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2017-03-23

『哭声 コクソン(the wailing)』ナ・ホンジン脚本・監督、クァク・ドウォン、ファン・ジョンミン、國村隼、チョン・ウヒ、他

注・内容、台詞に触れています。
哭声 コクソン
the wailing

脚本・監督:ナ・ホンジン
出演 : クァク・ドウォン
ファン・ジョンミン
國村隼チョン・ウヒ、他

物語・警察官ジョング(クァク・ドウォン)が妻と娘と暮らす平和な村に正体不明のよそ者・山の中の男(國村隼)が住み着いて以来、住人たちは彼のうわさをささやいていた。やがて、村で突然村人が自分の家族を手にかける事件が発生する。犯人には、濁った目と湿疹でただれた肌という共通点があり…(物語項・シネマトゥデイより抜粋)

K1

Memo1
●「人々は恐れおののき霊を見ていると思った。そこでイエスは言った。なぜ心に疑いを持つのか。私の手や足を見よ。まさに私だ。触れてみよ。このとおり肉も骨もある」
ルカによる福音書24章 37-39節

監督自身がクリスチャンということもあり、なお且つ噂が疑念へと変わっていく過程についての考察としても、最初からテーマとして掲げらている一節。
(実は終盤に…)

ドラキュラも鬼もゾンビも悪魔も地霊も天使も"もののけ"もイエスも修験者もシャーマンもあらゆるものが混然として提示され、ホラーでもありサスペンスでもありエクソシストでもあり震える舌でもありコメディでもあるという全くジャンル分け不可能な今までにない映画体験をもたらしてくれる超絶怪作。
西欧的解釈図式としてあらわすならば(一応)悪魔とその従者、そして天使ということになるのだろうが、この作品はそうは語りきれないようにパズルのピースをずらして描かれていて如何様にも解釈がとれるというところが、また魅力だ。
さらには悪意の実態化という点で、黒沢清監督『CURE』を連想せずにはいられない。
「ミーに任せてちょ」と「おそ松くん」のイヤミのように登場してドンガラガッチャン、ドンガラガッチャン踊るシャーマン祈祷師として、あっという間に物語を転調してみせたファン・ジョンミン演じるイルグァンの唖然とさせられたパワフルな除霊シーン。
(実際、その場面がめちゃくちゃ面白い!)
そこで、それまでゆったりと或いはモゾモゾと描かれていた「噂」の部分が「エッ!?ホントにそうなの?」と観客までをも信じこませてしまうミスリードの上手さ。
(ここの誰を除霊し、何に祈祷しているのかのシーンはすっかり山の中の男とイルグァンが対峙した状態かと思いこんでしまっていた)
ラストに至っても何を信じるかによって捉え方が変わってしまう…
教会の通訳と山の中の男の対峙、会話、問答。
「お前が"悪魔"と言ったんだ」
「わたしは何者か、わたしの口からいくら言ったところでお前の考えは変わらない」
「お前は今もわたしのことを悪魔だと思い、それを確かめに…」
「わたしはわたしだ…」
並行して謎の女・目撃者ムミョンとジョングとのやりとりも描かれる。
「今、行ってはいけない」
「娘が」
「これは罠…」
「鶏が三度鳴くまで」
(それぞれの考え、取った行動が各々に影響しあっているように思える見事な締めくくり方、冒頭の福音書の一節と呼応する。お前がそう思ったから実体化したのだと言わんばかりに…)
「釣り糸をたらして、そこにひっかかるだけ」
その台詞通り、ファーストカットは釣り針に餌をつけている山の中の男の姿から始まる。
そして、物語の構成自体が、そのまま観客に提示した餌のように次々と提示されていく。(どう考えるのか、誰を疑うのかも委ねられている)
まさにダブルミーニングとしての"HOOK"

K2

K3

K4

Memo2
娘のために奔走したジョングをクァク・ドウォンが『哀しき獣』に続いて、演じ、またしても強烈だ。
最初の頼りな~い、海岸に打ちあげられたアザラシのような姿とラストでの姿は全く別人のよう。
見たこともないアクション祈祷シーンを演じたファン・ジョンミンはやはり上手い!
ムミョンを演じたチョン・ウヒはその立ち姿自体に独特のオーラがあって、これまたイイ!
そして國村隼さん!
もう何も申しません!怪演を通り越した怪演!
泣く子も黙らずに泣きます!

『哭声/コクソン』公式サイト
http://kokuson.com/

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