『たかが世界の終わり(Juste la fin du monde/It's Only the End of the World)』グザヴィエ・ドラン監督、ギャスパー・ウリエル、マリオン・コティヤール、ヴァンサン・カッセル、レア・セドゥ、ナタリー・バイ
注・内容、ラストに触れています。
『たかが世界の終わり』
Juste la fin du monde
It's Only the End of the World
監督 : グザヴィエ・ドラン
出演 : ギャスパー・ウリエル
ヴァンサン・カッセル
マリオン・コティヤール
レア・セドゥ
ナタリー・バイ
※Memo1
●フィックスで、この家族劇を捉えてしまうと本当にきつくて耐えられなかったかもしれないところを、表情のアップと心象風景、編集と色彩のリズム、効果的な音楽(「マイアヒ」が流れたときの一瞬、表出する思いで)などで見せる。
冒頭、空港からのタクシー移動中にリアウインドウ越しに見える、ふたつの寄りそって上がる風船はわざわざ飛ばしたのだろうか?
(他にもペア、対としていろいろなものが写る。それを車中からながめるルイ)
●ルイ(ギャスパー・ウリエル)と母親マルティーヌ(ナタリー・バイ)、ルイと妹シュザンヌ(レア・セドゥ)、ルイと兄アントワーヌ(ヴァンサン・カッセル)
それぞれ、ふたりきりになろうとも、そのよそよそしさ、もどかしさ、ためこんできたものの12年の距離は埋まらない。
その中で兄の妻カトリーヌ(マリオン・コティヤール)だけは初対面(冒頭、エッ!?初めて顔をあわすの?と母や妹が驚くシーンがある)ということもあって、少し抱いている感情は違う。それどころか家族が気づかないルイの病気のこともわかってしまう。
「あと、どれぐらいなの?」
(コティヤールのこの表情芝居のなんという上手さ!)
また母親(これまた『わたしはロランス』に続いてナタリー・バイがスゴイ)のなんとか空白の空気と気まずさを埋めようとする饒舌ぶり、そして「母親にも新しい住所が教えられないの」といいつつも抱きよせ「それでも愛している」というときの表情、指先。
●ふたりだけのシーンと家族全員が揃うシーンがバランスよく配置されている構成もスゴイ。
感情がぶつかり合うドラマなのだが、どこか理知的、理性的な印象をうけるのは、そのせいかもしれない。
いわば"感情"を"外部化"して見せているともいえる、その演出作法は演劇ではない"ディスコミュニケーションを表した現代の映画文法"として、ものすごく先鋭的だ。
●先の母親の指先もそうだが、兄の拳の傷の生々しさ(あきらかに人に暴力をふるったとおぼしき傷あと)、手紙・葉書をすごい早さで繰る手など、それぞれの登場人物たちの"手の表情"も素晴らしい。
●カンヌでの監督とマリオン・コティヤールとのインタビューでの監督の言葉。
「重要なのは、ある午後彼らが一緒に時を過ごしてひとつの空間でどうなっていくのか。誰かが耳を傾けていて誰かは上の空。誰が誰を見ていて誰が誰を守ろうとしているか。そしてそれは人生そのものだ。これは瞬きのような、とても限られた一幕だ。お互いに驚くほど無関心で愛し合い方を知らない人たちの人生の中でね」
※Memo2
●いったいどうすればこのようなブレのない色彩設計になるのか?
・美しい思いでとしての心象風景の色(空の青、幸せな光の色…)
・兄と車の中なら話せるかもしれないと出かけたドライブ、その際の曇天たる外の風景の色。
・ラスト、時刻が夕刻ということでオレンジ色に燃えさかるような色合いに変わる。
(そこで感情と感情がぶつかり合い、最後、何も告げずふりかえることもなくルイは去っていく)
カラリストは誰?ということで調べてみた。
Jerome Cloutier
http://www.imdb.com/name/nm4656752/
(前作『Mommy/マミー』と次回作も!)
ドラン監督によるAdeleのミュージックビデオ ‘Hello’についてCOLORIST ジム・ウィックスによる記事
https://www.jimwicks.com/adele-says-hello-to-color-grading/
●パンフレットデザインは大島依提亜さん。
表1~4を除く正味本文が56ページ!(黒に銀刷り)
ジャン=リュック・ラガルス原作『まさに世界の終わり』の訳者齋藤公一氏、他、Reviewが6本!
監督、出演者インタビュー、フィルモグラフィ、
プロダクションノートと超充実した内容。
"家は救いの港じゃない"と繰り返される
オープニング Camille 「Home Is Where It Hurts」
"誰にも届かない 心の叫び"と歌われる
エンドタイトル Moby「Natural Blues」
(共に訳詞も掲載)
※Memo3
●『たかが世界の終わり』と『マリアンヌ』のマリオン・コティヤールを見て思いついたけれど、昔あったテレビ『どっちの料理ショー』もじりで『どっちのコティヤール』という番組はどうでしょう?全く別人か!?と思えるほど落差のある役を演じた俳優を特集。
(あ、『どっちーも・デ・ニーロ』という響きもいいなぁ)
●ドラン監督次回作は初の英語作品。
キット・ハリントン、ジェシカ・チャスティン、ナタリー・ポートマン、エミリー・ハンプシャー、スーザン・サランドンらが出演する"The Death and Life of John F. Donovan" (既にファンメイド予告編とか撮影風景とか結構出ていてビックリ)
映画『たかが世界の終わり』公式サイト
http://gaga.ne.jp/sekainoowari-xdolan/
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