい!
そのマリーを撮影した出来上がったばかりのダゲレオタイプ(下記掲載のシルバーグレイモノクロ2点目の画像)の目が少し動いたように見えたのは気のせいだろうか…。
そもそもがこのダゲレオタイプという等身大の写真自体が"ある種のゴースト"ではないか…
誰もがそう思ったであろう(或いは言及している)ヒッチコック『めまい』と『ソラリス』における実体化、ヌーヴェル・ヴァーグ期の事件を起こし逃げていく男女(最もシャブロル監督はじめヒッチコック作品の影響下のもと、つくられた作品が多々あった訳でもありますが)など、もはや"映画的ごちそう"である。
音楽、グレゴワール・エッツェル
マリーを車で連れて逃げるジャン。
そのシーンのスコアがまさにバーナード・ハーマン"あの作品"を想起させるのが素晴らしい(意図していなかったようだけれど、まるで導かれるように…)
「これは現実なのか…」
「幻と言うなら」
「どこが境い目?」
それに呼応するようにステファンが写真"ポートレート"を撮る老婆の台詞
「死は幻です」
鏡、階段、窓から射しこむ光、揺れるカーテン、(脚の無いように)スーっと移動する人物(もう最初のマリーの母親のゴーストらしき人物だけで、こころ持って行かれました)、遠くに不意に立つ人影…フランスで撮ろうが、そこには紛うことなく今までの作品と同じように"しるし"がいくつも現れる。
文學界2016年11月号・黒沢清監督インタビュー「ものすごく贅沢な幽霊映画」なるほど!(←見た方は解る!)
前述ヒッチコックに関しての言及も。
そして驚いたのは階段落ちシーンでの"あの埃"がCGだったこと!
(あまりの偶然度に最初ビックリした)
思えば、あの瞬間マリーは誰かに落とされたのではないかとも見える。
とにかく、もう一度再見してみた時の楽しみに取っておこう。

Kurosawa2

映画『ダゲレオタイプの女』公式サイト
http://www.bitters.co.jp/dagereo/




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