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2017-05-31

『パーソナルショッパー(Personal Shopper)』オリヴィエ・アサイヤス監督、クリステン・スチュワート、他

パーソナルショッパー
Personal Shopper

監督 : オリヴィエ・アサイヤス
出演 : クリステン・スチュワート
シグリッド・ブアジズ
ノラ・フォン・ヴァルトシュテッテン
ラース・アイディンガー、他

物語・パリで、多忙な人々の買い物を代行するパーソナル・ショッパーとして働くモウリーン(クリステン・スチュワート)は、数か月前に双子の兄を亡くし悲しみに暮れていた。そんな折、携帯電話におかしなメッセージが届き、さらに不可解な出来事が発生し…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Ps

Memo
「他の誰かになりたい?」
"忙しいひとの代わりに"買い物をすることと"誰かを見えない何かを引きつける"霊媒体質とが合せ鏡のようになっている。
画面を見ている観客自体が目撃者であるような映画的話法。
(ルイスの姿らしき者が見えたのは映画を見ている観客だけ)
スコープサイズ、35mmフィルム撮影。
"ゴースト"もまた光の変種とするならばフィルム撮影は適していると思う。
3ヶ月前に心臓麻痺で急死した兄との「先に亡くなった方が、向こうから合図を送る事にしよう
その約束自体がモウリーンをパリに縛り付けている。
見方によっては兄が妹であるモウリーンを呪縛から解くために導いていく(後述、インゴによる事件への巻きこまれも含め)話とも読み取れる。
実際に存在する画家、ヒルマ・アフ・クリント(没後20年まで作品を公表しないようにとの遺言も)。そしてヴィクトル・ユゴーが行ったテーブルターニング(音の回数によってイエス、ノー、アルファベットを印す)
さらには、かつて住んでいた家でのエクトプラズムを吐く亡霊との遭遇(階段の途中の引っ掻いたバツ印とテーブルに残されたバツ印の符号、ここ1番怖かった…)
そういったオカルティックな雰囲気が見ているこちら側も"気分としての加担者"たらしめている要因。
兄もその彼女ララも新しい彼氏も、そしてモウリーンも彫刻や絵を描くという芸術的行為に関係している。
もしかして、ここ笑うところ?と思ったのが謎の送信者とのメッセージのやりとりで「怖いものはあるか」に対しての返信が「ホラー映画」って‥…体験している事の方がよほど怖い。
キーラが殺害され(犯人はキーラの不倫相手インゴであることは早い段階で明確だ。ただ、前述のとおり散りばめられたオカルティック雰囲気により何か"別のもの"の犯罪の匂いがするようには見える流れがある)
自分に殺害の容疑がかけられるように仕組まれた罠としてのカルティエのアクセサリーが入った紙袋。
最初に部屋に尋ねてきたのは(メールメッセージで"もう下に来ている""階段をあがっているぞ"などが続々着信する)実はルイスではないのかと思われる。
というのも、モウリーンは全くインゴと顔を合わせていない。
透明人間が歩いて行くように写される、廊下、エレベーター、入口のドアのシーンのあと、ディレイされて描かれるインゴの慌てたように同じところを通って行く場面が続く。
(最後はホテル前でインゴを捕まえようと警察が現れる)
兄が妹を助けたともとれる描かれ方。
ラスト
パリを出て、彼のいるオマーンへ到着したモウリーン。
ララの家に現れたガラスコップが割れた時と同じ現象が、ここでも。
「ルイス?ルイスなの」
ドン(Yesを標す1回だけの激しい音)
いくつかのやりとりがあって…
「全部、気のせい?」
ドンと1回、激しい音
エンドクレジットへ
(なんとも皮肉が効いているし、開放された感じもあるし、宙ぶらりんにされたような気になる面白いラスト)
クリステン・スチュワートはアサイヤス監督『アクトレス〜女たちの舞台〜』に続いての起用。撮る監督によって女優の雰囲気が変わることはよくあると思うけれど、それもまた女優としての"同化憑依体質"を呼び起こす監督との共犯関係のひとつとも言えるかもしれない。

Ps3

日本版含め3種類のポスター。
クリステン・スチュワートのポーズは同じだが、座っている場所がそれぞれベッドや違う種類の椅子になっている。

映画『パーソナル・ショッパー』公式サイト
http://personalshopper-movie.com/

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2017-05-27

『夜明け告げるルーのうた(Lu over the wall)』湯浅政明監督、(VoiceCast)谷花音、下田翔大、柄本明、他

夜明け告げるルーのうた
Lu over the wall

監督 : 湯浅政明
出演 : (VoiceCast)
谷花音下田翔大
篠原信一、柄本明
斉藤壮馬、寿美菜子
大悟、ノブ、他

物語・両親が離婚して東京から寂れた港町・日無町に越してきた中学生の少年カイは、父親と祖父の三人で暮らしている。両親に対する複雑な思いを胸に日々を過ごす彼にとって、自ら作曲した音楽をインターネットにアップロードすることが唯一の楽しみだった。そんな中、人魚の少女ルーと出会い交流を深めていくうちに、カイは少しずつ周囲に心を開いていくが…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Lu

Memo
全編フラッシュアニメーションによる制作(※)。
シェイプトゥイーンによって処理されたルーの髪の毛や瞳の中のうるうるが、ずーっと動きつづけて、ひたすら止まることなく躍動感がある。
グニャグニャのグルングルンとしたモーションや踊りにおける"コサックダンス風"脚の動きは湯浅監督ならでは。
(※通常50〜60人の製作工程を「ルーのうた」では20人で行われたというスゴさ)
極めてデザイン的な全体のトーンはめちゃくちゃ好み。
メインタイトルも素晴らしい!
(古くは「わんわん忠臣蔵」から「トトロ」などへ続く、キャラが横移動しながらのテケテケした動きにのせてのメインタイトル←テケテケってなんだと問われればテケテケとしか答えられないですが…)
貝のようにこころを閉じたカイ。
冒頭とラストに貝のお味噌汁についての会話。
ジャリとを噛む音。
「ちゃんと水につけたんだけどなぁ」
ラストでは
「今日の美味い」
「よく砂、はけたからな」
ルーをめぐっての事件を経て(知らなかった父親の過去のことやルーを助ける件での経緯があって)、母との離婚のことなどでわだかまっていた父親との関係性の修復。
音楽がキーワード。
カイのこころを外へ向け始めるきっかけも「音楽」好きのルーとの出会いから。そしてバンドへ参加、ライヴ出演などを通して次第に明るくなっていくのがわかる。ラストは思い爆発の「歌うたいのバラッド
ねむようこさんによるキャラクターデザイン原案。最もねむさんっぽいのはカイのクラスメイトで一緒に組むバンド"セイレーン"のボーカル担当の遊歩(ハンドルネームがUFO!)
ルーのパパとワン魚が最高!
(タコ婆とかつて恋仲だった男やワンちゃんとのエピソードとか…うぅっ)
ルーパパ、商工会議所に勤めに陸に上がってくる感じもサイコー。
(監督曰くの"『パンダコパンダ』み"炸裂!)
魚の活き締めシーン(早っ!て、そりゃあチョンとひと噛みですからw)、日が当たるところは歩けないので、しばらくじーっと日が傾くのを待つシーン、ルーが危機に瀕した際の怒り狂ったように火だるまになりつつ疾走するシーン。
日無町(名前のとおり日が当たらない漁師町だったのが御蔭岩によるたたりからの海面上昇危機ののち、その岩山がなくなることで日がさすようになる←その危機シーンでカイの祖父がつくっていた傘が役立つシーン、またちっちゃいのが傘さしている絵柄がかわいい)
ラスト。
カイ、遊歩、国夫の三人。
「じゃあ最後に」
「我らセイレーン」
「ファイトオー!ファイトオー!」
先に走り去る遊歩。
振り返りながら。
「ねぇ」
「日の当たる町になったね」
パンフレットデザインはベイブリッジスタジオ
オールカラー全32ページ。
(表1、表4のエンボス特殊加工が可愛らしい)
このパンフレットに掲載されている、ルーのパパの声を演じた篠原信一さんのコメントには笑った。
"台本をいただいて「今回も人間やないんか」と思いました。"

Lu_fusen
ムビチケ特典のルー付箋

映画『夜明け告げるルーのうた』公式サイト
http://lunouta.com/

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2017-05-19

"あなたの人生の物語"『メッセージ(Arrival)』ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督、エイミー・アダムス、ジェレミー・レナー、フォレスト・ウィテカー、他

注・内容、台詞、ラストその他全般に触れています。
メッセージ
Arrival

原作 : テッド・チャン
監督 : ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演 : エイミー・アダムス
ジェレミー・レナー
フォレスト・ウィテカー、他

物語・巨大な球体型宇宙船が、突如地球に降り立つ。世界中が不安と混乱に包まれる中、言語学者のルイーズ(エイミー・アダムス)は宇宙船に乗ってきた者たちの言語を解読するよう軍から依頼される。彼らが使う文字を懸命に読み解いていくと、彼女は時間をさかのぼるような不思議な感覚に陥る。やがて言語をめぐるさまざまな謎が解け、彼らが地球を訪れた思いも寄らない理由と、人類に向けられたメッセージが判明し…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Arrival1

Memo1
ブログ記事タイトル名は原作"あなたの人生の物語"を。
映画を観終わったときに、その原作タイトルがまた違った深度を持って問いかけてくれる。
(これより以降、思いつくままにメモを元に台詞やシーンをランダムに記載しています。エイリアン表記ではなく全てヘプタポッドとして記載)
フラッシュバックと思われていた娘、ハンナ"HANNAH"との映像。
実は"これから起こるできごと"フラッシュフォワードであることが後半にわかってくる。
"起こりうる未来が過酷なものであっても、それを受け入れる?"
ラスト
(ルイーズとイアンと小鳥が描かれた絵)
「パパとママが動物に会ったの」
撤収していく軍や関係者たち。
ルイーズのモノローグ。
「あなたの物語はこの日から始まる」
イアンの台詞。
「ずっと宇宙に憧れてきた」
でも1番驚いたことは彼らにではなく、君に出会ったことだ
「パートナーが君でよかった」
「数学者のような考え方をする」
理系と文系がタッグを組んで問題解決に挑む。
このふたりでよかったと思えるシーンの積み重ね。
性急な結果(ここで言う結果とは"彼らが地球に来た目的は何かということを知ること)を求めてくる政府。そしてウェバー大佐。
それに対して語彙がもっと必要だと解くルイーズ。
そこで、こういう話をする。
オーストラリアに初めて上陸した際、先住民族に対して「あのお腹の袋に子どもを入れて飛び跳ねている動物はなんだ」という質問に対して「カンガルー」と答えた。
でも、実際は彼らの言葉では「理解不能」という意味。
「お見事」というイアン。
「(字幕では)都市伝説よ」
(実際はうるおぼえですが→「真実ではないけれど私の伝えたいポイントをおさえている話」)
(前段として、ウェバー大佐が大学に訪ねてきた際、去り際の大佐に別の教授にあたる際にサンスクリット語で"戦争"の意味を聞いてほしいというシーンもある)
ファーストシーンとラストが繋がる円環構造についてはSFマガジンでの添野知生氏による批評(5ページにわたって紹介。他に基本、善人しか出てこないこと「ある日どこかで」のことなど鑑賞後に読むテキストとして最良)やパンフレット中のレビューでもいくつか記述されている。
(そのシーンのために始めと終わりに使用されるマックス・リヒター「On the Nature of Daylight」←End title crawlにも単独表記されるほど重要な楽曲)
殻"Shell"の中でルイーズたちとヘプタポッドの間にある"Wall"。
それはまるで見ているこちら側(観客側)のスクリーンのようでもある(本作自体がスコープサイズだし)。
スクリーンの中にスクリーンがある感じ
そこに近づいていくルイーズと観客はヘプタポッドとの遭遇を同じような気持ちで見ることとなる。
また"Shell"自体のサイズ感(ヘリコプターの俯瞰から見たものと地上から近づいていったときののものとの比率)が分からなくなるように被写界深度の浅・深を巧みに取り入れている撮影手法も素晴らしい。
"Shell"は宇宙船というよりは、まさに容器のようでもあり通路のようでもある。
ゆえにラストに去って行く姿は舟が離れていくというよりは、その場から消滅していくようだ。
ルイーズとイアンが兵士たちによる爆弾テロに巻き込まれ"Shell"から弾きだされる(事実上ヘプタポッド"アボットとコステロ"に助けられたことに)直前に受け取った膨大なロゴグラム。
「時間についての表示が多い」
「点と余白の数を計算してみた」
0.0833
「分数で表すと」
1/12
"武器を与える"その意味するところと世界の12地点に現れたことなど全てが合致して出てきた答え…。
娘ハンナとのフラッシュフォワード映像がよぎる(その前後の描き方の見事さ)。
ある語句を思い出せないでルイーズに質問するハンナ。
「取引?」
「ウィンウィン?」
「違う。もっと数学的な感じの…」
「それだったらパパに電話してみなさい」
そして。
未来の自分が現在の自分から答えをもらう。
(切迫した状態で各国お互いのデータをどう渡しあうのか…。ウェバー大佐らに説得するルイーズ。そこでポツリとイアンが…「ノンゼロサムゲーム」)
ハッとするルイーズ。
そしてハンナに。
「ノンゼロサムゲーム」
("non-zero-sum game" 日本語字幕で「非ゼロ和ゲーム」と出ていた)
原作で出てくるフェルマーの光の最小径路が省かれているのは映画としての選択だったのかはよくわかる。
それでも、それっぽい台詞がさりげなく織り込まれている。
それはルイーズの姿勢も表している。
「急がば回れよ」
初見の際に「!」と思ったチャン将軍との(フラッシュフォワード)1年半後の会話。
「あなたに会いたくて来た」
「あの時、わたしの携帯電話に電話をくれたから今こうして会えた」
「わたしは番号を知らない」
チャン将軍が携帯の番号を見せながら…
今、知りましたよ
手が無意識に震えるほどの恐怖もありながら与えられた使命(目的)のために勇敢に立ち向かう聡明にして孤独を内に秘めた言語学者ルイーズ。演じたエイミー・アダムスが本作でアカデミー賞にノミネートされなかったことは謎。
そのエイミー・アダムスの透きとおるようなブルーアイと防護服のオレンジ色が補色になっている点も美しい。

Arrival

Memo2
タイトルデザインはLouis-Martin Duval
(抱き合うふたり。待ち受ける未来を知りつつも…)
そして静かに暗転。浮かびあがるARRIVALのタイトル。
http://annyas.com/screenshots/updates/arrival-2016-denis-villeneuve/
コンセプトアート
(かなり違っているものもある)
Concept artist Meinert Hansen
Arrival: Concept Art, Part 1: The Shell
https://meinerthansen.com/2016/11/13/arrival-concept-art-part-1-the-shell/
Arrival: Concept Art, Part 2 – The Aliens
https://meinerthansen.com/2016/11/19/arrival-concept-art-part-2-the-aliens/
ポスター右下に記載されている12ヶ所の緯度・経度が確認できるサイズで閲覧できるポスターサイト。
http://www.impawards.com/2016/arrival_gallery.html
音をスペクトラムで表した図。
モンタナがその中で抜け出てピークを指している。
(後半は'TED'における8次元についてのスピーチ関連記載)
https://medium.com/colorless-green-ideas/the-arrival-a-colorless-story-of-your-life-312504e04700
一貫しての言語学者ルイーズの視点で描かれる本作。その根幹たる「使用言語によって思考は影響される」というサピア=ウォーフの仮説についての(おそらく)唯一の書籍『言語・思考・現実』(L・ベンジャミン・ウォーフ/著)
公開後に突如、売れ始めるかも?
音楽は同じヴィルヌーヴ監督の『プリズナーズ』『ボーダーライン』を手がけたヨハン・ヨハンソン(『ブレードランナー 2049』も控えている)
公式ウェブサイト
http://www.johannjohannsson.com/
既に日本以外ではBlue Rayが発売されており特典マテリアルとして1時間を超えるメイキング関連映像が収録されています。
テッドチャンへのインタビューから音響設計、ロゴグラムの製作過程など多数。
IMDbで下記タイトルで検索可。
• Xenolinguistics: Understanding Arrival
• Acoustic Signatures: The Sound Design
• Eternal Recurrence: the Score
• Nonlinear Thinking: The Editing Process
• Principles of Time, Memory and Language
こちらの語句で画像検索するとその他、いろいろと面白いものが… → "arrival mathematica code"
数式処理システム"Mathematica"について
(言語、図像解析に用いられていて画面に多々登場)
https://mathematica.stackexchange.com/questions/137156/where-is-abbott-how-to-make-logograms-from-the-film-arrival
【TVブロス】5月20日号。ヴィルヌーヴ監督への渡辺麻紀さんのインタビュー。監督自身が「えっ、そうなの?それは知らなかった!」と反応した『スター・トレック ファーストコンタクト』でも人類が初めて異星人と遭遇するのがモンタナだったという話をはじめ、妙にツボにはまる話が掲載されています。(「『デューン』はまだやるか決まってないよ。」なども)
メイキング映像(約15分)
Go Behind the Scenes of Arrival
https://www.youtube.com/watch?v=QOMIL_6bkiU
"WIRED"掲載のロゴグラムのメイキング記事
"映画『メッセージ』制作陣はいかにして「エイリアンの文字」をデザインしたか?"
http://wired.jp/2017/05/20/arrival-alien-alphabet/

Arrival_p
Memo3
パンフレットデザインは大島依提亜‏さん。
"Shell"の型抜きが表1、表4に施されている。
(中にはモンタナと帯広の写真。合計全12ヶ所の"Shell"出現地の写真も掲載)
A5サイズ/本文52ページ。
プロダクションノートが12ブロック。
レビューが12本。
(原作、SF映画、コミュニケーション、音楽のことなど本編に関わる要素が網羅された内容)
ロゴグラムの素敵な仕掛けがセンターに。
映画史に残るSF作品に相応しい手元に置いておきたいパンフレット。

映画『メッセージ』 | オフィシャルサイト
http://www.message-movie.jp/


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2017-05-14

"わくわくシャマラン・ランド"『スプリット(Split)』M・ナイト・シャマラン監督、ジェームズ・マカヴォイ、アニヤ・テイラー=ジョイ、他

注・内容、他のシャマラン監督作品にも触れています。
スプリット
Split

監督・脚本 : M・ナイト・シャマラン
出演 : ジェームズ・マカヴォイ
アニヤ・テイラー=ジョイ
ベティ・バックリー
ジェシカ・スーラ
ヘイリー・ルー・リチャードソン

物語・高校生のケイシー(アニャ・テイラー=ジョイ)は、クラスメートのクレア(ヘイリー・ルー・リチャードソン)の誕生パーティーに招待される。帰りは、彼女とクレアの親友マルシア(ジェシカ・スーラ)をクレアが車で送ってくれるが、途中で見ず知らずの男性(ジェームズ・マカヴォイ)が車に乗り込んでくる。彼に拉致された三人は、密室で目を覚まし…。(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Split2

Memo1
やー、やっぱりやってくれました"わくわくシャマランランド"
マクガフィンに次ぐマクガフィン 笑
シャマランのシャマランによるシャマランのための映画。
今までも『アンブレイカブル』乗客全員が死亡した列車事故。その中、全く無傷で生き残ったデイヴィッド・ダン。何故?
物語が進んでいくと…「なーんや、漫画(コミック)の世界の話やったらなんでもありやん」(←関西弁)
サイン』かつての矢追純一氏の"木曜スペシャル"ノリでジャジャジャーンとテーマ曲が聞こえてきそうな雰囲気のテレビ映像のみで宇宙人襲来を見せてーの、けったいな(←関西弁)ホンモノ宇宙人をバットで倒したり『ヴィレッジ』何故、塀の外へ出てはいけないのか。結局、塀の中のコミューンでしたチャンチャン(←関西風オチ擬音)などなど、まずは大上段で謎を提示して"つかみは最強""はたして結末は!?""来るか!大どーんでーん返し"といった期待値までをもフックとするシャマランテイストが本作は極めて高い精度で復活している。
"イメージが超人や獣人や宇宙人や怪物や境界をつくり出す"
元をただせば『シックス・センス』でのオチ(小林信彦先生に言わせるとはじまってすぐの段階でブルース・ウィリスは死んでいることがわかってしまう、というか亡くなっていないとおかしい作劇となっているとのこと)ありきのシャマラン監督への"どんでん返しオチ期待"が肥大していったことに起因すると思うのですが…。
予告編では一切見せなかった父親と叔父、そして子供時代のケイシー。
3人でハンティングに出かけているシーン。
そのケイシーを見る目つきが最初からおかしい叔父。案の定、全裸でケイシーに近づいてくる。
そして…。
それらが拉致された室内のシーンの合間に(夢もしくはイメージとして)はさみこまれる(ケイシーが目覚めたときに必ず男が側にいる。例えば食事を手に「お寝坊さんね」)
父親の死後(写してはいないが、このハンティングの際に何かあったのは推察できる)、育ての親となった叔父による虐待は高校生の今になっても続いていることから逃れようと放課後もなかなか家に帰らないことが会話の中から読み取れる。
本当の"ビースト"それは…。
23人格とは別にもうひとり生み出される妄想の怪物"ビースト"
そのことについて極めつけの台詞は「人格によって肉体も変化する」
ヒッチコック作品への目配せはもちろんだが、どちらかというと精神科医との件でデ・パルマ監督『殺しのドレス』を想起。
奇妙なシーンのつなげ方や展開、ショット(冒頭、クレアとマルシアとのレストラン部分のカメラ視点、ケイシーが衣服を男に渡すところでは手元は写らない、最初は一緒の部屋だった三人のボジション、黄色の花の位置…)などで見方によっては全てケイシーの妄想だったとも捉えられる。
(『アンブレイカブル』と同じ世界の物語とすればケイシーの叔父へのイメージ自体が"ビースト"そのものであり、その事自体の妄想が"ビースト"を実体化させたと見るのがマクガフィンにつぐマクガフィン映画として妥当かもしれない←前述予告編や公開されているBEHIND SCENE全てにおいて叔父のことは隠されていたし)
ジェームズ・マカヴォイの多重人格者演技はもちろん、さすがだがケイシーを演じたアニャ・テイラー=ジョイの眼力(目ヂカラ)はラストバトルでの"ビースト"化したマカヴォイと向かい合った際にも決して負けてはいない凄みがあり、注目度があがってきている女優としての面目躍如。
シャマラン監督が本作のプロモーションで来日した際に日本時間4月27日午前1時に「重大発表あり」と予告の上『アンブレイカブル』の続編についてツイートしてたから公開前に既にネタバレ済み。
それにしても『アンブレイカブル』『スプリット』それぞれにおいて妄想がヒーローとビーストを生み出し『GLASS』となって帰ってくる…って、な、何、それ!?
エンドクレジットの最後の告知は笑いが起こっていたのでつかみはOK?

Split1

Memo2
スコープサイズのセンターに人物を配した撮影ショットがいいなぁと思ってIMDbをチェックしたら『イット・フォローズ』(そのデヴィッド・ロバート・ミッチェル監督次回作『Under the Silver Lake』も)を撮ったマイク・ギオウラキス(Mike Gioulakis)だった。
900万ドル低予算映画のためか、最新撮影機材使用ではないにもかかわらず、この仕上がりは素晴らしい。
Title Design > Filmograph
昨年の秀逸な『10 クローバーフィールド・レーン』タイトルデザインに続く(勝手にこう呼んでいる→)ソール・バス系デザイン。
Filmographはジェームズ・ワン監督の一連の作品や『ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション』カーテンコール(Curtain Call Sequence)のデザインなどを手がけている。(これから公開の『ジョンウィック2』や『パワーレンジャー』も)。
↓下記サイトは『スプリット』モーションテストやインタビューなど(タイトルシークエンス動画もあり)
http://www.artofthetitle.com/title/split/

映画『スプリット』公式サイト
http://split-movie.jp/

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2017-05-11

『カフェ・ソサエティ(Cafe Society)』ウディ・アレン監督、ジェシー・アイゼンバーグ、クリステン・スチュワート、スティーヴ・カレル、ブレイク・ライブリー、他

注・内容、台詞に触れています。
カフェ・ソサエティ
CAFE SOCIETY

監督 : ウディ・アレン
出演 : ジェシー・アイゼンバーグ
クリステン・スチュワート
スティーヴ・カレル
ブレイク・ライブリー、他

物語・1930年代。ニューヨークに暮らす青年ボビー(ジェシー・アイゼンバーグ)は、刺激にあふれた人生を送りたいと願いハリウッドに向かう。そして彼は、映画業界のエージェントとして大成功を収めた叔父フィルのもとで働く。やがてボビーは、叔父の秘書を務める美女ヴォニー(クリステン・スチュワート)のとりこになる。ひょんなことから彼女と距離を縮められて有頂天になり、結婚まで考えるようになるボビー。しかし、彼女にはひそかに付き合っている男性がいて…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Cafe_c2

Memo1
『ラジオデイズ』を軸に過去作全体を展観しているような趣きがある。
もっとも、その語り口。
既に名人至芸(例えるなら落語のような)の領域に達しているウディ・アレンなればこそのこと。
ボビーの恋は成就されない苦さがあれどもラストを新年で迎えることによって、どこかしら晴れやかな気分で劇場をあとにできるのだ。
ロスとニューヨーク。
ヴォニーとヴェロニカ。そう、まさに"ふたりのベロニカ"?
(キェシロフスキ監督の『ふたりのベロニカ』のように一瞬、すれちがうような接点もなく顔を合わせることはない)
この対をなすふたりの女性へのボビーのアプローチの仕方がロスとニューヨークでは全く違う。ロスではブロンクスから出てきたばかりで、まるで学生のような猪突猛進型だったのがニューヨークではクラブを成功させ自身に満ちた強引なアプローチに。
笑った台詞。
(毎度のことながらユダヤ人自虐ネタ)
「死刑の上にキリスト教に改宗するなんて」
「ユダヤ教にも来世があったらもっと信者が集まるのに」
スティーブ・カレルは『フォックスキャッチャー』で演じたデュポンの姿が怖くて怖くて、その演技があってか終始おさえぎみに話すボビーの叔父フィルとダブって見えた(こういう役、本当に上手い)
また兄ベンを演じたコリー・ストールが、そのくわえタバコの不敵さもあわせて見事な演技。(それゆえの改宗した際の刑務所での台詞が妙に可笑しい)
ニューヨークで知り合い、結婚するヴェロニカのブレイク・ライブリーは『アデライン、100年目の恋』でも1930年代を生きる(と、いうか100年間を演じる)女性を演じていて、写っているだけで華やかさが半径500mにふりまかれる。
文藝別冊『ウディ・アレン』冒頭対談での芝山幹郎氏『カフェ・ソサエティ』について「にやっとしたのは、キャステイングですね~(中略)~クリステン・スチュワートなんて『パニックルーム』の小娘だったのに、ここへ来て急成長ですね」←小娘って 笑
ドキュメンタリー『映画と恋とウディ・アレン』でダイアン・キートンがウディ・アレンを初めて見たとき「なんてカワイイ(cute)人なの」と思ったというインタビューの答え。
これ、ボビーに対してのヴォニーの台詞「かわいい。車のライトを見て動けなくなった鹿みたい」と見事なシンクロぶり。

Cafe_c3

Memo2
撮影監督ヴィットリオ・ストラーロと初タッグ。
(そして初デジタル)
詳細記事が下記に↓
【FILM AND DIGITAL TIMES】
Passage from Film to Digital
: Vittorio Storaro, ASC, AIC

PDFファイルで閲覧、保存可。
http://www.filmanddigitaltimes.com/wp-content/uploads/2016/04/75FDTimes-Storaro-PassageToDigital.pdf
具体的なグレーディングについてなど詳細に書かれています。参考としてエドワード・ホッパー「サマータイム」やレンピッカなどの絵画も。
Coloristは『ブルージャスミン』や次回作『Wonder Wheel』も手がけるAnthony Raffaele
ハリウッドパートはウォームトーン、ブロンクスパートは彩度を落としたクールトーン(銀落としのようなザラツキ感も)、ニューヨークパートはその中間、明るみのあるトーンと分けられている。1シーンだけクールからウォームへほとんど気づかないレベルでトーン変調する場面(ロスとブロンクスとの手紙のやり取りが読まれるところ)があった(もしかして、ウディ・アレン作品初?)
1930年代を再現した衣装に注目
スージー・ベンジンガー(Suzy Benzinger)
本作では「シャネル(CHANEL)」の衣装協力のもと当時のファッションが忠実に再現され、劇中でクリステン・スチュワートやブレイク・ライブリーが着用するドレス類からジュエリーまで提供されている。
↓こちらはFashionsnapの記事。
http://www.fashionsnap.com/news/2017-05-04/cafe-society/
(なお劇場によってはクリステン・スチュワートが出演しているCHANELのCMが本編の前に流れる)
タイトルシークエンスのフォントはおなじみのWindsor
ウディ・アレン監督はAmazon配信ドラマでも、やっぱり使用フォントはWindsorだった!
考えてみれば『アニー・ホール』以降『インテリア』を除いて全部そうだったかも。

Woody1

Memo3
↑ウディ・アレン本が並んでる!
左から文藝別冊『ウディ・アレン』評伝『Woody ウディ』『ウディ・アレンの映画術』(撮影時点では未発売の『ウディ・アレン完全ヴィジュアルガイド』宣伝チラシも置いていた)
評伝『Woody ウディ』(デイヴィッド・エヴァニアー著/ 大森さわこ 翻訳) 分厚い!二段組みなれど品のある書体、行間で読みやすい。
紙質を変えたモノクロ写真ページが巻頭と中盤合計32ページ(撮影風景や女優とのスナップなど)
公認ではないけれど協力はする形でウディ・アレンといくつかのメール交換が行われていて、その文言も読める。
締めくくりで「会いませんか」という著者に対して、ついに対面なった部分も書かれています。
文藝別冊『ウディ・アレン』はエッセイ・論考・コラム・作品評で構成されたアレン作品を見続けた者にとっても、これから順に見ていこうと思っている人にもおすすめのムック本。
作品評に当時のパンフレットからの再録がおさめられているのも嬉しい。
・『ウディ・アレン完全ヴィジュアルガイド』はオールカラーで基本見開きで1作品が紹介される、まさにガイドブック。
(ちなみに『アニー・ホール』と『マンハッタン』は5ページ)

映画『カフェ・ソサエティ』公式サイト
http://movie-cafesociety.com/

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