『パーソナルショッパー(Personal Shopper)』オリヴィエ・アサイヤス監督、クリステン・スチュワート、他
『パーソナルショッパー』
Personal Shopper
監督 : オリヴィエ・アサイヤス
出演 : クリステン・スチュワート
シグリッド・ブアジズ
ノラ・フォン・ヴァルトシュテッテン
ラース・アイディンガー、他
物語・パリで、多忙な人々の買い物を代行するパーソナル・ショッパーとして働くモウリーン(クリステン・スチュワート)は、数か月前に双子の兄を亡くし悲しみに暮れていた。そんな折、携帯電話におかしなメッセージが届き、さらに不可解な出来事が発生し…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)
※Memo
●「他の誰かになりたい?」
"忙しいひとの代わりに"買い物をすることと"誰かを見えない何かを引きつける"霊媒体質とが合せ鏡のようになっている。
●画面を見ている観客自体が目撃者であるような映画的話法。
(ルイスの姿らしき者が見えたのは映画を見ている観客だけ)
●スコープサイズ、35mmフィルム撮影。
"ゴースト"もまた光の変種とするならばフィルム撮影は適していると思う。
●3ヶ月前に心臓麻痺で急死した兄との「先に亡くなった方が、向こうから合図を送る事にしよう」
その約束自体がモウリーンをパリに縛り付けている。
見方によっては兄が妹であるモウリーンを呪縛から解くために導いていく(後述、インゴによる事件への巻きこまれも含め)話とも読み取れる。
●実際に存在する画家、ヒルマ・アフ・クリント(没後20年まで作品を公表しないようにとの遺言も)。そしてヴィクトル・ユゴーが行ったテーブルターニング(音の回数によってイエス、ノー、アルファベットを印す)
さらには、かつて住んでいた家でのエクトプラズムを吐く亡霊との遭遇(階段の途中の引っ掻いたバツ印とテーブルに残されたバツ印の符号、ここ1番怖かった…)
そういったオカルティックな雰囲気が見ているこちら側も"気分としての加担者"たらしめている要因。
●兄もその彼女ララも新しい彼氏も、そしてモウリーンも彫刻や絵を描くという芸術的行為に関係している。
●もしかして、ここ笑うところ?と思ったのが謎の送信者とのメッセージのやりとりで「怖いものはあるか」に対しての返信が「ホラー映画」って‥…体験している事の方がよほど怖い。
●キーラが殺害され(犯人はキーラの不倫相手インゴであることは早い段階で明確だ。ただ、前述のとおり散りばめられたオカルティック雰囲気により何か"別のもの"の犯罪の匂いがするようには見える流れがある)
自分に殺害の容疑がかけられるように仕組まれた罠としてのカルティエのアクセサリーが入った紙袋。
最初に部屋に尋ねてきたのは(メールメッセージで"もう下に来ている""階段をあがっているぞ"などが続々着信する)実はルイスではないのかと思われる。
というのも、モウリーンは全くインゴと顔を合わせていない。
透明人間が歩いて行くように写される、廊下、エレベーター、入口のドアのシーンのあと、ディレイされて描かれるインゴの慌てたように同じところを通って行く場面が続く。
(最後はホテル前でインゴを捕まえようと警察が現れる)
兄が妹を助けたともとれる描かれ方。
●ラスト
パリを出て、彼のいるオマーンへ到着したモウリーン。
ララの家に現れたガラスコップが割れた時と同じ現象が、ここでも。
「ルイス?ルイスなの」
ドン(Yesを標す1回だけの激しい音)
いくつかのやりとりがあって…
「全部、気のせい?」
ドンと1回、激しい音
エンドクレジットへ
(なんとも皮肉が効いているし、開放された感じもあるし、宙ぶらりんにされたような気になる面白いラスト)
●クリステン・スチュワートはアサイヤス監督『アクトレス〜女たちの舞台〜』に続いての起用。撮る監督によって女優の雰囲気が変わることはよくあると思うけれど、それもまた女優としての"同化憑依体質"を呼び起こす監督との共犯関係のひとつとも言えるかもしれない。
●日本版含め3種類のポスター。
クリステン・スチュワートのポーズは同じだが、座っている場所がそれぞれベッドや違う種類の椅子になっている。
映画『パーソナル・ショッパー』公式サイト
http://personalshopper-movie.com/
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