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2017-09-21

「でも、いい話ですね。それはいい話だ」『三度目の殺人(THE THIRD MURDER)』是枝裕和監督、福山雅治、役所広司、広瀬すず、他

内容、台詞、ラストに触れています。
三度目の殺人
THE THIRD MURDER

監督 : 是枝裕和
出演 : 福山雅治
役所広司広瀬すず
吉田鋼太郎、斉藤由貴、
満島真之介、松岡依都美、
市川実日子、橋爪功、他

物語・勝つことを第一目標に掲げる弁護士の重盛(福山雅治)は、殺人の前科がある三隅(役所広司)の弁護を渋々引き受ける。クビになった工場の社長を手にかけ、さらに死体に火を付けた容疑で起訴され犯行も自供しており、ほぼ死刑が確定しているような裁判だった。しかし、三隅と顔を合わせるうちに重盛の考えは変化していく。三隅の犯行動機への疑念を一つ一つひもとく重盛だったが…(物語項、シネマトゥデイより抜粋)

Sando1

Memo1
「マッチポイント」の予告編がカンヌで初めて流れたとき「あれ?誰の作品?」という空気。
最後に"監督 : ウディ・アレン"と出た際「ほぉ!」という感嘆の声があがった。本作もクレジットがなければ是枝監督の作品だとはわからないかもしれない。それほど全く異なるタイプの映画。
とはいえ、もちろん底流には是枝監督作品ならではの"目にみえないもの"といったモチーフも垣間見える。
開巻、倒叙的なシーン。
観客は、この時点で役所広司が犯人だと思って映画を見始める。
それは見ているうちに弁護士である重森と同じ気持(こころの動揺をもって)で、二転三転する三隅の証言に惑わされていく。
また、重森にも三隅にも娘がいる。そこに被害者である父親の娘がかぶさっていく。
その上で「もしかして、広瀬すず演じる娘咲江の単独犯?」
「父親を呼び出したのが娘で殺害したのは重森?」と、いかようにも捉えられるショットが挟みこまれる。
後述パンフレット記事で知ったのだが、三隅と咲江が接見室で無言で手を合わせるシーンを撮影していたそうだ。
本編ではカットされたけれど、もし入っていたら全体のトーンがまた変わっていたかもしれない。
いろいろな台詞。
(ちょっと気にかかった台詞)
・「ガソリンはどうしたの?」
「会社まで取りに行きました」
「わざわざ?」
「最初から用意していた訳じゃないんだね」
(この一回目の接見シーンの三隅発言の曖昧さで、よくわかっていないのだが実際ガソリンはどうだったのだろう?)
・事務所のデスク、服部(松岡依都美)が事件現場の写真を見てひとこと。
「当分、焼肉は無理だわ」
(と、言ったその直ぐ後に全員で焼肉を食べているシーンが 笑)
・咲江と母・美津江(斉藤由貴)の会話。
「お母さん、寂しくて死んじゃうかもしれない」
「死なないでしょ。寂しいくらいじゃ…」
この母娘の関係がよくわかる台詞だ。
最初に重森が被害者であるふたりの家を尋ねたとき、三隅の手紙をビリビリッと破る母・美津江の姿を写さない。実は…ということが判明する前に表情をとらえない厳密な演出。
・判決後の接見シーン。
「重森さんがそう考えたから、わたしの否認に乗ったと…」
「でも、いい話ですね。それはいい話だ」
「わたしはずっと生まれてこなければよかったと思ってるんです」
「こんな私でも誰かの役に立つことができる」
「駄目ですよ。重森さん。こんな人殺しの話に乗っちゃあ」
あなたは…ただの器…?」
ラストは幾重にもはられた電線。
そして十字路に立つ重森をやや俯瞰で捉えるショットで終わる。
ダンケルクがジャム。
本作はピーナッツクリーム。
さりげないアイテムが効果的。
小鳥も十字架もピーナッツクリームも…

Sando2

Memo2
瀧本幹也による撮影。
光と影。
銀残しのトーン、スコープサイズをいかした人物配置。質感も美しい。
7回ある接見シーン。
ラスト、ふたりの顔が重なりあう場面は圧巻。
『三度目の殺人』のパンフレットは見た目は通常のよく目にする版型だが、中身は写真の配置から余白まで極めて緻密。
そして掲載されている出演者インタビューも「エッ!?」と驚く初出の内容が多い (鑑賞後に読むことを大前提に編まれている)
また本編、法律監修も行った岩月泰頼「法廷におけるいくつかの真実」記事も興味深い内容が多々。
カラー44P
批評は道尾秀介森直人
アートディレクション(宣伝美術)は「そして、父になる」に続いて服部一成
(パンフレットデザイン表記は服部一成+山下ともこ)
ちなみに「幻の光」から「花よりもなほ」「歩いても歩いても」は葛西薫。
「空気人形」「ゴーイング マイ ホーム(TV)」「海街diary」は森本千絵。
『文藝別冊/是枝裕和』葛西薫特別寄稿。
以下『幻の光』パンフレットについて書かれている部分より抜粋。
"タイトルは海外版に合わせて『MABOROSI』としている。
ヘボン式ではなく日本式ローマ字表記であるべきだろうと、こだわって末尾の綴りをSHIではなくSIとしたのだった"

(ブログ記事中の敬称略)

『三度目の殺人』公式サイト
http://gaga.ne.jp/sandome/



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